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雨に唄えば

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雨に唄えば』(あめにうたえば、原題:Singin' in the Rain)は、アメリカポピュラーソングおよびそれを主題歌にした1952年公開のミュージカル映画

歌曲

アーサー・フリード作詞、ナシオ・ハーブ・ブラウン英語版作曲によるポピュラーソング。1929年公開のMGM作品『ハリウッド・レヴィユー』で用いられ、「ウクレレ・アイク」ことクリフ・エドワーズが歌って以来、スタンダード・ナンバーとなった。

また『ザッツ・エンターテインメント』の冒頭でこの曲が紹介されるなど、作詞者フリードが後にMGMミュージカルの名プロデューサーとして名をはせたこともあり、同社のミュージカル作品を象徴する曲としても知られる。

映画

雨に唄えば
Singin' in the Rain
監督 ジーン・ケリー
スタンリー・ドーネン
脚本 アドルフ・グリーン
ベティ・カムデン
原作 アドルフ・グリーン
ベティ・カムデン
製作 アーサー・フリード
出演者 ジーン・ケリー
デビー・レイノルズ
ドナルド・オコナー
音楽 ナシオ・ハーブ・ブラウン英語版
撮影 ハロルド・ロッソン英語版
編集 アドリアン・フェイザン英語版
製作会社 MGM
配給 アメリカ合衆国の旗 MGM
日本の旗 大映
公開 アメリカ合衆国の旗 1952年4月11日
日本の旗 1953年4月1日
上映時間 103分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 2,500,000ドル[1]
興行収入 12,400,000ドル(北米)
17,500,000ドル(世界)[2]
配給収入 3,263,000ドル(北米)
2,367,000ドル(海外)[1]
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予告編

トップ・ハット』『バンド・ワゴン』『巴里のアメリカ人』などと並ぶミュージカル映画の傑作として知られる。

サイレント映画からトーキー映画に移る時代を描いたコメディあふれるバックステージ(舞台裏)・ミュージカルハリウッドを代表する名作のひとつであり、今なお、色あせることなく輝きを放っている。

特にジーン・ケリーが土砂降りの雨の中で、主題歌を歌いながらタップダンスを踊る場面は、映画史に残る名シーンとされる。

元々はアーサー・フリード(作詞)とナシオ・ハーブ・ブラウン(作曲)のコンビの過去のヒット曲を集めたミュージカルとして企画された。よって楽曲のほとんどはこの映画のために書かれたものではなく、特にタイトルナンバーはこの映画の前にも後にもたびたびMGMの映画で使われ、ジュディ・ガーランドなど多くのスター達が歌っている。ドナルド・オコナーの歌う「メイク・エム・ラフ」は新曲だが、コール・ポーターの「ビー・ア・クラウン」のパロディ曲である。

アメリカ映画協会(AFI)が発表したミュージカル映画ベストの第1位、アメリカ映画主題歌ベスト100の第3位、アメリカ映画ベスト100の第10位、情熱的な映画ベスト100の第16位に選出された。

ストーリー

サイレント映画全盛の時代、俳優ドン(ジーン・ケリー)と大女優リナ・ラモント(ジーン・ヘイゲン)はドル箱の映画スターであり、大スター同士のカップルともてはやされていた。しかし実際は、リナが一方的にドンに惚れているだけであった。そんな中、ドンは駆け出しの女優キャシー(デビー・レイノルズ)と恋仲になってしまう。

やがて長編映画として世界初のトーキー「ジャズ・シンガー」が大成功をおさめたことにより、ハリウッドにトーキーの波が押し寄せる。

そこで彼らの映画会社では、当時作りかけだったドン&リナのサイレント映画を無理矢理トーキーにすることに決定。しかしながら、トーキーのノウハウを知らなかったことに加え、一番の問題はリナが致命的な悪声の持ち主であったために映画の試写会は散散な結果に終わる。そんな映画を公開したら俳優人生が崩壊してしまうと危機を感じたドンとその親友コズモ(ドナルド・オコナー)、キャシーの三人は映画をミュージカルに作り替えることを思い立つ。あとはリナの声をどうするのかが問題だったが、コズモのアイデアでキャシーがセリフも歌も全て吹き替えることになる。こうして撮り直しは順調に進むが、吹替を知ったリナは、怒りと嫉妬から契約を盾にキャシーを自分の吹替専門担当にして表に出られないようにしてしまう。

映画の完成披露試写会が開かれ、ドンとリナの歌声は観客から喝采を受ける。すると調子に乗ったリナが自らの声でスピーチをしてしまう。声が違うことを怪しんだ観客から、リナが生で歌うように迫られると、ドンと映画会社社長はリナを罠にはめることを思いつく。まず、リナの背後でカーテンに隠れてキャシーが代わりに歌い、リナには歌っているフリをさせる。そしてキャシーの歌声で「雨に唄えば」が披露されると、ドンたちはカーテンを開き、キャシーが吹き替えていることを観客に見せてしまう。こうしてキャシーはスターの座を手に入れ、ドンとキャシーは結ばれる。

出演

役名 俳優 日本語吹替
NHK[3] フジテレビ PDDVD
ドン ジーン・ケリー 愛川欽也 井上孝雄 堀川りょう
キャシー デビー・レイノルズ 池田昌子 岡本茉莉 加納千秋
コズモ ドナルド・オコナー 八代駿 広川太一郎 大塚智則
リナ ジーン・ヘイゲン 桜京美 向井真理子 安藤麻吹
シンプソン社長 ミラード・ミッチェル 河村弘二 中村正 仲野裕
デクスター監督 ダグラス・フォーリー英語版 近石真介 勝田久 田坂浩樹
ドンのダンスパートナー シド・チャリシー ※発言無し
ゼルダ  リタ・モレノ 不明 中川まり子 小林美穂

デビー・レイノルズの吹替

キャシー役のデビー・レイノルズの歌のうち「Would You[4]と「You Are My Lucky Star[5]の2曲はベティ・ノイス英語版が吹き替えている。また、キャシーがリナのセリフ「Nothing can keep us apart, our love will last 'til the stars turn cold」を吹き替えるシーンでは、リナ役のジーン・ヘイゲン本人の普段の声が吹き替え後の声として使われている[4][5][6]

批評

  • 「ズタ袋のような衣装はいただけないが、音楽は素晴らしい。」(ロンドン・イブニング・スタンダード誌)
  • 「天国のように素晴らしい。ミュージカル映画史上最高の作品だね。ジーン・ケリーとスタンリー・ドーネンは監督として素晴らしい仕事をしているし、この映画のジーン・ケリーは、とにかく素敵だよ。ドナルド・オコナーのナンバー`Make Em Laugh`も奇跡的な素晴らしさだ。」(メル・ブルックス

研究

明治大学政治経済学部教授で文学者のマーク・ピーターセンは、自著『続 日本人の英語』の中で"You Were Meant for Me"という劇中歌の歌詞"You Were Meant for Me"について、概して「『君は僕のために生まれてきたんだ』『あなたは私と出会うために現れた』という直訳は日本の男性が真面目な顔をして言えるようなセリフではなさそうだ」「実際、いきなり『君は僕のために生まれてきたんだ』と言われたら、好きでなくなるかもしれない」と前置きした上で「"Were Meant for"の主語は運命、もっと厳密に言えば創造主、神である。神や運命を信じない人でも平気でその表現を使うということも面白い」と解説している。同時に日本語字幕の「ふたりは結ばれていた、小指を赤い糸で」は映画のセリフを日本語で意訳する際の限度に近いとしている[7]

その他

  • 作品中(オープニングタイトル、エンドロール、など)に著作権表記が無かったため、公開当時の米国の法律(方式主義)により権利放棄とみなされ、パブリックドメインとなった[8]。(このため、英語版ローカルにフェアユース扱いながら高解像度のスクリーンショット、英語版とウィキクオートにセリフの抜粋が収録されている)。
  • 視点を変えることが大切で、経営学者のジョーン・マルケスは「困難な時期をすばらしい経験に変えることが人生での大切な技術かもしれない。雨を嫌うか、雨の中で踊るか、私たちは選択することができる」という。
  • 百貨店などでは、外でが降り出したことを店内に知らせるため、BGMとして用いられている場合がある。

舞台

1983年ロンドンウエスト・エンドにてトミー・スティール主演により舞台化されて以降、世界各国にて上演されている。

日本での舞台化

脚注

  1. ^ a b The Eddie Mannix Ledger, Los Angeles: Margaret Herrick Library, Center for Motion Picture Study .
  2. ^ List movies by worldwide gross” (英語). WorldwideBoxoffice.com. 2009年6月26日閲覧。
  3. ^ アーカイブス放送履歴”. NHK. 2018年8月31日閲覧。
  4. ^ a b Kermode, Mark (2007年3月18日). “The 50 greatest film soundtracks: 11. Singin' In The Rain”. The Observer (London). https://www.theguardian.com/music/2007/mar/18/features.musicmonthly14 2015年8月4日閲覧。 
  5. ^ a b Reynolds, Debbie & Columbia, David Patrick (1989). Debbie: My Life. Pocket Books. p. 97. ISBN 978-0671687922 
  6. ^ Hess & Dabholkarm (2009), p.145
  7. ^ マーク・ピーターセン『続 日本人の英語』(岩波新書、1990年)ISBN 978-4004301394 p8-11
  8. ^ パブリックドメイン映画

関連項目

外部リンク