「アリババと40人の盗賊」の版間の差分

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== あらすじ ==
昔、[[ペルシア|ペルシャ]]の国に、貧乏だが真面目で働き者のアリババという男がいた。ある日、アリババが[[ロバ]]を連れて近くの山へ行き、[[薪]]を集めていると、40人の[[盗賊]]の一団が奪った[[宝|財宝]]を[[洞窟|洞穴]]の中に隠しているのを偶然目撃した。盗賊の頭領が「[[開けゴマ|おいシムシム、お前の門を開けろ!]]」<ref>前嶋信次の訳による。『アラビアン・ナイト 別巻』アラジンとアリババ、東洋文庫443)p.198,200,213など、[[平凡社]]〈[[平凡社東洋文庫]]〉、1985年3月8日初版第1刷</ref><ref>原典のアラビア語では、「イフタフ(開け)・ヤー(おい)・シムシム(胡麻)」と言う。日本では一般に「開け、胡麻」と訳されていることが多いが、これは英語版に見られる「Open Sesame」からの[[翻訳#重訳|重訳]]である。</ref>(「シムシム」は[[ゴマ|胡麻]]の意味)という[[呪文]]を唱えると、洞穴の入口をふさぐ岩の扉が開き、盗賊たちが洞穴の中に入ると自動的に岩の扉が閉まる。しばらくすると再び岩の扉が開き、盗賊たちが外に出てた後、扉は再び閉まった<ref>岩の扉を閉じる呪文については、原典には記載が無い。</ref>。その一部始終を木の陰に隠れて見ていたアリババは、盗賊たちが立ち去るのを待って自分も洞穴の中に入り、手近な場所に置いてあった[[金貨]]の袋をロバの背中に積めるだけ積んで家へ持ち帰った。
 
かくして大金持ちになったアリババは、このことを妻以外の者には秘密にしていたが、不運にも元から金持ちの[[兄]]・カシムに知られてしまった。強欲でねたみ深い性格のカシムは、金貨を手に入れた経緯と洞穴の扉を開けるための呪文をアリババから無理やり聞き出し、自分も財宝を狙って洞穴に忍び込んだ。ところが、洞穴の中の財宝に夢中になり過ぎて、扉を再び開ける呪文を忘れてしまい、洞穴から出られなくなったところを、戻ってた盗賊たちに見付かり<ref>「すぐに見つかった」とするものと「もう少しで盗賊たちが洞穴から出ていくところまで身を隠していたが、クシャミをして見つかった」とするものとがある。</ref>、カシムはバラバラに切り刻まれて惨殺されてしまった。
 
カシムがいつまでも帰ってないのを心配したアリババは、翌日になって洞穴へ向かい、盗賊たちの手でバラバラにされたカシムの[[死体]]を発見した。驚いたアリババは、カシムの死体を袋に入れ、ロバの背中に乗せて密かに持ち帰り、カシムの家に仕えていた若くて聡明な女[[イスラームと奴隷制|奴隷]]のモルジアナ<ref>モルジアナ(マルジャーナ)という名前は、“小さな真珠”の意味がある。かつてアラビアでは、奴隷を宝石・珊瑚・真珠・花などの名で呼ぶ風習があった。</ref>と相談の末、遠くの町から仕立屋の老人<ref>ちなみに老人の職業は靴屋であったとする話もある(靴屋も仕立屋と同じく針と糸で物を縫い合わせる作業が得意であるため)。</ref>を呼んで、死体を元通りの形に縫い合わせてもらい、表向きはカシムが病死したことにして、内密に[[葬儀]]をすませた。その後はカシムの家と財産もアリババの物になり、アリババは[[甥|カシムの一人息子]]を[[養子縁組|養子]]にして、この上もなく恵まれた身分の男になった。
 
一方、洞穴の中から金貨の袋と死体が持ち去られたことに気付いた盗賊たちは、死んだ男の他にも仲間がいると考えて、すぐに捜査を始め、死体を縫い合わせた老人を見付けて、情報を聞き出すことに成功した。そして、老人の協力でアリババの家(元・カシムの家)を見付けた盗賊たちは、頭領が20頭のロバを連れた旅の油商人に変装し、ロバの背中に2つずつ積んだ油容器の中に39人の手下たちが隠れ<ref>ちなみに、盗賊たちがアリババの家を捜索する際に失敗した2人が頭領に処刑されたとする話もあり、その場合には残りの手下は37人で、頭領が連れていたロバの数は19頭になる。いずれにせよ、1つの容器だけ[[偽装]]のために本物の油が入っていた点は共通している。</ref>、アリババの家に一夜の宿を求めて泊めてもらう作戦で家の中に入り込み、家の人々が寝静まるのを待ってアリババを殺そうと企てたが、庭に運び込まれた油容器の中身が盗賊たちと気付いたモルジアナは、1つだけ本物の油が入っている容器を探し当てると、急いでその油を台所へ運び込み、大鍋に入れて[[沸騰]]させ、煮えたぎった油を全ての容器に注ぎ込んで、中に隠れている盗賊たちを一人残らず殺した。そうとも知らず夜中に寝床から起き上がり、仕事に取りかかるために手下たちを呼ぼうとした頭領は、容器の中をのぞき込んで手下たちの全滅を知ると、驚いて単身アリババの家から逃げ去った。
 
しばらくの後、盗賊の頭領は偽名を使って今度は宝石商人になりすまし、カシムの息子が経営する商店の近所に住み着いて、カシムの息子と親しくなり、アリババの家に客人として招かれた。頭領は服の中に隠し持った短剣でアリババを殺すつもりだったが、またしても客人の正体を見抜いたモルジアナは、[[余興]]として客人に[[舞踊]]を披露すると言い、彼女も短剣を持って踊りながら隙を見て頭領を刺し殺し、アリババたちに客人の正体を晒した。
 
かくして40人の盗賊たちは、聡明なモルジアナの機転により全員返り討ちにされた。この功績によって、モルジアナは奴隷の身分から一躍カシムの息子の妻になり、洞穴の中に残っていた莫大な財宝は国中の貧しい人たちに分け与えられて、アリババの家は末永く栄えた。