115mm滑腔砲

旧ソ連が開発した滑腔砲

115mm滑腔砲(115ミリかっこうほう)は、ソビエト連邦で開発された滑腔砲

U-5TS/2A20 115mm滑腔砲搭載のT-62戦車

概要

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T-44-100以来、ソビエト連邦軍中戦車においてはD-10 100mm ライフル砲が標準的な戦車砲として搭載されてきた。しかし、西側諸国主力戦車主砲が105mm口径ロイヤル・オードナンス L7 ライフル砲に更新されはじめたことから、東側諸国においても主砲の火力強化が求められることとなった。

D-10シリーズを設計した第9火砲工場設計局(旧:国営第9ウラル重機械工具製造所)のペトロフ技師の設計チームは、まず、従来の100mm ライフル砲をもとに高初速化したD-54 100mm ライフル砲を開発したが、これはコストが高く、また、APDS弾使用時の装弾筒の分離などに不具合があった。このことから、同砲をもとにして115mm口径の滑腔砲を開発することが決定された。

バリエーション

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U-5TS
GRAU名は2A20、通称はモロート(Molot)。
D-54 100mm ライフル砲を元に、大口径化・滑腔砲化して開発された。滑腔砲化によって、長射程における精度ではD-54にやや劣るものとなっている。
本砲では、砲身の中ほどに排煙器が装備されたほか、2軸のメテオール砲安定装置が導入された。また、本砲は滑腔砲であることから、D-54のAPDSにかえてAPFSDSが採用されており、本砲向けの3BM3弾が世界で初めて実戦配備されたAPFSDS弾となる。
本砲はT-62において主砲として採用された。
D-68
GRAU名は2A21
T-12 100mm対戦車砲を元に、大口径化・滑腔砲化して開発された。事実上、U-5TSを分離装薬式としたものであり、また6ETs10(ロシア語:6ЭЦ10)型自動装填装置が導入された[1]。ただ6ETs10型は機構の都合上可動部の動作範囲が大きく、砲手を巻きこんで死傷させる事故が多発したとされており、当時の西側情報筋では「ソ連戦車の自動装填装置は人を喰う」と揶揄されたという。
本砲はT-64(オブィエークト432)において主砲として採用されたが、T-64A(オブイェークト434)においては、より強力で改良された2A46 125mm滑腔砲によって代替された。自動装填装置も機構変更により可動範囲を減少させた6ETs15(ロシア語:6ЭЦ15)型を搭載することによって、乗員死傷事例に対処している。

諸元・性能

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諸元

性能

砲弾・装薬

  • 弾薬: 完全弾薬筒(U-5TS)、分離装薬筒(D-68)
  • 砲弾: APFSDS弾:3BMシリーズ(3,4,6,21,28)
    HEAT弾:3BKシリーズ(4,4M,15M)
    高性能炸薬弾:3OFシリーズ(11,18,27)

参考文献

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脚注

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  1. ^ なお、日本の文献ではT-64より採用されたソビエト/ロシア戦車の自動装填装置は"コルジナ"および"カセトカ"の名称で記述されていることがあるが、これらはどれも砲弾の収納方式や装填方式からつけられた通称であり、そのような制式名称の自動装填装置が存在しているわけではない。「コルジナ(корзина)」は"籠"、「カセトカ(кассетка)は"小箱のようなもの" "個別に分けられたもの"を意味する(カセータ(кассета)の縮小辞形)ロシア語で、それぞれ「弾薬を砲塔バスケットに搭載する」「装薬カートリッジを個別に装填する」ことから生まれた通称と見られる。

関連項目

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