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笑い男 (攻殻機動隊)

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笑い男(わらいおとこ)とは、テレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』に登場する架空のハッカークラッカー)。

概要

テレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』のストーリーに大きく関わってくるキャラクター。作中では、2024年に発生した企業社長誘拐、身代金要求及びその後発生した同業他社への脅迫、また2030年に発生した警視総監殺害未遂事件の首謀者と世間一般には認識されている。初めて公の前に姿を現した際、素性がバレないように、テレビカメラや電脳などネットワーク上に記録された自身の顔に関する全ての情報に「笑い男マーク(The Laughing Man)」と呼ばれるキャラクターのマークを上書きし、世間を騒がせたことから、その呼び名がついている。

円形の「笑い男マーク」の縁には英語で

"I thought what I'd do was, I'd pretend I was one of those deaf-mutes(僕は耳と目を閉じ、口をつぐんだ人間になろうと考えた)"

と書かれており、これはJ・D・サリンジャーの文学作品『ライ麦畑でつかまえて』からの引用である。

関連する事件

通称「笑い男事件」

テレビアニメ『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』の舞台である2030年の6年前、2024年2月1日より約3か月の間に発生したサイバーテロ事件の通称。正式名称は「広域重要081号事件」。セラノ・ゲノミクス社社長のアーネスト瀬良野氏誘拐、広域ネットワークへのハッキング、セラノ・ゲノミクス社のマイクロマシン製造ラインへのウイルスプログラム混入、マイクロマシン製造メーカー6社に対する脅迫が行われた。

事件の発端は2024年2月1日、笑い男がアーネスト氏の電脳をハッキングし誘拐。身代金100億円、金塊100kgを要求した。アーネスト氏は誘拐以前に犯行予告を受け取っていたが、まともに取り合っておらず、この誘拐は状況を甘く見ていたアーネスト氏自身が招いたと言っても過言ではなかった。

事件が起きてから、警察は報道管制を敷いて、捜査に当たったが、何一つ手がかりがつかめず、事件が大きく動くのは発生から2日後の2月3日であった。

2024年2月3日警察庁会談直前の天気予報のTV生中継現場に、灰色の帽子と青いフードジャンパーを着た犯人がアーネスト氏を引き連れて現れ、生中継中のテレビカメラの前でアーネスト氏を拳銃で脅した。しかしながらアーネスト氏は脅しに屈せず、うまく行かないと踏んだ犯人はアーネスト氏をその場に放置して逃走した。その時点で、犯人の顔はその場にいた全ての人に見えていたものの、誰も犯人の本当の顔を覚えていなかった。これは現場にいた人々や駆けつけた警察官の電脳AIつきのロボットカメラ、更には逃走経路にあった監視カメラなど、ネットワークに繋がるデバイスに残された犯人の顔に関する情報を、犯人自身が「笑い男(ホップ=ラッフィングマン)」とよばれるマークにリアルタイムで上書きをしたからであった。唯一犯行現場周辺にいて犯人を目撃した浮浪者の2人組だけについては、電脳化をしていなかったため、犯人の顔についての記憶があったものの、その記憶自体が曖昧であったため、捜査の役には立たなかった。

その後、セラノ・ゲノミクス社に対し、マイクロマシンの製造ラインにウイルスプログラムを混入すると脅迫し、セラノ社の主力商品であった医療用マイクロマシンを販売停止に追い込んだ。その影響で株価が暴落したセラノ社の状況を利用し、他のマイクロマシン製造メーカー6社にも同様の手口で脅迫を行った。

笑い男の犯罪被害に対し、政府は被害メーカーに公的資金導入を決定。これをきっかけに笑い男は一切現れなくなり、一連の事件は収束した。しかしながら犯人の特定はなされず、事件は迷宮入り、真相は一般には不明のままになった[1]

あまりにセンセーショナルな事件だった故か、これ以後犯人である「笑い男」の模倣者が数多くの事件を引き起こし、「笑い男マーク」がかばんやTシャツにプリントアウトされ流行するなど一種の社会現象となった。

警視総監殺害未遂事件

通称「笑い男事件」から6年後の2030年6月5日、インターセプターと呼ばれる視聴覚素子の不正使用疑惑に関する記者会見の場で、再び笑い男が現れる。出席していた竹川刑事部長の電脳を乗っ取り、同席していた大堂警視総監に向かって、3日後の政治会合の際に襲撃するような発言を残す。

6月8日、会合において大堂警視総監が演説を始めようとした時、電脳が乗っ取られたSPにより総監が襲われたのをきっかけに、次々と総監を襲う人物が現れる。幸い護衛や公安9課の活躍により、警視総監は負傷はしたものの一命は取り留めた。

人物

本名は「アオイ タカシ」。独特な正義観を持つ青年(犯行当時は学生、現在は図書館司書)で、「笑い男事件」の主犯とされている。

同時に複数の電脳に侵入し、人々の視界の自らの顔の部分に、名前の由来ともなった「笑い男マーク」をリアルタイムで上書きし続ける事も可能な(草薙曰く)超特A級ハッカー。瀬良野を誘拐し真実の公表を迫るが失敗し、挙句その事件を利用されて自身の意図を捻じ曲げられたため、社会に絶望して姿を消す。ある一件を境に再び活動を開始し、隠蔽された真実を公に知らしめようとする。よく灰色のフェルト帽と紺色のフードコートを着用して行動する。また、頭髪はカツラである。

その超特A級ハッカーの腕前を荒巻大輔に買われ9課の9人目のレギュラーにならないかと誘われたが、「自分は野球が下手だから」とその申し出を断った。

草薙曰く「頭でっかちで自分が嫌いなタイプ」。会話の際にも過去の名言や比喩を多用し、また彼の思想もそれらの名言に感化されている部分が多かった。

「笑い男」とは、あくまでアオイの起こした事件を利用しようとした政治家達やマスコミが流布した名称であり、本人は一度もその名称を名乗ったことは無い。授産施設への偽装入所時には「アオイ」を名乗っていた。また、赤いハンチング帽にも「AOI」と書いてある。

授産施設では「団長」と呼ばれることもあるが、クロハやオンバの発言から判断する限り、「アオイ」と「団長」が同一人物なのかは不明である。アオイに対して「遅いぞアオイ」と言った直後、そのアオイのいる前で「また来るってよ、団長が。」「驚いたな、先週来たばっかなのに」などという発言があり、別人とも受け取れる。または、「アオイ」と「団長」を別人とする偽の記憶を電脳に書き込まれているとも受け取れる。

彼も「笑い男」のオリジナルではなく、ネット上でたまたま見つけた「村井ワクチンとマイクロマシン療法を比較検討した論文によって理論武装された脅迫メール」を読んだ事で行動を起こすよう触発されたと述べており、強いて言うならそのメールを書いた者こそが「笑い男」のオリジナルであると述べている。さらに自身も電脳化の権化のような存在であるため、電脳硬化症への恐怖のような物も少なからずあったとも述べている。

関連事項

  • 劇中でアオイが自身がいた授産施設を去る際、残したキャッチャーミットには「You know what I'd like to be? I mean if I had my goddamn choice, I'd just be the catcher in the rye and all.(僕が何になりたいか知ってるよね? 僕の馬鹿げた選択は、ただライ麦畑で子供達を捕まえる人になりたい、それだけなんだ)」と書かれているが、これも『ライ麦畑でつかまえて』からの引用であり、赤いハンチング帽も『ライ麦畑でつかまえて』で主人公ホールデン・コールフィールドの愛用品として登場している。またサリンジャーの作品には『笑い男』という短編小説があり、自選短編集『ナイン・ストーリーズ』に収録されている。
  • 「笑い男マーク」はイギリス人デザイナーのポール・ニコルソンがデザインした。
    • 劇中にもポールというデザイナーが会話の中に登場し、自分のサーバーからデザインが盗まれたと主張しているとされている。しかし、テレビカメラ前脅迫事件の現場近くにあるカフェのシンボルマーク及び作品中に登場するひまわりの会のロゴが「笑い男マーク」に酷似しているため、アオイ本人による創作の可能性もある。
  • 声を担当している山寺宏一は、笑い男を演じるにあたって、「笑い男は若い頃のトグサのような人間なのだろう」と意識しながら演じたという。
  • いわゆる劇場型犯罪で、グリコ・森永事件三億円事件机「9」文字事件薬害エイズ事件丸山ワクチン問題などをモデルとしている。
  • ファイル共有ソフトShareのアイコンは本作の笑い男を模している。

脚注