沼野充義
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沼野 充義(ぬまの みつよし、1954年6月8日 - )は、日本のスラヴ文学者。東京大学教授。専門はロシア・ポーランド文学。現代日本文学など世界文学[1]にも詳しく、その文芸評論は文芸誌・新聞などでしばしば見られる。
人物
東京都大田区出身。学生時代には、非英米圏SF研究ファングループ「イスカーチェリ」に参加し、のち、日本SF作家クラブ会員。1977 - 1979年の第19次『新思潮』に参加し評論を書いた。四方田犬彦、平野共余子らの映画同人誌『シネマグラ』にも参加。日本学術会議会員。
妻の沼野恭子はロシア文学者(東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授)。
略歴
- 東京教育大附属駒場高校卒業
- 1977年3月 - 東京大学教養学部教養学科ロシア分科卒業
- 1981年9月 - フルブライト奨学生としてハーヴァード大学大学院スラヴ語スラヴ文学専攻博士課程へ留学
- 1984年6月 - ハーヴァード大学修士課程修了
- 1985年3月 - 東京大学大学院人文科学研究科露語露文学専門課程博士課程単位取得満期退学
- 1985年6月 - ハーヴァード大学大学院スラヴ語スラヴ文学専攻博士課程単位取得・博士論文提出資格取得
- 1984年2月 ハーヴァード大学助手(ティーチング・アシスタント、1985年6月まで)
- 1985年8月 東京大学教養学部ロシア語教室専任講師
- 1987年9月 ワルシャワ大学東洋学研究所客員講師
- 1989年1月 東京大学教養学部ロシア語教室助教授
- 1994年4月 東京大学文学部スラヴ文学研究室助教授
- 2000年5月 ロシア国立人文大学(en:Russian State University for the Humanities)において共同研究(国際交流基金フェロー 11月まで)
- 2002年10月 ロシア国立大学アジア・アフリカ研究所客員教授
- 2004年4月 東京大学大学院人文社会系研究科教授(スラブ語スラブ文学)
- 2007年 東京大学大学院人文社会系研究科教授(現代文芸論)
- 2009年 日本ロシア文学会会長
受賞歴
著書
単著
- 『屋根の上のバイリンガル』筑摩書房、1988年 のち白水Uブックス 1996年
- 『永遠の一駅手前――現代ロシア文学案内』作品社、1989年
- 『夢に見られて――ロシア・ポーランドの幻想文学』作品社、1990年
- 『スラヴの真空』自由国民社、1993年
- 『モスクワ-ペテルブルグ縦横記』岩波書店、1995年
- 『W文学の世紀へ――境界を越える日本語文学』五柳書院、2001年
- 『徹夜の塊――亡命文学論』作品社、2002年
- 『ユートピア文学論――徹夜の塊』作品社、2003年
- 『世界文学から/世界文学へ 文芸時評の塊 1993-2011』作品社、2012年
共著
- (青山南・江中直紀・富士川義之・樋口大介)『世界の文学のいま』 福武書店、1991年
- (越川芳明・野谷文昭・柴田元幸・野崎歓)『世界×現在×文学―作家ファイル』国書刊行会、1996年
- (沼野恭子)『世界の食文化〈19〉ロシア』農山漁村文化協会、2006年
- (塩川伸明・小松久男・宇山智彦)『ユーラシア世界 1 〈東〉と〈西〉』 東京大学出版会、2012年
編著
- 『ロシア怪談集』河出文庫、1990年
- 『東欧怪談集』河出文庫、1995年
- 『ユートピアへの手紙――世界文学からの20の声』河出書房新社、1997年
- 『イリヤ・カバコフの芸術』五柳書院、1999年
- 『ユダヤ学のすべて』新書館、1999年
- 『芸術は何を超えていくのか?』東信堂、2009年
- 『世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義』光文社、2012年
- 『やっぱり世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義2』光文社、2013年
- 『それでも世界は文学でできている 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義 3』編著 光文社 2015
共編著
- (大岡信・奥本大三郎・川村二郎・小池滋)『世界文学のすすめ』岩波文庫、1997年
- 『書きなおすナボコフ、読みなおすナボコフ』若島正共編 研究社 2011
- 『ユーラシア世界 1〈東〉と〈西〉』塩川伸明, 小松久男,宇山智彦共編 東京大学出版会 2012
- 『ユーラシア世界 2 ディアスポラ論』塩川伸明, 小松久男共編 東京大学出版会 2012
- 『ユーラシア世界 3 記憶とユートピア』塩川伸明, 小松久男共編 東京大学出版会 2012
- 『ユーラシア世界 4 公共圏と親密圏』塩川伸明, 小松久男、松井康浩共編 東京大学出版会 2012
- 『ユーラシア世界 5 国家と国際関係』塩川伸明, 小松久男共編 東京大学出版会 2012
訳書
- アレクサンドル・グリーン『輝く世界』月刊ペン社 1978年 のち沖積舎
- スタニスワフ・レム『枯草熱』吉上昭三共訳 サンリオSF文庫 1979
- ヴェニアミン・カヴェーリン『師匠たちと弟子たち』月刊ペン社 1981年
- スタニスワフ・レム『金星応答なし』ハヤカワ文庫 1981
- B・オクジャワ『シーポフの冒険――あるいは今は昔のボードビル』沼野恭子共訳 群像社、1989年
- スタニスワフ・レム『完全な真空』工藤幸雄、長谷見一雄共訳、国書刊行会、1989年
- スワヴォーミル・ムロージェック『象』長谷見一雄、吉上昭三、西成彦共訳、国書刊行会、1991年
- ヨシフ・ブロツキイ『大理石』白水社、1991年
- ミラン・クンデラ『微笑を誘う愛の物語』千野栄一、西永良成共訳、集英社、1992年
- タチヤーナ・トルスタヤ『金色の玄関に』沼野恭子共訳 白水社、1995年
- レシェク・コワコフスキ『ライロニア国物語―大人も子どもも楽しめる13のおとぎ話』芝田文乃共訳、国書刊行会、1995年
- ヨシフ・ブロツキイ『私人――ノーベル賞受賞講演』群像社、1996年
- ピョートル・ワイリ,アレクサンドル・ゲニス『亡命ロシア料理』北川和美、守屋愛共訳 未知谷 1996年
- セルゲイ・ドヴラートフ『わが家の人びと――ドヴラートフ家年代記』成文社、1997年
- ヴィスワヴァ・シンボルカ『終わりと始まり』未知谷、1997年
- スタニスワフ・レム『虚数』長谷見一雄、西成彦共訳、国書刊行会、1998年
- ロイ・メドヴェージェフ『1917年のロシア革命』石井規衛共同監訳 現代思潮社、1998年
- アレクサンドル・グリーン『消えた太陽』岩本和久共訳 国書刊行会、1999年
- ウラジーミル・ナボコフ『ナボコフ短篇全集(1・2)』諫早勇一,貝澤哉,加藤光也,毛利公美,若島正共訳、作品社、2000-01年
- エドワード・ラジンスキー『真説ラスプーチン(上・下)』望月哲男共訳、日本放送出版協会、2004年
- スタニスワフ・レム『ソラリス』国書刊行会、2004年 のちハヤカワSF文庫
- スタニスワフ・レム『高い城・文学エッセイ』巽孝之,芝田文乃,加藤有子, 井上暁子共訳、国書刊行会、2004年
- スタニスワフ・レム『天の声・枯草熱』吉上昭三、深見弾共訳、国書刊行会、2005年
- チェスワフ・ミウォシュ『ポーランド文学史』関口時正,森安達也,西成彦,長谷見一雄共訳、未知谷、2006年
- ウラジーミル・ナボコフ『賜物』河出書房新社〈世界文学全集〉、2010年
- アントン・チェーホフ『新訳 チェーホフ短篇集』集英社、2010年
- 『ナボコフ全短篇』秋草俊一郎,諫早勇一, 貝澤哉,加藤光也,杉本一直,毛利公美, 若島正共訳 作品社 2011年
- 『チェスワフ・ミウォシュ詩集』関口時正共編 成文社 2011
- アントン・チェーホフ『かもめ』集英社文庫、2012年
- アンドレイ・シニャフスキー『ソヴィエト文明の基礎』平松潤奈,中野幸男, 河尾基, 奈倉有里共訳 みすず書房 2013
出演
- 英語で読む村上春樹(2013年度講師)
脚注
- ^ ダムロッシュの『世界文学とは何か?』(国書刊行会2011年)の解説に「世界文学三カ条」を提唱している。大まかに次のとおり。
1条「旅には意味がある」
外国の文学を読むということは、作品が旅をしているということ。旅というのは、行く前と行った後では自分が少しだけ変わる体験をする。外国の文学を読むということは旅をするということ。
2条「多様性はいいことだ」
世界文学には、差異と多様性が満ちている。自分の考えと違う考え方が書かれたものが読める。そのことに触れることのよさがある。たとえそれが原文でなくても、翻訳を通してでもどんどん読めばいい。
3条「翻訳は豊かにする」
世界文学全集というのは、一種のカノン=聖典、つまり、ある時代に読むべき価値のあると認められた作品群であある。翻訳が二次的な偽物という限界もあるけれど、ある国の領域を越えて外に出ていき、そこで新しい読者と出会う機会を与えてくれる力がある。