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[[アメリカ合衆国南部|アメリカ南部]]の小さな駅に夜行列車からひとりの黒人([[シドニー・ポワチエ|シドニー・ポワティエ]])が降り立った。町では折しも有力者の殺人事件が発生。パトカーの警官がうだるような熱帯夜のなかを巡回していた。人種偏見の強い地方であるために、駅の待合室にいた「よそ者」の黒人は、巡回中の警官([[ウォーレン・オーツ]])によって容疑者として連行され、署長([[ロッド・スタイガー]])の前に突き出されてしまう。しかし、あからさまな侮蔑と嫌悪にさらされているこの黒人の男 |
[[アメリカ合衆国南部|アメリカ南部]]の小さな駅に夜行列車からひとりの黒人([[シドニー・ポワチエ|シドニー・ポワティエ]])が降り立った。町では折しも有力者の殺人事件が発生。パトカーの警官がうだるような熱帯夜のなかを巡回していた。人種偏見の強い地方であるために、駅の待合室にいた「よそ者」の黒人は、巡回中の警官([[ウォーレン・オーツ]])によって容疑者として連行され、署長([[ロッド・スタイガー]])の前に突き出されてしまう。しかし、あからさまな侮蔑と嫌悪にさらされているこの黒人の男こそ、ペンシルベニア州フィラデルフィア市警殺人課の敏腕刑事、ヴァージル・ティッブスだった。 |
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滅多にない殺人事件に手を焼く田舎町の警察は、地元市長からの圧力もあって、屈辱感を覚えつつも都会のベテラン刑事ティッブスに捜査協力を依頼する。 |
滅多にない殺人事件に手を焼く田舎町の警察は、地元市長からの圧力もあって、屈辱感を覚えつつも都会のベテラン刑事ティッブスに捜査協力を依頼する。 |
2021年9月14日 (火) 10:47時点における版
夜の大捜査線 | |
---|---|
In the Heat of the Night | |
監督 | ノーマン・ジュイソン |
脚本 | スターリング・シリファント |
原作 | ジョン・ボール |
製作 | ウォルター・ミリッシュ |
出演者 |
ロッド・スタイガー シドニー・ポワチエ ウォーレン・オーツ |
音楽 | クインシー・ジョーンズ |
撮影 | ハスケル・ウェクスラー |
編集 | ハル・アシュビー |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 |
|
上映時間 | 109分 |
製作国 |
|
言語 | 英語 |
製作費 | 200万ドル |
興行収入 | 1090万ドル |
次作 | 続・夜の大捜査線 |
『夜の大捜査線』(よるのだいそうさせん、原題:In the Heat of the Night)は1967年公開のアメリカ合衆国のサスペンス映画。
概要
第40回アカデミー賞作品賞、主演男優賞(ロッド・スタイガー)、脚色賞(スターリング・シリファント)、音響賞(サミュエル・ゴールドウィン撮影所サウンド部)、編集賞(ハル・アシュビー)を受賞した[1]。また2002年にアメリカ国会図書館が、アメリカ国立フィルム登録簿に新規登記した作品である。
原作はジョン・ボールの小説『夜の熱気の中で』(アメリカ探偵作家クラブ新人賞受賞作)よりスターリング・シリファントが脚色。
当時盛り上がっていた公民権運動を背景に、タイミング良く制作されたこの作品は、キャスト・スタッフ共々自発的に参加して作り上げた作品である。人種差別が厳しいミシシッピ州にある小さな町で起きた殺人事件と偶然捜査に参加するようになった腕利きの黒人刑事、そしてことごとく捜査に対立する白人の人種差別的な町の警察署長と、その捜査の様子を白い目で見ている住民たちの緊迫した対立の関係には当時の公民権運動の緊迫感をも感じ取ることができる。
音楽監督はクインシー・ジョーンズ。主題歌は映画の題名と同じタイトル"IN THE HEAT OF THE NIGHT"であり、レイ・チャールズのヒット・ナンバーである。両者の功績が大きかったため60年代後半からのdetective storyのカテゴリーは今日に至るも多旋律が主流であり日本の刑事物も例外ではない。編集のハル・アシュビーは後に映画監督になって活躍する。
この作品は非常に好評だったので、主人公の黒人刑事ヴァージル・ティッブスのキャラクターのみを活かした『続・夜の大捜査線』(1970)、『夜の大捜査線 霧のストレンジャー』(1971)が作られ、またテレビ映画化もされている。
あらすじ
アメリカ南部の小さな駅に夜行列車からひとりの黒人(シドニー・ポワティエ)が降り立った。町では折しも有力者の殺人事件が発生。パトカーの警官がうだるような熱帯夜のなかを巡回していた。人種偏見の強い地方であるために、駅の待合室にいた「よそ者」の黒人は、巡回中の警官(ウォーレン・オーツ)によって容疑者として連行され、署長(ロッド・スタイガー)の前に突き出されてしまう。しかし、あからさまな侮蔑と嫌悪にさらされているこの黒人の男こそ、ペンシルベニア州フィラデルフィア市警殺人課の敏腕刑事、ヴァージル・ティッブスだった。
滅多にない殺人事件に手を焼く田舎町の警察は、地元市長からの圧力もあって、屈辱感を覚えつつも都会のベテラン刑事ティッブスに捜査協力を依頼する。
白人署長はもともと頑固な差別主義者であったが、次第にティッブスの刑事としての能力に一目置くようになる。ただし、人種偏見が根強い町であるために、捜査には困難が常につきまとう。
事件はようやく解決し、ティッブスと署長との間には奇妙な友情のようなものが生まれていた。ティッブスが町を去る日、駅には彼を晴れやかな表情で見送る署長の姿があった。
キャスト
役名 | 俳優 | 日本語吹替 | |||
---|---|---|---|---|---|
NET版 | TBS旧版[2] | 日本テレビ版 | TBS新版 | ||
ヴァージル・ティッブス | シドニー・ポワティエ | 田中信夫 | 羽佐間道夫 | 新克利 | 田中信夫 |
ビル・ギレスピー | ロッド・スタイガー | 富田耕生 | 宮川洋一 | 富田耕生 | |
サム・ウッド | ウォーレン・オーツ | 内海賢二 | 青野武 | ||
レズリー・コルバート | リー・グラント | 富永美沙子 | 公卿敬子 | ||
エリック・エンディコット | ラリー・ゲイツ | 久松保夫 | 大久保正信 | ||
ロイド・パーディ | ジェームズ・パターソン | 青野武 | 池田勝 | ||
市長 | ウィリアム・シャラート | 村越伊知郎 | 千葉耕市 | ||
ジョージ・コートニー | ピーター・ウィットニー | 大宮悌二 | 島香裕 | ||
デロリス・パーディ | クェンティ・ディーン | 太田淑子 | 鵜飼るみ子 | ||
ママ・カレバ | ビア・リチャーズ | 麻生美代子 | 遠藤晴 | ||
ハーヴェイ・オバースト | スコット・ウィルソン | 堀勝之祐 | 納谷六朗 | ||
シャグバッグ | ティモシー・スコット | 徳丸完 | 広瀬正志 | ||
ラルフ・ヘンショウ | アンソニー・ジェームズ | 西山連 | 千田光男 | ||
スチュアート医師 | フレッド・スチュワート | 勝田久 | 峰恵研 | ||
ジェス | カリル・ベザリール | 石森達幸 |
- NET版:初回放送1972年11月5日『日曜洋画劇場』 21:00-22:55
- TBS旧版:初回放送1977年12月19日『月曜ロードショー』
- 日本テレビ版:初回放送1981年2月4日『水曜ロードショー』 21:02-22:54
- TBS新版:初回放送1983年5月5日『SONY PRESENTS 名作洋画ノーカット10週』 23:48-25:48
- プロデューサー:熊谷国雄(TBS)、演出:伊達康将、翻訳:木原たけし、効果:遠藤堯雄/桜井俊哉、調整:前田仁信、製作:東北新社/TBS
- BDにはNET版とTBS新版が収録
主題歌
エピソード
- 冒頭の有名な列車のロングショットは、撮影監督ハスケル・ウェクスラーが本屋で立ち読みしていた家庭用のカメラ撮影用の本からヒントを受け、金物屋から網戸の網を買ってきて、カメラに装着し、助手と2人きりで撮影した[3]。
- 人種差別のひどい南部をシドニー・ポワティエは拒否していた。実際に映画に出て来るカーチェイスの様に、何度も嫌がらせを受けた。撮影はイリノイ州でロケ撮影を行ったが、広大な綿畑の場面はテネシー州において撮影した。温室での場面も実在している温室を利用し、植えられていたランは15000ドルの価値があった。
- 州境の橋の場面では、映画史上初めてズームレンズを装着して撮影した[3]。
- 実力者の未亡人役だったリー・グラントは赤狩りによって映画界を干されて、この作品が復帰第1作目となった(彼女は赤狩りの最中に本当に夫を失っている)[3]。
- 警察署長役のロッド・スタイガーは絶えずガムを噛み続けることを訝しがった。最初は嫌がっていたが、そのアイディアが良かったので噛み続けることにした。結局撮影中263箱分のガムを噛み続けていた[3]。
- 警察署長宅でのシドニー・ポワティエとロッド・スタイガーとの会話の場面はすべてアドリブで撮影された[3]。
- ロッド・スタイガーが演じた警察署長役は、現在でも一般的になったカルト的な偶像になっている。この南部を代表とするステレオタイプ的な役柄は、広告などにも利用されている[3]。
- 「みんな私をミスター・ティッブスと呼んでいる!(They call me Mister Tibbs!)」という台詞は、アメリカ映画の名セリフベスト100で第16位にランクインしている。南部では白人男性が黒人と話すときに成人であっても相手を「Boy」を呼ぶ風習があり白人が黒人に日常的に行うマウンティングの一つとなっている、劇中でもヴァージルはしばしば「Boy」と呼びかけられており、この風習に対する抗議の含んだ人種差別問題を象徴する台詞となっている。
- シドニー・ポワティエ自身が一番大好きな映画の1本である[3]。
- 映画ではヴァージルはペンシルベニア州フィラデルフィア市警から派遣されて来ているが、ボールの原作ではヴァージルが所属するのはカリフォルニア州パサディナ市警察。パサディナ市警察では、作品を記念して“極秘の公務により出張中、帰署時期不明”の扱いでヴァージルを署員として登録しているという。
- 物語の終幕は、原作では署長が握手をしようか迷ったまま結局出来ずに刑事を送り出すが、映画では二人が握手をして別れるハッピーエンドに変更されている。