コンテンツにスキップ

「船員手帳」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
Digesto (会話 | 投稿記録)
新しいページ: ''''船員手帳'''(せんいんてちょう、mariner's pocket ledger)は、船員身分証明書であって、船員の履歴関...'
 
m Bot作業依頼#Cite webの和書引数追加
(20人の利用者による、間の27版が非表示)
1行目: 1行目:
[[File:2010 10 31 Seefahrtbuch DSCI1149.JPG|thumb|船員手帳]]
'''船員手帳'''(せんいんてちょう、mariner's pocket ledger)は、[[海技従事者|船員]]の[[身分証明書]]であって、船員の履歴関係、有給休暇の付与関係、船員保険関係、健康証明等の事項が記載される<ref>[http://www.mlit.go.jp/maritime/dic/sa.html 用語集]、国土交通省海事局。</ref>。'''乗員手帳'''ともいう。
{{law}}
{{画像提供依頼|現物及び身分証明ページ|cat=褒章・証書|date=2021-03}}
'''船員手帳'''(せんいんてちょう、{{lang-en-short|mariner’s pocket ledger}})<!--seaman’s book・Seaman’s Discharge Book-->は、{{ill2|1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約|en|STCW Convention}}に基づき、[[船員法]]第83条に則って発給・交付される、[[船員]]の健康証明書である<ref group="" name="船員手帳"/>。


船員法施行規則28条において、同書の発給は船員に行うことが定められている。
==概要==
また、[[出入国管理及び難民認定法]]第2条で、権限のある[[機関]]の発行した船員手帳その他乗員に係るこれに準ずる[[文書]]は'''乗員手帳'''(じょういんてちょう、{{lang-en-short|crew member’s pocket-ledger}})と定義されている。
船員手帳は、船員の身分証明書である。[[船員法]]50条には、次の事項が定められている。
<!--よって、[[身分証明書]]としての役割は付随的なものである。-->
#船員は、船員手帳を受有しなければならない([[船員法]]50条1項)
<!--↑内航に限らず外航の船員も必ず持つものであり、その効力について必ずしも内国法の範囲で言い切れるものではないはず。-->
#[[船長]]は、員の乗船中その船員手帳を保管しなければならない(同条2項)
#船員手帳の交付訂正書換及び返還に関し必要な事項は、国土交通省令でこれを定める(同条3項)。ここでいう「国土交通省令」とは、主に船員法施行規則を指す
船員手帳には、本人の氏名、生年月日、本籍等が記載され、本人の写真が貼付される。また、船員の履歴、[[有給休暇]]の付与、[[船員保険]]、健康証明等に関する事項が記載される。船員手帳の有効期間は、交付、再交付又は書換えを受けたときから10年間(外国人は5年間)である。


==詳細==
船員手帳の最も大きな目的は、労働者としての船員の権利保護である。船員手帳によって、雇用契約が適正かつ有効に成立したことが証明される。また、当該船員の資格証明、健康証明、および、乗船履歴の証明にも用いられ、船舶の安全な運行を人的に担保する目的も果たす。
船員手帳に関しては、[[船員法]]50条によって船員に対して次のように定められている。
#船員は、船員手帳を受有しなければならない。
#[[船長]]は、員の乗船中その船員手帳を保管しなければならない。
#船員手帳の交付訂正書換及び返還に関し必要な事項は、国土交通省令(主に船員法施行規則)で定められる


その主たる目的は労働者としての船員の権利保護であり、船員手帳が雇用契約が適正かつ有効に成立したことを証明する。
国によっては、船員手帳を所持する者に対して上陸許可を付与する例もあることから、船員の[[パスポート]]代わりに用いられることもある。たとえば、日本の[[出入国管理及び難民認定法]]では、「権限のある機関の発行した船員手帳その他乗員に係るこれに準ずる文書」を「乗員手帳」と定義し(法2条6号)、乗員上陸の許可を受けた者に対して、乗員上陸許可書及び旅券又は乗員手帳の携帯を義務づけている(法16条、23条1項2号)。


また、同書は、当該船員の身元・資格・健康・乗船履歴の証明にも用いられ、船舶の安全な運行を人的に担保する目的も果たす。よって同書には、所持人の顔写真・[[氏名]]・生年月日・本籍から船員の履歴・[[年次有給休暇|有給休暇]]の付与・[[船員保険]]・健康証明等に関する事項まで、幅広い事項が記載される。
==交付申請手続==
船員手帳は、船員となつた者」が交付の申請を行う(船員法施行規則28条)。そのため、まず、船舶所有者と船員として[[雇用契約]]または雇用の予約結ぶことが先行なければならない。


船員手帳の有効期間は交付・再交付又は書換えを受けたときから10年間である。ただし[[外国人]]については、その有効期間は5年間となる。
船員手帳の交付の申請は、
#日本人の場合…最寄りの地方運輸局又は運輸支局海事事務所を含む。)又は船員法指定市町村
#外国人の場合…最寄りの地方運輸局若しくは運輸監理部又はその運輸支局若しくは海事事務所のうち国土交通大臣が指定するもの
'''本人が出頭'''して、地方運輸局長等外国人は地方運輸局長。)に対して行う。


[[船員法#船舶所有者|船舶所有者]]は、[[国土交通大臣]]の指定する[[医師]]が船内労働に適することを証明した健康証明書(船員手帳)を持たない者を、船員として船舶に乗り組ませてはならない。
交付申請にあたっては、次の書類等を提出する。
#船員手帳交付申請書(第12号書式)
#雇用証明書
#戸籍抄本又は住民票(本籍が記載されているもの、申請前1年以内に発行されたもの)
#写真2枚(縦5.5×横4.0cm、申請前6ヶ月以内に撮影したもの)
#印鑑
#収入印紙(1,950円、指定市町村に申請する場合は現金納付)
#両親又は法定代理人の許可書(未成年者に限る)
#最近まで有効であった船員手帳(受有者に限る)


===発給申請===
また、年齢15歳以上で義務教育を修了していることを要する(船員法85条1項)。
船員手帳の発給を申請する者は、船員として、船舶所有者と[[雇用契約]](または雇用の予約)の締結を先行させなければならない。


申請者には、船員法38条および85条1項によって、特別な場合を除いて、義務教育を終了してその年齢が15歳以上であることが求められる<ref group="" name="年齢"/>。また、未成年者が船員となるためには法定代理人の許可を受けなければならない<ref group="" name="未成年者"/>。
==その他の手続==

船員手帳の交付申請以外の手続には、書換え、再交付、訂正、写真はり換え、記載事項証明などがある。
申請は、指定の窓口に本人が出頭して、地方運輸局長等に対して行う(外国人の場合は地方運輸局長に対して行う)
申請窓口も申請者の[[国籍]]によって異なる。
;日本人
:最寄りの地方運輸局又は運輸支局(海事事務所を含む)又は船員法指定市町村
;外国人
:最寄りの地方運輸局運輸監理部又はその運輸支局海事事務所のうち国土交通大臣が指定するもの

船員手帳の各種(交付<ref group="" name="新規交付"/>・書き換え<ref group="" name="書き換え"/>・再交付<ref group="" name="再交付"/>・訂正<ref group="" name="訂正"/>・写真貼り換え・記載事項証明など)申請手続きに関する詳細は[[国土交通省]]によって公開されている。

==乗員上陸==
[[国家]]によっては、船員手帳を所持する者に対して乗員上陸を許可する場合が有り、この場合には、入国中には上陸許可証と乗員手帳の携帯が義務付けられる<ref group="" name="乗員上陸"/>(出入国管理及び難民認定法16条および23条1項2号)。
<!--構内規則が厳しい私設埠頭では、敷地内での歩行が禁じられていて、埠頭を通過する際には、タクシーなどの移動コストが必須になる場合がある。-->

ただし、その上陸許可には多少の制限が掛かる。具体的には、日本のように、原則的に寄港地以外へ行けず、上陸中の行動にも制限が掛かる場合がある。船員手帳は[[渡航文書]]や[[パスポート]]ではない。

また乗員上陸許可書は、全ての船員に発行されるとは限らない。[[ペルシア湾]]岸には、船員の上陸を一切禁止している国家もある。[[アメリカ合衆国]]では、[[出入国管理|入国監査]]が厳しく、犯罪者と[[同姓同名]]の[[アルファベット]]というだけで、無条件に上陸が禁止される場合もある。


==脚注==
==脚注==
{{Reflist|1|refs=
{{脚注ヘルプ}}
<!--<ref group="" name="船員手帳">{{cite web|url=http://www.mlit.go.jp/kaiji/kenkou/index.html|title=船員の健康証明制度のご案内|accessdate=2012-3-6|last=|first=|author=|authorlink=|coauthors=|date=|year=|month=|format=|work=|publisher=[[国土交通省]]|page=|pages=|quote=|language=|archiveurl=https://web.archive.org/web/20130322201456/http://www.mlit.go.jp/kaiji/kenkou/index.html|archivedate=2013-3-22|deadlinkdate=|doi=|ref=}}</ref>-->
{{reflist}}
<ref group="" name="船員手帳">{{Cite web|和書|url=https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_fr4_000009.html|title=船員の健康証明書制度について|accessdate=2015-7-12|last=|first=|author=|authorlink=|coauthors=|date=|year=|month=|format=|work=|publisher=[[国土交通省]]|page=|pages=|quote=|language=|archiveurl=|archivedate=|deadlinkdate=|doi=|ref=}}</ref>
<ref group="" name="新規交付">{{Cite web|和書|url=https://wwwtb.mlit.go.jp/kobe/sinseitetuzuki/01senin_tetuzuki/03tetyou.html|title=船員手帳 新規交付|accessdate=2016-5-1|last=|first=|author=|authorlink=|coauthors=|date=|year=|month=|format=|work=|publisher=[[国土交通省]][[神戸運輸監理部]]|page=|pages=|quote=|language=|archiveurl=|archivedate=|deadlinkdate=|doi=|ref=}}</ref>
<ref group="" name="書き換え">{{Cite web|和書|url=https://wwwtb.mlit.go.jp/kobe/sinseitetuzuki/01senin_tetuzuki/03_02kakikae.html|title=船員手帳 書換|accessdate=2016-5-1|last=|first=|author=|authorlink=|coauthors=|date=|year=|month=|format=|work=|publisher=[[国土交通省]][[神戸運輸監理部]]|page=|pages=|quote=|language=|archiveurl=|archivedate=|deadlinkdate=|doi=|ref=}}</ref>
<ref group="" name="再交付">{{Cite web|和書|url=https://wwwtb.mlit.go.jp/kobe/sinseitetuzuki/01senin_tetuzuki/03_03saikohu.html|title=船員手帳 再交付|accessdate=2016-5-1|last=|first=|author=|authorlink=|coauthors=|date=|year=|month=|format=|work=|publisher=[[国土交通省]][[神戸運輸監理部]]|page=|pages=|quote=|language=|archiveurl=|archivedate=|deadlinkdate=|doi=|ref=}}</ref>
<ref group="" name="訂正">{{Cite web|和書|url=https://wwwtb.mlit.go.jp/kobe/sinseitetuzuki/01senin_tetuzuki/03_04teisei.html|title=船員手帳 訂正|accessdate=2016-5-1|last=|first=|author=|authorlink=|coauthors=|date=|year=|month=|format=|work=|publisher=[[国土交通省]][[神戸運輸監理部]]|page=|pages=|quote=|language=|archiveurl=|archivedate=|deadlinkdate=|doi=|ref=}}</ref>
<ref group="" name="乗員上陸">{{Cite web|和書|url=http://www.immi-moj.go.jp/newimmiact/koumoku9.html|title=9 乗員上陸の許可を受けた方の乗員手帳等の携帯・提示義務|accessdate=2015-6-25|last=|first=|author=|authorlink=|coauthors=|date=|year=|month=|format=|work=|publisher=[[入国管理局]]|page=|pages=|quote=|language=|archiveurl=|archivedate=|deadlinkdate=|doi=|ref=}}</ref>
<ref group="" name="年齢">{{Cite web|和書|url=https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/s0912-10f.html|title=第7回ILO懇談会資料|accessdate=2008-3-18|last=|first=|author=|authorlink=|coauthors=|date=|year=|month=|format=|work=|publisher=[[厚生労働省]]|page=|pages=|quote=|language=|archiveurl=|archivedate=|deadlinkdate=|doi=|ref=}}</ref>
<ref group="" name="未成年者">{{Cite web|和書|url=http://www.naccscenter.com/qanda/docs/2013092100020/|title=入管局からのお知らせ|accessdate=2013-9-21|last=|first=|author=|authorlink=|coauthors=|date=|year=|month=|format=|work=|publisher=[[輸出入・港湾関連情報処理センター]](NACCS)|page=|pages=|quote=|language=|archiveurl=|archivedate=|deadlinkdate=|doi=|ref=}}</ref>
}}


==関連項目==
==関連項目==
*[[海技従事者]]
*[[海技従事者]]
*[[船員保険]]
*[[船員保険]]
*[[海事代理士]]
*[[船員労務官]]


==外部リンク==
==外部リンク==
*[http://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/kaian/techou.html 船員手帳の申請手続き] - 国土交通省中国運輸局
*[https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/kaian/techou.html 船員手帳の申請手続き]
*[http://www.mlit.go.jp/kaiji/kenkou/ 船員の健康証明制度のご案内] - 国土交通省
*[https://wwwtb.mlit.go.jp/hokushin/hrt54/vessel/techou.html 船員手帳交付等手続きのご案内]
*[https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/kaijou_annzen/senin_tetuduki/sheet03.html 船員手帳関係の申請]

{{就業}}


{{DEFAULTSORT:せんいんてちよう}}
{{DEFAULTSORT:せんいんてちよう}}
[[Category:海技従事者]]
[[Category:海技従事者]]
[[Category:労働行政]]
[[Category:日本の労働行政]]
[[Category:個人の識別]]
[[Category:個人の識別]]
[[Category:手帳]]

2023年12月1日 (金) 05:25時点における版

船員手帳

船員手帳(せんいんてちょう、: mariner’s pocket ledger)は、1978年の船員の訓練及び資格証明並びに当直の基準に関する国際条約英語版に基づき、船員法第83条に則って発給・交付される、船員の健康証明書である[1]

船員法施行規則28条において、同書の発給は船員に行うことが定められている。 また、出入国管理及び難民認定法第2条で、権限のある機関の発行した船員手帳その他乗員に係るこれに準ずる文書乗員手帳(じょういんてちょう、: crew member’s pocket-ledger)と定義されている。

詳細

船員手帳に関しては、船員法50条によって船員に対して次のように定められている。

  1. 船員は、船員手帳を受有しなければならない。
  2. 船長は、船員の乗船中その船員手帳を保管しなければならない。
  3. 船員手帳の交付・訂正・書換及び返還に関し必要な事項は、国土交通省令(主に船員法施行規則)で定められる。

その主たる目的は労働者としての船員の権利保護であり、船員手帳が雇用契約が適正かつ有効に成立したことを証明する。

また、同書は、当該船員の身元・資格・健康・乗船履歴の証明にも用いられ、船舶の安全な運行を人的に担保する目的も果たす。よって同書には、所持人の顔写真・氏名・生年月日・本籍から船員の履歴・有給休暇の付与・船員保険・健康証明等に関する事項まで、幅広い事項が記載される。

船員手帳の有効期間は交付・再交付又は書換えを受けたときから10年間である。ただし外国人については、その有効期間は5年間となる。

船舶所有者は、国土交通大臣の指定する医師が船内労働に適することを証明した健康証明書(船員手帳)を持たない者を、船員として船舶に乗り組ませてはならない。

発給申請

船員手帳の発給を申請する者は、船員として、船舶所有者との雇用契約(または雇用の予約)の締結を先行させなければならない。

申請者には、船員法38条および85条1項によって、特別な場合を除いて、義務教育を終了してその年齢が15歳以上であることが求められる[2]。また、未成年者が船員となるためには法定代理人の許可を受けなければならない[3]

申請は、指定の窓口に本人が出頭して、地方運輸局長等に対して行う(外国人の場合は地方運輸局長に対して行う)。 申請窓口も申請者の国籍によって異なる。

日本人
最寄りの地方運輸局又は運輸支局(海事事務所を含む)又は船員法指定市町村
外国人
最寄りの地方運輸局か運輸監理部又はその運輸支局か海事事務所のうち国土交通大臣が指定するもの

船員手帳の各種(交付[4]・書き換え[5]・再交付[6]・訂正[7]・写真貼り換え・記載事項証明など)申請手続きに関する詳細は国土交通省によって公開されている。

乗員上陸

国家によっては、船員手帳を所持する者に対して乗員上陸を許可する場合が有り、この場合には、入国中には上陸許可証と乗員手帳の携帯が義務付けられる[8](出入国管理及び難民認定法16条および23条1項2号)。

ただし、その上陸許可には多少の制限が掛かる。具体的には、日本のように、原則的に寄港地以外へ行けず、上陸中の行動にも制限が掛かる場合がある。船員手帳は渡航文書パスポートではない。

また乗員上陸許可書は、全ての船員に発行されるとは限らない。ペルシア湾岸には、船員の上陸を一切禁止している国家もある。アメリカ合衆国では、入国監査が厳しく、犯罪者と同姓同名アルファベットというだけで、無条件に上陸が禁止される場合もある。

脚注

関連項目

外部リンク