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{{Infobox 湖
|名称 = 宍道湖
|画像 = [[ファイル:lake_shinji_landsat.jpg|300px|宍道湖]]<br />衛星写真<br /><center>{{Location map|Japan Shimane Prefecture|width=300|float=center|caption=|mark=Cyan pog.svg|marksize=8|label=宍道湖|position=bottom|background=|relief=1}}宍道湖の位置(島根県)</center>
|所在地 = {{JPN}}<br />[[島根県]][[松江市]]、[[出雲市]]
|coords = {{coord|format=dms|region:JP-32_type:waterbody|display=inline,title}}
| 緯度度 = 35 | 緯度分 = 27 | 緯度秒 = 0
| 経度度 = 132 |経度分 = 57 | 経度秒 = 0
|河川 =
|面積 = 79.25<ref name="menseki">{{Cite web|和書|author=国土地理院|authorlink=国土地理院|date=2015-03-06|title=平成26年全国都道府県市区町村別面積調 湖沼面積|url=httphttps://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO/201410backnumber/kosyoGSI-menseki20141001.pdf|format=PDF|accessdate=2015-03-24}}</ref>
|周囲長 = 47
|最大水深 = 6.4
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|透明度 = 1.0
}}
'''宍道湖'''(しんじこ)は、[[島根県]][[松江市]]と[[出雲市]]にまたがる[[湖]]<ref name="menseki"/>。[[一級水系]]の[[斐伊川]]の一部である<ref name="kanri">{{Cite web |和書|url = httphttps://www.cgr.mlit.go.jp/izumokasen/jimusho/suikei-iji-kanri/files/ijikannri-keikaku.pdf |title = 斐伊川水系河川維持管理計画 |publisher = 国土交通省中国地方整備局 |accessdate = 2015-10-09 }}</ref>。
 
[[湖沼水質保全特別措置法]]指定湖沼。[[日本百景]]。主に[[大橋川]]・[[中海]]・[[境水道]]を介して[[日本海]]と接続し、[[湖沼#その他の水質による分類|淡水湖]]ではなく[[湖沼#その他の水質による分類|汽水湖]]となっている([[塩分濃度|平均塩分濃度]]は海水の約1/10である<ref name="kanri"/>)。河川整備計画等では宍道湖合流点より上流側の区間を斐伊川本川と称する<ref name="seibi">{{Cite web |和書|url = httphttps://www.cgr.mlit.go.jp/izumokasen/jimusho/suikei-seibi/files/keikaku_00.pdf |title = 斐伊川水系河川整備計画 |publisher = 国土交通省中国地方整備局 |accessdate = 2015-10-14 }}</ref>。斐伊川本川下流部から境水道まではほぼ水位差がなく潮位も影響を受けている<ref name="kanri"/>。[[ヤマトシジミ]]の一大産地として知られる
 
== 地理 ==
島根県東北部に位置する。面積は日本国内で7番目<ref>{{Cite web|和書|author=国土地理院|date=2015-03-06|title=平成26年全国都道府県市区町村別面積調 湖沼面積20傑|url=http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/MENCHO/201410/large_kosyo.pdf|format=PDF|accessdate=2015-03-24}}</ref>、島根県内では[[鳥取県]]境に位置する[[中海]]に次ぎ、2番目に大きな湖である。形状は東西に長い長方形。東西約17km、南北約6km、周囲長47km。湖の面積の約5割が水深5m以上であり、湖底はほぼ水平となっている。
 
宍道湖は斐伊川本流の一部である<ref name="kanri"/>。斐伊川本流の河口は[[境水道]]から日本海へ注ぐ地点であるが、便宜上、河川整備計画等では宍道湖合流点より上流側の区間を斐伊川本川と称し<ref name="seibi"/>、宍道湖に流れ込む地点を斐伊川本川河口と称している<ref name="kanri"/>。流入河川は、最大流量を誇る斐伊川本川など宍道湖の北、西、南から20数河川に及んでいるが、主な流出河川は東端に位置し、中海へ流れる[[大橋川]]である。宍道湖と中海は日本では数少ない連結汽水湖となっている<ref name="seibi"/>。
 
斐伊川は水防警報河川であり、宍道湖は水位周知河川に指定され避難判断水位の情報提供などが行われる<ref name="seibi"/>。
 
宍道湖の東北部に位置する[[佐陀川]]は[[天明]]時代に掘削された排水用の人工[[]]であり、直接日本海([[恵曇]]港)と接続している。これによって[[島根半島]]東部は本土と切り離されている。底質は沿岸部の100~200mが[[砂]]や砂質泥、それ以外は大部分が[[泥]]である。[[透明度]]は1.0mと悪く[[富栄養化]]が進んでいる。湖内に位置する島は、[[嫁ヶ島]]だけである。
底質は沿岸部の100~200mが[[砂]]や砂質泥、それ以外は大部分が[[泥]]である。[[透明度]]は1.0mと悪く[[富栄養化]]が進んでいる。湖内に位置する島は、[[嫁ヶ島]]だけである。
 
== 生物 ==
{{wikisource|特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の指定湿地を指定した件 (平成十七年環境省告示第百二十三号)|宍道湖を特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約の指定湿地に指定した件}}
宍道湖の周辺湖岸には[[ヨシ]]が生育しているほか、[[アオノリ]]等の[[海藻]]も生育している<ref>環境省報道発表資料 『[httphttps://www.env.go.jp/info/iken/h170921f/b-6_2.pdf 国指定宍道湖鳥獣保護区宍道湖特別保護地区指定計画書(案)]』 平成17年8月22日。</ref>。宍道湖は有数の[[水鳥]]の渡来地であり、240種以上の[[鳥類]]が生息しており、特に[[雁|ガン]]・[[カモ]]類は毎年40,000羽を超え、なかでも[[キンクロハジロ]]が20,000羽以上、[[スズガモ]]が5,000羽以上が確認されている<ref name = "kankyo">環境省報道発表資料 『[httphttps://www.env.go.jp/info/iken/h170921f/b-6_1.pdf 国指定宍道湖鳥獣保護区指定計画書(案)]』 平成17年8月22日。</ref>。さらに、[[マガン]]、キンクロハジロ、スズガモについては、全世界の水鳥の一種の個体数の1%以上を支えている。それら鳥類の餌となる[[スズキ (魚)|スズキ]]、[[ボラ]]、[[シラウオ]]、[[ワカサギ]]等の[[魚類]]や[[ヤマトシジミ (貝)|ヤマトシジミ]]、[[マシジミ]]<ref name=":0">{{Cite web |title=Shinji-ko {{!}} Ramsar Sites Information Service |url=https://rsis.ramsar.org/ris/1556 |website=rsis.ramsar.org |access-date=2023-04-10 |date=2005-11-8}}</ref>、[[イシマキガイ]]、[[{{仮リンク|カワザンショウガイ]]|ceb|Assiminea japonica}}等の貝類が生息している<ref name = "kankyo"/>。宍道湖では、これまでに68種の甲殻類が報告されている<ref>Yamauchi, T. (2004) [http://sir.lib.shimane-u.ac.jp/metadb/up/bull.pl?id=5779 A checklist of published crustacean species from brackish lakes, Shinjiko and Nakaumi, Japan]. Laguna, 11: 69-86.</ref>。稀少種として{{仮リンク|シンジコハゼ|es|Gymnogobius taranetzi}}が生息する<ref name="seibi"/>。
 
[[2005年]](平成17年)11月1日に宍道湖国指定[[鳥獣保護区]](集団渡来地)に指定され(面積7,851[[ヘクタール|ha]]、うち特別保護地区7,652ha)、同年[[11月8日]]に、近接する[[中海]]と共に[[ラムサール条約]]に登録された<ref name=":0" />
 
ネオニコチノイド系の殺虫剤農業利用の流入により、水中プランクトンを捕食するウナギ等の絶対数が激減したことを食物連鎖の乱れが発生している<ref>{{Cite journal|last=Yamamuro|first=Masumi|last2=Komuro|first2=Takashi|last3=Kamiya|first3=Hiroshi|last4=Kato|first4=Toshikuni|last5=Hasegawa|first5=Hitomi|last6=Kameda|first6=Yutaka|date=2019-11-01|title=Neonicotinoids disrupt aquatic food webs and decrease fishery yields|url=https://science.sciencemag.org/content/366/6465/620|journal=Science|volume=366|issue=6465|pages=620–623|language=en|doi=10.1126/science.aax3442|issn=0036-8075|pmid=31672894}}</ref>
 
<br />
 
== 歴史 ==
中海や島根県内の[[神西湖]]と同様、浅海の一部が堆積物により外海と絶縁されて、浅い湖となった[[潟湖]](海跡湖)の一つ。湖が形成されたのは約1万年前だと推定されている。なお、主に西岸の埋め立てのため、[[1965年]]当時と比較して面積が10%程度減少している。
 
宍道湖中海の地形は時代よりと共に変化し、[[縄文時代]]早期には海進期にあたる<ref name="#1">会下(2010)、p.66</ref>。同時期に宍道湖は大社湾と接続し古宍道湾となり、中海は美保湾と接続して古中海湾となり、沿岸には谷部が形成された<ref>会下(2010)、p.66< name="#1"/ref>。後に古宍道湾は[[砂州]]の発達や河川の沖積により閉塞し、古中海湾も同様の作用で閉塞し、現在の地形が形成された<ref>会下(2010)、p.66< name="#1"/ref>。
 
縄文時代の宍道湖では[[石錘]]や[[骨角器|骨角]]製の[[刺突具]]である[[ヤス]]が多く出土しており、[[網漁]]など内湾性漁業が行われていたと考えられている。[[釣針]]や[[銛]](もり)の出土は少ない<ref>会下(2010)、p.71</ref>。
 
斐伊川はもともと出雲平野を西に流れ日本海に注いでいたが、寛永年間の大洪水を契機に宍道湖へと注ぐようになった<ref name="seibi"/>。[[1787年]]には北岸から流出して[[日本海]]にそそぐ人工水路の[[佐陀川]](さだがわ)が洪水対策、新田開発、水運効果の向上を目的として掘削された。この工事が行われた結果、主に、水運による交易が促進され、米や海産物の取引が行われた。河口付近には御番所や[[米蔵]]ができ、通行税や上納米の集中業務が行われた<ref>佐陀川開削と江戸時代の治水技術のことなど 寺田彰憲 [http://peshimane.net/wp/wp-content/uploads/2014/06/2010-05%E4%BD%90%E9%99%80%E5%B7%9D%E8%A6%96%E5%AF%9F%E5%A0%B1%E5%91%8A%EF%BC%88%E3%81%9D%E3%81%AE%EF%BC%92%EF%BC%89%EF%BC%8D%E4%BD%90%E9%99%80%E5%B7%9D%E9%96%8B%E5%89%8A%E3%81%A8%E6%B1%9F%E6%88%B8%E6%99%82%E4%BB%A3%E3%81%AE%E6%B2%BB%E6%B0%B4%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A9%EF%BC%8D%E5%AF%BA%E7%94%B0%E5%BD%B0%E6%86%B2.pdf http://peshimane.net/wp/wp-content/uploads/2014/06/2010-]</ref>。
斐伊川はもともと出雲平野を西に流れ日本海に注いでいたが、寛永年間の大洪水を契機に宍道湖へと注ぐようになった<ref name="seibi"/>。
 
水質の悪化により[[1959年]]以降遊泳禁止となっている<ref>http://www.pref.shimane.lg.jp/shinjiko_nakaumi/mekanizumu-WG/mekanizumu_wg.data/wg2-sankou-shiryo1-2.pdf 島根県 環境政策課宍道湖・中海対策推進室 「中海・宍道湖の水環境の変遷」</ref>。[[1974年]]に[[中浦水門]]建設が始まり淡水化事業が始まったが、[[アオコ]]の発生被害やシジミの減少などの報告を受けて環境破壊を懸念する声が多かったこと、また、[[減反政策]]が進む中、淡水化を実施しても淡水の用途に疑問があることから[[1988年]]に淡水化が延期され、[[2009年]]に一度も水門として機能することなく撤去された。
 
[[1972年]]の[[昭和47年7月豪雨]]では宍道湖西岸で堤防が決壊して[[出雲空港]]が10日間にわたり閉鎖された<ref name="seibi"/>。
 
== 漁業利用 ==
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[[ファイル:Lake Shinji Furue.jpg|thumbnail|300px|松江ウォーターヴィレッジ付近からの夕景]]
[[ファイル:Shimane-Lake Shinji-m.jpg|サムネイル|300x300ピクセル|嫁ヶ島の残照]]
[[1951年]]、松江市は宍道湖十景を選定した<ref>[http://www.matsue-yado.com/shimane/kumiai.html 島根旅館組合・島根県紹介]</ref>。内容は、[[松江城]]の雪、[[天倫寺]]の晩鐘、[[秋鹿]]の出雲富士、[[一畑寺]]の月、[[平田]]の愛宕山の秋色、宍道の宿の夕鴨、[[玉造灘]]の春霞、[[嫁ヶ島]]の残照、白潟沖のえびかがり、大橋の朝霧である。
 
[[松江城]]の天守閣(国の[[重要文化財]]→2015年[[国宝]]に指定)は、宍道湖から約500m北に位置する。天倫寺の鐘は国の重要文化財であり、表面の彫刻で有名。松江市街の西のはずれの湖岸にほど近い台地にある。出雲富士は[[大山 (鳥取県)|大山]]の別名。[[一畑寺]]は出雲市にある一畑薬師の略名、眼病に効果があるといわれている。愛宕山は、出雲市にある斐伊川を見下ろす丘。えびかがりとは、かがり火を使って湖内の[[エビ]]を採取する漁法の一種。[[大橋 (大橋川)|大橋]]とは宍道湖が大橋川に流れ出してまもなくの位置にかかる橋。晴天時に蒸発した水蒸気が朝方霧になりやすいことによる。
 
== 交通 ==
宍道湖の北岸には[[国道431号]]と[[一畑電車]][[一畑電車北松江線|北松江線]]が並行する。南岸と東岸には、[[国道9号]]、[[山陰本線]]が沿っている。西南端には[[出雲空港|出雲縁結び空港]]が位置する。東端で大橋川への出口には[[宍道湖大橋]]が架橋されている。
 
山陰本線[[松江駅]]([[やくも|やくも号]]など特急停車駅)あるいは[[乃木駅]](普通列車のみ)から宍道湖まで徒歩10分。主な宿泊施設は、[[松江しんじ湖温泉]]、[[玉造温泉]](ただし宍道湖には面していない)。
 
== その他 ==
=== 違法埋立問題 ===
宍道湖の南岸のうち、松江市内のエリアの一部において、地元の[[建設会社|建設業者]]が[[河川法]]に違反する違法な埋め立てを[[1995年]]頃から継続的に行っていることが、[[2015年]][[11月19日]]付の[[毎日新聞]]などで報じられた。[[国土交通省]]などは[[1997年]]頃から原状回復を求めているが、業者側は、埋め立てているエリアが[[江戸時代]]に[[松江藩]]が認めた「水代<ref>[http://mainichi.jp/articles/20151119/ddm/012/040/040000c ことば:宍道湖の水代] - 毎日新聞</ref>」に該当するとして応じておらず、同省側も命令や強制撤去などには踏み切っていない。これを不服とした地元住民らは、工事差止を求め[[松江地方裁判所]]に[[仮処分]]を申請している<ref>[https://web.archive.org/web/20151120183703/http://mainichi.jp/select/news/20151119k0000m040133000c.html 宍道湖:建設業者が違法埋め立て、江戸期の権利を主張] 毎日新聞 2015年11月19日(Internet Archive)</ref>。その後[[2018年]][[6月13日]]に、当該の建設会社の71歳の社長が河川法違反容疑で[[島根県警察]]に逮捕され<ref>[https://mainichi.jp/articles/20180614/k00/00m/040/093000c 河川法違反 宍道湖違法埋め立て、71歳男逮捕 島根県警] 毎日新聞 2018年6月14日</ref>、[[6月21日]]に[[松江簡易裁判所]]から[[罰金]]20万円の[[略式手続|略式命令]]を受けた<ref>[https://mainichi.jp/articles/20180622/k00/00m/040/086000c 松江簡裁 河川法違反罪で会社役員に略式命令] 毎日新聞 2018年6月21日</ref>。
 
== 宍道湖に関連した作品 ==
* 『[[出雲国風土記]]』の「[[国引き神話]]」
*: [[淤美豆奴神|八束水臣津野命]](やつかみずおみつのみこと)が最初に作った[[出雲国]]が小さいことから、[[新羅]]もしくは[[隠岐諸島|隠岐]]から引っ張ってきた土地が宍道湖北岸の[[島根半島]]であるという。
* [[美味しんぼ]]の原作14巻、アニメ版66話『椀方試験』
* 嫁ヶ島伝説
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== 脚注 ==
{{reflist|2}}
 
== 参考文献 ==
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== 外部リンク ==
* [httphttps://shinjiko.jp/ 宍道湖漁業協同組合]
* [httphttps://www.kisuiikiesrec.shimane-u.ac.jp/ 島根大学汽水域 エスチュアリー研究センター (TheEstuary Research Center for Coastal Lagoon Environments)]
*{{Kotobank}}
 
{{日本のラムサール条約登録湿地}}