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'''光度距離''' (こうどきょり、luminosity distance) とは、[[絶対等級]]と[[みかけの等級]] |
'''光度距離''' (こうどきょり、{{lang-en|luminosity distance}}) とは、[[天体]]の[[絶対等級]]と[[みかけの等級]]から定まる距離の指標のひとつ。 |
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==定義== |
==定義== |
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ある天体の[[光度 (天文学)|光度]]を <math>L</math>、フラックス(輝度)を <math>\ell</math> とするとき、関係式 |
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これより |
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により定義される距離の次元を持つ量 <math>d_L</math> をその天体の光度距離と呼ぶ{{Sfn|松原|2010|p=56}}{{Sfn|Weinberg|2008|p=32}}。あるいは同じことだが、天体の絶対等級を <math>M</math>、見かけの等級を <math>m</math> とするとき、その天体の光度距離 <math>d_L</math> ([[パーセク]]を単位とする) は |
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により定義される{{Sfn|松原|2010|p=57}}。 |
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近傍(低赤方偏移)の宇宙においては光度距離はその天体までの物理的な距離に一致するものの、遠方(高赤方偏移)においては[[ビッグバン|宇宙膨張]]のために光度距離は物理的な距離([[共動距離]])とは一致しなくなる{{Sfn|松原|2010|p=56}}。 |
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<math>d_L</math>の単位は[[パーセク]]である。近距離においては(天の川銀河内など)光度距離は、実際の幾何学的な距離の目安として便利である。 |
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==赤方偏移との関係== |
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一方、天の川銀河の外の遠方の天体については、この関係は単純ではなくなる。なぜなら、みかけの等級は、時空の曲線の影響を受け、赤方変移や時間のずれを生じるからである。光度距離と、たとえば天体の赤方変移の関係を計算するには、様々な要素を加味しなければならない。 |
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天体の光度距離 <math>d_L</math> と共動距離 <math>x</math> は |
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{{Indent|<math>d_L = ( 1 + z ) S_k ( x )</math>}} |
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という関係にある{{Sfn|松原|2010|p=59}}。ここに <math>S_K</math> は宇宙の曲率 <math>K</math> から定まる関数 |
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{{Indent|<math>S_K ( x ) = \begin{cases} \sinh \left( \sqrt{ - K } x \right) / \sqrt{ - K } & (K < 0)\\ x & (K = 0) \\ \sin \left( \sqrt{ K } x \right) / \sqrt{ K } & (K>0)\end{cases}</math>}} |
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である{{Sfn|松原|2010|p=49}}。共動距離 <math>x</math> は赤方偏移 <math>z</math> と、<math>H ( z )</math> をハッブルパラメータとして |
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{{Indent|<math>x = \int_0^z \frac{ c \, dz' }{ H ( z' ) }</math>}} |
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という関係にある{{Sfn|松原|2010|p=53}}。これによって天体の光度距離 <math>d_L</math> を赤方偏移 <math>z</math> の関数とみなすことができ、それをプロットしたグラフは[[ハッブル図]]として知られている{{Sfn|松原|2010|p=59}}。この関数関係 <math>d_L ( z )</math> はハッブルパラメータ <math>H ( z )</math> を通じて宇宙の膨張則に依存しており、ここから[[宇宙論パラメータ]]の制限を得ることができる{{Sfn|松原|2010|p=59}}。 |
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[[File:Dependence of luminosity distance on density parameter (jpn).svg|frame|異なる密度パラメータに対する赤方偏移と光度距離の関係のグラフ。ダークエネルギーと物質のみの宇宙を仮定し (すなわち <math>\Omega_{\Lambda 0} + \Omega_{m 0} = 1</math>)、物質の密度パラメータ <math>\Omega_{m0} = 0, 0.315, 1</math> に対する光度距離の赤方偏移依存性をプロットしたもの。]] |
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==脚注== |
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==参考文献== |
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* {{Cite book |和書 |author=松原隆彦 |year=2010 |title=現代宇宙論―時空と物質の共進化 |publisher=東京大学出版会 |isbn=978-4-13-062612-5 |ref={{SfnRef|松原|2010}} }} |
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* {{Cite book |last=Weinberg |first=Steven |authorlink=スティーヴン・ワインバーグ |title=Cosmology |publisher=Oxford University Press |date=2008 |isbn=978-0198526827 |ref=harv}} |
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==関連項目== |
==関連項目== |
2022年11月8日 (火) 11:34時点における版
光度距離 (こうどきょり、英語: luminosity distance) とは、天体の絶対等級とみかけの等級から定まる距離の指標のひとつ。
定義
ある天体の光度を 、フラックス(輝度)を とするとき、関係式
により定義される距離の次元を持つ量 をその天体の光度距離と呼ぶ[1][2]。あるいは同じことだが、天体の絶対等級を 、見かけの等級を とするとき、その天体の光度距離 (パーセクを単位とする) は
により定義される[3]。
近傍(低赤方偏移)の宇宙においては光度距離はその天体までの物理的な距離に一致するものの、遠方(高赤方偏移)においては宇宙膨張のために光度距離は物理的な距離(共動距離)とは一致しなくなる[1]。
赤方偏移との関係
天体の光度距離 と共動距離 は
という関係にある[4]。ここに は宇宙の曲率 から定まる関数
である[5]。共動距離 は赤方偏移 と、 をハッブルパラメータとして
という関係にある[6]。これによって天体の光度距離 を赤方偏移 の関数とみなすことができ、それをプロットしたグラフはハッブル図として知られている[4]。この関数関係 はハッブルパラメータ を通じて宇宙の膨張則に依存しており、ここから宇宙論パラメータの制限を得ることができる[4]。
脚注
参考文献
- 松原隆彦『現代宇宙論―時空と物質の共進化』東京大学出版会、2010年。ISBN 978-4-13-062612-5。
- Weinberg, Steven (2008). Cosmology. Oxford University Press. ISBN 978-0198526827