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風景印

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1948年1月1日以来、図案が変更されず使用されている神奈川県鎌倉郵便局の風景印

風景印(ふうけいいん)とは、郵便局に配備されている記念印(消印)の一種である。正式名称は風景入通信日付印(ふうけいいりつうしんにっぷいん)。

概要

風景印(風景入通信日付印)は郵便局に配備されている消印の一種で、局名と年月日欄と共に、局近辺の名所旧跡等にちなむ図柄が描かれている。大きさは直径36mm以内で形は円形が多いが、特産品などをかたどった変形印もある。押印に際しては鳶色と呼ばれる赤茶色のスタンプインクが使われる。

使用開始の広報は、郵政省時代は官報で行われていたが、現在は日本郵便のウェブサイトで行われている。一旦使用が開始されると廃止まで半永久的に使用されるため、使用開始日の印影を収集している者が多い。廃止に関しては郵便局自体の廃止や改称、簡易郵便局への変更などによるもののほか、風景印に描かれていた施設などが廃止されるなどの諸般の事情で廃止・変更される場合もある。

配備

2018年1月1日時点で営業中の全国24050の郵便局のうち、11138郵便局(うち35は簡易郵便局、7は分室)に配備されている。配備局は直営局が多く、簡易郵便局への配備は季節局や観光地の局など少数にとどまる。

地域によっても配備率にばらつきが見られる。中部地方以東では一部の県を除き配備率が高く、西日本では京都府などで配備率が比較的高い一方、大阪府九州地方各県などでは配備率は低い。

風景印が配備されている営業中の簡易郵便局は以下の35局。

中尊寺簡易郵便局(岩手県)、犬川簡易郵便局(山形県)、田麦野簡易郵便局(山形県)、浜田簡易郵便局(秋田県)、日原簡易郵便局(東京都)、母島簡易郵便局(東京都)、阿久原簡易郵便局(埼玉県)、川越問屋町簡易郵便局(埼玉県)、都幾川桃木簡易郵便局(埼玉県)、榛名簡易郵便局(群馬県)、今市清原簡易郵便局(栃木県)、富士山五合目簡易郵便局(山梨県)、大開簡易郵便局(山梨県)、白馬山頂簡易郵便局(長野県)、木沢簡易郵便局(長野県)、上五明簡易郵便局(長野県)、黒島簡易郵便局(石川県)、立山山頂簡易郵便局(富山県)、殿下簡易郵便局(福井県)、寸又峡簡易郵便局(静岡県)、土肥恋人岬簡易郵便局(静岡県)、妻良簡易郵便局(静岡県)、富士宮万野簡易郵便局(静岡県)、博物館明治村簡易郵便局(愛知県)、犬山長者町簡易郵便局(愛知県)、湯谷簡易郵便局(愛知県)、平湯温泉簡易郵便局(岐阜県)、垂井府中簡易郵便局(岐阜県)、赤目滝簡易郵便局(三重県)、坂下簡易郵便局(三重県)、西藤原簡易郵便局(三重県)、千早簡易郵便局(大阪府)、奥谷簡易郵便局(兵庫県)、芦津簡易郵便局(鳥取県)、男木島簡易郵便局(香川県)

風景印が配備されている営業中の分室は以下の7局。

千歳郵便局新千歳空港内分室(北海道)、陸前高田郵便局・郵便分室(岩手県)、成田郵便局空港第1旅客ビル内分室(千葉県)、成田郵便局空港第2旅客ビル内分室(千葉県)、常滑郵便局セントレア分室(愛知県)、泉佐野郵便局関西空港分室(大阪府)、豊中郵便局大阪国際空港内分室(大阪府)

これら以外の特殊な例として、船内郵便局(しらせ船内、昭和基地内、世界青年の船船内、東南アジア青年の船船内)における風景印押印が挙げられる。これらの施設は利用可能者が限られるため、一般の者は毎年発表されるプレスリリースを参照の上、郵便で押印を依頼する必要がある。

図柄

風景印には配備される郵便局周辺の名所旧跡や特産品等にちなむ図柄が描かれている。

一部の市区町村では同一の図柄が複数局で使われている場合もある。川崎市麻生区を例にすると、区内の9郵便局のうち、麻生郵便局以外の8郵便局は全て同一の図柄(王禅寺ふるさと公園)が描かれている。

地域の景観や特産品の変化、また局の改称や移転などに伴い図柄が変更されることもある。東京中央郵便局を例にすると、戦前は1931年から1940年まで使われた後[1]、戦後は1948年1月1日から国会議事堂二重橋が描かれたものが使われていたが、1996年4月24日と2012年7月17日に図案変更が行われ、現在は東京駅丸の内駅舎とJPタワーが描かれたものとなっている[2]

2007年10月1日の郵政民営化から2012年10月1日の会社合併までの間、郵便局と日本郵便支店が同一店舗で営業されていたところでは、多くの場合は同一の図柄が使われていたが、下記の局・支店については異なる意匠の風景印を使用していた。合併以後は旧日本郵便支店の意匠が使用されている。

  • 那珂郵便局・支店(茨城県那珂市)、本所郵便局・支店(東京都墨田区)、白子郵便局・支店(三重県鈴鹿市)

また局名称変更となった支店として、陸前高田支店(岩手県陸前高田市)が「陸前高田郵便局郵便分室」となり同一意匠にて、宇和支店(愛媛県西予市)が「西予郵便局」となり新意匠にて、押印サービスを開始した。

押印

押印には、消印の収集を目的とし郵便物を差し出さないで押印してもらう「記念押印」と、郵便物を差し出す際に押印してもらう「引受消印」の2種類がある。押印は風景印が配備されている郵便局の郵便窓口またはゆうゆう窓口で行われる。

記念押印

切手または料額印面の合計を62円以上とした台紙・封筒郵便はがき等を用意し、窓口へ押印を依頼する方法である。自ら窓口に赴いて直接依頼する方法と、郵便で押印依頼を送付する「郵頼(ゆうらい)」という方法がある。

引受消印

窓口にて郵便物へ風景印を押印し、そのまま差し出す方法である。

押印条件は記念押印と同じ。なお国際郵便の場合は、切手や料額印面を風景印で消印した上で、その傍の切手にかからない位置に別途欧文印を押印する必要がある。

郵頼

郵便で押印を依頼し返送してもらうサービスである(風景印のほか、通常の和文印や欧文印等を郵頼することも可能)。

郵頼は次の3点を揃えて、押印を希望する郵便局に郵送する。往信封筒に「風景印押印依頼在中」と朱書することが望ましい。

  • 切手または料額印面の合計を62円以上とした台紙・封筒・郵便はがき等。
  • 押印位置や押印希望日を記載した依頼状(依頼人の住所氏名の他、できるだけ連絡先電話番号を記入)。
  • 記念押印された台紙・封筒・郵便はがき等を返送するための、宛先記入済・切手貼付済の封筒。

船内郵便局や宮内庁内郵便局は、一般人の訪問が難しいため基本的に郵頼で消印を入手しなければならない。この他にも特定の施設内に設置されているごく一部の郵便局では訪問に身分証明書の提示が必要なところもある。なお一時期は国会内郵便局においても、テロ対策として一般の入場に規制を設けていたため、同局の消印は基本的に郵頼で入手しなければならなかった。

歴史

樺太・豊原局の風景印

風景印は、1931年7月7日逓信省告示で制度が創設され[3]、同年7月10日に富士山郵便局(現・富士山頂郵便局)と富士山北郵便局で使用が開始された[4]。その後、日本各地をはじめ当時の日本の統治下にあった関東州樺太朝鮮台湾南洋などでも使用開始となり、観光地を中心に1200局以上に配備された。また、形状の規定も緩く、さまざまな形状の風景印が作られた。

しかし、戦火が激しくなりゴム不足となったため、1940年11月15日限りで、戦意高揚に役立つとされた、愛知県熱田郵便局島根県・大社郵便局などの神社にちなんだ風景印、江田島郵便局などの軍事施設にちなんだ風景印は摩滅するまで使用を認める一方、他の郵便局については使用停止となった。

戦後、1948年1月1日に東京中央郵便局はじめ24郵便局で使用開始となったが、規定が厳密化されたこともあり、変形印は影を潜めた。

以後1974年頃までは観光地を中心に配備されていたが、1975年以降観光資源が乏しい住宅地の郵便局でも当時の集配郵便局を中心に配備が行われ、1988年以降は変形印が続々と登場するようになった。

平成に入ると、年月日の「ぞろ目ブーム」(平成11年11月11日など)を当て込んで使用を始める局が多数出てきたことで、使用局が飛躍的に増加し活況をもたらしたが、2002年以降は新規使用開始局が減少傾向にある。さらには、風景印の使用自体を中止する場合もある。

日本国以外の風景印

台湾の風景印(このように別々に押印されている)

日本以外にも風景印は存在し、戦前に日本の統治下であった中華人民共和国大韓民国台湾のほか、スイスカナダなど欧米圏にも存在する。また、アメリカ占領下時代の沖縄琉球郵政庁)でも、風景印が存在した。

中華人民共和国では、1985年から「風景日戳」とよばれる風景印が使用されており、直径32mmの円形のものが黒色インクで押印される。 大韓民国では、「観光記念通信日付印」と呼ばれる風景印が使用されており、日本同様、円型以外の変形印もあり、黒色インクで押印される。 台湾でも風景印が使用されているが、葉書の料額印面や切手などは通常の黒い消印で抹消した上で、郵便物の余白に押すという形で使用されるために、日付は入っていない。また、日本と異なり、1郵便局・1支店に1デザインというわけではなく、1つの郵便局に複数のデザインのものが使用されているところもあり、インクは赤色(厳密にはピンク色に見える)である。

欧米圏では、スイス・ドイツでは完備されており、とりわけスイスでは日本と異なり機械印の風景印が存在する。また、近年、カナダにおいても風景印の使用が開始された。

琉球郵政庁では、1950年に数局で風景印の使用が開始され、1961年には本土と同じルールに変更され(但し、年表示は西暦)、本土復帰まで使用された。

脚注

  1. ^ 友岡正孝「改訂新版戦前の風景スタンプ集」、70頁、日本郵趣出版、2011年
  2. ^ 東京中央郵便局風景印
  3. ^ 昭和26年5月31日郵政省告示第192号により廃止『官報』1951年5月31日(国立国会図書館デジタルコレクション)
  4. ^ 図案「逓信省告示第1400号」『官報』1931年7月7日(国立国会図書館デジタルコレクション)

参考文献

  • 佐滝剛弘(2007年):郵便局を訪ねて1万局 東へ西へ「郵ちゃん」が行く、光文社新書ISBN 978-4-334-03406-1
  • 藤原和正(2002年):月から太陽への旅―郵便局を訪ねて25 年、3000局、群羊社ISBN 4-906182-44-5
  • 後藤泰彦(2005年):風景印にみる地域の『展示』-千葉県を例に-。駒澤大学大学院地理学研究 33:19-32. 〈*科学技術総合リンクセンター(J-GLOBAL)より要約閲覧・複写申請可能〉

関連項目

外部リンク