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→‎水質基準: 平成20年4月よりの水質基準改正等につき追記
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{{国際化|[[日本]]}}
'''上水道'''(じょうすいどう、Tap water)とは、一般に飲用可能な[[水]]の公共な供給設備一般を指す。単水道法による」と呼べば上水道のことを指し、[[水道]]による定義では「導管およびその他の工作物により、[[水]]を人の飲用に適する水として供給する[[施設]]の総体をいう」とされている。[[下水道]]などと区別を強調するため場合限って上水道と呼ばれることが多い。
 
日本の法律では[[水道法]]による水道のことを指し、この定義では「導管およびその他の工作物により、水を人の飲用に適する水として供給する[[施設]]の総体をいう」とされている。
==水道事業==
 
以下では特に断らない限り、日本での上水道に付いて説明する。
 
== 水道事業 ==
一般の需要に応じて、[[水道]]により飲用に適する[[水]]を供給する事業のうち給水人口が100人を超えるものを水道事業という。
*[[簡易水道]]事業 - 水道事業のうち給水人口が50005,000人以下であるもの(水道法)
*水道用水供給事業 - 水道により水道事業者に対してその用水を供給する事業(水道法)
*上水道(事業) - 水道事業のうち簡易水道を除いた給水人口が50005,000人を越えるものを、上水道(事業)ということがあるが、厳密には水道法で定義された概念ではない。
 
== 水道事業者 ==
水道事業を経営しようとする場合は、[[厚生労働大臣]]または都道府県知事の[[認可]]を受けなければならない。認可を受けた水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当な理由がなければ拒むことができず、原則として、水道により給水を受ける者に対し、常時水を供給しなければならない。また、施設を変更したり、料金を変更するときは、厚生労働大臣等の認可を受けなければならないなど、水道法の規制を受ける。
 
現在、水道事業はそのほとんどが[[地方公共団体]]により経営される企業([[地方公営企業]])によって行われている。多くの地域で、個々の需用者と直接契約して給水する「水の小売り」は各市町村の水道事業が担当している。都府県営水道がある地域でも「水の問屋」として各市町村に対して給水するのが普通だが、例外として、東京都(23区全域と多摩地区の一部)・千葉県(北西部の大部分)・神奈川県(中央部の大部分)などでは、都県営水道が直接利用者と契約して給水している。また、主に上水道に従事する公務員は、地方公営企業の職員として、水道事業による収入から給与・手当が支給される。一方、主に簡易水道に従事する公務員は、首長部局の職員として、簡易水道事業を所管する特別会計から給与・手当が支給される。
 
水道事業を行なう主体は、都道府県では[[水道局]]あるいは企業庁・[[企業局]]の水道部門である。市町村では、水道局・水道部・水道課と呼ばれているほか、上下水道局・建設部などの一部門となっている自治体も多い。複数の市町村にまたがる[[企業団]]や[[組合]]が水道事業を行なう地域もある。近年、水道料金の値上げが多い。く、その理由として水源地の水利権の高コスト体質老朽施設の老朽化更新、建設時の借入金負担や市町村合併伴うもの価格見直しや節水意識誘導する目的で単価を上げると言った理由が多いある。
 
欧州や米国では水道事業を民間に開放しているところもあり、必ずしも自治体が提供する公共事業とは限らない。こういった事情を考慮して日本でも2000年からの数年間に、水道事業の民営化の可能性が話題となったが、[[ボリビア]]の[[コチャバンバ水紛争]]のような大規模な民営化の失敗例もあり、その後はあまり検討されないでいる。
==水源==
 
== 水源 ==
*表流水(河[[川]]・ダム)
*[[伏流水]]
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*[[海水淡水化|海水]]
 
== 構成要素 ==
*取水施設
*浄水施設
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*水量計
 
== 水質基準 ==
=== 水質基準 ===
わが国日本における[[水道法]](昭和32年6月15日法律第177号)が定める水質基準は、同法4条2項を受けて制定された[[水質基準に関する省令]](平成15年5月30日[[厚生労働省]]令第101号)および平成20年4月1日から施行されたその一部改正(平成19年11月14日厚生労働省令第135号)により、51項目の検査項目・検査方法及び基準値が定められている。同水質基準においては、たとえば[[大腸菌]]や[[カドミウム]][[水銀]]などについてそれぞれ基準許容値が定められており、[[大腸菌]]群は検出が許されな。これに適合しないと日本国内において「水道水」として供給できない。
 
また、上記「水質基準」とは別に、水質基準に準じて検出状況を把握し、管理すべき項目として「水質管理目標設定項目」があり、農薬などの目標値が定められている。<ref>[http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/w_info/s_kijun.htm 水質基準](東京都水道局)</ref>
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なお、[[日本水道協会]]が全国の水質検査結果を[[データベース]]化して公開している([[#外部リンク|外部リンクの節]]参照)。
 
=== 高度処理技術 ===
==上水道の歴史==
日本の上水道では蛇口地点で塩素が0.1mg/ℓ以上含まれていなければならず、これによって大腸菌等のバクテリアの発生を防いでいる。水道の元となる取水した原水が十分に清浄であればこれだけで十分清潔な水道水が供給できるが、原水そのものが汚れたものであれば、多くの次亜塩素酸ナトリウムや次亜塩素酸カルシウムを加えてバクテリアを塩素殺菌する必要がある。この塩素は原水中の[[フミン質]]と呼ばれる主にバクテリア等の腐敗によって生じた多様な有機化合物群と反応して[[トリハロメタン]]と呼ばれるヒトの発ガン物質が出来るので、塩素臭による不快感と共に、あまり水道中に加えることは出来ない。また、塩素に耐性を持つ特定の原虫が混入したりすることもあり、こういった汚れた原水で飲用の上水道を作る技術として、水の高度処理技術が生まれた。
 
高度処理技術では微細な穴の開いた膜を通したり、活性炭を使用する、オゾンを吹き込むなどのコストの掛かる方法をとる<ref name = "小事典 暮らしの水"/>。[[シンガポール]]では2003年から、下水を逆浸透膜で浄化する高度濾過技術を使った「ニューウォーター」(NEWater)計画を進めている。
 
=== 硬水と軟水 ===
上水の元となる原水がミネラルを多く含めば、上水道で供給される水もそのままミネラル分の高いものとなる。ミネラル分の内でもカルシウムイオンとマグネシウムイオンの割合が高いものが硬水と呼ばれ、低いものが軟水と呼ばれる。通常はこの2つイオンの量を炭酸カルシウムに換算して、1リッター中に200mg以上含まれるものが硬水で100mg以下のものが軟水と呼ばれる。
 
欧州や中国の大部分は一般に硬水が多く、それに適した蒸し料理や油炒め料理、長時間煮込む料理が発達し、ワインやビールのような飲料が生水に代わって飲まれる傾向が生まれた。日本や米国は一般に軟水が多く、日本ではうまみを引き出した料理や緑茶が発達し、米国では欧州由来のコーヒーが本来の味を引き出せるために薄くなった<ref name = "小事典 暮らしの水"/>。
 
== 上水道の歴史 ==
水道のルーツは[[古代]][[地中海]]沿岸諸国とされる。当初は、深いところにある[[井戸]]の水を遠くに運ぶための[[水路]]であったと考えられている。[[古代ローマ|古代ローマ人]]は後世「[[ローマ水道]]」と呼ばれることになる巨大なネットワークを構築したが、[[中世]]以後衰微する。
 
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水道の近代化は[[1787年]]の[[パリ]]で蒸気式揚水用ポンプが使われ、[[1829年]]に[[ロンドン]]で[[砂濾過池]]による浄水設備の設置以降のことであり、鉄製パイプによる[[水道管]]の開発など[[19世紀]]の[[ヨーロッパ]]で急速に発達した。
 
日本の近代的水道は、[[1887年]](明治20年)[[10月17日]]に、[[横浜市|横浜]]の[[外国人居留地]]で給水されたのが始まりである。当時居留地では、井戸を掘っても塩水が混じり、飲用に適さなかった。そこで当時の[[神奈川県]]知事は、イギリス人技師のH.S.パーマーを顧問に招き、[[相模川]]の上流に水源を求めて近代水道の建設に着手した。[[1885年]](明治18年)に始められた工事は、1887年(明治20年)9月に竣工し、翌月から給水が始められた。近代水道は、1890年(明治23年)に水道の全国普及と水道事業の市町村による経営を内容とする'''[[水道条例]]'''が制定されたことにより、都市部で急速に実用化された。旧来の水道設備が充実していたために整備が遅れていた[[東京]]でも、[[1898年]](明治31年)には[[多摩川]]から[[淀橋浄水場]]を経由して、市内へと配水する設備が完成した。
 
==参考文献 事故 ==
=== クロスコネクション ===
<div class="references-small"><references /></div>
1933年、米国のシカゴ万博会場のホテルで浴槽と便器からの下水が接続された下水管を通じて給水管内に逆流し、409名がアメーバ赤痢に罹患し、98名が死亡した。このように上水道に他の配管を接続する「クロスコネクション」は、日本では禁止されているが、米国では当時同様に21世紀になっても禁止されておらずに行なわれており、たびたび事故を起こしている。
 
クロスコネクションによる事故を防ぐために、逆流防止弁が開発され、逆流を阻止するように設計されているが、劣化やゴミが挟まるなどの機能喪失は完全には防ぎきれない。
==関連記事==
 
1948年に日本でも逆流事故によって腸チフス患者が550名発生し、3名が死亡するなどの多くの水道による事故の経験から、「水道法」と「建築基準法」によってクロスコネクションが禁止されている。また、水道蛇口が浴槽や台所シンク等の容器の縁より十分上方に離して設置して「エアギャップ」を確保することも上記2法で規定されている。これは、エアギャップが無ければ、水道管内の圧力が断水などによって負圧となった時に管内に汚水が取り込まれる「逆サイフォン現象」を防ぐためである。
集合住宅などでシャワーヘッドを湯水の入った浴槽内に漬けていると、万が一、断水などで管内が負圧になり、この時シャワーのコックを開けると、逆サイフォン現象によって不衛生な水が上水道管内に取り込まれてしまう。
 
構造的に水道の吐出口が容器内に開口する大便器のような水回り器具ではエアギャップを確保することが不可能なために、「バキュームブレーカー」という逆サイフォン現象を防止するための仕組みを備えるものがある。大気圧式バキュームブレーカーでは大気圧と管内との差圧によって逆流を防止する仕組みとなっているため、逆流防止弁より確実に機能する。これが備わった大便器ではバルブ部の下に付いているのが見られる。
 
=== クリプトスポリジウム ===
1993年に米国ミルウォーキーで原虫の[[クリプトスポリジウム]]による上水道の汚染があり、40万人の感染者と400名の死者を出した。この5μm程の大きさのバクテリアは塩素によっても死滅しないため、日本を含めた多くの国の上水道ではこの原虫の混入が無いように随時注意が払われている。コストを掛けて濾過フィルターを設置している水道事業者もある<ref name = "小事典 暮らしの水">建築設備技術者教会編 『小事典 暮らしの水』 講談社 2002年8月20日第1版発行 ISBN 4062573792</ref>。
 
== 出典 ==
<references/>
 
== 関連記事項目 ==
*[[水道局]]
*[[高度浄水処理]]
*[[工業用水道]]
*[[中水道]](雑用水)
*[[下水道]]
*[[簡易水道]]
*[[飲料水供給施設]]
*[[工業用水道]]
*[[用水路]]
*[[水道水フッ化物添加]]
<!--*水道記念館([[陣ヶ下渓谷]]) - [[1987年]](昭和62年)開設。[[1887年]](明治20年)に出来た[[日本]]最初の近代的水道「横浜水道」の[[博物館]]。-->
*[[水道局]]
*[[指定工事店制]]
*[[ローマ水道]]
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*[[神田川 (東京都)|神田川]]
*[[玉川上水]]
*[[水道水フッ化物添加]]
*[[ミルズ・ラインケ現象]]
 
==外部リンク 参考文献 ==
<div class="references-small"><references /></div>
 
== 外部リンク ==
*[http://www.jwwa.or.jp/ 社団法人日本水道協会]
*[http://law.e-gov.go.jp/cgi-bin/idxselect.cgi?IDX_OPT=1&H_NAME=%90%85%93%b9%96%40&H_NAME_YOMI=%82%a0&H_NO_GENGO=H&H_NO_YEAR=&H_NO_TYPE=2&H_NO_NO=&H_FILE_NAME=S32HO177&H_RYAKU=1&H_CTG=1&H_YOMI_GUN=1&H_CTG_GUN=1 法令データ提供システム - 水道法]
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{{DEFAULTSORT:しようすいとう}}
[[category:水道|すいとう]]
[[category:水道施設]]
[[category:公衆衛生]]
[[Category:都市計画]]
 
[[de:Leitungswasser]]
[[en:Tap_water]]
[[es:Agua entubada]]
[[fr:Eau du robinet]]
[[nl:Drinkwater]]
[[ja:上水道]]
[[pl:Woda wodociągowa]]
[[sv:Kranvatten]]
[[th:น้ำประปา]]
[[zh:自来水]]