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Page:船木ノ神トオキクルミノ話.pdf/1

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○船木ノ神トオキクルミノ話

ウレンキシマ 譯

ウレンキシマハ日高國靜內郡下々方村ノ產ナリ和名ヲ高月切松ト稱ス父ヲシビツルト云フ其第二子ナリ靜內郡ハ古ヘ所謂染退シビチヤル大部落ポロコタンニシテシヤクシヤイン勃興ノ地或ハ云ウレンキシマハ奢氏ノ裔ト幼ニシテ畵ヲ善クス戶長某氏ノ知ル所トナリ小學ニ入ル後チ撰バレテ札幌ナル廳立師範黌ニ入リ業ヲ卒ヘ出デヽ膽振國白老郡敷生小學校ノ訓導トナル在職數年病ヲ以テ職ヲ辭セリ年齒正ニ廿八九性温良人ト爭ハズ漆黑ノ長髯胸ニ垂レ頗ル異相アリ明治廿四年ノ仲夏余始メテ染退ニ遊ビ土風ヲ觀土語ヲ學バント欲シ淹留一年多ク士豪ト交ハル最モウレンキシマト親ミ善シ一夕ウレンキシマ此篇ヲ袖ニシテ來リ示ス蓋蝦人謠曲中ノ短篇ナリ譯語往々雅馴ナラザルモノアリト雖モ意義明瞭亦以テ蝦人古俗ノ一斑ヲ窺フニ足ル今妄リニ文飾ヲ加ヘザルモノハ其眞ヲ失ハンヿヲ恐レテナリ讀者乞フ焉ヲ諒セヨ

明治念六十一月初九

東京 神谷恕識