利権(りけん)は、利益と権利。業者が、政府および公共機関のしかるべき地位にある公務員(そこには政治家特別公務員も含む)と結託して、形式上は公的手続によって獲得する権益[1]

概要

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一般的には、業者側が提供する金銭、物品、接待(供応)、地位などに応じ、官僚あるいは官僚を指導する立場の政治家が、法律発案権、予算決定権、徴収監察権、管理監督・行政指導権、許認可権、発注権、警察権、検察権などの権限を給付することで成立する[1]

戦前の日本は、官僚制が前近代的な状態で、官職を私的権利とみなす公職私有観が横行し、各種利権をめぐる大小の汚職事件が少なくなかった[1]。戦後も、行政権が統制力を拡大するにつれ、拡張された利権をめぐり、官僚や政治家による汚職行為が頻繁に起きた[1]。日本ではアメリカなどと異なり政権交代が頻繁には行われてこなかったので、いわゆる族議員、すなわち特定の省庁の政策に詳しく、政策で利益を得る業界の代弁者ともなる国会議員を中核とした利権のネットワークが政治・行政の場に組み込まれてしまった[1]

日本では、公庁が持っている許認可権、指導・監督権の数は約1万2000件以上に及ぶとされ、鉄道航空道路港湾ダム河川・上下水道などのインフラ整備、あるいは金融医療医薬品 等々に関係して官公庁が持っている許認可権や指導・監督権などの規制の下に、新たな利権が誕生しつづけている[1]

利権の芽を摘むには、行政や政治の場で何が行われているかについて国民が(憲法に定められているように主権者として)関心を持つことが必要である[1]

利権の例

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  • スポーツ利権
プロチームのスカウトが将来有望と目した選手に“唾を付け”、関係者にチーム入りを約束させるなどによって生じる利権(契約金も参照)。また、公的な補助金・助成金や民間からの寄付金等を競技団体の役員が不正流用したり、電通にみる大会開催にともなう放映権やスポンサードで便宜を図るなどして得られる利権[2]。国際競技団体の利権は、各国の国内法で摘発するしかない側面があるため、不正をなかなか正しにくく、たびたび国際的な問題として報じられる[3]
  • たばこ利権
財務省JT、族議員と葉タバコ農家、たばこ小売店、飲食店の間で発生する利権。財務省がたばこ税やJT株の配当金といった既得権益を守るため、受動喫煙防止を目的とした法案の成立を阻害している[4][5][6]

利権が絡んだ事件

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脚注

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  1. ^ a b c d e f g [1]
  2. ^ 醜聞対応後手、利権まみれ…日本スポーツ団体“迷走”の理由. (2014年12月25日) 日刊ゲンダイ.
  3. ^ ブラッター会長辞任表明で混迷!「巨大利権組織」FIFAの深い闇. (2015年6月5日) PRESIDENT Online.
  4. ^ 松沢成文『JT、財務省、たばこ利権~日本最後の巨大利権の闇~』ワニブックスPLUS新書、2013年。ISBN 978-4847060649 
  5. ^ “強固なタバコ利権のために受動喫煙防止法案は骨抜きに”. ビデオニュース・ドットコム (日本ビデオニュース社). (2018年6月1日). http://www.videonews.com/interviews/20180601_matsuzawa/ 2018年6月2日閲覧。 
  6. ^ “東京五輪をタバコ五輪にしてはいけない”. ビデオニュース・ドットコム (日本ビデオニュース社). (2018年6月2日). http://www.videonews.com/marugeki-talk/895/ 2018年6月2日閲覧。 
  7. ^ レイ・モイニハン英語版、アラン・カッセルズ 著、古川奈々子 訳『怖くて飲めない!―薬を売るために病気はつくられる』ヴィレッジブックス、2006年10月。ISBN 978-4789729796 
  8. ^ 田村建雄『産廃汚職―利権に群がる議員・業者・暴力団』リム出版新社、2006年11月。ISBN 978-4898001745 
  9. ^ 原発利権を追う
  10. ^ https://aipower.co.jp/wp-content/uploads/2017/04/nihontosaisei-fukushima.pdf
  11. ^ https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20120906/58000.pdf
  12. ^ https://gakujyutu.net.fukushima-u.ac.jp/file/012_gakkei/kenkyukadai/hokokusyo/23sogou.pdf
  13. ^ https://www.aec.go.jp/jicst/NC/iinkai/teirei/siryo2011/siryo19/siryo2.pdf
  14. ^ ダイヤモンドオンライン「天下りの警察OBに「退職金10億円」払った団体の名前…世間が呆れ返った警察利権の実態とは?」
  15. ^ 宇佐美典也、パチンコ利権 ―瀕死の業界に未来はあるのか?―(2019年2月27日、ワニブックス)
  16. ^ 2001 年 02 月 02 日朝日新聞朝刊東京 本社・3ページ「癒着の深み、おちた町長 奥尻島ゆがめた 復興利権(検証)」
  17. ^ https://www.chusho.meti.go.jp/soudan/jinken_pamf/download/ese_douwa.pdf
  18. ^ 同和利権の真相
  19. ^ 【新・「電通公害」論】崩れ落ちる電通グループ~利権と縁故にまみれた「帝王」の凋落
  20. ^ 本間 龍『電通巨大利権~東京五輪で搾取される国民』

関連項目

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外部リンク

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