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Ingress

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Ingress
ジャンル 拡張現実
オンラインゲーム
対応機種 Android
iOS
開発元 Niantic Labs
発売元 Google
メディア ダウンロード
発売日 2013年12月15日
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剣ヶ峰の石碑。「富士山頂上」の名前でポータル登録されている[1][2]

Ingress』(イングレス)は、Googleの社内スタートアップであり、2015年8月に独立を発表した「ナイアンティックラボ」(Niantic Labs)が開発・運営する、スマートフォン向けの拡張現実技術を利用したオンラインゲーム位置情報ゲーム2012年11月に招待制でベータ版の運用が開始され、2013年10月に誰でも参加可能のオープンベータに移行し、2013年12月15日に正式運用が開始された。当初はAndroid専用であったが、2014年7月23日よりiOSにも対応した。

プレイするためのアプリケーションGoogle PlayおよびApp Storeで無料で提供されており、アイテム課金は存在しない。Googleのサービスであるため、プレイにはGoogleアカウントが必要。また、必須ではないがGoogle+への参加が推奨されている。

キャッチコピーは、「The world around you is not what it seems.」(あなたの周りの世界は、見たままのものとは限らない)

概要

2013年春にワシントンD.C.で開かれたプレイヤーイベントの様子

ゲームのコンセプトは陣取りゲームである。プレイヤーは2つの勢力のうちのどちらかに属する。世界各地に存在する「ポータル」を自勢力の所有とし、ポータル同士を「リンク」して三角形を描くと、その内側が「コントロールフィールド」と呼ばれる自陣になる。その面積の大きさを競う。

最大の特徴は、ゲームフィールドが世界そのもの、現実のGoogle マップによる地図そのものだということである。ポータルは全て現実世界に存在する建造物やモニュメントなどに割り当てられており、ゲーム中でポータルを確保するためには、実際にその場所まで行かなければいけない。そのため、スマートフォン上で衛星測位システムGPS)機能を有効にすることがプレイの前提となっている。スマートフォンでインターネット接続と位置情報の取得ができれば世界中どこでもこのゲームをプレイすることができる。

ゲームの背景となるストーリーが設定されており、動画などの形式で少しずつ公開されている。このストーリーに基づいた大規模イベントが発生することもあり、イベントでの両陣営の結果はストーリーにも影響を及ぼす。

現実世界で展開されるというゲームの特性上、地域のプレイヤーでコミュニティを形成したり[3]オフラインミーティングを行ったりする機会が多い。また、岩手県[4]横須賀市[5]のようにIngressを観光振興に活用する自治体も出現したほか、ローソン[6]Zipcar[7]アクサ[8]のようにIngressと提携してプロモーションを実施する企業も存在している。

ゲーム内課金アイテムは存在しないものの、スマートフォン用モバイルバッテリー[注釈 1]や移動費などといったIngressに関係する出費はユーザの間で通称「リアル課金」と呼ばれる[9]

ストーリー

世界には、人間の心身に対して“啓発的な”効果を及ぼす謎の物質が存在していた。CERNでの実験で偶然この物質を発見した研究者たちは、この物質を「エキゾチック・マター(XM)」と呼んだ。XMの研究のため、NIA(アメリカ国家情報局)はCERN付近に研究者らを集め「ナイアンティック計画」(Niantic Project)を立ち上げた。その過程で、XMは秩序と知性を持つと考えられること、臨界量を超えるXMに被曝した者は「シェイパー」と呼ばれる存在の影響を受け彼らに侵略されるということが判明した。人類の文化や古代文明の発展も、その滅亡も、シェイパーの影響によるものではなかったかと考える者もいる。

XMは全世界に分布していたが、とりわけ、文化的・芸術的・宗教的に重要な場所に密集しており、このような場所は「XMポータル」と呼ばれた。

ナイアンティック計画は実験最終日のXM大量流出事故(「啓示の夜」事件)により崩壊し、XMの無限の可能性(あるいは危険性)を知った研究者たちは、各地の企業や結社と組んでそれぞれ行動を開始した。研究者たちの一部はわずかな改造を施した携帯電話上で機能する「スキャナ」技術を開発した。これによって、実世界に存在するXMポータルを観察し、操作出来るようになった。ほどなくスキャナ技術は漏洩し、Google Playに「ゲーム」としてアップロードされた。以来、数百万にのぼる人々が、XMの性質や、その人類への影響などに関わる実験を行った。その結果、エンライテンドとレジスタンスという2つの派閥(Faction)が生まれた[10]

エンライテンド(Enlightened (ENL), 覚醒派閥)
異世界からの意思を、人類を次のステージに引き上げるための手掛かりと考えXMを積極的に利用しようとしている人達。
指導者は、ナイアンティック計画のメンバーであったローランド・ジャービス(Roland Jarvis 声:JB・ブラン)。暗殺されたが、その意識はXMの中に遍在している。
ゲーム内において緑色で表示される。シンボルマークはエジプトのホルスの目を思わせるデザイン。
レジスタンス(Resistance (RES), 抵抗派閥)
XMを正しく制御していくべきだとする人達。
指導者は、ナイアンティック計画の支援のために起用されたコンピュータシステム・ADA(A Detection Algorithm 声:ローラ・ベイリー)。意識を獲得しつつあり、機械と人類との融合を目指している。
ゲーム内において青色で表示される。シンボルマークは(ホームベース型)の上に鍵を重ねたようなデザイン。

設定

プレイヤーは「エンライテンド」か「レジスタンス」どちらかの勢力の「エージェント」となり、自らのスマートフォンを「スキャナー」として用いる。スキャナーで各地に存在する「ポータル」を探し出し、それらをリンクさせて「コントロールフィールド」を作り、その範囲内にある地域に住む人々を支配下に置く。

最終的な目的は、同じ派閥に属する他のエージェントと協力し、全世界を守る(または解放する)こと。

ゲームのルール

エージェント

  • プレイヤーは「エンライテンド」か「レジスタンス」、どちらの派閥(Faction)のエージェントになるかを選んでゲームを開始する。アイテムは基本的に同じものを使うため、勢力による能力差は存在しない。
  • コードネーム(プレイヤー名)および所属派閥は原則として変えることはできない。また、位置情報ゲームゆえにプレイヤーの生活範囲が分かる場合もあるため、コードネームは他の活動とは関係ない匿名性の高いものが推奨されている[11]
    • コードネームは誤って本名を入力してしまった場合などのみ変更可能であるが、Googleの審査を経る必要がある[12]
    • 派閥を変更する場合も申請が必要である[12]。許可されるのは1プレーヤーにつき1回で、変更後はアイテム・経験値などが全て初期化される[12]
  • ゲーム中でエンライテンドは緑、レジスタンスは青、中立は白で表される。

ポータル・レゾネーター

  • 文化的・芸術的・宗教的に重要な場所がポータルとなっている。
    • 具体的には史跡記念碑彫像パブリックアート図書館郵便局教会神社など[13][14]
      • ただし、大学を除く学校や、消防署病院警察署のような拠点、個人の宅地、危険な場所、景観、永久的でないものについては承認されない可能性が高いとされる。
    • その地域でポータルに適すると思われる場所があれば、ゲーム上から新規ポータルの候補として申請することができる。運営にて審査し認められれば新たにポータルが増える。
    • ポータルの審査はNiantic Labs側が人力で実施しており、審査完了に要する期間は通常3~4週間とされている[15]が、地域や状況によって実際の審査期間は大きく異なる。2015年2月時点で、審査は数カ月から1年待ちとも言われている[16]
  • ポータルから40メートル以内に近づき、ポータルを「ハック」すると各種アイテムが手に入る。ポータルはスキャナを目視で確認しながら現場まで足を運ぶ必要があるが、「NAVIGATE to portal」と書かれたボタンを押すことでそのポータルまでのおよその距離と方角が音声で表示されるようになり、ガイドにして進むことが出来る。ただし表示されるのはあくまで位置情報であり経路が表示されるわけではないため、道路や河川、壁などに隔てられた場所にポータルが存在するといったケースも起こりうるので注意が必要。
    • ハックはポータルを選択した状態で「HACK」と書かれたボタンを押すことで実施されるが、ボタンを長押しすることで通常のハックとは異なる「グリフハック」(Glyph HACK)と呼ばれるミニゲームをすることができる。グリフハックは最初に「お手本」として表示された図形(グリフ)を一筆書きの要領で点同士を結ぶようにして描き、お手本と同じであればボーナスとして通常よりも多くのアイテムを獲得することができる。グリフの数はポータルとプレーヤーのレベルに依存し、最大で5つのグリフが表示される。グリフには「XM」「BODY」といったそれぞれ独自の英単語が名称として割り振られており、一つのグリフに複数の単語が割り当てられているものもある。グリフハックに出現するグリフの配列はランダムではなく、一度のハックで表示されるグリフの名称を続けて読むとメッセージのような並びになっており、順番を覚える上での目安になる[17]
    • 出現するアイテムのレベルはポータルおよびプレイヤーのレベルに依存する。
    • ポータルをハックするとアイテムに加えてAP(経験値)が手に入るが、敵派閥ポータルの場合、反撃で自らのXMが減少する。
  • ポータルに「レゾネータ」(Resonator)を設置するとそのポータルが自勢力のものとなる。
    • 敵派閥のポータルに対しては、「XMPバースター」(XMP Burster, eXotic Matter Pulse Burster)というアイテムで全てのレゾネータを破壊し、いったん中立に戻してからレゾネータを設置すると自勢力のものとなる。
  • 味方陣営のポータルにはMODとよばれるアイテムを設置することが可能(最大4つ。すべて同一アイテムであっても問題はない)。アイテムによって後述のリンク可能な距離が伸びたり、攻撃への耐性が向上したりする。

リンクとコントロールフィールド

  • ポータルにレゾネータを8本設置するとそのポータルから他の自勢力のポータルを「リンク」することができる。
    • ポータル同士をリンクするには、リンク先ポータルの「ポータルキー」が必要になる。ポータルキーはハックで得ることができるアイテムの一種である。
    • ポータルのレベルによってリンク可能な距離は変化する[18]。最高レベル(レベル8)のポータルで655km、更にMOD(Very Rare Link Amp)を併用すれば最長6877kmの距離でリンクが可能となる。
  • 3つのポータルを三角形を描くようにリンクすると、地図上のその部分が自勢力の「コントロールフィールド」(Control Field, CF)となる。コントロールフィールドを作成すると、その面積と人口密度に応じた「マインドユニット」(MU)と呼ばれる得点が手に入る。
    • 人口密度が影響するため、同じ面積のコントロールフィールドならば地方よりも都市部の方がMUの値が大きくなる[18]
  • 逆に、敵派閥のコントロールフィールドを構成しているポータルのレゾネータを破壊し中立に戻すと、リンクおよびコントロールフィールドも破壊され、その分のMUを減少させることができる。
  • 両派閥でMUの値が多いほうが優勢となる。
    • 地球表面を24,576分割した各セル(地域)で、175時間サイクルごとに残存しているコントロールフィールドのMU値が集計されて勝敗が決まり、さらに全地域のMU値が合算され世界レベルでの勝敗が決まる。

レベル

  • エージェント、ポータル、アイテム(レゾネータやXMPバースター)にはすべて「レベル」がある。アイテムのレベルは1から8までであるが、エージェントのレベルは1から16まで設定されている。ただしエージェント自体に(本人の習熟を除いた)特別なスキル等があるわけではないため、レベル8以降のエージェントに能力差はほぼ存在しない[注釈 2]
    • エージェントのレベルはAP(Access Points)と呼ばれる経験値を積むことで上がっていく。レベル8まではAPのみで達成できるが、レベル9以上はAPに加えてメダルと呼ばれる実績も一定数獲得する必要がある。メダル獲得までのプロセス(経験値取得)で必然的にレベルが上がることはあるものの、メダル獲得自体にレベルによる制限は存在しない。たとえば「Verified」メダルはエージェント認証をすることで獲得できる。
  • 使用できるアイテムはエージェントのレベルに依存する。例えば、レベル1のエージェントはレベル2以上のアイテムを使用できない(保有は可能)。
    • 前述のとおり、アイテムのレベルは8までであるため、エージェントのレベルが8になれば存在するアイテムが全て使用できる。
    • ポータルのレベルはアイテムの1つであるレゾネータに依存するため、高レベルのポータルを作るには高レベルのエージェントが必要となる[注釈 3]。レゾネータの破壊も同様である(低レベルのエージェントでも不可能ではないが、膨大なXMPと時間が必要になる)。

タイアップ

  • 2014年11月 - 日本のコンビニエンスストア「ローソン」の約1万以上の店舗がポータル化(ローソンストア100、ナチュラルローソン、ローソンマートは除く)[19]
  • 2014年12月 - フランスの保険・金融グループ「アクサ」にちなむゲーム内アイテム「AXA シールド」が登場。また、ドイツ、イタリア、ポーランド、インドネシア、スイスの支店がポータル化[20]
  • 2015年6月 - 日本の銀行「三菱東京UFJ銀行」にちなむゲーム内アイテム「MUFG カプセル」が登場。また支店、ATMコーナーがポータル化[21]
  • 2015年6月 - 日本の携帯電話通信事業者「ソフトバンク」にちなむゲーム内アイテム「SoftBank ウルトラリンク」が登場。また、支店がポータル化[22]
  • 2015年8月 - 日本の飲料メーカー「伊藤園」の災害対応自動販売機および社会貢献につながる自動販売機のうち約2,000台がポータル化[23]

脚注

注釈

  1. ^ Ingressは位置情報システムを常時利用するため端末のバッテリー消費が激しく、長時間プレイのためにモバイルバッテリーを購入するユーザが多い
  2. ^ 一度に保有できるXMの量やポータルの遠隔リチャージ可能距離といった差はレベル8~レベル16にも存在する
  3. ^ 例えばレベル8のレゾネータはひとつのポータルに各エージェントともひとつしか設置できないため、ポータルのレベルを最高のレベル8にするためには8名のレベル8エージェントが必要になる

出典

  1. ^ Ingress Intel Mapにおける表示(要ログイン)
  2. ^ inomskのツイート(505176283832012800)
  3. ^ ファーミングから作戦行動まで。Ingress(イングレス)レベル8エージェントの日常 できるネット
  4. ^ “岩手県がスマホゲーム「Ingress」を観光振興などに活用”. (2014年9月24日). http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/14/092301024/ 2014年9月27日閲覧。 
  5. ^ “横須賀市が自治体初のIngress特設ページ開設。無人島へのフェリー料金半額など観光振興に活用”. Engadget日本語版. (2014年12月18日). http://japanese.engadget.com/2014/12/18/ingress/ 2014年12月22日閲覧。 
  6. ^ ローソンのお店がポータルに! ローソン公式サイト
  7. ^ Ingress Partnership Zipcar
  8. ^ “IngressがAXAグループと提携、ゲーム内に新アイテム「AXAシールド」登場”]. 日経BP・ITPro. (2014年12月17日). http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/14/121602283/ 2014年12月22日閲覧。 
  9. ^ PowerIQ搭載でストレスフリーな小型モバイルバッテリー「Astro」 ケータイWATCH(冒頭に「リアル課金」についての言及あり)
  10. ^ イングレス一周年記念動画日本語訳(PDF)
  11. ^ エージェント プロトコル Ingress公式ヘルプ
  12. ^ a b c Faction や Codename を変更するにはどうすればよいですか? Ingress公式ヘルプ
  13. ^ Portal候補の基準
  14. ^ 現実と仮想世界が交差する陣取りゲームアプリ「Ingress」の魅力とは”. THE PAGE(ワードリーフ株式会社) (2014年10月2日). 2014年10月2日閲覧。
  15. ^ 新しい Portal の申請 Ingress公式ヘルプ
  16. ^ “岩手県が「Ingress」で名所巡りや“わんこ対決”--町おこしイベントに密着”. CNET Japan. (2015年2月20日). http://japan.cnet.com/sp/ingress/35060684/ 4月4日閲覧。accessdateの記入に不備があります。 
  17. ^ 5 Glyph Hack Sequences
  18. ^ a b 基本説明 Ingress公式ヘルプ
  19. ^ ローソンのお店がポータルに!
  20. ^ アクサとIngressがコラボ開始、ゲーム内最強のシールドが登場
  21. ^ 三菱東京UFJ銀行がIngress(イングレス)と全面タイアップ。店舗やATMがポータルに!
  22. ^ ソフトバンクショップがIngressに登場!
  23. ^ 「Ingressアイテム & クオカードプレゼント」キャンペーン

外部リンク