MZ-2861
MZ-2861(えむぜっとにいはちろくいち)とは、シャープが発売した8/16ビットパーソナルコンピュータである。MS-DOSモードとMZ-2500シリーズ互換モードを持つハイブリッド機。ニックネームは、MZ書院。同社が発売していたワープロの書院と互換性を持つワードプロセッサアプリケーションを標準添付していた事による。独自アーキテクチャを持つMZシリーズ全体の最終機種でもある。
ハードウェア仕様
- CPU: 2800モード i80286-8 68PinPLCC、別売で80287 / 2500モード Z-80B 6MHz
- RAM:
- メイン 768KB標準 プロテクトモード用メモリを15MBまで、合計15.7MBまで増設可能
- GVRAM: 512KB搭載、バンク切り替え及び専用メモリコントローラにてリニアアクセス可能
- CGRAM: 14KB Text-VRAM及び、PCG(Programmable Character Generator)搭載
- ROM:
- DMAC: NEC μPD71071搭載、16MBリニアアクセス可能
- 音源: YAMAHA YM-2203 OPN1基内蔵。(FM音源3ch+SSG音源3ch、各8オクターブ+ノイズ1Ch)
搭載インターフェイス
- プリンター:セントロニクス規格準拠SHARP仕様25ピンD-Subコネクタ×1ポート
- シリアルポート:RS-232C準拠25ピンD-Sub×1ポート
- 外部FDD端子 SHARP仕様37ピンD-Sub×1ポート、専用製品は発売されず。
- ジョイスティック:ATARI仕様9ピンD-Sub×2ポート
- マウス:SHARP仕様8ピンミニDINプラグ×1ポート
- キーボード:独自仕様独自コネクタ×1ポート
- CRT:カラー9ピンD-Sub×1ポート、モノクロ9ピンD-sub×1ポート
- CRT制御端子:SHARP規格8ピンDIN×1ポート
- MZ-2500互換拡張スロット×2(オプション)
- PC-9801互換拡張スロット×3
- NDP増設コネクタ×1
- 拡張ROMソケット×1(実際には、対応商品は一般には販売されず)
- VRAM拡張ソケット×1(実際には、V-RAM拡張モジュールは販売されず)
添付ソフトウェア
周辺機器
- MZ-1E30(HDD I/F)
- MZ-1E35(ADPCMボード)
- Y8950(MSX-AUDIO)を搭載し、ADPCMの録音再生を可能にするボード。
- MZ-2861用のハードウェアではあるが、8bit側のインターフェイスボードであるため、MZ-2500でも利用可能。
- MZ-1E39(拡張RS-232Cボード)
- MZ-1E43(SCSI I/F)
- MZ-1F23(20MB HDD)
- MZ-1M08(ボイスボード)
- MZ-1500用のオプションとして発売された音声合成ボードだが、本機でも利用可能になっている。
- 34種類の定型メッセージ定型メッセージ、一音ごとの発音、若干数のメロディーがROMとして録音されており、それを再生することで発生している。
- 定型メッセージ以外は単音で発音されるため、音のつなぎこそ不自然ではあるものの、フォルマント合成の音声合成よりも明瞭に聞き取れる。
- 英語の発音がチップには内蔵されているが、チップ外に接続された日本語音声のみBASICではサポートされた。
- MZ-1M10(4096色パレットボード)
- MZ-2500モード用内部増設のアナログパレットボード。
- MZ-1M12(i80287)
- MZ-1R35(1MB増設RAMボード)
- MZ-1R36(MZ-1R35用1MB増設RAMボード)
- MZ-1X29(純正マウス)
総括
他社の16ビット機と異なり、8086機からの拡張ではなく、i80286専用に全く新しく設計された、唯一のパーソナルコンピュータであった。そのため、他機種ではAPICが登場するまで実際には使用が困難であった80286で拡張された割り込み機能や、80286のプロテクトモードを効果的に使用する事が可能であり、DMACも20ビット、16MBの領域をカバーし、80286を使用したコンピュータとしては、当時最も洗練された機種であった。
しかし、多機能ではあったが、登場時期にライバルであったPC-9801等に比べ、前シリーズのMZ-2500を含めて対応アプリケーションが少なかったうえ、PC-9801のエミュレーション機能もエプソンから発売されたEPSON PCシリーズによって水をあけられ新規ユーザを獲得するには至らなかった。 また、広告などから、従来のMZユーザには前述のような設計がされていることは周知されず、書院やエミュレーションの方が前面に押し出されていたこともあり、独自の色を失い迷走していると写りこちらもまた、受けがよくなかった。 更にホビー向けとしても同時期に発売された同社別部署のX68000と比較し、あまりに地味であり、殆ど注目される事も無く、後継機種は発売されず、MZシリーズ自体も終焉を迎えることになった。
関連項目
- 前機種。8ビットモードの詳細。
- エミュレーション対象となったハードウェア。
- エミュレーションではなく、互換機という形を取ったシリーズ。