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'''上水道'''(じょうすいどう)とは、一般的には飲用に適する[[水]]を供給するための施設を指す<ref name="masuda">{{Cite journal |和書 |author=増田正直 |authorlink= |title=中水道についての検討 |journal= 水利科学|volume=13 |issue=3 |publisher=水利科学研究所 |date=1969-08 |pages=39-56 |url=https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010845805.pdf}}</ref>。上水道は水を供給する施設であり、水を排出する施設である[[下水道]]と対置される<ref name="masuda" />。単に「'''水道'''」という場合も、導管などの工作物により、人の飲用に適する水を供給する施設を指すことが多く<ref>{{Cite web |url=https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/000476640.pdf |title= 水道の現状について|publisher=厚生労働省 |date= |accessdate=2024-02-25}}</ref>、下水道などとの区別を強調する場合に上水道と呼ばれることが多い。
'''上水道'''(じょうすいどう)とは、一般に飲用可能な[[水]]の公共的な供給設備一般を指す。上水道には単に「'''水道'''」という呼び方もあり、[[下水道]]や[[中水道]]などとの区別を強調する場合に上水道と呼ばれることが多い。'''水道水'''の用途には、飲用、洗濯、調理、[[便器|トイレ]]の水洗などがある。屋内水道水は、古くから存在していたが、19世紀後半に現在の[[先進国]]で普及し始めるまで、ごく少数の人々しか利用できなかった「屋内[[配管]]」を通じて配水されている。水道水は20世紀に多くの地域で一般的になり、現在では主に貧困層で不足している。
 
近代的な意味では、有圧送水、ろ過浄水、常時給水の3つの特徴を有するものをいう(近代水道)<ref name="utsunomiya" />。一方、[[開発途上国]]への経済技術協力の報告書等では、必ずしも各家庭に直接給水するシステムのみを指す概念ではない<ref name="jica59" />(後述)。
== 上水道の構成 ==
=== 水源 ===
*[[表流水]]([[川|河川]]・ダム)
*[[伏流水]]
*[[地下水]]
**浅[[井戸]]
**深井戸
**[[湧水]]
*[[海水淡水化|海水]]
 
なお、法制度上は一定規模以上のものを「上水道(事業)」と呼ぶ場合がある([[日本]]では上水道事業と[[簡易水道|簡易水道事業]]を区別する)<ref name="soumu" />。
=== 構成要素 ===
 
*取水施設
=== 構成 ===
*浄水施設
古代より[[河川]]や[[湖沼]]から水路を通して集落さらには[[都市]]に水を供給することが行われ、水源から開水路や石樋、木樋などを設置して自然流下で給配水する方式がとられた<ref name="utsunomiya">{{Cite web |url=https://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/013/818/kinensi06.pdf |title=宇都宮市水道100周年下水道50周年史 通史編|publisher=宇都宮市 |date= |accessdate=2024-02-25}}</ref><ref name="sakai">{{Cite web |url=https://water.city.sakai.lg.jp/material/files/group/2/honsatsu02-2.pdf |title=第2章 近代水道の創設|publisher=堺市上下水道局 |date= |accessdate=2024-02-25}}</ref>。しかし、[[19世紀]]に近代水道の三大発明と称される「鋳鉄管」「砂ろ過」「[[ポンプ]]」などの技術革新を生じ、近代水道の3つの大きな特徴とされる「有圧送水」「ろ過処理」「常時給水」が[[ヨーロッパ]]から普及していった<ref name="utsunomiya" /><ref name="sakai" />。
*貯水施設
 
*配水施設
上水道は一般的には飲用に適する水を供給するための施設を指すが、飲用を含まない雑用に使用するための水道施設や上水道で使用された水を処理して再利用する水道もあり、それぞれ雑用水道や[[中水道]]と呼ばれることもある<ref name="masuda" />。前者は工業用水などとして法律上あるいは施設上区別されることがある([[工業用水道]]や工業用水管など)<ref>{{Cite web |url=https://www.pref.ibaraki.jp/doboku/kensa/kanri/documents/01_12.pdf |title=第12編 上水道・工業用水道編|publisher=茨城県 |date= |accessdate=2024-02-25}}</ref>。上水道も実際には飲用よりも雑用に使われる比率が高いが、生活用水としては飲用に適する水質であることが望ましく、上水道と別に雑用水道を全面的に敷設すると総合的に水コストが高くなるなどの問題がある<ref name="masuda" />。
*送水ポンプ
 
*導管
なお、開発途上国では水道施設について三種に区分し、経済技術協力分野ではこれらを総称して「上水道」と呼ぶ場合がある<ref name="jica59">{{Cite web |url=https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/10315406.pdf |title=昭和59年度経済技術協力評価調査(フィリピン・インドネシア-上下水道セクター編)|publisher=国際協力事業団|date= |accessdate=2024-02-25}}</ref>。
*水量計
* Level I System - [[井戸]]や泉に周囲の家庭が汲みにくることができるようにした設備<ref name="jica59" />
* Level II System - 水源から地域の公共栓まで給水し、その周囲の家庭が汲みにくることができるようにした設備<ref name="jica59" />
* Level III System - 水源から各家庭に直接給水する設備<ref name="jica59" />
 
== 上水道の歴史 ==
=== 世界の上水道の歴史 ===
世界の水道の起源として紀元前312年に整備された[[古代ローマ]]の[[アッピア水道]]が挙げられることがある<ref name="sakai" />。しかし、より古く[[インダス文明]]の[[モヘンジョダロ]]が挙げられることもある<ref name="utsunomiya" />。
水道のルーツは[[古代]][[地中海]]沿岸諸国とされる。当初は、深いところにある[[井戸]]の水を遠くに運ぶための[[水路]]であったと考えられている。[[古代ローマ|古代ローマ人]]は後世「[[ローマ水道]]」と呼ばれることになる巨大なネットワークを構築したが、[[中世]]以後衰微する。
 
近代水道の近代化は始まりについても様々な捉え方があり、[[1787年]][[パリ]]で蒸気式揚水用ポンプが使われたのが始まりと紹介するものもあれば<ref name="sakai" />、[[18291808年]]に[[ロンドンイギリス]][[砂濾過池グラスゴー]]による浄水設備の設置以降のことあり、鉄製パイプによる[[水道管]]会社が横流れ式開発など[[19世紀]]の[[ヨーロッパ]]砂・砂利ろ過池急速に発達ろ過て給水を行っのを始まりと紹介するものもある<ref name="utsunomiya" />
 
=== 日本の上水道の歴史 ===
[[File:Sluiceway of Gosen Aqueduct 4 (masu).JPG|thumb|200px|right|日本現役最古の上水道である轟泉水道]]
日本で記録に残る最古の水道は[[北条氏康]]が[[小田原城]]下に整備した[[小田原早川上水]]とされており、木樋で給配水を行い、[[炭]]や砂によるろ過も採用されていたとされる<ref name="utsunomiya" />。[[豊臣秀吉]]の[[小田原征伐]]に参陣した諸大名たちは、この上水を見て、自領の上水開設の参考にしたものと考えられている<ref>{{Cite book |和書 |author=石井啓文 |year=2001 |title=小田原の郷土史再発見 |publisher=夢工房 |NCID=BA75977282}}</ref>。
[[File:HS Palmer.JPG|thumb|200px|right|ヘンリー・スペンサー・パーマー胸像(近代水道発祥の地、横浜市野毛山公園)]]
 
日本では、[[16世紀]]半ば、[[北条氏康]]の小田原支配時に[[早川 (神奈川県)|早川]]から水を引き、[[小田原城]]下に飲用として供した[[小田原早川上水]]が最古の水道と考えられている。
 
[[豊臣秀吉]]の[[小田原征伐]]に参陣した諸大名たちは、この上水を見て、自領の上水開設の参考にしたものと考えられている<ref>{{Cite book |和書 |author=石井啓文 |year=2001 |title=小田原の郷土史再発見 |publisher=夢工房 |NCID=BA75977282}}</ref>。
 
[[徳川家康]]もその一人で、[[1600年]]頃の[[江戸]]の都市建設のために[[井之頭池]]から引いた[[神田上水]]をはじめ、その後、[[玉川上水]]、[[千川上水]]などが江戸の町に引かれていった(後に[[青山上水|青山]]・[[本所上水|亀有]](本所)・[[三田用水|三田]]の3つを加えて[[江戸の六上水|「六上水」]]と称した)。
 
現代から見れば、浄水施設や各戸給水がないという問題点があったものの、当時世界でもっとも進んだ設備を有していた。
 
元和2年(1616年)年、赤穂藩の池田氏は埋設式かつ各戸給水の都市型上水道を敷設した。
海から近く、井戸に海水が混じるため、都市開発のために真水が必須であった赤穂では、郡代垂水半左衛門指揮の下に、城中だけではなく城下の世帯にまで行き届く水道を整備した。埋設管部分には備前焼の土管を用い、堀を越える際は地中でサイホンを用いていた。
 
<!---日本で最初に本格的都市型、埋設式上水道を敷設したのは、--->次いで、讃岐[[高松藩]]と言われている。藩主[[松平頼重]]は、[[玉川上水]]より9年早い[[寛永]]21年(1644年)、[[矢延平六]]に命じて、高松城下に、配水枡・配水管を地中に埋設した本格的な上水道を敷設した。
 
[[1590年]](天正18年)には徳川家康の命で[[江戸]]に[[井之頭池]]などを水源とする小石川上水(後の[[神田上水]])が整備され<ref name="sakai" /><ref name="utsunomiya" />、このときに施設の名称として「水道」が初めて登場したとされる<ref name="sakai" />。その後、江戸の人口増加に対応して、[[玉川上水]]、[[青山上水]]、[[本所上水|亀有上水]]、[[三田用水|三田上水]]、[[千川上水]]が整備され、「[[江戸の六上水]]」と称された<ref name="sakai" /><ref name="utsunomiya" />。
また、日本で現在も使われている中で最古の水道は、[[熊本県]][[宇土市]]に在る[[轟水源]]を水源とする[[轟泉自然公園#轟泉水道|轟泉水道]]で[[宇土藩]]初代藩主[[細川行孝]]が造り、[[寛文]]3年([[1663年]])に完成したものである。始めは丸い[[土管]]の[[水道管]]で造られていたが、完成後100年程して6代目藩主[[細川興文]]のとき丈夫で長持ちする石の水道管に改修され今日に至る。
 
また、日本で現在も使われている中で最古の水道は、[[熊本県]][[宇土市]]に在る[[轟水源]]を水源とする[[轟泉自然公園#轟泉水道|轟泉水道]]で[[宇土藩]]初代藩主[[細川行孝]]が造り、[[寛文]]3年([[1663年]])に完成したものである。始めは丸い[[土管]]の[[水道管]]で造られていたが、完成後100年程して6代目藩主[[細川興文]]のとき丈夫で長持ちする石の水道管に改修され今日に至る。
日本の近代的水道は、[[1887年]](明治20年)[[10月17日]]に、[[横浜市|横浜]]の[[外国人居留地]]で給水されたのが始まりである。当時居留地では、井戸を掘っても塩水が混じり、飲用に適さなかった。そこで当時の[[神奈川県]]知事[[沖守固]]は、英国陸軍工兵大佐の技師[[ヘンリー・S・パーマー]]を顧問に招き、資材も英国からの輸入に頼る形で、[[相模川]]の上流に水源を求めて近代水道の建設に着手した。
 
日本で最初の近代水道は[[1885年]](明治18年)4月始められた事は[[1887年]](明治20年)9月に竣工し、翌月から給水が始められ。近代横浜水道は、1890年(明治23年)に水道の全国普及である<ref name="sakai" /><ref name="utsunomiya" />。技術顧問水道事業してイギリス人技師市町村による経営[[ヘンリー・S・パーマー]]内容とする招き、[[水道条例相模川]]が制定されたことの上流より水源を求めて建設に着手し都市部ろ過した水を消毒し、ポンプと鋳鉄管急速市内実用化され送水する設備を有してい<ref name="utsunomiya" />
 
[[1890年]](明治23年)には法制度と財源の確保の裏付けとなる全16条からなる[[水道条例]]が制定され、これに先立って[[1888年]](明治21年)に制定された[[市制町村制]]により水道の市町村公営原則を法制化した<ref name="utsunomiya" />。日本各地では横浜に続き、函館([[1889年]])、秦野([[1890年]])<ref>{{Cite web |title=秦野の水道の歴史・曽屋水道記念公園 {{!}} 秦野市役所 |url=https://www.city.hadano.kanagawa.jp/www/contents/1568095165313/index.html |website=www.city.hadano.kanagawa.jp |access-date=2024-06-23}}</ref><ref group="注釈">秦野の曽屋水道は鉄管ではなく陶管で敷設したため近代水道ではなく”近代的”水道と表現される場合がある。また、住民らによって敷設された自営水道であった。</ref>、長崎([[1891年]])、大阪([[1895年]])、東京([[1898年]])、神戸([[1899年]])と近代水道の整備が進んだ<ref name="sakai" /><ref name="utsunomiya" />。
旧来の水道設備が充実していたために整備が遅れていた[[東京]]でも、[[1898年]](明治31年)には[[多摩川]]から[[淀橋浄水場]]を経由して、市内へと配水する設備が完成した。
 
日本に近代上水道が導入されたきっかけとしては[[コレラ]]などの[[伝染病]]への対策という面もあるが、多少なれど事業当事者にとっての[[利潤]]という面も無視できなかった。東京府水道の建設などは当時の[[政府]]/[[内務省 (日本)|内務省]]と当時の[[野党]]である[[改進党]]の思惑に、条約改正を目論む[[外務省]]が関わる東京改造計画が絡んだ{{Sfn|小野芳朗|2001|p=177}}。
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=== アメリカでの歴史 ===
アメリカ国内の水道事業は個人の井戸から発展したもので、[[1652年]]に[[マサチューセッツ州]][[ボストン]]に最初の水道事業体が発足した<ref name="jwrc-first">{{Cite journal |和書 |author=竹中勝信 |date=2011-01 |title=アメリカ合衆国の上下水道の概要(前編) |journal=水道 |volume=56 |issue=1 |publisher=水道技術研究センター |url=http://www.jwrc-net.or.jp/aswin/projects-activities/pdf_Usa_Ca/usa-outline_first.pdf |format=PDF |accessdate=2017-02-12}}</ref>。[[1832年]]には[[バージニア州]][[リッチモンド (バージニア州)|リッチモンド]]に最初の近代的な浄水場が建設された<ref name="jwrc-first" />。
 
アメリカでは植民地時代から[[1850年]]頃まで民間による水道経営が主流となっていた<ref name="jwrc-first" />。しかし、富裕層が多く住む地域での給水に優先的に投資が行われていたこと、水道会社の利益が最大になるよう水道料金が設定されていたこと、水質への配慮が不十分であったことなどから公営の水道事業が徐々に増えていった<ref name="jwrc-first" />。また、19世紀に入って都市化が急速に発展するとともに[[コレラ]]や[[チフス]]などの水系伝染病が大流行したが、水道が未整備の地域で汚染された井戸水や河川表流水を人力で汲んで用いていたことが原因であることが明らかとなってからは、近代的な浄水場の建設や配水管・給水管の整備が進んだ<ref name="jwrc-first" />。
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== 世界の水道業 ==
=== 世界の水道企業 ===
欧州や米国では水道事業を民間に開放しているところもあり、必ずしも自治体が提供する公営事業とは限らない。[[イギリス]]や[[フランス]]、[[オランダ]]等のように水道事業を民間会社が行っているのが一般的な国もあり、これらの国の水道運営会社は世界各国にも進出している。水道世界3大企業はフランスの[[スエズ・エンバイロメント (2008年設立の企業)|スエズ]]と[[ヴェオリア・ウォーター]]、イギリスの[[テムズ・ウォーター]]である。このほかにも[[ベクテル]]のような建設関連企業が海外での水資源開発や水道事業の受託を行っている。
 
歴史的には、[[リヨン]]市の水道事業が民間委託化されたのが[[1853年]]であるが、欧米で民営化が広く行われるようになったのは20世紀に入ってからであった。2008年現在、全世界の水道供給人口50億人のうち、民営化された水道企業が水を供給しているのは4億人である<ref>{{Cite journal |和書 |author=猪本有紀 |date=2008-02 |title=寄稿 世界の水問題に取り組む商社 |journal=日本貿易会 月報 |issue=656 |url=http://www.jftc.or.jp/shoshaeye/contribute/contrib2008_02a.pdf |publisher=日本貿易会 |format=PDF |archiveurl=https://web.archive.org/web/20160304073622/http://www.jftc.or.jp/shoshaeye/contribute/contrib2008_02a.pdf |archivedate=2016-03-04}}</ref><ref>{{Cite web |和書|url=http://r25.jp/b/honshi/a/ranking_review_details/id/1112009042304 |title=100兆円の市場を争奪する世界の「水メジャー」って何者? |accessdate=2009-04-25 |date=2009-04-23 |work=R×R(ランキンレビュー) |website=R25.jp |publisher=リクルート |archiveurl=https://web.archive.org/web/20090426083359/http://r25.jp/b/honshi/a/ranking_review_details/id/1112009042304 |archivedate=2009-04-26 |deadlinkdate=2016-07}}</ref>。パリでは1985年から2009年まで約25年間に民間が運営をしていた間に料金が2倍になったが、水道の漏水率が22%から4%と改善しました。フランスでは他の自治体も民営化したが、9割は民間管理を更新した<ref name=":0">{{Cite web|和書|title=寿命超えボロボロ…日本の水道の悲惨な実態 {{!}} 週刊女性PRIME|url=https://toyokeizai.net/articles/-/255167|website=東洋経済オンライン|date=2018-12-20|accessdate=2020-04-27|language=ja}}</ref>。
 
{| class="wikitable"
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! 国 !! 企業名 !! 給水人口
|-
| {{FRA}} || [[スエズ・エンバイロメント (2008年設立の企業)|スエズ]]
| style="text-align:right" | 1億2500万人
|-
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=== 日本の上水道 ===
==== 水道事業構成区分 ====
日本の法律では[[水道法]]による水道のことを指し、この定義では「導管およびその他の工作物により、水を人の飲用に適する水として供給する[[施設]]の総体をいう」とされている。日本中に張り巡らされている水道管の全長は約66万キロメートル、地球16周分の長さになるが、水道管の耐用年数は約40年で60年以上たっているため、約2000か所毎日破裂している。水道管をすべて更新するには130年以上かかると計算されている<ref name=":0" />。
日本の[[水道法]]では「水道事業」を一般の需要に応じて水道により水を供給する事業のうち、給水人口が100人を超えるものとしている<ref name="soumu" />。この水道事業には上水道事業と簡易水道事業が含まれる<ref name="soumu">{{Cite web |url=https://www.soumu.go.jp/main_content/000144865.pdf |title=(3) 上水道施設|publisher=総務省|date= |accessdate=2024-02-25}}</ref>。
* 上水道事業 - 給水人口が5,001人以上の水道により、水を供給する水道事業<ref name="soumu" />。
* [[簡易水道]]事業 - 水道事業のうち給水人口が5,000人以下であるもの<ref name="soumu" />(水道法第3条第3号
なお、上水道事業は法律用語として水道法に定義されているわけではなく、簡易水道事業(水道法第3条第3号で定義)以外の水道事業を指すために慣用的に用いられている概念である<ref name="soumu" />。
 
このほか水道法には、専用水道、簡易専用水道、水道用水供給事業(水道により水道事業者に対してその用水を供給する事業)も定義されているが、これらは水道事業とは別の区分である<ref name="soumu" />。
なお日本でも[[水道法]]が[[2001年]]に改正され、水道事業の包括的な[[民間委託]]が可能となった<ref>{{Cite web |url=https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kaisei/gaiyo/index.html |title=改正水道法の概要 |accessdate=2009-04-25 |publisher=厚生労働省}}</ref>。
 
==== 水道事業施設の管理 ====
2025年には世界全体で100兆円の市場となると言われている水道事業には、商社やメーカーだけでなく水道事業のノウハウを持つ日本の自治体の[[水道局]]も参入へ向けた行動を起こしている<ref>{{Cite news |title=関西の水処理技術アピール 財界訪中団がフォーラム |newspaper=日経Ecolomy |date=2013-04-20 |url=http://eco.nikkei.co.jp/news/today/article.aspx?id=NN002Y005+13042009}}{{リンク切れ|date=2016-07}}</ref>。
日本の法律では[[水道法]]による水道のことを指し、この定義では「導管およびその他の工作物により、水を人の飲用に適する水として供給する[[施設]]の総体をいう」とされている。日本中に張り巡らされている水道管の全長は約66万キロメートル、地球16周分の長さになるが、水道管の耐用年数は約40年で60年以上たっているため、約2000か所毎日破裂している。水道管をすべて更新するには130年以上かかると計算されている<ref name=":0" />。
 
==== 水道事業の運営 ====
日本国内でも水道の民営化や包括的な委託の受け皿となるべく企業が設立されるとともに、一部の地方都市で実際に包括的な委託を受託した例もある<ref>{{Cite web |url=http://www.japanwater.co.jp/business/operation_management/ |title=O&M事業の実績(抜粋) |accessdate=2016-07-06 |publisher=ジャパンウォーター |archiveurl=https://web.archive.org/web/20161116005347/http://www.japanwater.co.jp/business/operation_management/ |archivedate=2016-11-16 |deadlinkdate=2018-11-08}}</ref><ref>{{Cite press release |title=三次市から浄水場を全面受託 |publisher=ジャパンウォーター |date=2002-11-11 |url=http://www.japanwater.co.jp/newsrelease/press/2002-1111.html |archiveurl=http://archive.is/3NtG |archivedate=2012-08-02 |deadlinkdate=2016-07}}</ref>。しかし、日本国内では大規模な水道事業を民営化したり、運営全てを民間企業に委託(包括的委託)した例は無い。なお、浄水場の運転操作や保守点検等の一部分や、料金徴収など周辺事業を民間委託している例は多数あるが、これらは水道事業に関わる経営判断を含め多くの部分を民間に任せている欧米の方式とは異なっている。日本国内では経済的合理性や海外進出を考える商社やメーカー等の企業育成を考えて、水道企業を民営化したほうがよいとする意見や、水資源の公共性や水道の安定供給・安全性を考えて公営事業のままでよいとする意見など種々ある。しかし、国連テクニカルアドバイザー曰く、どのみち現行の水道料金は老朽化した水道管を維持するのに足りず、「水と安全はタダ」という日本的発想を料金を上げて赤字の現在を変えないといけないと警鐘を鳴らしている<ref name=":0" />。
なお日本でも[[水道法]]が[[2001年]]に改正され、水道事業の包括的な[[民間委託]]が可能となった<ref>{{Cite web |和書|url=https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/kenkou/suido/kaisei/gaiyo/index.html |title=改正水道法の概要 |accessdate=2009-04-25 |publisher=厚生労働省}}</ref>。
 
2025年には世界全体で100兆円の市場となると言われている水道事業には、商社やメーカーだけでなく水道事業のノウハウを持つ日本の自治体の[[水道局]]も参入へ向けた行動を起こしている<ref>{{Cite news |title=関西の水処理技術アピール 財界訪中団がフォーラム |newspaper=日経Ecolomy |date=2013-04-20 |url=http://eco.nikkei.co.jp/news/today/article.aspx?id=NN002Y005+13042009}}{{リンク切れ|date=2016-07}}</ref>。
==== 水道事業 ====
一般の需要に応じて、[[水道]]により飲用に適する[[水]]を供給する事業のうち給水人口が100人を超えるものを水道事業という。
 
* [[簡易水道]]事業 - 水道事業のうち給水人口が5,000人以下であるもの(水道法)
* 水道用水供給事業 - 水道により水道事業者に対してその用水を供給する事業(水道法)
* 上水道(事業) - 水道事業のうち簡易水道を除いた給水人口が5,000人を越えるものを、上水道(事業)ということがあるが、厳密には水道法で定義された概念ではない。
 
==== 水道事業者 ====
水道事業を経営しようとする場合は、[[厚生労働大臣]]または都道府県知事の[[認可]]を受けなければならない。認可を受けた水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当な理由がなければ拒むことができず、原則として、水道により給水を受ける者に対し、常時水を供給しなければならない。また、施設を変更したり、料金を変更するときは、厚生労働大臣等の認可を受けなければならないなど、水道法の規制を受ける。
 
現在、水道事業はそのほとんどが[[地方公共団体]]により経営される企業([[地方公営企業]])によって行われ[[独立採算制]]で運営されている。多くの地域で、個々の需用者と直接契約して給水する「水の小売り」は各市町村の水道事業が担当している。都府県営水道がある地域でも「水の問屋」として各市町村に対して給水するのが普通だが、例外として、東京都(23区全域と多摩地区の一部)・千葉県(北西部の大部分)・神奈川県(中央部の大部分)などでは、都県営水道が直接利用者と契約して給水している。また、主に上水道に従事する公務員は、地方公営企業の職員として、水道事業による収入から給与・手当が支給される。一方、主に簡易水道に従事する公務員は、首長部局の職員として、簡易水道事業を所管する特別会計から給与・手当が支給される。
 
日本国内でも水道の民営化や包括的な委託の受け皿となるべく企業が設立されるとともに、一部の地方都市で実際に包括的な委託を受託した例もある<ref>{{Cite web |和書|url=http://www.japanwater.co.jp/business/operation_management/ |title=O&M事業の実績(抜粋) |accessdate=2016-07-06 |publisher=ジャパンウォーター |archiveurl=https://web.archive.org/web/20161116005347/http://www.japanwater.co.jp/business/operation_management/ |archivedate=2016-11-16 |deadlinkdate=2018-11-08}}</ref><ref>{{Cite press release |和書 |title=三次市から浄水場を全面受託 |publisher=ジャパンウォーター |date=2002-11-11 |url=http://www.japanwater.co.jp/newsrelease/press/2002-1111.html |archiveurl=httphttps://archive.is/3NtG |archivedate=2012-08-02 |deadlinkdate=2016-07}}</ref>。しかし、日本国内では大規模な水道事業を民営化したり、運営全てを民間企業に委託(包括的委託)した例は無い。なお、浄水場の運転操作や保守点検等の一部分や、料金徴収など周辺事業を民間委託している例は多数あるが、これらは水道事業に関わる経営判断を含め多くの部分を民間に任せている欧米の方式とは異なっている。日本国内では経済的合理性や海外進出を考える商社やメーカー等の企業育成を考えて、水道企業を民営化したほうがよいとする意見や、水資源の公共性や水道の安定供給・安全性を考えて公営事業のままでよいとする意見など種々ある。しかし、国連テクニカルアドバイザー曰く、どのみち現行の水道料金は老朽化した水道管を維持するのに足りず、「水と安全はタダ」という日本的発想を料金を上げて赤字の現在を変えないといけないと警鐘を鳴らしている<ref name=":0" />。
水道事業を行なう主体は、都道府県では[[水道局]]あるいは企業庁・[[企業局]]の水道部門である。市町村では、水道局・水道部・水道課と呼ばれているほか、上下水道局・建設部などの一部門となっている自治体も多い。複数の市町村にまたがる[[企業団]]や[[組合]]が水道事業を行なう地域もある。近年、水道料金の値上げが多く、その理由として水源地の水利権の高コストや老朽施設の更新、建設時の借入金負担や市町村合併に伴う価格見直しや節水へ意識誘導する目的で単価を上げると言った理由がある。
 
=== アメリカの上水道 ===
==== 水道事業 ====
アメリカ合衆国の水道事業体は、[[アメリカ合衆国環境保護庁|環境保護庁]](EPA)により、市町村水道、専用水道、季節専用水道の3つに分類されている<ref name="jwrc-second">{{Cite journal |和書 |author=竹中勝信 |year=2011-02 |title=アメリカ合衆国の上下水道の概要(中編) |journal=水道 |volume=56 |issue=2 |publisher=水道技術研究センター |url=http://www.jwrc-net.or.jp/aswin/projects-activities/pdf_Usa_Ca/usa-outline_second.pdf |format=PDF |accessdate=2017-02-12}}</ref>。
* 市町村水道(Community Water System(CWSs) - 1年を通じて定住人口に対し給水している水道事業体<ref name="jwrc-second" />
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=== 水質基準 ===
==== WHO ====
[[世界保健機関]](WHO)では、各国が水質基準を設定する際の参考となるよう飲料水についての水質ガイドラインを定め勧告している<ref name="abroad04_02">{{Cite web |和書|url=http://www.jwrc-net.or.jp/chousa-kenkyuu/comparison/abroad04_02.pdf |title=日本と先進国との水質基準の比較に関する考察 |publisher=公益財団法人 水道技術研究センター |accessdate=2020-07-20}}</ref>。
==== 日本 ====
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水道法に基づく水質基準は日本国内に一律に適用され条例で変更することはできない<ref name="abroad04_02" />。
 
また、上記「水質基準」とは別に、水質基準に準じて検出状況を把握し、管理すべき項目として「水質管理目標設定項目」があり、農薬などの目標値が定められている<ref>{{Cite web |和書|url=http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/suigen/kijun/index.html |title=水質基準 |accessdate=2007-04-04 |publisher=東京都水道局}}</ref>。
 
なお、1980年代後半までは鉛製給水管が使用されたものの、水道水中への鉛の溶出が問題視されたため、近年は他の材質の給水管への取替えが進んでいる。しかし、[[20092021年]](平成21令和3年)度の調査末時点は、未だに約73,500km800kmの鉛製給水管が残っていると報告されている<ref>{{Cite web |和書|url=httpshttp://www.mhlwjwwa.goor.jp/topicsinfo/bukyokupdf/kenkou/suido/kyusui/dl/h24_03tebiki_shiryousuidou_statistics_r03.pdf |title=鉛製給水管布設替えに関する手引き 資料編(平成24令和33月) 水道統計総論|accessdate=20142024-0705-2003 |format=PDF |publisher=厚生労働省公益社団法人 日本水道協会}}</ref>。
 
==== 米国 ====
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== 上水道の逆流事故 ==
{{出典の明記|date=2024年2月|section=1}}
[[1933年]]、[[アメリカ合衆国|米国]]の[[シカゴ万国博覧会 (1933年)|シカゴ万博]]会場の[[ホテル]]で浴槽と便器の水が給水管内に逆流し、1,409名が[[アメーバ赤痢]]に罹患し、98名が死亡した<ref>[[アメリカ合衆国環境保護庁]] Cross-Connection Control Manual</ref> 。[[1948年]]に日本でも逆流事故によって腸[[チフス]]患者が550名発生し、3名が死亡した。これらの事故をはじめ多くの水道による事故の経験から、日本では「水道法」と「建築基準法」が、'''水槽、プール、流しその他水を入れ、又は受ける器具、施設等に給水する給水装置にあつては逆流を防止するための適当な措置を講じること'''を求めている。
逆流を防止するためには、水道蛇口を浴槽や台所シンク等の容器の縁より十分上方に離して設置して「エアギャップ」を確保することが有効である。これは、エアギャップによって、水道管内の圧力が断水などによって負圧となった時に管内に汚水が取り込まれる「逆サイフォン現象」を防ぐことが出来るからである。
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[[1993年]]に米国[[ミルウォーキー]]で原虫の[[クリプトスポリジウム]]による上水道の汚染があり、40万人の感染者と400名の死者を出した。また、日本においても1996年に埼玉県越生町で8812名の感染があった。この5μm程の大きさの微生物は上水道の通常の消毒に用いられる程度の塩素濃度では死滅しないため、日本を含めた多くの国の上水道ではこの原虫の混入がないように随時注意が払われている。コストを掛けて濾過フィルターを設置している水道事業者もある{{Sfn|建築設備技術者協会|2002}}。
 
=== カシンベック病 ===
[[カシンベック病]]は19世紀にカシンおよびベックによりシベリアにみられる地方病として報告された骨変形などを主症状とする疾患である<ref name="No.802">{{Cite web |和書|url=https://h-crisis.niph.go.jp/?p=83615 |title=No.802 水道水とカシンベック病 |publisher=国立保健医療科学院|accessdate=2020-07-20}}</ref>。水道水に含まれるフェルラ酸、パラドキシ桂皮酸、カフェイン酸等の有機物質が原因と考えられている<ref name="No.802" />。
 
===取水施設への汚水混入===
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== 脚注 ==
 
=== 水源注釈 ===
<references group="注釈" />
 
=== 出典 ===
{{脚注ヘルプ}}
{{reflist|2}}
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* {{Egov law|332AC0000000177|水道法}}
 
{{Normdaten}}
{{DEFAULTSORT:しようすいとう}}
[[category:水道|*しようすいとう]]