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トラム (マルセイユ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トラム(マルセイユ)
マルセイユの路面電車で使用されるフレキシティ・アウトルックC(2012年撮影)
マルセイユの路面電車で使用されるフレキシティ・アウトルックC(2012年撮影)
基本情報
フランスの旗 フランス
所在地 マルセイユ
種類 路面電車ライトレール
路線網 3系統(2020年現在)[1][2][3][4][5]
停留所数 31[1]
開業 1876年馬車鉄道
1892年路面電車
2007年ライトレール[1][3][4][5]
最終延伸 2015年[5]
運営者 マルセイユ市交通局フランス語版[5]
使用車両 フレキシティ・アウトルックC[2][6]
路線諸元
路線距離 13.2 km[5]
軌間 1,435 mm[2][3][4]
電化区間 全区間
最小曲線半径 25 m[2]
最高速度 70 km/h[2]
路線図
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この項目では、フランスの都市・マルセイユ市内を走るトラム路面電車)について解説する。マルセイユの路面電車は第二次世界大戦以前から営業運転を続けるフランスでも数少ない路面電車網の1つで、長期の路線休止を伴う大規模な改良工事を経て2007年に新たな路線網として再開業した経歴を持つ。2020年現在はマルセイユ市内で各種公共交通機関を運営するマルセイユ市交通局フランス語版(Régie des Transports Métropolitains、RTM)によって運営されている[3][4][5][6]

歴史

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マルセイユ市内における最初の軌道交通は、1876年から営業運転を開始した馬車鉄道であった。それまで市内各地で運行していた乗合馬車に代わる新たな交通機関として発展を遂げた馬車鉄道は、1890年には8つの系統を有する大規模な路線網となった。一方、その2年後の1892年には路線の電化が始まり、1899年までに馬車鉄道は路面電車へと置き換えられた。同じ頃には、当時路面電車を運営していたフランス一般路面電車会社(Compagnie générale française des tramways、CGFT)とマルセイユ市との間に路面電車の建設や運賃に関する協定が結ばれている[3]

その後も路面電車網は発展を続け、1914年には100系統以上、合計167 kmという大規模な路線網が築かれ、運行間隔も最短10秒という高頻度運転が実施されていた。また、路線網はマルセイユのみならず近隣の自治体にまで及んだ。1930年代には年間の利用客が1億6,900万人にまで達したが、同時期以降は自動車の発達によりマルセイユの路面電車を路線バストロリーバスへ置き換える案が挙がり始めた。第二次世界大戦の影響により一時的にその動きは中断するも、戦後の1950年代以降は時代遅れと見做されるようになった路面電車の大規模な廃止が実施された[3]

しかし、一部に地下路線を有していた全長約3 kmの68号線のみはその利便性が評価された事で廃止を免れ、マルセイユはリールサン=テティエンヌと共に、第二次世界大戦以前からの路面電車が残る数少ないフランスの都市となった。存続が決定して以降、1969年2月にはベルギーの企業が製造した高性能路面電車のPCCカーが16両導入された他、施設の更新も行われた一方、幾つかの延伸計画も持ち上がったがこの時点で実現することはなかった[7][3][4][5][8][9][10][11]

1985年ナントナント・トラムフランス語版)、1987年グルノーブルグルノーブル・トラムフランス語版)の運行開始以降、フランスでは路面電車(ライトレール)の見直しが進み、首都パリを含む各都市で次々と新たな路線が開通するようになった。マルセイユでもバリアフリーに適した部分超低床電車であるフランス標準型路面電車(TFS)の導入が検討されたが、高額な施設の更新費用に加えマルセイユ地下鉄の整備が優先された事から1980年代の時点では実現しなかった。しかし、1990年代に入ると渋滞の緩和や空洞化が進んだ都心の再開発などを目的とした本格的な延伸および近代化計画が動き出し、2004年1月8日以降68号線の運行を長期にわたって休止させた上で新たな路面電車網(ライトレール)の建設が始まった。そして2007年6月30日、68号線の地上区間の一部を含めたライトレール路線の開津式典が行われ、試験的な営業運転を経て同年7月2日から本格的な営業運転が始まった。更に同年11月8日にも68号線の地下区間を含む新たな区間が開通し、同日以降ライトレールは2つの系統(T1・T2)で運用されるようになった[3][4][5][6][12]

開通初年度こそマルセイユのライトレールは道路の混雑による平均速度の遅さなどが要因となり、1日の利用客数が目標を遥かに下回る4万人程となってしまったが、以降は利便性の高さやバリアフリーへの対応、空調の完備などの快適性が評価され、10年後の2017年時点での1日利用者数は150,400人を記録している他、マルセイユ市交通局(RTM)が運営する公共交通機関の中で最も高い満足度を獲得している。路線網の拡張も続いており、2008年2010年にそれぞれ延伸が行われた他、2015年5月にはローマ通り(Rue de Rome)を経由するT3号線が開通している。また、マルセイユ市交通局は今後も路面電車の延伸を実施する旨を発表している[5][6]

運行

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T1号線
T2号線
T3号線

2020年現在、マルセイユ市内には以下の3系統の路面電車が存在する。運賃はマルセイユ市交通局が運行する路線バス地下鉄マルセイユ地下鉄)と共に1.5ユーロで、24時間(5.2ユーロ)、3日間(10.8ユーロ)有効となる時間制乗車券の発行も行われている[6][13][14]

系統番号 起点 終点 電停数 開業年 備考
T1 Noailles Les Caillols 14 2007年 [5][15]
T2 Arenc Le Silo La Blancarde 15 2007年 [5][16]
T3 Arenc Le Silo Castellane 11 2015年 [5][17]

車両

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フレキシティ・アウトルックC
2006年撮影)

2007年の再開業以降、従来のPCCカーに代わってマルセイユの路面電車で使用されているのはボンバルディア・トランスポーテーションが展開する車内全体が低床構造となっている超低床電車フレキシティ・アウトルックCである。フローティング車体を挟む連接構造を有しており、小径車輪を用いた車軸付き台車を用いることで走行時の安定性や騒音・振動の抑制が図られている。フランスのMBDデザイン(MBD Design)が手掛けた車体デザインは港湾都市であるマルセイユにちなみヨットがモチーフになっており、大型窓を導入する事で透明感を強調している他、車内は地中海をイメージした木製の座席や青い色調が用いられている[6][18][19]

開業時に導入された車両は24両の5車体連接車であったが、利用客の増加や延伸に対応するため2011年7車体連接車6両の発注が行われ、2013年から営業運転を開始した。更に2012年には5車体連接車6両の増備も行われたため、2020年現在は計36両が在籍する。主要諸元は以下の通り[2][5][18][20]

主要諸元
編成 両数 運転台 全長 全幅 全高 着席定員 定員 軌間 備考・参考
5車体連接車 30両 両運転台 32,510 mm 2,400 mm 3,500 mm 42人 158人 1,435 mm 定員は乗客密度4人/m2[2][5][18][21]
7車体連接車 6両 42,500 mm

脚注

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  1. ^ a b c MARSEILLE”. UrbanRail.Net. 2020年8月12日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Marseille Tramway and Metro Development”. Railway Technology. 2020年8月12日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h Quand le tramway allait partout dans Marseille et même jusqu’à Aix et Aubagne !”. made in marseille (2017年7月20日). 2020年8月12日閲覧。
  4. ^ a b c d e f Light Rail Now Project Team (2008年1月). “France: Light Rail Continues Growth With New Tramways in Marseille, Le Mans, Nice”. Light Rail Now!. 2020年8月12日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n Par Philippe Gallini (2017年6月30日). “Le 18:18 : 10 ans que le tram a changé Marseille”. LaProvence. 2020年8月12日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 大鶴倫宣 (2016-5-20). “祝!Euro2016開催!開催都市トラム巡り”. 路面電車EX (イカロス出版) 07: 97. ISBN 978-4-8022-0156-8. 
  7. ^ 宇都宮浄人, 服部重敬 (2010-12-16). LRT-次世代型路面電車とまちづくり-. 交通ブックス. 成山堂書店. pp. 129-130. ISBN 978-4425761814 
  8. ^ Benoît Demongeot 2006, p. 263-264.
  9. ^ Benoît Demongeot 2006, p. 265.
  10. ^ Benoît Demongeot 2006, p. 270.
  11. ^ Jean-Claude Vaudois (2017-3-9) (フランス語). LA TRAMWAY A LA FRANCAISE Toute une historie !. Lulu.com 
  12. ^ Benoît Demongeot 2006, p. 596.
  13. ^ Plans”. Régie des Transports Métropolitains. 2020年8月12日閲覧。
  14. ^ Marseille: Public Transportation”. Tripadvisor. 2020年8月12日閲覧。
  15. ^ Plan - T1”. Régie des Transports Métropolitains. 2020年8月12日閲覧。
  16. ^ Plan - T2”. Régie des Transports Métropolitains. 2020年8月12日閲覧。
  17. ^ Plan - T3”. Régie des Transports Métropolitains. 2020年8月12日閲覧。
  18. ^ a b c FLEXITY Outlook – Marseille, France”. Bombardier. 2015年10月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年8月12日閲覧。
  19. ^ Bombardier To Design Tramways For The City Of Marseille”. Bombardier (2004年6月10日). 2020年8月12日閲覧。
  20. ^ World rolling stock market May 2012”. RailwayGazette International (2012年5月23日). 2020年8月12日閲覧。
  21. ^ “Worldwide Review”. Tramways & Urban Transit No.912 (LRTA) 76: 525. (2013-12). http://www.bowe.cc/techlib/pdf/Tramways_and_Urban_Transit_vol76_no912_1587578304.pdf 2020年8月12日閲覧。. 

参考資料

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外部リンク

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