ニューキノロン
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ニューキノロン (New Quinolone) とは、合成抗菌薬の系列の一つである。DNAジャイレースを阻害することにより、殺菌的に作用する薬剤である。キノロン系をもとに人工的に合成・発展させたものであり、作用機序はキノロンと同一である。
経口投与が可能で比較的副作用が少ないということで頻用されている。しかし感染症学の知識を用いて診断を行えば、ほとんどの場合ニューキノロン薬なしで治療は可能である。結核菌に効果があるため、軽はずみに処方すると診断が遅れる。
種類
- ノルフロキサシン norfloxacin(NFLX)
- エノキサシン enoxacin(ENX)
- 塩酸シプロフロキサシン ciprofloxacin(CPFX)
- オフロキサシン ofloxacin(OFLX)
- 塩酸ロメフロキサシン lomefloxacin(LFLX)
- トスフロキサシントシル酸塩 tosufloxacin(TFLX)
- スパルフロキサシン sparfloxacin(SPFX)
- レボフロキサシン levofloxacin(LVFX)
- ガチフロキサシン gatifloxacin(GFLX)
- モキシフロキサシン moxifloxacin(MFLX)
- ガレノキサシン garenoxacin(GRNX)
- フレロキサシン fleroxacin(FLRX)
- シタフロキサシン sitafloxacin(STFX)
副作用
ニューキノロンに比較的特徴的な副作用を列記する。
- 血糖異常(特に低血糖)
- ガチフロキサシンでは起こりやすく、ガチフロキサシンは世界的に販売中止となった。
- 横紋筋融解症
- 筋タンパク質の一種であるミオグロビンの血中濃度上昇の結果、急性腎不全等の重篤な副作用に至る場合がある。
- 光線過敏症
- スパルフロキサシンでは起こりやすい。
- 関節毒性
- 動物実験(幼若犬)において関節異常が認められているため、小児投与は多くが禁忌とされている(例外:ノルフロキサシン、トスフロキサシン)。
- 薬物相互作用
- NSAIDsとの併用で痙攣がおこることがあると言われているが近年は論争中である。テオフィリンやワルファリンの血中濃度を上昇させる。また、制酸剤(Mg製剤)や(Al含有の)胃粘膜保護薬、鉄剤を併用するとニューキノロンの吸収が阻害されるので、ニューキノロンと併用する場合は服用する時間を2~3時間空ける。酸化マグネシウム(マグミット、マグラックス等)を用いる場合は、ニューキノロンを朝にまとめて服薬し、夕方に酸化Mgを用いるという方法もある。痛みを伴う場合、ロルカムやフルカムといったNSAIDSを用いれば、添付文書上は禁忌にはならない。
- 腱の異常
- 高齢者でアキレス腱断裂を起こすことがある。
使い分け
よく用いられる薬としてはオフロキサシン(OFLX、商品名タリビッド®)、シプロフロキサシン(CPFX、商品名シプロキサン®)、レボフロキサシン(LVFX、商品名クラビット®)があげられる。オフロキサシンやシプロフロキサシンは細菌が一回変異しただけで耐性化するがレボフロキサシンは2回以上の変異が必要であるので感受性試験の結果を解釈するのは注意が必要である。 しかし、臨床上問題になるほどの意義はない。CPFX耐性化≒ニューキノロン耐性化がほとんどである。
これらの薬は好気性グラム陰性菌には著効するが、それ以外の効果には差がある。レボフロキサシンやガチフロキサシンは肺炎球菌に効果的でシプロフロキサシンは黄色ブドウ球菌によく効くと言われている。前述のようにシプロフロキサシンは耐性化しやすいのでリファンピシンを併用することもあるが、一般に臨床使用での併用で耐性化率の有意差があるとの報告はない。
なおキノロン系薬剤は、濃度依存性の薬物なので、例えばクラビット®100mg 3錠を処方するときは、100mg1錠を三回飲むよりもを3錠を一回飲んだ方が効果は高い。クラビット®250mg/500mgが上市されたため、クラビット100mg錠は製造終了となる予定である。PK/PDパラメータとしては AUC/MIC または Peak/MIC(Cmax/MIC) を指標とする。
関連項目
参考文献
- 感染症レジデントマニュアル ISBN 4260106600
- 抗菌薬の考え方、使い方 中外医学社 ISBN 4498017587
- Dos&Don'ts! Dr.青木の感染症大原則 ISBN 490333127X
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第1巻)ISBN 4903331415
- Dr.岩田の感染症アップグレード(第2巻) ISBN 4903331423