風景印
風景印(ふうけいいん)とは、郵便局・日本郵便支店に配備されている記念印(消印)の一種である。正式名称は、風景入通信日付印(ふうけいいりつうしんにっぷいん)。
概要
風景印(風景入通信日付印)は、郵便局・日本郵便支店に配備され、局名・支店名と年月日欄と共に、当該局・支店近辺の名所旧跡等にちなむ図柄が描かれている。規定により消印の大きさが直径36ミリ以内でなければならないが、形については円形の普通印と円形以外の変形印がある。
押印に際しては、鳶色と呼ばれる赤茶色のスタンプインクが使われる。
使用開始の広報は、郵政省時代は官報で行われていたが、現在は日本郵便のホームページ等で広報が行われている。一旦、使用が開始されると廃止の広報が行われるまで半永久的に使用されるため、使用開始日の風景印を収集している者が多い。
配備
全国約24,000の郵便局・日本郵便支店のうち、約1万局・支店に配備されている。
地域を代表する郵便局、著名観光地に位置する郵便局や日本郵便の支店を中心に配備が行われている一方、簡易郵便局は季節局などのごく一部の配備となっている。
また、地域によっても配備にばらつきが見られ、中部地方以東では一部の県を除き配備率が高く、西日本では京都府などで配備率が比較的高い一方、大阪府・九州地方各県などでは配備率は低い。
押印
風景印は、風景印が配備されている郵便局の郵便窓口または日本郵便支店のゆうゆう窓口で押印が行われる。
風景印の入手には、合計金額50円以上の切手を貼った台紙・封筒または切手額面50円の郵便はがきを用意の上で、自らが郵便窓口・ゆうゆう窓口に行く方法と郵便によって押印依頼をする「郵頼」という方法がある。また、押印には、風景印の収集を目的とし郵便物を差し出さないで押印してもらう「記念押印」と郵便物を差し出す際に押印してもらう「引受消印」の2種類がある。
郵頼
郵頼(ゆうらい)とは、押印を郵便で依頼し返送してもらう制度である。風景印のほか、小型印、通常の消印を郵頼することも可能である。
郵頼は次の3点を揃えて、押印を希望する郵便局郵便窓口または日本郵便支店に郵送する。郵送の場合、差出封筒の左下に「風景印押印依頼」と朱書きすることがのぞましい。
- 合計金額50円以上の切手を貼った台紙・封筒または切手額面50円の郵便はがき。記念切手・特殊切手への郵頼指定郵便局・支店における初日印押印の場合を除き、葉書・切手代として定額小為替・普通為替等を同封し郵頼することは禁止されているため、事前に葉書・切手を購入の上で郵送をしなければならない。
- 押印位置や日付を記載した押印依頼状
- 記念押印された葉書・台紙・封筒等を入れるため宛先記入済・切手貼付済の封筒。
なお、日本全国の郵便局・日本郵便支店のうち、宮内庁内郵便局、しらせ船内分室、昭和基地内分室は一般人の訪問が不可能のため郵頼で消印を入手しなければならない。
歴史
風景印は、1931年7月7日に逓信省告示で制度が創設され、同年7月10日に富士山郵便局(現・富士山頂郵便局)と富士山北郵便局で使用が開始された。その後、日本各地をはじめ当時の日本の統治下にあった関東州、樺太、朝鮮、台湾、南洋などでも使用開始となり、観光地を中心に1200局以上に配備された。また、形状の規定も緩く、さまざまな形状の風景印が作られた。
しかし、戦火が激しくなりゴム不足となったため、1940年11月15日限りで、戦意高揚に役立つ愛知県・熱田郵便局や島根県・大社郵便局などの神社にちなんだ風景印、江田島郵便局などの軍事施設にちなんだ風景印は摩滅するまで使用を認める一方、他の郵便局については使用停止となった。
戦後、1948年1月1日に東京中央郵便局はじめ24郵便局で使用開始となったが、規定が厳密化されたこともあり、変形印は影を潜めた。
以後1974年頃までは観光地を中心に配備されていたが、1975年以降観光資源が乏しい住宅地の郵便局でも当時の集配郵便局を中心に配備が行われ、1988年以降は変形印が続々と登場するようになった。
平成に入ると、年月日の「ぞろ目ブーム」(平成11年11月11日など)を当て込んで使用を始める局が多数出てきたことで、使用局が飛躍的に増加し活況をもたらしたが、2002年以降は新規使用開始局が減少傾向にある。
日本国以外の風景印
日本以外にも風景印は存在し、戦前に日本の統治下であった中華人民共和国、大韓民国、台湾のほか、スイスやカナダなど欧米圏にも存在する。
中華人民共和国では、1985年から「風景日戳」とよばれる風景印が使用されており、直径32mmの円形のものが黒色インクで押印される。 大韓民国では、「観光記念通信日付印」と呼ばれる風景印が使用されており、日本同様、円型以外の変形印もあり、黒色インクで押印される。 台湾でも風景印が使用されているが、通常の消印で抹消の上での使用のため日付が入っていない。また、日本と異なり、1郵便局・1支店に1デザインというわけではなく、1つの郵便局に複数のデザインのものが使用されているところがある。
欧米圏では、スイス・ドイツでは完備されており、とりわけスイスでは日本と異なり機械印の風景印が存在する。また、近年、カナダにおいても風景印の使用が開始された。
関連項目
参考文献
- 山本昂(2001年):新版・風景スタンプ集 -関東・甲信越-、日本郵趣出版
- 山本昂(2001年):新版・風景スタンプ集 -中国・四国・九州・沖縄-、日本郵趣出版
- 現行切手満月印の会監修(2002年):現行消印ハンドブック2002、鳴美、ISBN 4-931422-48-9
- 藤原和正(2002年):月から太陽への旅―郵便局を訪ねて25 年、3000局、群羊社、ISBN 4-906182-44-5
- 山本昂(2002年):新版・風景スタンプ集 -北海道・東北-、日本郵趣出版
- 山本昂(2002年):新版・風景スタンプ集 -東海・北陸・近畿-、日本郵趣出版
- 古沢保(2003年):風景印散歩 東京の街並み再発見、日本郵趣出版、ISBN 4-88963-629-3
- 佐滝剛弘(2007年):郵便局を訪ねて1万局 東へ西へ「郵ちゃん」が行く、光文社新書、ISBN 978-4-334-03406-1
- 武田聡編(2008年):全国郵便局名録2008、鳴美、ISBN 4-931422-94-0
- 武田聡編(2008年):風景印2008、鳴美、ISBN 4-931422-95-7