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半目勝負

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

半目勝負(はんもくしょうぶ)とは、囲碁の対局において、結果が「黒の半目勝ち」ないしは「白の半目勝ち」になるきわどい勝負のこと。

概要

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囲碁は黒と白の石を交互に置き、囲った面積(と呼ぶ)の広い方が勝ちになる競技である。ただしコミ(後述)を設けないと、黒と白の地が同じ面積(黒50目対白50目など)になった場合は引き分けとなってしまう。これを持碁(ジゴ)と呼ぶ。

そこで、引き分けをなくすため、また先手(黒)の有利性をなくすため、囲碁の公式ルールでは互先の対局の場合コミという「黒にハンデを負わせる」ルールが設けられている。現在の日本ルールではコミは6目半(「半」は半目=0.5目の意味)となっており、この6目半を白地に加算(もしくは黒地から減算)する。例えば盤上の地が黒50目対白46目になった場合は、白地に6目半(6.5目)が追加され、最終結果は黒50目対白52目半(52.5目)で「白の2目半勝ち」となる(コミに「半目」がついていることによって、引き分けが起こらない)。

つまり、黒は盤面で7目以上のリードを作れば勝ち、白は黒のリードを6目以下に抑えれば勝ちとなる。終盤に入った時点で、結果が黒の盤面7目勝ち(黒の半目勝ち)か、盤面6目勝ち(白の半目勝ち)となりそうな逼迫した勝負を半目勝負という。

半目勝負とダメ詰めの関係性

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半目勝負の場合、必ず最後にダメを詰めた方が負ける(後述の例外を除く)。

(図1)

アゲハマ…黒2子、白2子

図1は架空の対局の終局図であり、白が△にツナいで終局した。□は死んでいる石。

(図2)

アゲハマ…黒5子、白7子

図2は全てのダメを詰めた後、お互いの死んだ石をアゲハマに加えた状態である。最後のダメ(16)は白が詰めた。黒の地は盤面57目-アゲハマ7目=50目、白の地は盤面48目-アゲハマ5目+コミ6目半=49目半で、黒の半目勝ち

(図3)

アゲハマ…黒2子、白2子

図3は架空の対局の終局図であり、白が△にツナいで終局した。□は死んでいる石。図1の対局と比較して、赤丸の部分に白地が1目多くある。

(図4)

アゲハマ…黒5子、白7子

図4は全てのダメを詰めた後、お互いの死んだ石をアゲハマに加えた状態である。最後のダメ(15)は黒が詰めた。黒の地は盤面57目-アゲハマ7目=50目、白の地は盤面49目-アゲハマ5目+コミ6目半=50目半で、白の半目勝ち

理由

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このようになる理由は、碁盤の交点の数が奇数である(公式対局に使われる19路盤の場合、19×19で361個)ことにある。

  1. 囲碁は黒が先手、白が後手である。終局まで1手もパス(着手放棄)をしない場合、「黒が着手を完了した段階=白の手番」での着手された石の総数は1、3、5、7…と奇数になり、「白が着手を完了した段階=黒の手番」での着手された石の総数は2、4、6、8…と偶数になる。
  2. ダメを詰め終わり、整地が完了した盤面は、全ての交点が「黒もしくは白の生きていた石+お互いのアゲハマ=着手された石」か、「黒もしくは白の地」のどちらかで埋まる。これにより、整地が完了した盤面には「361-着手した石の総数=黒地と白地の合計」という公式が成り立つ。

すなわち、

  • 「最後のダメをが詰めた=奇数個の石を着手して整地に入った」場合は、361-奇数(着手)=黒地と白地の合計は偶数(ケースA)

となり、

  • 「最後のダメをが詰めた=偶数個の石を着手して整地に入った」場合は、361-偶数(着手)=黒地と白地の合計は奇数(ケースB)

となる。

「ケースA(地の合計が偶数)」の場合は、「黒白共に地が偶数」もしくは「黒白共に地が奇数」となり、コミを出す前のお互いの地の差は0、2、4、6、8…のようになる。半目勝負では6目差となり、白の半目勝ちになる。「ケースB(地の合計が奇数)」の場合は、「片方の地が奇数で、もう片方の地が偶数」となり、コミを出す前のお互いの地の差は1、3、5、7、9…のようになる。半目勝負では7目差となり、黒の半目勝ちになる[1]

例外

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上のような法則が成り立つのは「お互いに終局まで1手もパス(着手放棄)をしない」かつ「ダメが奇数個のセキが発生しない」場合に(事実上は)限られる。下のようなケースはパスや「ダメが奇数個のセキ」が絡み「最後のダメを詰めた方が勝ち」になる「例外」である。ただしパスや「ダメが奇数個のセキ」が絡んでも「最後のダメを詰めた方が負け」になる「例外の例外」ケースも存在する(後述)。

パス

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囲碁はルール上、パス(着手放棄)が可能である。前述の通り、黒の着手時点での着手した石の総数は奇数、白の着手時点での着手した石の総数は偶数になるが、途中でどちらかが1手パスすると黒の着手で偶数、白の着手で奇数、と逆転し「最後のダメを詰めた方が勝ち」になる。

セキ

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上図の上部分のようなセキはダメ(赤丸の部分)が奇数個である。このような形ができて終局すると「着手した石+地の合計」は偶数になるため、奇数と偶数の立場が逆転し「最後のダメを詰めた方が勝ち」になる。ただし同じセキでも、上図下部分のようなセキはダメが偶数個であるため、奇数と偶数の逆転は起こらない。

例外の例外

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「例外の例外」ケースとしては、

  • 終局までにパスが偶数回発生した(奇数偶数が逆転した後、再逆転して戻るケース)
  • ダメが奇数個のセキが偶数個発生した
  • 「奇数回のパス」と「ダメが奇数個のセキの奇数個の発生」が両方発生した

がある。ただしこのようなケースが実戦で生じることは非常に稀である。

コミの違いによる変化

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上の解説は全てコミが6目半の場合の話である。かつてコミが5目半だった時代には奇数と偶数の立場が正反対で「最後のダメを詰めた方が勝ち」であり、さらに昔はコミが4目半であったためやはり「最後のダメを詰めた方が負け」であった。コミも参照。

なお中国ルールのコミは7目半であるが、日本ルールとはそもそも計算の方法が違うため、このような概念はない。

プロの世界における半目勝負

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コウが絡んで局面が複雑化するとプロ棋士でも読み切ることができず、整地して半目差が判明した例もある[2]

2015年日本棋院が行った調査では、全対局のうち半目勝負になる割合はおよそ4%(25局に1局)であった。また1000局以上の公式対局がある日本棋院所属の棋士を対象に行った調査では、半目勝負の発生率が高い棋士は上位から依田紀基張栩小林光一山城宏小林覚であった[3]

脚注

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  1. ^ 阿含・桐山杯第23期全日本早碁オープン戦 二十五世本因坊治勲−河野臨九段 決勝の6 毎日新聞
  2. ^ 囲碁名人リーグ 盤上碁石が埋め尽くす激戦 関九段が半目制し初白星:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2024年2月20日). 2024年7月27日閲覧。
  3. ^ 日本棋院刊行「週刊碁」碁界アリーナ 2015年10月19日号。

関連項目

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