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水無川 (神奈川県)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
水無川
水無川 2006年12月30日撮影
みずなし川緑地
水系 二級水系 金目川
種別 二級河川
延長 11.5 km
平均流量 -- m³/s
流域面積 18.3 km²
水源 塔ノ岳(秦野市)
水源の標高 -- m
河口・合流先 室川(秦野市河原町)
流域 神奈川県秦野市
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水無川(みずなしがわ)は、神奈川県秦野市を流れる金目川水系二級河川である。なお、二級河川に指定されているのは戸川堰堤より下流の約7.5km部分で、上流部は普通河川である[1]

地理[編集]

神奈川県秦野市の北部に位置する丹沢山系の塔ノ岳に源を発し南流。秦野盆地の中央部で南東に向きを変え、秦野市河原町と秦野市室町の境界で室川合流する。

かつては葛川水系の河川であったが、河川争奪により金目川水系に属するようになったと考えられている。

地域とのつながり[編集]

盆地扇端部で流量の大部分が地下に伏流するため、以前はその名のとおり盆地内を流れる「水無」川だった。戦後、流域に工場や住宅が増えるにつれ、そこから流入する水(排水や浄化処理された水)が流れるようになり、流量は安定した。それでも時期と場所によってはほとんど水が流れていない事もしばしばある。

かつて1970年前後まで水無川上流(木ノ又大日沢やセドノ沢付近)で砥石として使われる戸川砥(とかわと)が採石されていた。下流にもそのが流れ下っており、秦野市内にある戸川という地名はこの川の別称「砥川」の転じたものとされる[2][3]

川から水がなくなった由来に言及した御伽噺の一つとして、弘法大師が登場する伝説がある。弘法大師は「心の優しい人がこの辺りにはいないものか」と思い、わざと貧しい身なりをしてこの川の流域の住民に水を求めた。水を求められた住民はその人が弘法大師とは知らず、貧しい身なりをしていたので水を与えなかった。「人の身なりで人を判断するとは何たる事だ」と怒った弘法大師は、この住民たちの生活用水である川の水を涸らしてしまった。その川に水が無くなってしまった事から、「水無川」と言う名称が付いたというのである。

秦野市千村出身の文人谷鼎の歌集「伏流」の名はこの川に由来する。

環境[編集]

秦野市役所前から見る水無川の流れ

市街地を流れる部分は1980年代中頃まで排水による汚濁がひどく、河川敷も地域の人々が小規模な菜園を営む程度の利用しかされていなかった。

その後、下水道普及率の上昇や工場からの高度処理水の流入により水質が改善し、神奈川県による砂防事業との一環として上流の平和橋から下流の常盤橋までの河川敷が「みずなし川緑地」として整備され市民に親しまれている。

「水無川緑地」は1989年度(平成元年度)国土交通省手づくり郷土賞(生活の中にいきる水辺)受賞[4]2005年度(平成17年度)には同賞大賞受賞[4]

上流部には県立戸川公園が整備されており、表丹沢登山の玄関口として賑わっている。

支流[編集]

源流部のには登山沢登りで多くの人々が訪れる。水無川水系にある沢はガレが多く相当程度のクライミング力を要する箇所もある[5]。秦野市では主な沢の滝にフォールナンバーを付けており看板を設置している[5]

橋梁[編集]

まほろば大橋[編集]

下流側から見上げたまほろば大橋

小田急小田原線秦野駅北口を出てすぐの場所に位置し、駅と水無川対岸にある中心市街地との往来を担う橋。かながわの橋100選に選定されている。1989年(平成元年)に竣工した[7]。10m幅の車道と25m幅の歩道からなり、下流側の歩道は広場をなすように広く設計され、中央に高さ10mの時計塔がある。四隅の親柱にはガス灯が灯る[8]1990年度(平成2年度)、「秦野駅前歩行者専用道」として国土交通省手作り郷土賞(街灯のある街角)を受賞した[4]

かつて、同じ場所には1931年(昭和6年)竣工の昭和橋が架けられていたが、老朽化や駅利用者の増加とモータリゼーションに伴う車両の混雑を背景とした秦野駅北口の整備事業の一部として架け替えられた[7]


橋梁一覧[編集]

上流から

出典[編集]

  1. ^ 神奈川県. “水無川の整備・維持管理”. 神奈川県. 2024年6月21日閲覧。
  2. ^ 自然科学のとびら』神奈川県立 生命の星・地球博物館、2012年6月15日、10-11頁https://nh.kanagawa-museum.jp/www/pdf/tobira69_2taguchi.pdf 
  3. ^ 秦野ふるさと探訪』神奈川県秦野市、1986年1月、70-71頁https://dl.ndl.go.jp/pid/9522933/1/42 
  4. ^ a b c 神奈川県受賞一覧 - 国土交通省”. www.mlit.go.jp. 2024年7月2日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n 後藤真一『丹沢の谷200ルート 初心者から上級者までを惹きつける、東京近郊の沢、超詳細ルートガイド』山と渓谷社、2017年、12頁。 
  6. ^ 後藤真一『丹沢の谷200ルート 初心者から上級者までを惹きつける、東京近郊の沢、超詳細ルートガイド』山と渓谷社、2017年、14頁。 
  7. ^ a b 『秦野市史 通史5現代(2)』秦野市、平成16(2004)年12月、198-202頁。 
  8. ^ まほろば大橋 | はだの旬だより-秦野市観光協会”. www.kankou-hadano.org. 2024年7月1日閲覧。