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'''労役場'''(ろうえきじょう)とは、[[法務大臣]]が指定する[[刑事施設]]に附置する場所([[刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律]]第287条第1項)をいう。


'''労役場留置'''とは、[[罰金]]又は[[科料]]の判決が確定し、罰金・科料の金額を完納できない者に対して、[[裁判]]で定められた1日当たりの金額が罰金の総額に達するまでの日数分、労役場に留置して所定の作業(封筒貼りなどの軽作業)を行わせることをいう。労役場留置の期間は、罰金では1日以上2年以下(罰金を併科した場合は3年以下)、科料では1日以上30日以下(科料を併科した場合は60日以下)である。[[最高裁判所 (日本)|最高裁]][[判例]]によれば、労役場留置は「換刑処分を定めた[[b:刑法18条|刑法18条]]の規定は罰金の特別な執行方法を定めたもので罰金刑の効果を全うするための規定である」としている<ref>[https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=54309 昭和25年6月7日 最高裁大法廷判決・昭和24(れ)1890 窃盗、臨時物資需給調整法違反被告事件]</ref>。
== 概要 ==
'''労役場'''(ろうえきじょう)とは、[[法務大臣]]が指定する[[刑事施設]]に附置する場所([[刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律]]第287条第1項)をいう。'''労役場留置'''とは、[[罰金]]又は[[科料]]の判決が確定し、罰金・科料の金額を完納できない者に対して、[[裁判]]で定められた1日当たりの金額が罰金の総額に達するまでの日数分、労役場に留置して所定の作業(封筒貼りなどの軽作業)を行わせることをいう。労役場留置の期間は、罰金では1日以上2年以下(罰金を併科した場合は3年以下)、科料では1日以上30日以下(科料を併科した場合は60日以下)である。[[最高裁判所 (日本)|最高裁]][[判例]]によれば、労役場留置は「換刑処分を定めた刑法18条の規定は罰金の特別な執行方法を定めたもので罰金刑の効果を全うするための規定である」としている<ref>[http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319122112848974.pdf 昭和25年6月7日 最高裁大法廷判決・昭和24(れ)1890 窃盗、臨時物資需給調整法違反被告事件]</ref>。


== 労役場留置の言渡し ==
== 労役場留置の言渡し ==
刑法18条4項は「罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。」と規定している。具体的には、罰金又は科料[[判決]]の[[主文]]において「被告人を罰金●●万円に処する。これを完納することができないときは、金▲▲円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。」のように言い渡される。ただし、[[少年法]]54条の規定により少年(20歳未満の者)に対しては労役場留置の言渡しをしない。法人に対する罰金についても同様で、法人が罰金を納めないからといって代表者や経営陣が労役場留置になることはない。
刑法18条4項は、
{{cquote2|罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。}}
と規定している。具体的には、罰金又は科料[[判決]]の[[主文]]において、
{{cquote2|被告人を罰金●●万円に処する。これを完納することができないときは、金▲▲円を一日に換算した期間(端数があるときは、これを一日に換算する)被告人を労役場に留置する。}}
のように言い渡される。


労役場留置一日あたりの金額は[[裁判官]]の裁量によって決めるものとされているが、実務上は一日あたり5,000[[円 (通貨)|円]]で換算されることが多い<ref>[https://www.kensatsu.go.jp/qa/qa4.htm 裁判の執行等について] - 検察庁</ref>。特に[[略式命令]]では換算額が1日5,000円とあらかじめ印刷され、必要事項を雛形に記入するだけの略式命令書が用いられることが多い。高額な罰金では一日5,000円では上限の2年でも払いきれないので、2年以内に収まるよう一日あたりの金額を大きくする<ref>例えば、罰金1,000万円なら労役場留置一日20,000円×500日で換算するなどである。[[脱税]]や[[特別背任]]などの[[経済犯罪]]になると、さらに高額な億単位の罰金が科せられることがあり、罰金5億円で労役場留置一日100万円×500日に換算した判決もある。もっとも、2019年に通常第一審で言い渡された100万円を超える罰金は167件(法人を含む)に過ぎず、このようなケースは稀である。- 最高裁判所司法統計「通常第一審事件の有罪(罰金)人員  罪名別罰金額区分別  全地方裁判所」及び「通常第一審事件の有罪(罰金)人員  罪名別罰金額区分別  全簡易裁判所」</ref>。そのため、労役場で同じ軽作業であるのに1日あたりの金額の差異があることは憲法14条の[[法の下の平等]]に反するとの指摘もあるが、[[日本国政府|政府]]・[[法務省]]は問題ないと[[国会 (日本)|国会]]で答弁している<ref>[https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=116405206X01920060421 平成18年4月21日・衆議院法務委員会] - [[細川律夫]]委員の質問に対する[[杉浦正健]][[法務大臣]]の答弁</ref>。
ただし、[[少年法]]54条の規定により、少年(20歳未満の者)に対しては労役場留置の言渡しをしない。法人に対する罰金についても同様である(法人が罰金を納めないからといって、代表者や経営陣が労役場留置になることはない)。

労役場留置一日あたりの金額は'''[[裁判官]]の裁量'''によって決めるものとされている。実際は、'''一日あたり5,000円'''で換算される場合が多い。しかし、高額な(365万円を超える)罰金になると、一日5,000円では上限の'''2年'''でも払いきれないので、2年以内に収まるよう一日あたりの金額を大きくして判決を言い渡す。例えば、'''罰金1,000万円'''なら労役場留置'''一日20,000円'''×500日で換算するなどである。脱税などの経済犯罪になると、さらに高額な億単位の罰金が科せられることがあり、'''罰金5億円'''で労役場留置'''一日100万円'''×500日に換算した判決もある。

そうすると、労役場で同じ軽作業をして、片や一日5,000円、片や一日100万円というのは憲法14条の[[法の下の平等]]に反するとの指摘もあるが、[[政府]]は問題ないと答弁している<ref>[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/164/0004/16404210004019c.html 平成18年4月21日・衆議院法務委員会]</ref>。ちなみに、2005年には約71万人が第一審で罰金判決を受けているが、そのうち100万円を超える罰金判決を受けたのは323人である<ref>司法統計年報</ref>。


== 労役場留置の執行 ==
== 労役場留置の執行 ==
労役場留置を執行するには、身柄拘束のための手続や刑事施設の受け入れ準備が必要となり、検察庁側に手間や費用(人件費、光熱費、収容者の食費など)が掛かる。そのため、基本的に検察庁は労役場留置を避け、可能な限り現金で徴収ようとする。建前では罰金は「本人が一括納付」すべきものとされているが、「分割納付」に応じたり、「親族等による立替え」を相談させること行われる。しかし、罰金の支払督促を無視している悪質な未納者を、見せしめ一斉拘束し労役場留置することもる。
労役場留置を執行するには、身柄拘束のための手続や刑事施設の受け入れ準備が必要となり、検察庁側に手間や費用(人件費、光熱費、労役場留置者の食費など)が掛かる。しかし近年「分割納付」に応じても結局支払えない例が頻発しているもあっ、かつは認められることも少なくなかった分割納付が認められことはまずなくなった


もし労役場留置の執行のため拘束された後でも、罰金の一部を支払えばその金額に相当する日数は留置日数から差し引かれるし、残額を完納すれば速やかに釈放される(本人は身柄を拘束されているので、親族や代理人に依頼して納付する必要がある)。土日祝日等は作業はないが、労役場留置の日数には算入される。しかし、実際に労役場留置を経験した人には、刑事施設で何もすることがなく1日を過ごす方が苦痛だとの声もある<ref>[http://knn.typepad.com/knn/2004/08/knn.html KandaNewsNetwork]</ref><ref name="isbn4334736947">『札幌刑務所4泊5日』東直己、光文社文庫 ISBN 4334736947</ref><ref>『労役でムショに行ってきた!』森史之助、彩図社 ISBN 4883927741</ref>
もし労役場留置の執行のため拘束された後でも、罰金の一部を支払えばその金額に相当する日数は留置日数から差し引かれ、残額を完納すれば速やかに釈放される本人は身柄を拘束されているので、親族や代理人(主に弁護士)に依頼して納付する必要がある。土日祝日等は作業はないが、労役場留置の日数には算入される。しかし、実際に労役場留置を経験した人には、刑事施設で何もすることがなく1日を過ごす方が苦痛だとの声もある<ref>『労役でムショに行ってきた!』森史之助、彩図社 ISBN 4883927741</ref><ref name="isbn4334736947">『札幌刑務所4泊5日』東直己、光文社文庫 ISBN 4334736947</ref>{{要高次出典|date=2014年10月}}


=== 実際の処遇 ===
また、行政官庁の処分により、いつでも仮出場を許すことができる。


基本的な扱いは刑務所の受刑者と同じだが、異なる処遇の面もある。[[b:刑法第30条|刑法30条]]2項は行政官庁([[地方更生保護委員会]])の処分により、いつでも[[仮釈放|仮に出場]]を許すことができるとしている。もっとも、1995年以降に仮出場を許された者は2名だけである<ref>[https://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_hogo.html 保護統計統計表] 「仮釈放等審理の開始及び終了人員 累年比較」 2000年と2002年に各1名のみ。</ref>。
労役場に留置されている者については、その性質に反しない限り、'''[[懲役]][[受刑者]]に関する規定が準用'''される(同法第288条)。刑事施設の規律及び秩序の維持のため、同法第34条による識別のための[[身体検査]]及び同法75条による身体等の検査や、刑事施設の[[衛生]]保持の観点からの調髪(男子の場合、[[丸刈り]]強制)を行わせることとしている(刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第26条)。ただし、数日の短期間の労役場留置の場合、調髪([[丸刈り]]の強制)は行われないケースも存在している<ref name="isbn4334736947"></ref>。


労役場に留置されている者については、その性質に反しない限り[[懲役]][[受刑者]]に関する規定が準用される(同法第288条)。刑事施設の規律及び秩序の維持のため、刑事施設の[[衛生]]保持の観点からの調髪(男子の場合、[[丸刈り]]強制)を行わせることとしている(刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第26条)。ただし、数日の短期間の労役場留置の場合、調髪([[丸刈り]]の強制)は行われない場合もある<ref name="isbn4334736947"/>。また、同法第34条による識別のための[[身体検査]]及び同法75条による身体等の検査など、各種[[検身]]が刑務所で行われるように、同様の[[検身]]が労役場でも行われている。男子労役場の場合、[[カンカン踊り]]と通称される所定の動作で隅々まで身体を見せる検査が以前までは裸体で行われていたが、制度が変更されてからはパンツのみを着用した状態で検査が行われている。女子労役場の場合は、カンカン踊りではなく静止した状態での検査が行われており、四つん這いに裸体で[[膣]]や[[肛門]]の内部の異物や隠匿物の有無を検査する<ref>『女子刑務所ライフ!』(2018) 中野瑠美 イースト・プレス</ref>。
労役場留置を執行された者が、[[再審]]又は[[非常上告]]により無罪の判決を受けたときは、[[刑事補償法]]の規定により、懲役、禁錮若しくは拘留の執行又は拘置の場合に準じて、留置1日につき1,000円以上12,500円以下の補償金が交付される。留置1日に換算された罰金又は科料の額が補償されるわけではない<ref>罰金又は科料を現金で支払った場合は、罰金額に年5分の利息を上乗せして還付される</ref>。


===執行件数===
2007年中に労役場に入所した者は7,126人であり、このうち2,205人は、既に刑事施設に収容されている者(懲役と罰金を併科され、懲役の執行が終わった者など)が新たに労役場留置を執行されたものであった<ref>矯正統計年報</ref>。
労役場留置処分の執行件数は以下のとおりである(括弧内は総数に占める割合)<ref>[https://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_kensatsu.html 検察統計年報] 「最高検,高検及び地検管内別 罰金刑執行件数及び金額」及び「最高検,高検及び地検管内別 科料刑執行件数及び金額」</ref>。


{| class="wikitable" style="text-align:center;"
近年は、罰金刑の言渡しの件数は減少しているにもかかわらず、労役場留置を執行される件数は逆に急増している。[[法務省]]のまとめでは、罰金刑の確定人員は1997年の1,030,612人から、2007年には533,950人と5割近く減少している。しかし、労役場留置の執行は、1997年の2,661人(確定人員の0.26%)から、2007年には7,126人(同1.33%)へ、件数で2.7倍、比率で5倍に増えている。この原因として、[[痴漢]]、[[盗撮]]や悪質な交通違反([[飲酒運転]]、[[ひき逃げ]]等)に対する罰金額の引き上げや、[[窃盗]]に対する罰金刑の新設、不況による支払困難者の増加があると指摘されている。
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!style="width:5em;"|年!!style="width:10em;"|罰金!!style="width:10em;"|科料
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|2010年
|7,882 (1.85%)
|22 (0.72%)
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|2011年
|7,286 (1.88%)
|32 (1.05%)
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|2012年
|6,619 (1.87%)
|28 (0.96%)
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|2013年
|5,491 (1.71%)
|22 (0.85%)
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|2014年
|4,880 (1.65%)
|20 (0.81%)
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|2015年
|4,799 (1.66%)
|17 (0.74%)
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|2016年
|4,559 (1.68%)
|15 (0.78%)
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|2017年
|4,285 (1.71%)
|11 (0.57%)
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|2018年
|3,952 (1.72%)
|7 (0.38%)
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|2019年
|3,617 (1.78%)
|14 (0.87%)
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|2020年
|2,941 (1.64%)
|7 (0.48%)
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|2021年
|3,012 (1.73%)
|4 (0.29%)
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|2022年
|2,731 (1.64%)
|11 (0.84%)
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|}


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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* [[刑務所]]
* [[刑務所]]
* [[拘置所]]
* [[拘置所]]
* [[刑法]]
* [[刑法 (日本)|刑法]]
* [[刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律]]
* [[刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律]]


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2023年9月18日 (月) 03:53時点における最新版

労役場(ろうえきじょう)とは、法務大臣が指定する刑事施設に附置する場所(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第287条第1項)をいう。

労役場留置とは、罰金又は科料の判決が確定し、罰金・科料の金額を完納できない者に対して、裁判で定められた1日当たりの金額が罰金の総額に達するまでの日数分、労役場に留置して所定の作業(封筒貼りなどの軽作業)を行わせることをいう。労役場留置の期間は、罰金では1日以上2年以下(罰金を併科した場合は3年以下)、科料では1日以上30日以下(科料を併科した場合は60日以下)である。最高裁判例によれば、労役場留置は「換刑処分を定めた刑法18条の規定は罰金の特別な執行方法を定めたもので罰金刑の効果を全うするための規定である」としている[1]

労役場留置の言渡し[編集]

刑法18条4項は「罰金又は科料の言渡しをするときは、その言渡しとともに、罰金又は科料を完納することができない場合における留置の期間を定めて言い渡さなければならない。」と規定している。具体的には、罰金又は科料判決主文において「被告人を罰金●●万円に処する。これを完納することができないときは、金▲▲円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。」のように言い渡される。ただし、少年法54条の規定により少年(20歳未満の者)に対しては労役場留置の言渡しをしない。法人に対する罰金についても同様で、法人が罰金を納めないからといって代表者や経営陣が労役場留置になることはない。

労役場留置一日あたりの金額は裁判官の裁量によって決めるものとされているが、実務上は一日あたり5,000で換算されることが多い[2]。特に略式命令では換算額が1日5,000円とあらかじめ印刷され、必要事項を雛形に記入するだけの略式命令書が用いられることが多い。高額な罰金では一日5,000円では上限の2年でも払いきれないので、2年以内に収まるよう一日あたりの金額を大きくする[3]。そのため、労役場で同じ軽作業であるのに1日あたりの金額の差異があることは憲法14条の法の下の平等に反するとの指摘もあるが、政府法務省は問題ないと国会で答弁している[4]

労役場留置の執行[編集]

労役場留置を執行するには、身柄拘束のための手続や刑事施設の受け入れ準備が必要となり、検察庁側に手間や費用(人件費、光熱費、労役場留置者の食費など)が掛かる。しかし、近年「分割納付」に応じても結局支払えない例が頻発していることもあって、かつては認められることも少なくなかった分割納付が認められることはまずなくなった。

もし労役場留置の執行のため拘束された後でも、罰金の一部を支払えばその金額に相当する日数は留置日数から差し引かれ、残額を完納すれば速やかに釈放される。本人は身柄を拘束されているので、親族や代理人(主に弁護士)に依頼して納付する必要がある。土日祝日等は作業はないが、労役場留置の日数には算入される。しかし、実際に労役場留置を経験した人には、刑事施設で何もすることがなく1日を過ごす方が苦痛だとの声もある[5][6][信頼性要検証]

実際の処遇[編集]

基本的な扱いは刑務所の受刑者と同じだが、異なる処遇の面もある。刑法30条2項は行政官庁(地方更生保護委員会)の処分により、いつでも仮に出場を許すことができるとしている。もっとも、1995年以降に仮出場を許された者は2名だけである[7]

労役場に留置されている者については、その性質に反しない限り懲役受刑者に関する規定が準用される(同法第288条)。刑事施設の規律及び秩序の維持のため、刑事施設の衛生保持の観点からの調髪(男子の場合、丸刈り強制)を行わせることとしている(刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第26条)。ただし、数日の短期間の労役場留置の場合、調髪(丸刈りの強制)は行われない場合もある[6]。また、同法第34条による識別のための身体検査及び同法75条による身体等の検査など、各種検身が刑務所で行われるように、同様の検身が労役場でも行われている。男子労役場の場合、カンカン踊りと通称される所定の動作で隅々まで身体を見せる検査が以前までは裸体で行われていたが、制度が変更されてからはパンツのみを着用した状態で検査が行われている。女子労役場の場合は、カンカン踊りではなく静止した状態での検査が行われており、四つん這いに裸体で肛門の内部の異物や隠匿物の有無を検査する[8]

執行件数[編集]

労役場留置処分の執行件数は以下のとおりである(括弧内は総数に占める割合)[9]

罰金 科料
2010年 7,882 (1.85%) 22 (0.72%)
2011年 7,286 (1.88%) 32 (1.05%)
2012年 6,619 (1.87%) 28 (0.96%)
2013年 5,491 (1.71%) 22 (0.85%)
2014年 4,880 (1.65%) 20 (0.81%)
2015年 4,799 (1.66%) 17 (0.74%)
2016年 4,559 (1.68%) 15 (0.78%)
2017年 4,285 (1.71%) 11 (0.57%)
2018年 3,952 (1.72%) 7 (0.38%)
2019年 3,617 (1.78%) 14 (0.87%)
2020年 2,941 (1.64%) 7 (0.48%)
2021年 3,012 (1.73%) 4 (0.29%)
2022年 2,731 (1.64%) 11 (0.84%)

脚注[編集]

  1. ^ 昭和25年6月7日 最高裁大法廷判決・昭和24(れ)1890 窃盗、臨時物資需給調整法違反被告事件
  2. ^ 裁判の執行等について - 検察庁
  3. ^ 例えば、罰金1,000万円なら労役場留置一日20,000円×500日で換算するなどである。脱税特別背任などの経済犯罪になると、さらに高額な億単位の罰金が科せられることがあり、罰金5億円で労役場留置一日100万円×500日に換算した判決もある。もっとも、2019年に通常第一審で言い渡された100万円を超える罰金は167件(法人を含む)に過ぎず、このようなケースは稀である。- 最高裁判所司法統計「通常第一審事件の有罪(罰金)人員  罪名別罰金額区分別  全地方裁判所」及び「通常第一審事件の有罪(罰金)人員  罪名別罰金額区分別  全簡易裁判所」
  4. ^ 平成18年4月21日・衆議院法務委員会 - 細川律夫委員の質問に対する杉浦正健法務大臣の答弁
  5. ^ 『労役でムショに行ってきた!』森史之助、彩図社 ISBN 4883927741
  6. ^ a b 『札幌刑務所4泊5日』東直己、光文社文庫 ISBN 4334736947
  7. ^ 保護統計統計表 「仮釈放等審理の開始及び終了人員 累年比較」 2000年と2002年に各1名のみ。
  8. ^ 『女子刑務所ライフ!』(2018) 中野瑠美 イースト・プレス
  9. ^ 検察統計年報 「最高検,高検及び地検管内別 罰金刑執行件数及び金額」及び「最高検,高検及び地検管内別 科料刑執行件数及び金額」

関連項目[編集]