「アリババと40人の盗賊」の版間の差分
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{{wikisourcelang|fr|Ali-Baba et les quarante voleurs|アリババと40人の盗賊のアントワーヌ・ガラン版}}
{{wikisourcelang|en|The Book of the Thousand Nights and a Night/Volume 13|アリババと40人の盗賊を含むバートン版13巻}}
『'''アリババと40人の盗賊'''』(アリババと40にんのとうぞく、{{lang-ar|علي بابا}}、{{lang-fa|علیبابا}}、{{lang-en|'''Ali Baba and the Forty Thieves'''}})は、イスラム世界に伝わっている物語とされるものの一つである。一般には『[[千夜一夜物語|アラビアンナイト]]』(千夜一夜物語)の中の一編として認識されることが多いが、『アラビアンナイト』の原本には'''収録されていなかった'''(後述「アラビアンナイトとの関係」を参照のこと)。
主人公のアリババの「ババ」という言葉は、アラビア語
== あらすじ ==
昔、[[ペルシア|ペルシャ]]の国に、貧乏だが真面目で働き者の'''アリババ'''という男がいた。ある日
かくして大金持ちになったアリババは、このことを妻以外の者には秘密にしていたが、不運にも元から金持ちの
カシムがいつまでも帰って
『千夜一夜物語(アラビアンナイト)』のこの登場人物に関しては日本語書籍・記事によってカタカナ表記違いである女性名マルジャーナ(مَرْجَانَة, Marjānah ないしは Marjāna)も用いられているが、上のムルジャーナと同綴の同一語に対する発音違いとなっている。
一方、洞穴の中から金貨の袋と死体が持ち去られたことに気付いた盗賊たちは、死んだ男の他にも仲間がいると考えて、すぐに捜査を始め、死体を縫い合わせた老人を見付けて、情報を聞き出すことに成功した。そして、老人の協力でアリババの家(元・カシムの家)を見付けた盗賊たちは、頭領が20頭のロバを連れた旅の油商人に変装し、ロバの背中に2つずつ積んだ油容器の中に39人の手下たちが隠れ<ref>ちなみに、盗賊たちがアリババの家を捜索する際に失敗した2人が頭領に処刑されたとする話もあり、その場合には残りの手下は37人で、頭領が連れていたロバの数は19頭になる。いずれにせよ、1つの容器だけ[[偽装]]のために本物の油が入っていた点は共通している。</ref>、アリババの家に一夜の宿を求めて泊めてもらう作戦で家の中に入り込み、家の人々が寝静まるのを待ってアリババを殺そうと企てたが、庭に運び込まれた油容器の中身が盗賊たちと気付いたモルジアナは、1つだけ本物の油が入っている容器を探し当てると、急いでその油を台所へ運び込み、大鍋に入れて[[沸騰]]させ、煮えたぎった油を全ての容器に注ぎ込んで、中に隠れている盗賊たちを一人残らず殺した。そうとも知らず夜中に寝床から起き上がり、仕事に取りかかるために手下たちを呼ぼうとした頭領は、容器の中をのぞき込んで手下たちの全滅を知ると、驚いて単身アリババの家から逃げ去った。▼
マルジャーナと読む場合もムルジャーナ(モルジアナの元)と読む場合も語義は全く変わらず、「(小さな)真珠(の粒)」「(小さな)珊瑚(のかけら)」を表す。かつてアラブ・イスラーム世界では奴隷を宝石・珊瑚・真珠・花などの名で呼ぶ風習があった。</ref>と相談の末、遠くの町から仕立屋の老人<ref>ちなみに老人の職業は靴屋であったとする話もある(靴屋も仕立屋と同じく針と糸で物を縫い合わせる作業が得意であるため)。</ref>を呼んで、死体を元通りの形に縫い合わせてもらい、表向きはカシムが病死したことにして、内密に[[葬儀]]をすませた。その後はカシムの家と財産もアリババの物になり、アリババはカシムの一人息子を養子にして、この上もなく恵まれた身分の男になった。
しばらくの後、盗賊の頭領は偽名を使って今度は宝石商人になりすまし、カシムの息子が経営する商店の近所に住み着いて、カシムの息子と親しくなり、アリババの家に客人として招かれた。頭領は服の中に隠し持った短剣でアリババを殺すつもりだったが、またしても客人の正体を見抜いたモルジアナは、[[余興]]として客人に[[舞踊]]を披露すると言い、彼女も短剣を持って踊りながら隙を見て頭領を刺し殺し、アリババ達に客人の正体を晒した。▼
▲一方、洞穴の中から金貨の袋と死体が持ち去られたことに気付いた盗賊たちは、死んだ男の他にも仲間がいると考えて、すぐに捜査を始め、死体を縫い合わせた老人を見付けて、情報を聞き出すことに成功した。そして、老人の協力でアリババの家(元・カシムの家)を見付けた盗賊たちは、頭領が20頭のロバを連れた旅の油商人に変装し、ロバの背中に2つずつ積んだ油容器の中に39人の手下たちが隠れ<ref>ちなみに、盗賊たちがアリババの家を捜索する際に失敗した2人が頭領に処刑されたとする話もあり、その場合には残りの手下は37人で、頭領が連れていたロバの数は19頭になる。いずれにせよ、1つの容器だけ
▲しばらくの後、盗賊の頭領は偽名を使って今度は宝石商人になりすまし、カシムの息子が経営する商店の近所に住み着いて、カシムの息子と親しくなり、アリババの家に客人として招かれた。頭領は服の中に隠し持った短剣でアリババを殺すつもりだったが、またしても客人の正体を見抜いたモルジアナは、
かくして40人の盗賊たちは、聡明なモルジアナの機転により全員返り討ちにされた。この功績によって、モルジアナは奴隷の身分から一躍カシムの息子の妻になり、洞穴の中に残っていた莫大な財宝は国中の貧しい人たちに分け与えられて、アリババの家は末永く栄えた。
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この物語の原典・出所については複雑な事情がある。
まず、18世紀初めに[[フランス]]の東洋学者の[[アントワーヌ・
</ref><ref>西尾哲夫『アラビアンナイト --- 「物語」に終わりはない』、100分de名著、NHK出版、2013年11月、pp.19-20、ISBN 978-4-14-223032-7 『ガランは「千一夜」物語という以上は物語は千一夜分あるはずだとかたく信じていたので、続きが書かれた写本を必死で探しまわりました。しかし、うまく見つけることができません。困り果てていたところ、シリア北部アレッポの出身でフランスに滞在していたハンナ・ディヤーブという人物と知己になり、彼が故郷の民話にくわしいことがわかりました。そこで彼に写本に入っていないアラビアンナイトのような物語をいろいろ聞き取りし、それを翻訳の続きに加えていきました。このとき聞き取った話の中に、いまのわれわれにおなじみの「アラジン」や「アリババ」「空飛ぶ絨毯」などがありました。』</ref>。
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ところが、1984年にハーバード大学のアラビア語の教授であった{{仮リンク|ムフシン・マフディー|en|Muhsin Mahdi}}が、「千夜一夜物語」の原型といわれるものの復元に成功して、「初期アラビア語原典による千夜一夜物語の書」という、画期的な研究成果を発表し、今まで解明されていなかった多くの問題に光を与えるところとなった<ref>池田修、ムフシン・マフディー版「アラビアン・ナイト」の登場、「千夜一夜物語と中東文化---前嶋信次著作集I」に所載、p.469、平凡社東洋文庫669、2000年4月10日初版、ISBN 4-582-80669-4</ref><ref>ロバート・アーウィン、西尾哲夫訳『必携アラビアン・ナイト 物語の迷宮へ』、p.79-81、平凡社、1998年1月、ISBN 4-582-30803-1</ref>。マフディーの写本研究はまた思いがけない発見をしている<ref name="ikeda471" />。マクドナルドが発見したアラビア語写本をマフディーが子細に検討した結果、この写本は[[ド・サシー]]の門下生で、18世紀の後期に商人となってエジプトに移り住んだジャン・ワルシー(Jean Varsi)というフランス人の筆跡によるもので、ガランの'''フランス語訳から逆にアラビア語に訳し直したもの'''と解明された<ref>Husain Haddawy訳, "The Arabian Nights II: Sinbad and Other Popular Stories (v. 2)", Introduction, p.xiii, W W Norton & Co Inc (September 1995), ISBN 978-0393038156 "Although it is written in a pseudo-grammatical Arabic, with some mistakes and colloquial words, as well as purple patches, verses, and rhyming phrases alien to Galland's verdion, a close examination reveals that it is a modified translation of Galland. It is no more of Arabic origin than its author Jean Varsi, a Frenchman attached to the French mission in Egypt."</ref><ref>ロバート・アーウィン、西尾哲夫訳『必携アラビアン・ナイト 物語の迷宮へ』、p.83-84、平凡社、1998年1月、ISBN 4-582-30803-1</ref><ref name="ikeda472">池田修、ムフシン・マフディー版「アラビアン・ナイト」の登場、「千夜一夜物語と中東文化---前嶋信次著作集I」に所載、p.472、平凡社東洋文庫669、2000年4月10日初版、ISBN 4-582-80669-4</ref>。結局、この有名な物語は、「アラビアン・ナイト」の外典として存在していたのか、ガランが創作したのか、何によったのか、出所探しは振り出しに戻ってしまった<ref name="ikeda472" />。
なお、「アリババと40人の盗賊」、「[[アラジンと魔法のランプ]]」のように、アラビア語の原典が見当たらない物語群は「orphan
== ギャラリー ==
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== 関連項目 ==
*[[アイウエオリババ]] - 「アリババと40人の盗賊」をモチーフにした、[[生越嘉治]]作の[[小学校]][[低学年]]の学芸会用の児童劇。
*[[アリババグループ]](阿里巴巴) - 中国に本社を置くテクノロジー企業。当作品に由来している。
== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
{{Commons category|
{{ウィキポータルリンク|文学|[[画像:Open book 01.svg|none|34px]]}}
*[http://www.aozora.gr.jp/cards/000083/card43123.html 青空文庫 図書カード:アラビヤンナイト] - [[菊池寛]]『アラビヤンナイト03 アリ・ババと四十人のどろぼう』([[青空文庫]])
* {{青空文庫|000879|3768|新字旧仮名|芥川竜之介 リチャード・バートン訳「一千一夜物語」に就いて}}
* {{PDFlink|[http://rnavi.ndl.go.jp/kaleido/tmp/92.pdf 国立国会図書館「アラビアンナイトの翻訳事情」]}}
* [http://www.minpaku.ac.jp/museum/showcase/media/tabiiroiro/chikyujin330 国立民族学博物館教授 西尾哲夫「アラビアンナイト断章」全4回シリーズ]
*[[岩井克人]]『二十一世紀の資本主義論』 - マルジャーナの知恵
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{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:ありははと40にんのとうそく}}
[[Category:千夜一夜物語]]
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