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新宮晋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

新宮 晋(しんぐう すすむ、1937年7月13日 - )は大阪府豊中市出身の彫刻家画家小磯良平は、遠縁の親戚に当たる[1]

1960年代から風や水で動く彫刻を多々創作していることから、「造形作家」「風の彫刻家」[1]と紹介されることも多いが、絵本や舞台作品なども手掛けている。

経歴

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  • 1937年昭和12年) - 大阪府豊中市で出生。
  • 1955年(昭和30年) - 大阪府立豊中高等学校から東京美術学校(現在の東京芸術大学)の絵画科へ進学[2]
  • 1960年(昭和35年) - 東京美術学校からの卒業を機に、イタリア政府の奨学生としてイタリアへ移住。ローマ国立美術学校で絵画を学ぶ。
  • 1966年(昭和41年) - ミラノのブルー画廊で立体作品を発表した後に、イタリアから日本へ一時帰国。
  • 1970年(昭和45年) - 日本万国博覧会大阪府吹田市で開催されることに際して、風や水の力で動く「フローティング・サウンド」などの彫刻作品を出展。
  • 1971年(昭和46年) - 上記の彫刻作品への高い評価を背景に、アメリカのハーバード大学視覚芸術センターへ「客員芸術家」として招聘[1]
  • 1973年(昭和48年) - 日本へ再び帰国したうえで、大阪府豊能町の山間部にアトリエを構える[1]。その一方で、「Wind and Water Sculptures」と称する野外個展を、アメリカのニューヨーク州パーチェスで開催。
  • 1975年(昭和50年) - 「いちご」で絵本作家としてデビュー[1]
  • 1986年(昭和61年) - 横浜市で「自然のリズム 新宮晋展」を開催する。
  • 1990年平成2年)- 豊能町のアトリエが手狭になったことから、坂井時忠(元・兵庫県知事)の勧めで、アトリエを兵庫県三田市へ移転[1]
  • 1991年(平成3年) - イタリアジェノバのロッジア・デッラ・メルカンツィアで個展を開催する。
  • 1994年(平成6年) - 三田市の青野ダムサイト公園で野外ショー「キッピスと仲間たち」を演出する。
  • 1998年(平成10年) - 三宅一生パリ・コレクション1999春夏の舞台装置を手がける。
  • 1999年(平成11年) - パリシャンゼリゼ通りで開かれた「Champs de la Sculpture 2000展」に出品する。
  • 2000年(平成12年) - 世界巡回プロジェクト「ウインドキャラバン - 私たちの星の観測」を開始する[3]
  • 2012年(平成24年) - 風で動く12点の大型彫刻を常設した「風のミュージアム」を、三田市内の兵庫県立有馬富士公園に開設[1]

作風

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作風のルーツは、書物や焼き物が数多く飾られていた豊中市の生家にある。このような書物や焼き物を集めていたのが、総合商社に勤務していた実父で、海外へ頻繁に駐在していた[1]

実父は古裂(骨董としての高い価値が認められる古い布)の収集家として名高く、石井柏亭上村松園といった日本画の大家が、創作活動の参考にすべく古裂を生家へ借りに来るほどであった。4人兄弟の末っ子である晋も絵を描くことが幼少期から好きで、絵の習作を実父がこのような大家に見せたところ、実父から古裂を借りようと目論む大家たちから「将来は大画家になれる」と褒められてばかりいたという[1]

遠縁の親戚に当たる洋画家の小磯良平からは、小学4年時に「(前述した大家から褒められるほど)特別じゃない」と言われたものの、本人はその後も油絵の制作に熱中。東京美術学校への在学中には、小磯教室で油絵の描き方を学んでいた[1]

画家から彫刻作家への転機になったのは、東京美術学校を卒業してから6年間滞在していたイタリアで、画家のフランコ・ジェンティリーニに師事したことである。それまでは具象画をもっぱら描いていたが、ジェンティリーニへ師事するにつれて、抽象画の制作に着手。やがて、絵画を離れてレリーフ作品や立体作品を手掛けるようになった[1]

日本へ帰国してからの作風は、「動く立体作品」で一貫している。高さ数メートルのスチール製の彫刻も多く、屋外に展示されているものも多い。風や水で動いたり、光を巧みに取り入れることで、自然との一体感を生む作品に特徴がある。もっとも、ゴムで動く超軽量飛行機の映像を見た小磯から1984年に「あの(飛行機の)ような彫刻を考えてみたらどうか?」と勧められたことを境に、屋内でもかすかな風で複雑に動く軽量彫刻の創作も始めている[1]

「空気の専門家」との異名がある一方で、舞台作品の演出家絵本作家としても多彩な活動を展開。近年では、「キッピスと仲間たち」や「ウィンドキャラバン」など、地球の素晴らしさや大切さを表現する企画にも熱心に取り組んでいる。

建築家のレンゾ・ピアノとは、関西国際空港旅客ターミナルビルでの共同制作をきっかけに意気投合し、2023年までに計10件のプロジェクトを実現させた[4]

おもな作品

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彫刻

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宮城県美術館の「時の旅人」
福岡市水上公園の「風のプリズム」
倉吉博物館の「遠いこだま」

著書

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  • 『Shingu』、エドワード F フライ/岡田 隆彦共著、ハリー・N・エブラムス社(N.Y.)、1973年
  • 『いちご』、文化出版局、1975年 ISBN 978-4579401031
  • 『くも』、文化出版局、1979年 ISBN 978-4579401123
  • 『WIND AND WATER』、1983年
  • 『風のサーカス』、新潮社、1989年 ISBN 978-4103744016
  • 『じんべえざめ』、扶桑社、1991年 ISBN 978-4594006815
  • 『Shingu : rhythm of nature』、中原 佑介/ルドルフ・アルンハイム共著、ブレーンセンター、1991年 ISBN 978-4833905169
  • 『キッピスの訪ねた地球』(月刊「たくさんのふしぎ」111号)、福音館書店、1994年
  • 『Shingu : principal works 1991-1994』新宮アトリエ編、新宮アトリエ、1994年
  • 『Shingu - Message from Nature』レンゾ・ピアノ/ピエール・レスタニ/ジョセフ・ジョバンニーニ/新宮 晋、アベヴィル・プレス社(N.Y.)、1997年 ISBN 978-0789203809
  • 『小さな池』、福音館書店、1999年 ISBN 978-4834015942
  • 『風の旅人』、扶桑社、2002年 ISBN 4-594-03579-5
  • 『WIND CARAVAN』、ブレーンセンター、2003年 ISBN 978-4833905176
  • 『風の星』、福音館書店、2004年 ISBN 978-4834006155
  • 『じゃぐちをあけると』(ちいさなかがくのとも25号)、福音館書店、2004年 ISBN 978-4834024012
  • 『SHINGU』ピーター・ブキャナン/中原 佑介/レンゾ・ピアノ/イリ・キリアン/新宮 晋、セルクルダール社(パリ)、2005年
  • 『Les petits oiseaux』、Edition Gallimard Jeunesse、2006年
  • 『L'Araignée』、Edition Gallimard Jeunesse、2006年
  • 『ことり』、文化出版局、2007年 ISBN 978-4579404346
  • 『SHINGU』ベルナール・ヴァッスール、セルクルダール社(パリ)、2008年
  • 『旅する蝶』、文化出版局、2012年 ISBN 978-4579404506
  • 『Le Papillon Voyageur』、Gallimard Jeunesse、2012年
  • 『ぼくの頭の中』、ブレーンセンター、2013年 ISBN 978-4833905497[7]

受賞歴

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  • 第4回吉田五十八賞(建築関連美術の部)(1979年)
  • 第8回現代日本彫刻展で国立国際美術館賞(1979年)
  • 第8回長野市野外彫刻賞(1980年)
  • 第18回日本芸術大賞(1986年)
  • 第6回ヘンリー・ムーア大賞展特別優秀賞(1989年)
  • 兵庫県文化賞(1994年)
  • 大阪芸術賞(1995年)
  • 第43回毎日芸術賞特別賞(2002年)
  • 紫綬褒章(2002年)[8]
  • 第20回現代日本彫刻展大賞(2003年)
  • 第4回円空大賞(2007年)
  • 旭日小綬章(2010年)[9]
  • 紺綬褒章飾版、木杯一組[10]

ドキュメンタリー

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注釈

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備考

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  1. ^ 神戸駅の駅前広場の再整備に伴い、2024年2月に撤去され分割して保管されることになった[5]

出典

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  1. ^ a b c d e f g h i j k l “風の彫刻家・新宮晋 あふれる三田愛と未来志向”. 産経新聞. (2022年3月11日). https://www.sankei.com/article/20220311-TNM4NPJXGVPKRLHHDQJ2GI4624/ 2023年3月6日閲覧。 
  2. ^ “-豊中市出身の世界的アーティスト 新宮晋さんの展覧会「豊中から世界へ 新宮晋 すべてがここから始まった」開催”. City Life豊中版. (2022年1月29日). https://citylife-new.com/newspost/24313/ 2023年3月6日閲覧。 
  3. ^ 彫刻とともに、日本ニュージーランドフィンランドモンゴルモロッコブラジルの6ヶ国を訪れた。
  4. ^ 大西若人「通じる軽やかさ、共働の歩み 「平行人生 新宮晋+レンゾ・ピアノ展」 @大阪・中之島」『朝日新聞』2023年8月29日。2023年9月1日閲覧。
  5. ^ “JR神戸駅前の巨大モニュメント撤去へ 高さ17m超、風受け動く「海からの便り」”. 神戸新聞 (神戸新聞). (2024年2月9日). https://www.kobe-np.co.jp/news/kobe/202402/0017313994.shtml 2024年2月9日閲覧。 
  6. ^ (日本語) Works/主な作品”. Susumu Shingu. 2014年7月16日閲覧。
  7. ^ (日本語) Bibliography/書籍・作品集・絵本”. Susumu Shingu. 2014年7月16日閲覧。
  8. ^ 美術界年史 2002年(4月 紫綬褒章受章者)”. 東京文化財研究所. 2014年4月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年5月26日閲覧。
  9. ^ (日本語) Profile/新宮 晋(しんぐう・すすむ)略歴”. Susumu Shingu. 2014年7月16日閲覧。
  10. ^ 『官報』第688号、令和4年3月7日
  11. ^ "風が奏でる「いのち」の賛歌 造形作家・新宮晋". NHK. 2023年7月30日. 2023年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年7月28日閲覧

外部リンク

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