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'''胆石'''(たんせき、{{lang-en|gallstone}})は、[[肝臓]]から分泌される、[[胆汁]]の成分が固まって[[胆嚢]]内・[[胆管]]内に溜まったもの。胆石の成分によって何種類かあり、色も形も多様である。[[胆嚢炎]]などは、ほとんど、胆石が原因である<ref name=merck1>[http://merckmanuals.jp/home/肝臓と胆嚢の病気/胆嚢と胆管の病気/胆嚢炎.html 胆嚢炎:胆嚢と胆管の病気] メルクマニュアル 家庭版</ref>。 |
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== 歴史 == |
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== 疫学 == |
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胆石は一般に5Fの人に多いとされる。即ち、'''F'''orty(40代)、'''F'''emale(女性)、'''F'''atty([[肥満]])、'''F'''ertile(多産)および'''F'''air(白人)である。また、[[経口避妊薬]]内服・急激な[[ダイエット]]にも多いことが報告されている。 |
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胆石を保持している人の大半は、症状の無い無症状胆石で、[[人間ドック]]で発見されることも多く、胆石症の症状を起こす人は1~3%と言われている。また胆石が明らかな[[胆嚢癌]]を生じやすいという証拠はないが、[[胆嚢癌]]では高率に胆石が認められる。[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では、65歳以上の20%程度に胆石があるとされている。実際には、他の疾患のため[[超音波検査|エコー]]や[[CT]]、[[MRI]]などの検査をされ、偶然発見された胆石は17年間のフォローアップ中、その8%にしか胆石関連疾患(胆のう炎や胆石嵌頓)を生じなかった。<ref>Gastroenterology 2016;150:156.</ref> |
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== 名称 == |
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*'''総胆管結石''':[[総胆管]]に出来る結石 |
*'''総胆管結石''':[[総胆管]]に出来る結石 |
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*'''肝内胆石''':肝内胆管に出来る結石 |
*'''肝内胆石''':肝内胆管に出来る結石 |
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診療において、上記は単に名称の違いだけではなく、それぞれ治療方法が異なってくるため使い分けられている。 |
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== 種類 == |
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胆石にはそれぞれ種類があり、成分によって異なり主に以下の3種類に類別される。 |
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*[[コレステロール]]結石 |
*[[コレステロール]]結石 |
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:主に70%以上が[[コレステロール]]を主成分とした胆石。脂肪分の多い物、[[カロリー]]の高い食事等で出来やすいとされている。石灰化結石が多い。 |
:主に70%以上が[[コレステロール]]を主成分とした胆石。脂肪分の多い物、[[カロリー]]の高い食事等で出来やすいとされている。石灰化結石が多い。 |
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:[[ビリルビン]]を主成分とし、感染していない[[胆嚢]]内に生じる。 |
:[[ビリルビン]]を主成分とし、感染していない[[胆嚢]]内に生じる。 |
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高度経済成長 |
[[高度経済成長]]以前の日本では、カロリーと脂肪分の少ない食事が主流だったため、コレステロール結石の患者はほとんど存在しなかったが、食事の欧米化が進み増加傾向にある。なお、[[飲酒]]する人の胆石保有率は低いという報告もある<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/ningendock/27/5/27_856/_article/-char/ja/ 鈴木信次、乾和郎ほか、【原著】人間ドック受診者における胆石保有者の特徴] 人間ドック (Ningen Dock) Vol.27 (2012) No.5 P856-862, {{DOI|10.11320/ningendock.27.856}}</ref>。 |
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胆石が形成される大きな要因の一つとして胆嚢収縮機能の低下が挙げられる。また、胆汁の中の[[コレステロール]]が上昇することも胆石の形成に関係している。このコレステロールの上昇に関しては、[[レシチン]]と[[胆汁酸]]のバランスが悪くなり、胆汁の粘張度が高くなり、鬱滞もしくは細菌感染によって凝集を起こした胆汁が、胆嚢・胆管で固まって結石となるためとされている。なお、胆汁にはもともとコレステロールが多く含まれているものの、通常脂溶性である胆汁は、レシチンと胆汁酸の作用によって固まらず、[[液体]]のまま[[十二指腸]]に送られている。 |
胆石が形成される大きな要因の一つとして胆嚢収縮機能の低下が挙げられる。また、胆汁の中の[[コレステロール]]が上昇することも胆石の形成に関係している。このコレステロールの上昇に関しては、[[レシチン]]と[[胆汁酸]]のバランスが悪くなり、胆汁の粘張度が高くなり、鬱滞もしくは細菌感染によって凝集を起こした胆汁が、胆嚢・胆管で固まって結石となるためとされている。なお、胆汁にはもともとコレステロールが多く含まれているものの、通常脂溶性である胆汁は、レシチンと胆汁酸の作用によって固まらず、[[液体]]のまま[[十二指腸]]に送られている。 |
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1960年代には細菌感染の重要な要因としてグラム陰性桿菌<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi1964/64/12/64_12_1230/_article/-char/ja/ 森山英男、上腹部外科的疾患開腹時の消化管内大腸菌の研究 主として血清学的同定について] 日本消化器病学会雑誌 Vol.64 (1967) No.12 P1230-1245, {{DOI|10.11405/nisshoshi1964.64.1230}}</ref>や大腸菌感染が疑われ<ref>代田明郎ほか、『胆石及び胆嚢炎の発生機序に対する一考察 : 特に大腸菌体成分を抗原抗体系とする胆嚢のアレルギー反応の発来性について』 アレルギー 13(8), 559-578, 581-582, 1964-08-30, {{NAID|110002417693}}</ref><ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi1964/62/1/62_1_29/_article/-char/ja/ 飯田安彦、胆石症の研究 特に胆汁中胆汁酸と細菌の胆道感染に関する臨床的並に実験的研究] 日本消化器病学会雑誌 Vol.62 (1965) No.1 P29-59, {{DOI|10.11405/nisshoshi1964.62.29}}</ref>、研究が続けられている。 |
1960年代には細菌感染の重要な要因として[[グラム陰性菌|グラム陰性桿菌]]<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi1964/64/12/64_12_1230/_article/-char/ja/ 森山英男、上腹部外科的疾患開腹時の消化管内大腸菌の研究 主として血清学的同定について] 日本消化器病学会雑誌 Vol.64 (1967) No.12 P1230-1245, {{DOI|10.11405/nisshoshi1964.64.1230}}</ref>や大腸菌感染が疑われ<ref>代田明郎ほか、『胆石及び胆嚢炎の発生機序に対する一考察 : 特に大腸菌体成分を抗原抗体系とする胆嚢のアレルギー反応の発来性について』 アレルギー 13(8), 559-578, 581-582, 1964-08-30, {{NAID|110002417693}}</ref><ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi1964/62/1/62_1_29/_article/-char/ja/ 飯田安彦、胆石症の研究 特に胆汁中胆汁酸と細菌の胆道感染に関する臨床的並に実験的研究] 日本消化器病学会雑誌 Vol.62 (1965) No.1 P29-59, {{DOI|10.11405/nisshoshi1964.62.29}}</ref>、研究が続けられている。 |
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== 臨床像 == |
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無症状の場合が多いが、胆石そのものの徴候([[胆石発作]])と、感染を伴う胆嚢炎・胆管炎の徴候としては以下がある。 |
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=== 症状 === |
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主な症状は、以下の通りである。 |
主な症状は、以下の通りである。 |
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*右上腹部痛 |
*右上腹部痛 |
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:主に |
:主に心窩部や右脇腹の痛み、そのほかに[[背中]]の痛みや張り、[[腰痛]]、[[肩凝り]]等が生じることもある。また、痛みの部位から、[[狭心症]]の痛みや、[[胃潰瘍]]の痛みと鑑別を必要とする。非常に強い痛みを伴うことが多い。 |
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*悪心・嘔吐 |
*悪心・嘔吐 |
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:[[吐気]]や[[嘔吐]]を伴うことが多い。 |
:[[吐気]]や[[嘔吐]]を伴うことが多い。 |
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:多くの場合に認められる。 |
:多くの場合に認められる。 |
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*[[黄疸]] |
*[[黄疸]] |
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:胆管で肝臓から流れ込む胆汁が胆石によって、[[黄疸]] |
:胆管で肝臓から流れ込む胆汁が胆石によって、[[黄疸]]を引き起こすことがある。黄疸は胆管結石に多く、黄疸によって[[尿]]の色が濃くなることもある。 |
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== 検査 == |
== 検査 == |
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診断には以下の検査がある。 |
診断には以下の検査がある。 |
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*[[腹部超音波検査]] |
*[[腹部超音波検査]] |
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: |
:[[超音波検査]]は微小の病変描出に優れており、胆石以外に[[閉塞性黄疸]]の検査でも用いられる。ただ胆管内に出来た胆石は、超音波ではうまく描出出来ないこともある。 |
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*[[コンピュータ断層撮影]](CT) |
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*[[CT]] |
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:[[胆管]]・[[胆嚢]]の結石の有無を構造的に描出する。微小の結石に関しては診断困難なこともある。 |
:[[胆管]]・[[胆嚢]]の結石の有無を構造的に描出する。微小の結石に関しては診断困難なこともある。 |
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*[[ |
*[[核磁気共鳴画像法]](MRI)・MRCP |
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:胆嚢・胆管結石の有無を3D立体構築画像として診断できる検査として汎用されている。 |
:胆嚢・胆管結石の有無を3D立体構築画像として診断できる検査として汎用されている。 |
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*[[内視鏡的逆行性胆道膵管造影]](ERCP) |
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*[[ERCP]] |
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:主に胆石の治療において行われる検査・処置。 |
:主に胆石の治療において行われる検査・処置。 |
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*尿中[[ウロビリノーゲン]]の検査 |
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*血液検査 |
*血液検査 |
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:無症状の胆嚢結石の場合血液検査にて異常値を示すことはほとんどないが、胆管結石の場合は肝・胆道系酵素([[アスパラギン酸アミノ基転移酵素|AST]]、[[アラニントランスアミナーゼ|ALT]]、[[アルカリホスファターゼ|ALP]]、[[γ-GTP]])や[[ビリルビン]]値が上昇傾向を示す。また、胆嚢結石においても胆嚢炎等の感染を伴う場合も上昇傾向を示す。 |
:無症状の胆嚢結石の場合血液検査にて異常値を示すことはほとんどないが、胆管結石の場合は肝・胆道系酵素([[アスパラギン酸アミノ基転移酵素|AST]]、[[アラニントランスアミナーゼ|ALT]]、[[アルカリホスファターゼ|ALP]]、[[γ-GTP]])や[[ビリルビン]]値が上昇傾向を示す。また、胆嚢結石においても胆嚢炎等の感染を伴う場合も上昇傾向を示す。 |
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== 治療 == |
== 治療 == |
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[[ファイル:Big Gallstone.JPG|thumb|摘出された胆石。]] |
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胆石が体内に存在していても、痛みや症状を伴わず、日常生活に支障を来たさないことも多く、症状の無い場合には、特に治療をせず基本的に経過観察で問題ない。しかし、胆石発作や胆嚢炎・[[胆管炎]]を生じうる場合には以下の治療を必要としてくる。 |
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=== 薬物治療 === |
=== 薬物治療 === |
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[[ウルソデオキシコール酸]](UDCA)を主成分とする経口胆石溶解剤を内服することで、胆汁の流れをよくし胆石を溶かす効果を期待する。しかし、基本的に胆石の完全除去はほとんど無いため予防的に処方されることが多い。 |
[[ウルソデオキシコール酸]](UDCA)を主成分とする経口胆石溶解剤を内服することで、胆汁の流れをよくし胆石を溶かす効果を期待する。しかし、基本的に胆石の完全除去はほとんど無いため予防的に処方されることが多い。 |
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=== 内視鏡治療 === |
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一般に、[[胆嚢炎]]・[[胆管炎]]等の感染を伴う場合や、総胆管結石等の治療に行われる。 |
一般に、[[胆嚢炎]]・[[胆管炎]]等の感染を伴う場合や、総胆管結石等の治療に行われる。 |
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=== 手術治療 === |
=== 手術治療 === |
2017年2月3日 (金) 08:06時点における版
胆石 | |
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胆嚢に詰まった胆石の画像 | |
概要 | |
診療科 | 消化器科 |
分類および外部参照情報 | |
ICD-10 | K80 |
ICD-9-CM | 574 |
OMIM | 600803 |
DiseasesDB | 2533 |
MedlinePlus | 000273 |
eMedicine | emerg/97 |
MeSH | D042882 |
KEGG 疾患 | H01213 |
胆石(たんせき、英語: gallstone)は、肝臓から分泌される、胆汁の成分が固まって胆嚢内・胆管内に溜まったもの。胆石の成分によって何種類かあり、色も形も多様である。胆嚢炎などは、ほとんど、胆石が原因である[1]。
歴史
「胆石」の名前の由来は、固まった胆汁が結石のような物だったため、胆石と付けられている。胆石は古来の欧州から、非常に流行していた病気とされ、紀元前1500から1600年頃のミイラからも胆石が発見されている。
疫学
胆石は一般に5Fの人に多いとされる。即ち、Forty(40代)、Female(女性)、Fatty(肥満)、Fertile(多産)およびFair(白人)である。また、経口避妊薬内服・急激なダイエットにも多いことが報告されている。
胆石を保持している人の大半は、症状の無い無症状胆石で、人間ドックで発見されることも多く、胆石症の症状を起こす人は1~3%と言われている。また胆石が明らかな胆嚢癌を生じやすいという証拠はないが、胆嚢癌では高率に胆石が認められる。アメリカでは、65歳以上の20%程度に胆石があるとされている。実際には、他の疾患のためエコーやCT、MRIなどの検査をされ、偶然発見された胆石は17年間のフォローアップ中、その8%にしか胆石関連疾患(胆のう炎や胆石嵌頓)を生じなかった。[2]
名称
胆石の出来る場所によって正式には以下の通り称される。
種類
- コレステロール結石
- ビリルビンを主成分とし、胆道系に感染を生じることで出来る結石。総胆管結石に多い。
- 黒色石
高度経済成長以前の日本では、カロリーと脂肪分の少ない食事が主流だったため、コレステロール結石の患者はほとんど存在しなかったが、食事の欧米化が進み増加傾向にある。なお、飲酒する人の胆石保有率は低いという報告もある[3]。
-
コレステロール結石
-
ビリルビンカルシウム結石を割った断面
-
黒色石
要因
胆石が形成される大きな要因の一つとして胆嚢収縮機能の低下が挙げられる。また、胆汁の中のコレステロールが上昇することも胆石の形成に関係している。このコレステロールの上昇に関しては、レシチンと胆汁酸のバランスが悪くなり、胆汁の粘張度が高くなり、鬱滞もしくは細菌感染によって凝集を起こした胆汁が、胆嚢・胆管で固まって結石となるためとされている。なお、胆汁にはもともとコレステロールが多く含まれているものの、通常脂溶性である胆汁は、レシチンと胆汁酸の作用によって固まらず、液体のまま十二指腸に送られている。
1960年代には細菌感染の重要な要因としてグラム陰性桿菌[4]や大腸菌感染が疑われ[5][6]、研究が続けられている。
臨床像
無症状の場合が多いが、胆石そのものの徴候(胆石発作)と、感染を伴う胆嚢炎・胆管炎の徴候としては以下がある。
症状
主な症状は、以下の通りである。
- 右上腹部痛
- 悪心・嘔吐
- 発熱
- 胆嚢や胆管が炎症を起こすと、発熱を生じる。
所見
- 右上腹部圧痛・叩打痛
- 多くの場合に認められる。
検査
診断には以下の検査がある。
- コンピュータ断層撮影(CT)
- 核磁気共鳴画像法(MRI)・MRCP
- 胆嚢・胆管結石の有無を3D立体構築画像として診断できる検査として汎用されている。
- 内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)
- 主に胆石の治療において行われる検査・処置。
- 尿中ウロビリノーゲンの検査
- 血液検査
- 無症状の胆嚢結石の場合血液検査にて異常値を示すことはほとんどないが、胆管結石の場合は肝・胆道系酵素(AST、ALT、ALP、γ-GTP)やビリルビン値が上昇傾向を示す。また、胆嚢結石においても胆嚢炎等の感染を伴う場合も上昇傾向を示す。
治療
薬物治療
ウルソデオキシコール酸(UDCA)を主成分とする経口胆石溶解剤を内服することで、胆汁の流れをよくし胆石を溶かす効果を期待する。しかし、基本的に胆石の完全除去はほとんど無いため予防的に処方されることが多い。
内視鏡治療
一般に、胆嚢炎・胆管炎等の感染を伴う場合や、総胆管結石等の治療に行われる。
手術治療
胆嚢摘出術は胆石症の原因である胆嚢を摘出する手術で、最も根治的な胆石症の治療法である。近年では腹腔鏡下で行う手術が多くなってきている。
胆嚢の機能は胆汁を一時的に蓄えるだけで、術後も胆汁は肝臓で作られ消化機能に影響がないため、手術により胆嚢を失っても日常生活に支障はないが、油脂を採り過ぎると下痢をしやすい体質になる可能性がある。
超音波破砕治療
体外衝撃波胆石破砕術(Extracorporeal shock wave lithotripsy|ESWL)と呼ばれ、体外から高周波の衝撃波を当てることにより、胆石を砕く治療法。
侵襲が少なく患者への負担が軽い治療ではあるが、適応が「純コレステロール胆嚢結石」のみであり、日本人の多くのコレステロール胆石が石灰化混合胆石で他の胆石に対しては治療適応が無く、また胆石を除去するのではなく粉砕し自然排石を期待する治療で再発が多い。そのため、行う施設が少ない。また、胆嚢炎を生じた場合、胆嚢が肥大化し胆嚢壁が薄くなり、衝撃波を当てると胆嚢壁が破れる危険性があるため、この治療法を施すことはできない。
動物における胆石
犬では臨床上問題となる胆石の大部分はビリルビンとカルシウムを主体とする胆汁色素系胆石である。慢性経過では特徴的な症状を示さないことが多い。胆管内に胆石が存在すると疼痛を示す。
関連書籍
- 『胆石症診療ガイドライン』編集:日本消化器病学会 2009年11月 ISBN 978-4-524-26224-3
出典
- 胆石症ガイドブック 日本消化器病学会 (PDF)
- 田妻進、菅野啓司ほか、胆石症の病態と治療 日本内科学会雑誌 Vol.102 (2013) No.9 p.2460-2467, doi:10.2169/naika.102.2460
- 胆道の病気 胆石とは? 広島大学病院
- 胆嚢と胆管の病気 メルクマニュアル 家庭版
脚注
- ^ 胆嚢炎:胆嚢と胆管の病気 メルクマニュアル 家庭版
- ^ Gastroenterology 2016;150:156.
- ^ 鈴木信次、乾和郎ほか、【原著】人間ドック受診者における胆石保有者の特徴 人間ドック (Ningen Dock) Vol.27 (2012) No.5 P856-862, doi:10.11320/ningendock.27.856
- ^ 森山英男、上腹部外科的疾患開腹時の消化管内大腸菌の研究 主として血清学的同定について 日本消化器病学会雑誌 Vol.64 (1967) No.12 P1230-1245, doi:10.11405/nisshoshi1964.64.1230
- ^ 代田明郎ほか、『胆石及び胆嚢炎の発生機序に対する一考察 : 特に大腸菌体成分を抗原抗体系とする胆嚢のアレルギー反応の発来性について』 アレルギー 13(8), 559-578, 581-582, 1964-08-30, NAID 110002417693
- ^ 飯田安彦、胆石症の研究 特に胆汁中胆汁酸と細菌の胆道感染に関する臨床的並に実験的研究 日本消化器病学会雑誌 Vol.62 (1965) No.1 P29-59, doi:10.11405/nisshoshi1964.62.29
関連項目
外部リンク
- 胆石症、総胆管結石 慶應義塾大学病院