ボイルドドレッシング
ボイルドドレッシング(英語: boiled dressing)は、イングランドおよびドイツを発祥とする、クリーミーなサラダドレッシング[1]。19世紀から20世紀初期にかけて、マヨネーズの代用品として特に人気があった[1]。調理技術が未熟でも作りやすく、マヨネーズを作るための液体の食用油が即座に入手しづらかった19世紀の北ヨーロッパとアメリカ合衆国で重宝された[2]。マヨネーズは1912年まで市販されていなかった[3]。
作り方[編集]
ボイルドドレッシングにはさまざまな種類があるが、一般的な原材料は、酢、砂糖または蜂蜜、牛乳またはクリーム、卵または卵黄、塩、マスタード、トウガラシ、小麦粉である。名前の通り、沸騰させて(ボイルして)作ることもあるが、弱火で湯煎しながら作る方が一般的である[4][5][6]。コールスロー、チキンサラダ、ポテトサラダ、エッグサラダなどのサラダに使う。
種類[編集]
イギリスでよく使われるサラダクリームは、1914年にハインツが開発したボイルドドレッシングの1種である[2]。クラフトフーズが1933年に発売し、アメリカ合衆国で人気のあるミラクルホイップもボイルドドレッシングの1つであり、同社は「上質なマヨネーズと伝統のボイルドドレッシングを秘密のレシピで混ぜ合わせた」商品としている[7]。
歴史[編集]
アメリカ農務省所属の家政学者が1915年のニューヨークタイムズに寄稿した凝ったクリスマスディナーのレシピの中にボイルドドレッシングが入っており、チキンサラダやフルーツサラダに使うことを推奨していた[6]。
フードライターのM. F. K.フィッシャーは、祖母からレタスにはボイルドドレッシングをかけるよう強要された経験から、ボイルドドレッシングよりもマヨネーズを好んだ[1]。同じくフードライターのジェームズ・ビアードは、自身に多大な影響を与えた中国人料理人のJue-Let[8]が作った料理に関する幼少時代の楽しい思い出から、ボイルドドレッシングで作ったコールスローを愛した[1]。
脚注[編集]
- ^ a b c d Fussell, Betty; Kennedy, Mary Frances (2005) (English). Masters of American Cookery: M.F.K. Fisher, James Andrew Beard, Raymond Craig Claiborne, Julia McWilliams Child. University of Nebraska Press. pp. 125, 155. ISBN 9780803269200
- ^ a b “Boiled Dressing”. Cookinfo.com (2004年2月25日). 2021年5月31日閲覧。
- ^ Randal W. Oulton. “Biography of Richard C. Hellmann”. Cooksinfo.com. 2021年5月31日閲覧。
- ^ Smedley, Emma (1924) (English). Institution Recipes: Standardized in Large Quantities for use in Cafeterias, Schools, Colleges, Hospitals and Other Institutions (Fourth ed.). Media, Pennsylvania: Emma Smedley Publisher. pp. 200–201
- ^ Elder, Lillian S. (1921) (English). The Young Woman's Journal. 32. Salt Lake City: Young Ladies' Mutual Improvement Association. pp. 300
- ^ a b “U.S. Expert Suggests Ideal Christmas Dinner; Miss Caroline L. Hunt, of Bureau of Home Economics of Department of Agriculture, Also Gives Reason Why She Has Selected Items on Her Menu” (English). New York Times. (1915年12月19日) 2021年5月31日閲覧。
- ^ Meyers, Cynthia B. (2013) (English). A Word from Our Sponsor: Admen, Advertising, and the Golden Age of Radio. en:Fordham University Press. ISBN 9780823253760
- ^ Dao, Dan Q. (2017年5月19日). “Who Was Jue-Let, the Unknown Chinese Chef Who Raised James Beard?: The family private chef and Beard's surrogate father was a fiery, influential personality in the kitchen. So why do we know so little about him?”. Saveur 2021年6月1日閲覧。