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「広域緊急援助隊」の版間の差分

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また、[[規則|警備実施要則]]第43条では災害警備実施として救出救助活動が規定されている<ref>[https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50400000003 警備実施要則(昭和三十八年国家公安委員会規則第三号)]</ref>。警備実施要則は[[警察庁]]の[[通達行政|通達]]として都道府県警察を拘束していることから、全国の都道府県警察本部で救出救助活動を行うために警備実施の基幹部隊である[[機動隊]]に救助隊を設置している<ref>[https://www.npa.go.jp/laws/notification/keibi/keibi1/Keibi1-19631128.pdf 警備実施要則の制定について(通達)]</ref>。
また、[[規則|警備実施要則]]第43条では災害警備実施として救出救助活動が規定されている<ref>[https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=338M50400000003 警備実施要則(昭和三十八年国家公安委員会規則第三号)]</ref>。警備実施要則は[[警察庁]]の[[通達行政|通達]]として都道府県警察を拘束していることから、全国の都道府県警察本部で救出救助活動を行うために警備実施の基幹部隊である[[機動隊]]に救助隊を設置している<ref>[https://www.npa.go.jp/laws/notification/keibi/keibi1/Keibi1-19631128.pdf 警備実施要則の制定について(通達)]</ref>。


広域緊急援助隊は、被災者の救出救助活動を行う警備部隊のほか、緊急交通路の確保を行う交通部隊、遺体の検視や遺族対策を行う刑事部隊で構成されている{{Sfn|菊池|2011|p=62}}。先行情報班、救出救助班、交通対策班、検視・遺族対策班に分かれ、[[ヘリコプター]]で迅速に被災地に赴き被害情報の収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索、緊急交通路の確保を行う<ref name="デジタル大辞泉" />。
広域緊急援助隊は、被災者の救出救助活動を行う警備部隊のほか、[[緊急交通路]]の確保を行う交通部隊、[[遺体]][[検視]]や遺族対策を行う刑事部隊で構成されている{{Sfn|菊池|2011|p=62}}。先行情報班、救出救助班、交通対策班、検視・遺族対策班に分かれ、[[ヘリコプター]]で迅速に被災地に赴き被害情報の収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索、緊急交通路の確保を行う<ref name="デジタル大辞泉" />。


広域緊急援助隊には、極めて高度な救出救助能力を有する特別救助班({{Lang|en-short|'''Police Team of Rescue Experts''', '''P-REX'''}})が含まれる<ref name="警察庁" />。P-REXは、消防の[[特別高度救助隊]]に匹敵する救出救助能力を備えている{{sfn|塩谷|尾崎|2017|p=70}}。P-REXは警察版[[消防機動救助部隊|ハイパーレスキュー]]と通称され、広域緊急援助隊の[[#救出救助班|救出救助班]]に所属する隊員から構成されているほか、[[ダイヤモンドカッター]]や[[電磁波人命探査装置]]などの高度救助資機材が配備されている。また、救出救助活動中の火災を想定して[[インパルス放水銃]]も配備されている{{Sfn|山辺|2005|pp=82-83}}。
広域緊急援助隊には、極めて高度な救出救助能力を有する特別救助班({{Lang|en-short|'''Police Team of Rescue Experts''', '''P-REX'''}})が含まれる<ref name="警察庁" />。P-REXは、消防の[[特別高度救助隊]]に匹敵する救出救助能力を備えている{{sfn|塩谷|尾崎|2017|p=70}}。P-REXは警察版[[消防機動救助部隊|ハイパーレスキュー]]と通称され、広域緊急援助隊の[[#救出救助班|救出救助班]]に所属する隊員から構成されているほか、[[ダイヤモンドカッター]]や[[電磁波人命探査装置]]などの高度救助資機材が配備されている。また、救出救助活動中の火災を想定して[[インパルス放水銃]]も配備されている{{Sfn|山辺|2005|pp=82-83}}。

2023年11月13日 (月) 10:56時点における版

警視庁の広域緊急援助隊

広域緊急援助隊(こういききんきゅうえんじょたい、英語: Interprefectural Emergency Rescue Unit)とは、全国の都道府県警察本部に設置されている災害警備活動を行う部隊のこと。広緊隊と略称する[1]

概要

1995年兵庫県南部を中心とした広い範囲に大規模な被害を与えた阪神・淡路大震災が発生した。警察庁は全国の都道府県警察から機動隊員を被災地に派遣して災害救助に当たらせたが、救助資機材や車両が十分に配備されていなかった[2]

警察の業務は治安維持犯罪捜査交通行政など非常に幅広く、災害救助を主任務としている消防と比較して救助隊の業務は兼任であり、火災交通事故など平時の災害現場で警察救助隊が出動することはほとんどない。しかし、大規模災害が発生した場合には消防の救助隊だけでは救助資機材や人員が不足することから、警察の救助隊も高度な救出救助能力を持つ必要性が生じた[3]

この震災での体験を教訓として、大規模災害に即応し高度の救出救助能力等を持つ災害対策専門の部隊が、全国の都道府県警察に必要だとして同年6月に「広域緊急援助隊」が創設された[4]。広域緊急援助隊の発足に伴い、レスキュー車などが全国の機動隊に国費で配備されるようになった[5]

広域緊急援助隊の出動基準は、国内において大規模災害が発生した場合に都道府県公安委員会警察法第60条に基づく援助の要求を行うことで都道府県の枠を越えて出動する[6]

また、広域緊急援助隊の任務は

  1. 被害情報、交通情報等の収集
  2. 救出救助
  3. 緊急交通路の確保
  4. 検視、被災者等への安否情報の提供

とされている[7]

警察の災害活動は、警察法第2条に基づき個人の生命、身体及び財産を保護し、公共の安全と秩序を維持する事を目的として行うもので、災害警備活動と称される[8]

また、警備実施要則第43条では災害警備実施として救出救助活動が規定されている[9]。警備実施要則は警察庁通達として都道府県警察を拘束していることから、全国の都道府県警察本部で救出救助活動を行うために警備実施の基幹部隊である機動隊に救助隊を設置している[10]

広域緊急援助隊は、被災者の救出救助活動を行う警備部隊のほか、緊急交通路の確保を行う交通部隊、遺体検視や遺族対策を行う刑事部隊で構成されている[11]。先行情報班、救出救助班、交通対策班、検視・遺族対策班に分かれ、ヘリコプターで迅速に被災地に赴き被害情報の収集、被災者の救出救助、行方不明者の捜索、緊急交通路の確保を行う[1]

広域緊急援助隊には、極めて高度な救出救助能力を有する特別救助班(Police Team of Rescue Experts, P-REX)が含まれる[12]。P-REXは、消防の特別高度救助隊に匹敵する救出救助能力を備えている[13]。P-REXは警察版ハイパーレスキューと通称され、広域緊急援助隊の救出救助班に所属する隊員から構成されているほか、ダイヤモンドカッター電磁波人命探査装置などの高度救助資機材が配備されている。また、救出救助活動中の火災を想定してインパルス放水銃も配備されている[14]

毎年、各管区ごとに広域緊急援助隊が集結して合同訓練を実施している。また、消防の救助隊の教育訓練に機動隊員を派遣して合同訓練を行うなど、消防との連携強化を通じた練度の向上も図られている[15]

また、東日本大震災の教訓を元に2012年警察災害派遣隊が創設され同部隊は即応部隊として被災地で活動する役割を担うこととなった[1]

部隊の編制

広域緊急援助隊は、全国の都道府県警察に設置されており、約5,600名の隊員で構成されている。警視庁及び北海道警察を除く府県警察の広域緊急援助隊は、各管区警察局の下に管区広域緊急援助隊として編成されている[4]

広域緊急援助隊は機動隊管区機動隊交通機動隊及び高速道路交通警察隊から災害警備に対する能力、体力、気力等を備えた者が選考されている[4]

広域緊急援助隊は任務に応じて、複数の班に分かれている。

先行情報班

機動隊航空隊などで編成され、ヘリコプターなどを活用することにより迅速に被災地へ赴き被害情報を多角的に収集し、警備本部に報告する[4]

救出救助班

機動隊・管区機動隊などで編成され、被災者の救出救助や行方不明者の捜索を行う[11]

特別救助班

神奈川県警察のP-REX隊員

2005年4月には、極めて高度な救出救助能力を必要とする災害現場において、より迅速かつ的確に被災者の救出救助活動を行うことを任務とする特別救助班(Police Team of Rescue Experts, P-REX)が全国12都道府県に計18個班体制で設置された[16]。現在は北海道警察宮城県警察警視庁埼玉県警察千葉県警察神奈川県警察新潟県警察静岡県警察愛知県警察京都府警察大阪府警察兵庫県警察広島県警察香川県警察福岡県警察沖縄県警察の広域緊急援助隊に計22個班が設置されており、隊員の総数は約240名である[12]

P-REXは、2004年に発生した新潟県中越地震を教訓として創設されている[17]。P-REXは消防の特別高度救助隊に匹敵する高度な救出救助能力と救助資機材を備え、P-REXに選抜された機動隊員はレンジャースクーバ能力に秀でた者とされる。P-REX隊員はヘリコプターからのリペリング降下などの高度な技術も習得している[18]。P-REX隊員は広域緊急援助隊員の中でも冷静な判断力と救出救助活動に必要な知識経験・体力を併せ持った者が選抜され、非常に狭き門とされている[19]。P-REXの装備資機材としてはレスキュー車のほか、特別高度救助隊とおおむね同様の高度救助資機材が配備されていることから、一般の消防救助隊が保有していない技術や資機材を備えている[20]。P-REXに選抜された機動隊員は、消防学校へ研修派遣されている[21]

季刊誌「Jレスキュー」2008年5月号によれば、北海道警察は2007年に機動隊員を消防へ研修派遣し、その中から優れた者を選抜して特別救助班を編成したとされている。また、同誌には札幌市消防局特別高度救助隊と、北海道警察特別救助班が実施した合同訓練の模様が掲載されている。この合同訓練は、2008年3月19日に大規模災害を想定して札幌市で行われた。さらに同誌の2008年7月号には、静岡市消防局と静岡県警察が実施した合同訓練の模様が掲載されている。

交通対策班

交通機動隊高速道路交通警察隊などで編成され、災害応急対策に従事する要員が迅速に被災地に到着できるよう緊急交通路の確保や緊急通行車両の先導などを行う[7]

検視班・遺族対策班

機動捜査隊鑑識課などで編成され、亡くなった被災者の検視死体見分のほか、遺族への遺体の引渡しを行うとともに安否情報の提供を行う[11]。 また、これらの班に加えて、機動警察通信隊が被災地に赴き

  1. 臨時の無線中継所や臨時電話の設置
  2. 被害状況等を把握するための映像伝送

など、情報通信の確保を行う[7]

過去に出動した災害、事故

関連項目

脚注

参考文献

  • 山辺正二郎「警察版ハイパーレスキュー・P-REX発足!」『警察マニア!』、三推社、2005年12月。ISBN 978-4063662320 
  • 柿谷哲也; 菊池雅之『最新 日本の対テロ特殊部隊』三修社、2008年。ISBN 978-4384042252 
  • 山辺正二郎『機動隊パーフェクトブック』講談社、2010年。ISBN 978-4063666137 
  • 菊池雅之『こんなにスゴい!日本のレスキュー隊』竹書房、2011年。ISBN 978-4812445884 
  • 貝方士英樹; 有村拓真『J POLICE Vol.5』イカロス出版、2012年。ISBN 978-4863206519 
  • 塩谷茂代; 尾崎清子『オールアバウト警視庁』Jウイング別冊編集部、2017年。ISBN 978-4802203302 

外部リンク