焼きうどん
焼きうどん(やきうどん、焼き饂飩)は日本の郷土料理のひとつで、うどんを肉や野菜と一緒に炒め、醤油やウスターソース等で味をつけたもの。
歴史
1945年の終戦直後、福岡県小倉市(現・北九州市小倉北区)魚町の鳥町食堂街にある「だるま堂」の初代店主弁野勇次郎が、関西で流行りのソース焼きそばを作ろうと思った。しかし物資不足の折、中華のそば玉が手に入らず、代わりに干しうどんを湯がいてこれを焼いて出したところ大好評だった、というのが焼きうどんの始まりと言われる。だるま堂の店主は2005年に亡くなったが、一緒に店で焼いていた店主の妻坂田チヨノは60年以上たった今(2009年現在[1][2])でも健在で、当時と同じように干しうどんを使い焼きうどんを作り続けている。現在、小倉北区内においてJR小倉駅周辺から旦過市場にかけて焼きうどんを食べられる店が20店舗以上ある[3]。
焼きうどんは小倉から各地に広がっていったが、他の地域ではゆでうどんを使う店がほとんどである。
作り方
調理法は焼きそばと大差はないが、ソースではなく、醤油や、塩コショウを味付けに使うことも多い。醤油味の焼きうどんには、酢をかけて味を整える例も散見される。
広島風お好み焼きの本場である広島県広島市では、ソース焼きそばと同様に、オタフクソースをメインに味付けされた焼きうどんも多い。オタフクソースの業務用焼きうどんソースはウスターソース類に醤油を合わせている。醤油を隠し味に使うことも少なくない。
麺
オリジナルの焼きうどんは平たい乾麺を使用し、一度固めに茹でてから充分に水分を切って使用する。小倉で土産用に売られているものも、乾麺・ソース・薬味をセットにしている。腰のあるしこしことした食感が味わえる。
製麺所で既に茹でてある市販の茹で麺を使う場合、具と合わせて炒める前に、うどんを電子レンジで温めておけば混ぜるだけで良くなるので、手早く、焦がさずに作ることができる。麺をほぐすのにも、ウスターソースを使うと仕上がりのべた付きを抑えることができる。
具材
具材は豚肉、キャベツ、玉ねぎ、もやしがメインとして良く使用されている。その他、にんじん、ピーマン、かまぼこ、天かす、小エビ、豚肉の代わりに牛肉などを使用することもある。
焼うどん発祥の小倉にある各店舗では、「イベリコ豚」や「関門海峡たこ」などの海鮮を入れた焼きうどんも提供している。トッピングは、青海苔(または海苔)、アジ・サバなどの削り節、青ねぎなどで、焼そばの場合と変わらない。
付け合せには、紅しょうがを添えることもある。
変種
天まど
だるま堂を始め、小倉では、卵1個の目玉焼きを乗せた焼きうどんを「天まど」(てんまど)と称している。天窓から月を見た様がその語源となっている。
だるま堂の場合、広島風お好み焼きのように焼く。小麦粉を水で溶いたものを薄く鉄板で焼き、その上に焼けた焼きうどんを乗せ、中心にくぼみを作る。そのくぼみに、まず水溶き小麦粉を少し垂らしてから卵1個を落とす。全体をひっくり返し、黄身が軟らかいままの状態に少し焼いたら、皿に載せて完成。食べる時には、黄身をうどんにからめて食べるとまろやかな味わいとなる。
焼きうどんだけでなく、ソース焼きそばの天まどを出す店もある。
イタリアン
新潟県中越・下越地域のカフェやレストランでは、焼きうどんによく似た麺にミートソースなどをかけたものを「イタリアン」として販売している。焼きそばのような中華麺にソースをかけたものも同様にイタリアンと呼ばれる。
イベント
2002年秋に、富士宮やきそばと小倉の焼きうどんが勝負する「天下分け麺の戦い」が、小倉城公園にて開催された。小倉の商店街では、焼きうどんの店とスパゲティの店が競うようなイベントも行われた。また、「小倉焼うどん研究所」が主体となり「B-1グランプリ」に「小倉発祥焼うどん」という名称で出展を行っている。
毎年9月の第1土、日曜に行われる彦八まつりでは文枝一門が出店する文枝茶屋の焼きうどんが名物となっている。
日本国内のご当地焼きうどん
小倉発祥焼うどん
焼うどんが小倉発祥であることに注目した「北九州青年みらい塾」が母体となって、飲食店や有志で「小倉焼うどん研究所」(所長 竹中康二)を結成。イベント参加や食べ歩きMAPの作成など、積極的な活動を行っている。この研究所が定める「小倉発祥焼うどん」の定義では、下記の条件のうち5つを満たす必要がある(元祖に対する敬意を払いつつ、創意工夫も促したいという考え)。
また、研究所が小倉発祥焼うどんの商標を登録。料理人が両手に持った小手で、焼うどんを調理している様子が絵柄になっており、販売される焼うどんの商品等に使われている。なお、小倉発祥焼うどんの場合「焼き」ではなく「焼」と表示されている。
ホルモン焼きうどん
亀山みそ焼きうどん
鳩ヶ谷ソース焼きうどん
商品
期間限定の商品もあり、現在発売中とは限らない。
- 東洋水産(マルちゃん)が、チルド商品で「焼きうどん(しょうゆ味、ソース味、関西風お好みソース味)」、「鉄板焼きうどん(あっさり醤油味、まろやかソース味)」を発売。カップ麺で「焼きうどん BAGOON」を発売。
- 日清食品(どん兵衛)が、カップ麺で「だし焼きうどん(旨味ソース仕立て、かつお醤油仕立て)」を発売。
- サンヨー食品(サッポロ一番)が、カップ麺で「九州小倉名物焼きうどん」を発売。
- エースコックが、カップ麺でセガのプレイステーション3用ゲーム「龍が如く 見参!」とコラボレーションした「龍が如く 大盛り 極み焼うどん 見参!」を2008年2月11日に期間限定で発売。ゲーム中には、うどん屋の店主が焼きうどんを開発するストーリーが含まれている。
- カワカミ(北九州市)が、乾麺・ソース等のセットで「小倉発祥焼うどん」を発売。
- お好み焼き いしん(北九州市)が、乾麺・ソース等のセットで「小倉発祥焼うどん バトルソースエディション」を発売。
- 寿がきや食品(愛知県)が、チルド商品で「焼うどん(しょうゆ味、ソース味)」を発売。
- 五木食品(熊本県)が、生タイプ(LL麺)で「焼うどん(しょうゆ味、ソース味)」を発売。
歌
2006年10月に、「焼うどん」をテーマにしたCDをリリース。曲名は「すきっちゃ★小倉焼うどん」、「発☆祥子with B級KOKURA」が唄っている。