「炭酸水素ナトリウム」の版間の差分

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| AdminRoutes = 静脈注射, 経口}}
| Section7 = {{Chembox Hazards
| ExternalMSDS = [http://www.agc.com/chem-msds/pdf/S-0050_2.pdf SDS] [[AGC]]<br />[httphttps://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/144-55-8.html SDS例] [[厚生労働省]]<br />{{ICSC-small|1044}}
| MainHazards = 激しい目のかゆみ
| NFPA-H = 1
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| OtherCpds = [[硫酸水素ナトリウム]]<br />[[リン酸水素ナトリウム]]}}
}}
'''炭酸水素ナトリウム'''(たんさんすいそナトリウム、{{lang-en-short|sodium hydrogen carbonate)carbonate}})、別名'''重炭酸ナトリウム'''(じゅうたんさんナトリウム、{{lang-en-short|sodium bicarbonate}}、ソディウム バイカーボネイト、ビカ、重炭酸曹達(ソーダ、略して'''重曹'''とも)は、[[化学式]] '''NaHCO<sub>3</sub>'''で表される、[[ナトリウム]]の[[炭酸水素塩]]である。
 
[[常温]]で白色の[[粉粒体|粉末]]状である。水溶液の[[水素イオン指数|pH]]は[[塩基|アルカリ性]]を示すものの、[[フェノールフタレイン]]を加えても変色しない程度の弱い塩基性である。水には少し溶解し、[[メタノール]]にもわずかに溶解するものの、[[エタノール]]には不溶である。具体的には、水(0 ℃) 100 g につき 6.9 g、水 (20 ℃) 100 g につき 9.6 g、メタノール(25 ℃) 100 g につき 0.8 g 溶解する。
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: <chem>NaOH + CO2 -> NaHCO3</chem>
工業的には、[[ソルベー法]]によって多量に製造される。これは、炭酸水素ナトリウムの水への[[溶解度]]が比較的低いことから[[沈殿]]することによる、[[複分解]]反応である。
: <chem>NaCl + H2O + NH3 + CO2 -> NH4Cl + NaHCO3 (v)</chem>(矢印[[]]は沈殿を意味する)
また、天然の鉱物を精製しても得られる。日本では[[AGC]]や[[東ソー]]・[[トクヤマ]]などが生産している。
 
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: <chem>2NaHCO3 ->[\Delta] Na2CO3 + CO2 + H2O</chem>
 
炭酸水素ナトリウムは[[両性 (化学)|両性]]の化合物で、炭酸の[[酸解離定数]]が{{pKa}}<sub>1</sub> = 6.3、{{pKa}}<sub>2</sub> = 10.3 であるため、水溶液は pH = 8.3 程度の弱い塩基性を示す。
: <chem>HCO3^- + H2O <=> H2CO3 + OH^- ,</chem> {{pKa}} <math>= 6.3</math>
: <chem>HCO3^- + H2O <=> CO3^{2-} + H3O^+ ,</chem> {{pKa}} <math>= 10.3</math>
 
酸と反応して炭酸と塩を与え、炭酸は二酸化炭素と水に分解する。
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[[食品添加物]]として[[調理]]に使われる。
 
加熱によって二酸化炭素を発生する性質から、食材に練りこんで加熱すると、多孔質でフワフワかつサクサクした生地ができる。[[ベーキングパウダー]]の代替品として[[速成パン]](特に炭酸水素ナトリウムを用いて膨張させた速成パンは[[ソーダブレッド]]と呼ばれる)や[[クッキー]]、[[パンケーキ]]、[[どらやき]]などを膨らませるのに用いられるほか、[[カルメ焼き]]の欠かせない材料である{{efn|なお、[[ダイジェスティブビスケット]]では、作られた初期に消化に良くなるよう重曹が多く使われていた。}}。
 
口中で炭酸ガスを発生させる[[炭酸水|ソーダ]][[飴]]には、粉末で封入される。[[ワラビ]]などの山菜や[[タケノコ]]の[[灰汁|アク]]抜き、[[松の実]]などの臭み取り、豆を早く煮るための添加、肉を柔らかくする下ごしらえといった用途のほか、[[グレープフルーツ]]や[[夏みかん]]の強烈な[[酸味]]を中和させるために直接かけることや、冷凍[[エビ]]の食感の改善などにも使うことができる。また、[[中華麺]]を打つときに入れる[[かん水]]とは本質的に同じも(炭酸ナトリウムが主)であり、代用として麺打ちにも使われる。
 
このように食品に使用され安全性も高いが、大量に摂取すると[[アルカローシス]]などの問題を引き起こす恐れがあるとされているので、特に幼児が誤食しないように注意する必要はある。合わせて、体重 1 kg 当たり約 1.26 g で、[[呼吸器]]に異常をきたすとのデータもある<ref name="MSDS">[http://www.takasugi-seiyaku.co.jp/prdt/img/pdf/MSDS_048.pdf 『高杉製薬製品安全データシート(炭酸水素ナトリウム,重炭酸ソーダ)』 2006年4月1日 p.3]{{リンク切れ|date=2017年9月}}</ref>(ただし、通常これほどの量を摂取するとは考えにくい)。
 
=== pH調整剤 ===
[[pH調整剤]]として添加の効果が認められている<ref>[https://doi.org/10.5979/cha.1990.72_1 玉露缶ドリンクの品質に及ぼす酸化防止剤並びにpH調整剤の影響]、大森 薫, 久保田 朗, 大森 宏志、茶業研究報告、Vol.1990 (1990) No.72</ref>。[[代謝性アルカローシス]]は、明らかな[[血圧]]降下作用を惹起すると指摘されている。この作用がチアジド系[[降圧剤]]の降圧機序の一因子であることが指摘されている<ref>[https://doi.org/10.1253/jcj.32.1331 高血圧症に関する研究(第I報) : 酸塩基平衡の循環動態因子におよぼす影響について]、竹越 襄、Japanese Circulation Journal、Vol.32 (1968) No.9</ref>。
 
=== 「炭酸水の素」 ===
水に炭酸水素ナトリウムと[[クエン酸]]を混ぜるだけで、[[二酸化炭素|炭酸ガス]]が発生して[[炭酸水]]となるので、飲料の材料としても用いられる。[[砂糖]]を加えて[[サイダー]]にすることや、[[レモン]]を加えてレモンソーダにするということも可能である。ただし、混ぜる際には[[クエン酸ナトリウム]]も発生するため、加圧による[[炭酸飽和]]で作られる市販の炭酸水とは味が異なる。
 
市販の[[粉末ジュース]]の素としても利用されている。
 
=== 洗浄・脱臭 ===
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=== 医薬品 ===
{{未検証|section=1|date=2020年11月}}
[[医薬品]]としては、[[胃酸]]過多に対して[[制酸剤]]として使われる。あくまでその場限りの[[対症療法]]であり、根治とはならない。また、[[胃液]]には[[塩酸]]が含まれていることから炭酸水素ナトリウムは急速に分解し、[[二酸化炭素]]の気泡が発生する。この気泡が[[胃]]を刺激し、さらなる胃液の分泌を促進することが知られている。
{{出典の明記| section = 1| date = 2020年11月}}
 
[[医療用医薬品]]として商品名'''メイロン'''<ref>[https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00055503 医療用医薬品:メイロン]</ref>として販売されてきたが、後発医薬品も幾つか販売されている。[[胃酸]]過多に対しては経口摂取による[[制酸剤]]として使われる。あくまでその場限りの[[対症療法]]であり、根治とはならない。また、[[胃液]]には[[塩酸]]が含まれていることから炭酸水素ナトリウムは急速に分解し、[[二酸化炭素]]の気泡が発生する。この気泡が[[胃]]を刺激し、さらなる胃液の分泌を促進することが知られている。
 
また、点滴剤は[[アシドーシス]]の[[対症療法]]に用いられる。ただし、近位[[尿細管性アシドーシス]]に対しては、点滴ではなく経口的に投与し続けることでアシドーシスの補正を行う。なお、投与が[[ナトリウム]]の過剰摂取につながり、[[高ナトリウム血症]]となることが稀にある。また、炭酸水素ナトリウムを服用または静脈内への水溶液の注射などをすると、[[尿]]の[[水素イオン指数|pH]]をアルカリ側に傾けること(=pHを上げること)ができる。このため、尿のpHが上がると排泄が速くなるような薬物(例えば[[フェノバルビタール]])を、腎臓から尿中へより速く排泄させるために炭酸水素ナトリウムを投与する場合がある<ref>[http://jsct.umin.jp/page048.html その9 バルビタール系薬物]{{リンク切れ|date=2017年10月}}</ref>。
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加えて、めまいを抑制することが経験則として判明している(内耳血流を増加させ、内耳虚血時の酸素分圧の低下を抑制していると考えられるが、発作時における三半規管の状態が観測困難であるため、いまだ確定はしていない)ことから、[[メニエール症候群]]を代表とする内耳障害による悪心・嘔吐を伴う発作に際しては、点滴剤に制吐剤を加えたうえで投与される。これは前述の通り、虚血部位である内耳のアシドーシスの補正・排泄サイクルの鋭化に基づく耳石の排出力の上昇など、炭酸水素ナトリウムの薬効性が複合的に機能することもあり、特に経口摂取が不可能なほどの重篤な発作においては有用となる。
 
このほか、炭酸水素ナトリウムと[[無水リン酸二水素ナトリウム]]を混合したものを、[[坐剤]]として直腸内へ挿入することがある。この2つの物質が反応することによって直腸内で二酸化炭素が発生することを利用し、直腸性便秘(腫瘍などの便の通過障害となる器質的な原因が無く、かつ大腸の動きが鈍いことも原因ではない、直腸に便が溜まるタイプの便秘)の治療に用いられることがある。直腸内で二酸化炭素が発生すると直腸の粘膜を刺激し、結果として排便を促す効果があるとされている<ref>[httphttps://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2359800J1035_1_09/ 新レシカルボン坐剤の添付文書]</ref>。なお、大腸内に二酸化炭素が入り込んでも、いずれ粘膜を通して生体内に吸収されてしまうことが知られている。
 
==== 臨床応用 ====
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=== 農業・園芸 ===
酸性[[土壌]]の[[中和 (化学)|中和]]に用いれば、アルカリ性の土壌を好む植物の生育が良くなる場合があるが、通常、ナトリウムは植物に害を及ぼすので(動物と違い、通常の植物ではナトリウムは有効な生体構成材料として利用できないため(詳細は[[栄養素 (植物)#ナトリウム]]を参照)、多くの植物にとって土壌に残留すると成長に悪影響を及ぼす)、一般的には土壌の中和は重曹ではなく、消石灰([[水酸化カルシウム]])や[[炭酸カルシウム]]が用いられる。一方、農薬としてはハーモメイト水溶剤が登録され、[[ウドンコ病]]などを防除するために一般に販売されている。ただし、炭酸水素ナトリウムは葉を褐変させる薬害が起こりやすいため、より薄い濃度で高い殺菌効果を持つうえに水溶性加里肥料の供給にもなる[[炭酸水素カリウム]](市販の農薬としてはカリグリーン水溶剤がある)の方が多く用いられる<ref>[http://www7.plala.or.jp/organicrose/lowtoxic.htm 低毒性化学農薬]</ref>。
 
=== 学習目的の実験 ===
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== 外部リンク ==
* [http://sitem.herts.ac.uk/aeru/iupac/Reports/1624.htm sodium hydrogen carbonate], Pesticide Properties Database (PPDB)
* [{{Wayback|url=http://rika-net.com/contents/cp0100a/contents/4630/4630.html |title=炭酸水素ナトリウム  理科ねっとわーく(一般公開版)]|date=20171005202209}} - 文部科学省 国立教育政策研究所
* [https://kikakurui.com/k8/K8622-2013-01.html 炭酸水素ナトリウム (試薬) JISK8622:2017]