「ニホンオオカミ」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
勒犬 (会話 | 投稿記録)
編集の要約なし
30行目:
 
他の地域のオオカミよりも小さく中型日本犬ほどだが、中型日本犬より脚は長く脚力も強かったと言われている。尾は背側に湾曲し、先が丸まっている。[[吻]]は短く、日本犬のような段はない。耳が短いのも特徴の一つ。周囲の環境に溶け込みやすいよう、[[夏]]と[[冬]]で毛色が変化した。
[[ファイル:Canis lupus hodophilax.jpg|thumb|250px|right|1878雑誌『菊 Chrysanthemum』1881、[[ロンドン動物園]]2月号の記事贈ら掲載されたニホンオス個体カミの図。]]
 
== 分類 ==
48行目:
[[岐阜大学]][[教授]]の[[石黒直隆]]によりニホンオオカミの骨からDNAが取りだされて調査された結果、'''大陸のオオカミとも犬とも遺伝的に異なる系統であること、本州、四国、九州の各地域で捕獲されたサンプル間の遺伝的差異は小さく、遺伝的に均一性の高い集団であることが確かめられ'''、この論文は、2009年度の[[日本動物学会]]誌11月号に発表された<ref>[[朝日新聞]] 2009年 12月15日 火曜日 付</ref>。石黒教授は朝日新聞のインタビューに、「ニホンオオカミは限られた遺伝子集団であり、日本列島で孤立化した種」、「ニホンオオカミの起源となったオオカミもすでに絶滅しているのかもしれないが、探し出したい」旨のコメントを残している。
 
同論文中に示された遺伝子[[系統樹]]ではニホンオオカミ集団は[[単系統]]のクラスターを形成しているが、系統樹全体で見ればイヌ(''Canis lupus familiaris'')を含む'''ハイイロオオカミ(''Canis lupus'')の種内に包摂されているため、大陸のハイイロオオカミ系統とは亜種レベルの差異である'''ことが示唆されており、遺伝系統の考察においても慎重ながらニホンオオカミは大陸のオオカミの一系統に由来すると推測されている<ref>[http://www.zoology.or.jp/news/index.asp?patten_cd=12&page_no=297 トピックス■絶滅したニホンオオカミの遺伝学的系統]</ref>。
 
その後石黒は2012年の[[日本獣医師会]]雑誌 第65巻第3号に掲載された論文<ref>[http://nichiju.lin.gr.jp/mag/06503/d1.pdf 絶滅した日本のオオカミの遺伝的系統]『日本獣医師会雑誌』 第65巻第3号</ref>の中で、「ニホンオオカミもユーラシア大陸由来のタイリクオオカミから派生した地方集団と考えて、島に閉じ込められて体型が小型化した[[島嶼化]]集団と推測するとわかりやすい」、「今後、朝鮮半島や台湾などユーラシア大陸の島嶼部で、ニホンオオカミと同じ系統を示すタイリクオオカミの依存種〔ママ〕がいないか調査してみたいものである」と述べており、2009年時点よりも明確に別亜種説を採っている。
 
=== ヤマイヌとオオカミ ===
133行目:
* [[国立科学博物館]](剥製、全身骨格標本:[[1870年]]頃・[[福島県]]産オス・冬毛)
* [[東京大学農学部]](剥製:[[1881年]][[岩手県]]産メス・冬毛)
* [[和歌山県立自然博物館]](剥製:[[1904年]][[和歌山県|和歌山]]・[[奈良県]]境[[大台ケ原山|大台山系]]産メス?・冬毛、[[和歌山大学]]より寄)‐吻から額にかけてのラインに段があり、[[日本犬]]のような顔になっている。標本を作る際のミスとの意見もある。
* [[埼玉県]][[秩父市]]の[[秩父宮記念三峯山博物館]](2例の毛皮、[[2002年]]に相次いで発見・確認)
* [[熊本市立熊本博物館]](全身骨格標本) - [[熊本県]][[八代郡]]京丈山洞穴より、[[1976年]]から[[1977年]]にかけての調査で発見された。[[放射性炭素年代測定|放射性炭素法]]を使って骨の年代測定を行った結果、この個体は[[室町時代]]から[[江戸時代]]初期に生きていたことが分かった。このほか[[1969年]]に、同じく熊本県[[泉村 (熊本県)|泉村]]矢山岳の石灰岩縦穴からも頭骨が発見されている。
152行目:
[[ファイル:Honshu-wolf-skull.jpg|thumb|250px|right|ニホンオオカミの頭蓋骨標本]]
* [[本州]]、[[四国]]、[[九州]]の[[神社]]、[[旧家]]などに、ニホンオオカミのものとして伝えられた頭骨が保管されている。特に[[神奈川県]]の[[丹沢]]ではその頭骨が魔よけとして使われていた為、多く見つかっている。
* [[2004年]][[4月]]には、筋肉や皮、脳の一部が残っているイヌ科の動物の頭骨が[[山梨県]][[笛吹市]][[御坂町]]で発見され、国立科学博物館の鑑定によりニホンオオカミのものと断定された(御坂オオカミ)。DNA鑑定は可能な状態という。[[中部地方]]や関東地方の山間地には狼信仰があり、民間信仰と関係したオオカミ頭骨が残されている。御坂オオカミは江戸後期から明治に捕獲された個体であると推定されており、用途は魔除けや子どもの夜泣きを鎮める用途が考えられ民俗学的にも注目されている。現在は[[山梨県立博物館]]に所蔵されている<ref>御坂オオカミの形態学的形質については、[[遠藤秀紀]]・[[酒井健夫]]・伊藤琢也・鯉江洋・木村順平「山梨県の民家で発見されたニホンオオカミ頭蓋の骨学的および画像解析学的検討」『日本野生動物医学会誌(9-2、[[2004年]])、文化史的背景の検討については植月学「甲州周辺における狼信仰-笛吹市御坂町に伝わるニホンオオカミ頭骨をめぐって-」『山梨県立博物館研究紀要』(第2集、[[2008年]])</ref>。
* [[栃原岩陰遺跡]]の遺物を収蔵展示している[http://www.ytg.janis.or.jp/~kitaaiki/museum/index/index.htm [北相木村考古博物館]]にはニホンオオカミの骨の破片が展示されているが、その他多くの縄文・弥生遺跡からニホンオオカミの骨片が発掘されている<ref>[http://www.jomon-no-mori.jp/foodjyo.htm 縄文の食生活]</ref>。
 
== 参考文献 ==