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「乏尿」の版間の差分

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腎前性腎不全>腎性腎不全>腎後性腎不全 である。
腎前性腎不全>腎性腎不全>腎後性腎不全 である。

特に腎の尿量が0である場合は腎後性腎不全が疑われる。

2006年9月27日 (水) 23:12時点における版

乏尿

定義:

尿が出なくなること。一日の尿量が400ml以下になること。

(健常者の尿量は500~2,000ml/日、無尿時には50~100ml/日以下)

患者の訴え方:

膀胱(ぼうこう)は、容量は成人で約250 - 600ml程度。通常時は1時間あたり60mlの尿が腎臓から送られる。 膀胱総容積の4/5程度蓄積されると大脳に信号が送られ、尿意を感じる。 排尿時は腹圧を加えることで膀胱の筋肉が働いて内圧がかかり、 膀胱頸部筋が開放、排尿に至る。そのため、400ml/日以下の尿では「尿が少ない」「尿が減った」「排尿の回数が少ない」と訴えることになる。しかし、上記の訴えで乏尿や無尿の定義に該当しない場合が多く、水分摂取が減少した状態での生理的範囲内の場合がほとんどである。 むしろ、ショック時や意識の障害のある場合に、家族に「最後の排尿がいつであったか」を確認することが乏尿の診断に有用である。


病態の考え方:  一般に食事を摂取している状態では,1日に 600mOsm の溶質を尿中に排泄する必要がある。 尿の最大濃縮力は約1,200~1,400mOsm/kgH2Oであることから、これらの溶質を排泄するには,最低 400ml の尿が必要。つまり、1日 400ml 以下の乏尿状態が続くと、溶質の排泄が不十分となる。そうなってしまうと体内に溶質が蓄積した状態、高窒素血症となる。 尿量の病的な減少は、すなわち腎不全状態の発症と直結した病態といえる。


機序による乏尿の分類:

乏尿となる機序から,腎への灌流圧の低下による腎前性乏尿、腎実質の障害に起因する腎性乏尿、尿管・膀胱・尿道の閉塞などが原因となって起こる腎後性乏尿、以上の3群に分け検討することが病態の理解と治療方針の決定に有用である


腎前性腎不全  →脱水、ショック、腎不全  これらの徴候が見られたら、腎前性の腎不全をまず考える。健常者にしても血圧が70~80mmHg以下では腎の有効な潅流圧が得られないが、老化や動脈硬化を有する例、すでに腎機能が低下している例ではこの値より軽度の血圧降下でも容易に尿量の減少をきたし腎不全となる。

腎性腎不全  →腎前性腎不全の進行、薬物投与、糸球体腎炎 等各種腎炎、DICの存在

①腎前性腎不全からの移行: 脱水、ショック等の腎前性腎不全に始まっても、それが程度が高くかつ長引くと腎組織に虚血性の障害を生じ、最も弱い尿細管が急性尿細管壊死(ATN)の状態となり腎性腎不全に移行する。腎不全となれば補液や利尿剤には反応しない。

②薬物中毒による急性尿細管壊死: 抗生剤、抗癌剤、造影剤、農薬、重金属等による中毒性の腎障害は多く急性尿細管壊死の型で腎不全を呈する。毒性をもつものの過量投与、あるいは複数の併用時、脱水の存在するとき、利尿剤と併用されているとき、老人、腎機能障害例などでよくみられる。

③急性間質性腎炎: ペニシリン、サルファ剤、消炎鎮痛剤を始め種種の薬剤でアレルギー機序から間質性腎炎をきたし急性腎不全となる。また腎盂腎炎等の細菌感染によるものである場合の、二次的にアレルギー反応が強くでる可能性もある。普通尿量は大きく変化しない程度である。

④糸球体腎炎、各種の腎障害: 典型的な急性糸球体腎炎では潜伏期をもつ特有の病歴と補体値の低下の所見から診断は容易である。SLE、PN、Goodpastur症候群、溶血性尿毒症症候群、血清病なども含まれる。これらの疾患では無尿に至ることは比較的少ない。診断はいずれも特徴ある臨床症状、検査所見から容易である。いかなる疾患が原因でも人工透析が必要となるの末期になれば乏尿、無尿となり、さらにまったく0となる。

⑤DIC: 広範に腎の細小動脈が閉塞した場合、例えばDICが腎に及ぶと乏尿、無尿となる。 臨床症状、血液凝固系検査所見(血小板減少、FDP増加、フィブリノーゲン減少)がみられる。

腎後性腎不全  →尿管・膀胱・尿道の閉塞

 大きく、下部尿路閉塞、上部尿路閉塞に分けられる

 ①下部尿路閉塞 前立腺疾患、下部尿路疾患 等によって顆部尿管芽閉塞した場合で、排尿困難や痛み、血尿、膿尿 等の尿所見が認められる。

②上部尿路閉塞  尿管の結石、腫瘍、周囲からの浸潤、圧迫等で尿管が閉塞した場合に見られる。


尿量のイメージ:

腎前性腎不全>腎性腎不全>腎後性腎不全 である。

特に腎の尿量が0である場合は腎後性腎不全が疑われる。