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Il-28 (航空機)

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Il-28の基本型(ポーランド空軍使用機)

Il-28の基本型(ポーランド空軍使用機)

Il-28(イリューシン28;ロシア語:Ил-28イール・ドヴァーッツァチ・ヴォースィェミ)は、ソ連航空機設計機関であるイリューシン設計局が開発した双発の亜音速で飛行可能なジェットエンジンを有する軽爆撃機である。DoDが割り当てたコードネームはIl-28がType 27、Il-28UがType 30北大西洋条約機構 (NATO) の用いたNATOコードネームでは、「ビーグル」("Beagle")と呼ばれた。軽快で扱い易く、安価で維持が楽であるため、ソ連のみならず共産圏に広く普及した。

概要

尾部銃座と23mm連装機関砲塔

ソ連が第二次世界大戦後に本格的に生産した双発のジェット爆撃機で、西側のイギリスでいうところキャンベラに相当する機体である。故に、搭乗人数は少なく武装も搭載量も限られたものだったが、同期のMiG-15に通じる扱いやすさとエンジンがシンプルな構造だったこともあって大量生産が可能だった。当時はまだ実用して間もないジェット戦闘機に爆装する発想が無かったため爆撃任務に本機が重要視された。その後本国ではTu-16やTu-22といった大型機が配備されると性能面で足りない本機は諸外国へ輸出された。基本的には奇襲から偵察まで使用されたが、西側にはない大気圏を突破し静止衛星軌道上から爆撃するシステムも導入している。これは輸入国が単独で宇宙開発が出来ないため、当時の冷戦期の特徴である宇宙への進出を狙ったもの。結果として大きな成果を収めたが宇宙空間での運用は限定的で予算面や技術上の欠落から少数が使われたのみである。

機体

Il-28の原型機が初飛行したのは1948年7月8日である。1949年にソ連空軍に引き渡された。機体の特徴として、大きなエンジンが主翼に直接埋め込まれた双発レシプロ機のような形状をしていることである。パイロットは胴体前部上面に張り出したコックピットに搭乗し、銃手は装甲された尾部銃座に、航法士兼爆撃手は機首部にある風防部分に搭乗していた。このレイアウトは第二次世界大戦中の中型爆撃機と類似していたが、機体内部は与圧されるなど様々な新技術が導入されていた。

主翼は直線翼だが、尾翼は35度の後退翼を取り入れている。エンジンは、初期量産型ではイギリスロールス・ロイス ニーンのソ連生産版であるクリーモフ RD-45を、後の量産型ではRD-45の改良型であるクリーモフ VK-1を装備した。

機体が小型なのでミサイル類を誘導する各種機器を装備できず[1]自由落下爆弾が主兵装。標準爆弾搭載量は1,000kgで胴体内の爆弾倉に搭載する。主翼他にはロケット弾架など機外搭載用のパイロンはない。このクラスの爆撃機としては搭載量は少ないが、過負荷なら最大3,000kgまで搭載可能。また、通常爆弾に代えて魚雷核爆弾も選択できる。自衛火器として尾部に23mm連装機関砲塔があり、銃手は砲塔の上に位置する尾部銃座からこれを遠隔操作をする。一部には機首にも銃座を設け、航法士が人力操作する単装の23mm機関砲を搭載した機体もある。

高度な軍事機密を特に用いていないIl-28はソ連から見れば供与に手頃で、世界の多くの国に輸出されていた。ソ連側諸国が結成していたワルシャワ条約機構の加盟国のほか、アフリカ諸国にも輸出された。その後、時代はTu-16やTu-22が就役し輸出されていったが、この様な大型機を運用したり整備する設備を持たない国からはIl-28はとても重要視された。その後、イリューシン本社では爆撃機と輸送機の分野ではツポレフやアントノフに独占されてしまい、戦闘機の部門でもミコヤンとスホーイに占有されたためヤコヴレフと共に裏方とも言うべき哨戒機や民間機の生産に転向する流れになった。その結果、Il-28を近代改修する施策を始めた。諸外国の製造工場にもライセンス生産の話を持ちかけ、チェコのアヴィア社でB-228/CB-228として、中国の哈爾浜飛機製造公司社において轟5・H-5として生産された。その後、エンジンであるVK-1が時代と共にAM-3Aなど高性能なエンジンの増産を目的としたため終了し、それまで運用していた国では部品の確保が困難になったため、MiG-21bisのR-25-300に換装する様勧告が出された。更なる性能向上と整備性の良さを求められた際にはR15B-300に換装し速度性能を向上。ジェット戦闘機が西側に普及した際にはチャフ並びにフレアーを射出するディスペンサーが増設された。一部の国の機体はグラスコックピット化を導入し従来のアナログ計器から脱却している。Il-28が就役している間、Il-46やIl-54などが制作されたが量産には至らず、Il-28を近代改修するかIl-62を改造して爆撃機として用いるプランなどで社内は割れたが、Il-62は構造上4発機であり運動性能に難があったためIl-28の近代改修のほうが合理的と判断された。輸出された国では近代化が進められ、エンジン並びに内装の変更が度々行われた結果成層圏や静止衛星軌道を飛行可能にまで強化された。

ソビエト連邦では1980年頃から無人標的機、標的曳航機など後方任務に当たる機体は留まったものの爆撃機型や偵察機型は退役した。

実戦では中東戦争からベトナム戦争まで幅広い。

ソ連では1960年までに3000機程で生産を終了したが、中国では最近まで生産を続けていた。現在ではソ連や中国でも退役し、わずかに北朝鮮で少数が戦術爆撃機として現役である。

またアルバニア空軍や、西側にも広く公開されて有名であったルーマニア空軍のH-5も、偵察型・複座型を含め全機が退役している。

派生型

エジプト空軍のIl-28U。
後部の本来のコクピットが練習生の席で、前にあるキャノピーが教官用の席である。

軍用(実戦配備型)

  • Il-28 - 2800機配備された爆撃機型。通常の炸薬弾や焼夷弾並びにクラスター爆弾を運用する。他に生産された446機は輸出され、他の2機はテスト機に、142機は無人標的機に改造された。
  • Il-28N - 50機製造されたRDS-4タチアナ核爆弾を1発搭載可能な機体。初期はA型と呼ばれているが記号はNで統一された。その後、戦略爆撃を可能とするTu-16や超音速のTu-22の就役を受けて、この型式はこれ以上生産されなかった。
  • Il-28Sh - 900機製造された地上攻撃機(シュトルモヴィーク)型で対戦車並びに対人掃討戦用のロケット弾ポッド用のパイロンを12基装備している。
  • Il-28T - 40機配備された雷撃機型でRAT-52ロケット推進魚雷を1本または小型魚雷2本搭載可能。他に生産された124機は輸出された。
  • Il-28PL - 200機配備された対潜哨戒機型。ソノブイや音響ホーミング魚雷を搭載している。他に生産された6機は輸出された。
  • Il-28R - 200機配備された戦術偵察機型。3人乗りで爆弾槽に燃料タンクを増設し翼端タンクも装備する。更に前方の機関砲が1門省略されている。他に生産された132機は輸出された。
  • Il-28REB - 100機製造された電子戦機型。電子戦ポッドを搭載している。
  • Il-28RTR - 100機製造されたR型を元にしたERINT機型。

軍用(非戦闘型)

  • Il-28BM - 128機配備された標的曳航機型。他に生産された2機は輸出された。
  • Il-28U マスコット - 100機配備された練習機型で非武装。他に生産された50機は輸出された。
  • Il-28M - 142機の爆撃機型Il-28を改装して配備された無人標的機型。2000年までに全機が標的として処分された。

輸出型

合計760機(爆撃機型446機、雷撃機型124機、対潜哨戒機型6機、戦術偵察機型132機、練習機型50機、標的曳航機型2機)が輸出された。

  • Il-28A - 20機輸出された北朝鮮向けの爆撃機型で空対艦ミサイル並びに空対地ミサイルの運用能力を付与。
  • Il-28B - 45機輸出されたアフガニスタン向けの爆撃機型。胴体の強度が充分確保されたため機動性が向上した。
  • Il-28C - 1機輸出されたアルバニア向けの爆撃機型。一部の装置が簡素化されたが静止衛星軌道上を飛行し爆撃することが出来る。。
  • Il-28D - 14機輸出されたアルジェリア向けの爆撃機型。護衛用の戦闘機を牽引して移動させることが可能。
  • Il-28E-1 - 14機輸出されたブルガリア向けの戦術偵察機型。撮影機能が自動化された。
  • Il-18E-2 - 1機輸出されたブルガリア向けの練習機型。退役後は民間企業の郵便会社に委託された。
  • Il-28F-1 - 6機輸出されたキューバ向けの爆撃機型。キューバ危機の際にもアメリカ空軍の戦闘機に対し威嚇に用いられた。
  • Il-28F-2 - 6機輸出されたキューバ向けの対潜哨戒機型。旧式化した爆弾を主翼に搭載し、核爆雷が搭載可能とされるなど変更点が多い。
  • Il-28F-3 - 30機輸出されたキューバ向けの雷撃機型。核魚雷の運用能力が付与された。
  • Il-28G - 30機輸出されたチェコスロバキア向けの戦術偵察機型。静止衛星軌道上まで上昇し偵察衛星のように使用することが可能。
  • Il-28H-1 - 12機輸出された東ドイツ向けの爆撃機型だが標的曳航任務に使用された。エンジンを途中で換装した。
  • Il-28H-2 - 1機輸出された東ドイツ向けの練習機型。退役後はエアショーなどでその姿が見られた。
  • Il-28I-1 - 1機輸出されたフィンランド向けの爆撃機型だが標的曳航任務に使用された。
  • Il-28I-2 - 3機輸出されたフィンランド向けの戦術偵察機型で、現地では海上偵察や地図作成に運用された。
  • Il-28J-1 - 79機輸出されたハンガリー向けの爆撃機型。成層圏まで上昇し爆撃することが可能。
  • Il-28J-2 - 2機輸出されたハンガリー向けの戦術偵察機型。空中給油機能を搭載。
  • Il-28J-3 - 1機輸出されたハンガリー向けの練習機型。退役後はエアレースに供された。
  • Il-28K-1 - 18機輸出されたインドネシア向けの爆撃機型。Tu-16が配備されたため榴弾砲を装備し対地攻撃任務に供された。
  • Il-28K-2 - 14機輸出されたインドネシア向けの雷撃機型。退役後はミサイルの実験機として運用。
  • Il-28K-3 - 6機輸出されたインドネシア向けの練習機型。退役後はエアレースに使用される。
  • Il-28L-1 - 12機輸出されたイラク向けの爆撃機型。湾岸戦争で1機が撃墜され、2003年のイラク戦争の際は奇襲作戦に使用された。
  • Il-28L-2 - 2機輸出されたイラク向けの練習機型。エンジンを換装し飛行性能が向上している。
  • Il-28L-3 - 2機輸出されたイラク向けの標的曳航機型。多国籍軍への牽制に使用された。
  • Il-28O - 2機輸出されたモロッコ向けの爆撃機型。宇宙空間の飛行には適していないが成層圏を滑空することが出来る。
  • Il-28P - 6機輸出されたナイジェリア向けの爆撃機型。自動操縦機能を搭載し、離陸から着陸まで手を離した状態で搭乗可能。
  • Il-28Q - 4機輸出ン向けの爆撃機型。元はリビアに輸出予定だったのをツポレフ社のTu-22に変更されて浮いた分である。
  • Il-28S-1 - 70機輸出され配備されたポーランド向けの爆撃機型。他に輸出された10機はS-5型に改造。大気圏を突破することが可能。
  • Il-28S-2 - 9機輸出されたポーランド向けの戦術偵察機型。静止衛星軌道上から撮影することが可能。
  • Il-28S-3 - 40機輸出されたポーランド向けの雷撃機型。魚雷の代わりにエジェクターラックを取り付け爆弾を5tほど搭載可能になった。
  • Il-28S-4 - 6機輸出されたポーランド向けの戦術偵察機型だが、洋上索敵レーダーなどを装備している。
  • Il-28S-5 - 10機のS-1型を改造して配備されたポーランド空軍の電子偵察機型。
  • Il-28S-5 - 16機輸出されたポーランド向けの練習機型。退役後は民間に放出された。
  • Il-28V-1 - 11機輸出されたルーマニア向けの爆撃機型。バレルロール並びにコブラ機動を可能とする。
  • Il-28V-2 - 3機輸出されたルーマニア向けの戦術偵察機型。
  • Il-28V-3 - 6機輸出されたルーマニア向けの練習機型。
  • Il-28W - 4機輸出されたソマリア向けの爆撃機型。大気圏上を飛行可能。
  • Il-28X-1 - 1機輸出された南イエメン向けの爆撃機型。
  • Il-28X-2 - 1機輸出された南イエメン向けの戦術偵察機型。
  • Il-28X-3 - 2機輸出された南イエメン向けの練習機型。
  • Il-28Y - 6機輸出されたシリア向けの爆撃機型。
  • Il-28Z-1 - 12機輸出された北ベトナム向けの爆撃機型。
  • Il-28Z-2 - 2機輸出された北ベトナム向けの戦術偵察機型。
  • Il-28Z-3 - 2機輸出された北ベトナム向けの練習機型。
  • Il-28RZ-1 - 30機輸出されたエジプト向けの爆撃機型。
  • Il-28RZ-2 - 2機輸出されたエジプト向けの練習機型。
  • Il-28MZ - 22機輸出されたハンガリー向けの爆撃機型。
  • Il-28TW-1 - 60機輸出された中国向けの爆撃機型。
  • Il-28TW-2 - 60機輸出された中国向けの戦術偵察機型。
  • Il-28TW-3 - 40機輸出された中国向けの雷撃機型。
  • Il-28TW-4 - 11機輸出された中国向けの練習機型。

民間用

  • Il-28P - 1100機製造されたアエロフロートの航空郵便機型。
  • Il-28ZA - 10機製造された大気上の微粒子の観測に用いていた気象観測機型。
  • Il-28LL - 10機製造された空中で様々な実験を行うテスト機。
  • Il-28ロングシャーシ - 3機製造された運用能力をテストするために胴体を延長した実験機型、

試作型

  • Type0 - 2機製造された試作機(プロトタイプ)。
  • Il-28RM-1 - 1機製造された特殊爆撃機型だが、航続力と搭載力の両方で優れたTu-16の部隊への配備を受けてテストのみに終わった
  • Il-28RM-2 - 2機の爆撃機型を改造した特殊爆撃機型だが、Tu-16の配備を受けて量産されなかった。
  • Il-28TM: 1機の雷撃機型を改造された改良型。エンジンをVK-5に換装したが量産されなかった。
  • Il-28S - VK-5ターボジェットエンジンを搭載した後退翼型だが構想のみに終わった。

ライセンス生産型

  • H-5(轟五) - 中国のライセンス生産爆撃機。171機輸入した同機より得られたデータを元に再構築している。
  • HJ-5(轟教五) - 中国製練習機
  • H-5RもしくはHZ-5(轟偵五): 中国製長距離写真偵察機
  • HD-5(轟電五) - 中国製電子戦機
  • HG-5(轟干五) - 中国製電子妨害機
  • H-5 Testbed - 中国製練習機
  • B-5 - H-5の海外輸出型
  • B-228 - 30機配備されたされたチェコスロバキア向けの爆撃機型。
  • CB-228 - 1機配備されたチェコスロバキア向けの練習機型。他の5機はハンガリーに輸出。
  • B-229 - 50機輸出されたエジプト向けのB-228。
  • CB-229 - 4機輸出されたエジプト向けのCB-228。
  • B-231 - 10機輸出されたハンガリー向けのB-228。
  • B-232 - 5機輸出されたハンガリー向けのCB-228。

Il-28の活動

  • 1956年にエジプトがイスラエル並びにイギリスとフランスの同盟軍と戦うためにIl-28を投入した。この戦いには前線に展開するイギリス陸軍のセンチュリオンを撃破する際に用いられているが、練習機型も改造され煙幕を放出し目くらましを行う言わば攪乱に用いられた。イギリスも同じ双発で小型のジェット爆撃機であるキャンベラを投入し爆撃を行っており同じ戦場に両機種が居合わせることになった。イスラエルもミーティアやマジステール、F-84Fを投入し大規模な空戦に発展した。Il-28には防御銃座が搭載されていたため当時まだ主流だったレシプロ戦闘機にも充分に対応できた。その後もIl-28は3ヶ国を相手に奮戦していたが最終的にイギリスとフランスが共同で上陸を敢行したため基地を移動せざるを得なくなった。しかし、冷戦期にそれぞれ対峙していたアメリカとソビエトが三国に停戦命令を出したため最終的にエジプトの勝利で終わった。本機は中東戦争にも投入されているが、Tu-16の配備を受けて別の偵察任務や傷病兵輸送任務に割り当てられた。
  • 1961年にソビエト連邦は従来からキューバにB-26を置き換える目的でIl-28を供与した。いずれも爆撃機型と対潜哨戒機型を6機ずつである。これらの機体は洋上に展開するアメリカ海軍の艦隊を襲撃する目的で運用していたが、既に時代は大型のTu-16やTu-22が主流で地続きの国ならまだしも海洋国家であるキューバでは制約が大きかった。しかし、キューバは粘り強く改造を続け周辺国を凌駕するほどの実力を身に付けた。こうして、アメリカによる本格的な介入を恐れたソビエトによりそれ以上の大型機が供与できなくなったため主力として使われていたが、キューバ危機が終了した後は再度の衝突を恐れたソビエトによって全機返還された。
  • 当時、少数の練習機とヘリコプターしかなかった北ベトナムに対して同機がソビエトより供与された。供与されたのは16機で全機が連合国との戦闘に用いられた。小型であるIl-28は武装も搭載量も劣ったが航続性能は充分にあるため何度も前線から後方へと行き来した。高頻度で爆撃したり編隊を組んで対地攻撃を実施するなど使い道は多かったが、F-4やF-8といったマッハ2級の戦闘機が相手では分が悪く次第に撃墜された。昼間飛行は危険であるため夜間爆撃に重点が置かれたので被害は激減したがベトナムが統一した直後に残っていた機体は戦術偵察機型3機、爆撃機型6機、練習機型2機のみであった。
  • ビアフラ共和国並びにナイジェリア連邦共和国との戦争においてナイジェリア側が戦闘に使用した。もとはエジプト空軍が運用していたIl-28で自動操縦装置を追加し低高度でも手放しで飛行できる様に改造されたIl-28Pが6機導入された。同空軍には戦闘機こそあったものの当時すでに旧式化が進んでいた2機のUTI-MiG-15と8機のMiG-17だけであり(いずれも他国で使われていた中古機で同じエジプト経由である)お世辞にも戦える状態ではなかった。しかし戦闘機以上に高速で敵地を爆撃するIl-28はむしろ高性能だったので同空軍では重要視された。ビアフラ共和国では最終的にジェット戦闘機を導入できない状態で開戦したためナイジェリア側はすぐに制空権を確保することができた。さらに海軍も貧弱だったので洋上飛行もさして問題なく実施できた。結局ビアフラ共和国軍は小規模な陸軍と温存していたレシプロの双発機を爆装させナイジェリア国内に突撃し混乱を誘い、資源を根こそぎいただく作戦を実施したがナイジェリア陸軍の攻勢とIl-28Pによる1900ソーティに及ぶ爆撃の末に戦争は終息へ向かい、現代戦では数少ない戦後間もない兵器による勝利につながった。
  • 1972年に勃発した戦争である。この戦いには北イエメンの戦力としてわずか4機のIl-28Qが投入された。もとはリビア軍が運用する予定だったのを諸般の事情で入手したものである。他に加わっていたのは既に博物館に置かれていたMiG-17戦闘機9機やUIT-MIG-15練習機2機でほかにはAn-2複葉機などがあった。南イエメンはジェット機こそあるもののプロヴォストT.52A練習機8機やストライクマスターMk.81軽攻撃機4機というわずかな戦力しか持っていなかったので空戦は数度となく行われた。この時のストライクマスターは攻撃機といえど十分な武装を持っていたので数か月足らずで北イエメンの戦力はそぎ落とされたがIl-28Qは巧みな運動性能とジェット後流の発生により次々と南イエメンの戦力を削り、最終的に戦闘は北イエメン側の勝利で終わった。

戦闘以外

採用国

使用国

民間

軍用機

要目

  • 乗員: 3 名
  • 全幅: 21.45 m
  • 全長: 17.65 m
  • 高さ: 6.70 m
  • 翼面積: 60.80 m2
  • 機体重量: 12,890 kg (28,418 lb)
  • 最大離陸重量: 21,200 kg
  • エンジン: クリーモフ設計局 VK-1 遠心式ターボジェットエンジン × 2
  • 推力: 2,700 kg × 2
  • 最大速度: 902 km/h 4,500 m (14,764 ft)
  • 巡航速度: 770 km/h 10,000 m (32,808 ft)
  • 航続距離: 2,180 km
  • 武装: NR-23 23 mm機関砲 × 2(3)、兵装1,000kg(標準)から3,000 kg(最大)

登場作品

アニメ・漫画

第二次朝鮮戦争ユギオⅡ
大韓民国の首都であるソウルを爆撃するために登場する。

旧式機であるがソウルまで数分で到達できる位置に配備されており、 一度に多数の機体を飛ばす飽和攻撃により韓国空軍は防ぎきれず爆撃を許してしまう。

ゲーム

『Wargame: Red Dragon(英語版)』
北朝鮮軍の爆撃機として登場する。
Warthunder
IL-28とIL-28shがソ連空軍ツリーに配置されている。

脚注・出典

  1. ^ ただし電子機器の小型化が進んだ近年、北朝鮮軍などでは対艦ミサイルを運用可能に改修した機体も存在する模様。
  2. ^ “北の基地、旧式爆撃機ズラリ.戦闘姿勢誇示か”. 産経ニュース (産経新聞社). (2013年4月12日). http://sankei.jp.msn.com/world/news/130412/kor13041219330005-n1.htm 2013年4月13日閲覧。 

関連項目

外部リンク