「調査報道」の版間の差分
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'''調査報道'''(ちょうさほうどう、{{lang-en-short| |
'''調査報道'''(ちょうさほうどう、{{lang-en-short|investigative journalism}})とは、[[報道]]のスタイルの1つである。あるテーマや事件に対して、取材する側が主体性と継続性を持って様々なソースから情報を積み上げていくことによって新事実を突き止めていこうとするタイプの報道である。なお、[[警察]]・[[検察]]や[[官庁]]、[[企業]]などによる[[リーク]]、[[広報]]、[[プレスリリース]]などを中心とする報道は[[発表報道]]という。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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⚫ | [[日本]]では、[[日本の新聞|近代新聞]]の発行が始まった[[明治]]以降にこの概念が持ち込まれたが、[[大東亜戦争]]([[太平洋戦争]]・[[第二次世界大戦]])までは時の政府に対する調査報道は極めて難しく、[[財界]]や大物経済人の[[不祥事|スキャンダル]]([[不正行為]]・[[汚職]])にほぼ限定されていた。これは、[[日本における検閲|検閲制度]]により政府・[[与党]]・[[日本軍|軍部]]に不利な発表は排除されていたことと、取材する側も[[大日本帝国憲法|明治憲法]]で[[天皇]]の[[大日本帝国憲法第3条|神聖不可侵]]が定められたことにより、天皇を[[輔弼]]する[[内閣総理大臣]]や[[国務大臣|閣僚]]の私生活および裏事情に迫ることは任命権者たる天皇への[[不敬罪|不敬]]になる恐れがあるとして、憚られたことによる。{{see also|日本における検閲#大日本帝国憲法制定後|第四の権力}} |
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あるテーマ、事件に対し、[[警察]]・[[検察]]や[[行政]][[官庁]]、[[企業]]側からの情報による[[リーク]]、[[広報]]、[[プレスリリース]]などからだけの情報に頼らず(これを中心情報とする報道は[[発表報道]])、取材する側が主体性と継続性を持って様々なソースから情報を積み上げていくことによって新事実を突き止めていこうとするタイプの報道。端的に言うと、客観的な「裏付け」をとること。 |
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⚫ | [[日本]]では、[[日本の新聞|近代新聞]]の発行が始まった[[明治]]以降にこの概念が持ち込まれたが、[[大東亜戦争]]([[太平洋戦争]]・[[第二次世界大戦]])までは時の政府に対する調査報道は極めて難しく、[[財界]]や大物経済人の[[不祥事|スキャンダル]]([[不正行為]]・[[汚職]])にほぼ限定されていた。これは、[[日本における検閲|検閲制度]]により政府・[[与党]]・[[日本軍|軍部]]に不利な発表は排除されていたことと、取材する側も[[大日本帝国憲法|明治憲法]]で[[天皇]]の[[大日本帝国憲法第3条|神聖不可侵]]が定められたことにより、天皇を[[輔弼]]する[[内閣総理大臣]]や[[国務大臣|閣僚]]の私生活および裏事情に迫ることは任命権者たる天皇への[[不敬罪|不敬]]になる恐れがあるとして、憚られたことによる。{{see also|日本における検閲#大日本帝国憲法制定後| |
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[[戦後]]([[連合国軍占領期後の日本|主権回復後]])も[[官公庁]]などに[[記者クラブ]]があるため、大手[[マスコミュニケーション|マスコミ]]すら発表報道偏重に陥りやすく、調査報道をしようとする[[フリージャーナリスト]]が取材活動しづらいと指摘されている。{{main|記者クラブ#弊害|記者クラブ一覧#官公庁}} |
[[戦後]]([[連合国軍占領期後の日本|主権回復後]])も[[官公庁]]などに[[記者クラブ]]があるため、大手[[マスコミュニケーション|マスコミ]]すら発表報道偏重に陥りやすく、調査報道をしようとする[[フリージャーナリスト]]が取材活動しづらいと指摘されている。{{main|記者クラブ#弊害|記者クラブ一覧#官公庁}} |
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[[北海道新聞]]・[[高知新聞]]OBで[[東京都市大学]]教授の[[高田昌幸]]によれば、一介の個人には |
[[北海道新聞]]・[[高知新聞]]OBで[[東京都市大学]]教授の[[高田昌幸]]によれば、一介の個人にはできない、組織や権力者(警察、検察、官庁や[[大企業]]、大[[政治家]])が絡む調査報道の目的は以下のことにあるという<ref>[http://newsnews.exblog.jp/15014282/ 調査報道とは何か―日本ジャーナリスト会議の勉強会から] 本人ブログ「ニュースの現場で考えること」</ref>。 |
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#取材した中身を相手側にテーブルの上に出してみせる |
#取材した中身を相手側にテーブルの上に出してみせること<ref group="注釈">[[取材源の秘匿]]は[[ジャーナリズム]]の大原則であるが、それに反しない形でテーブルに出すことになる。</ref> |
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#書きっ放しにせず、書かれた相手に報道内容(往々にして[[不祥事]]などデメリット)を事実だと認めさせる |
#書きっ放しにせず、書かれた相手に報道内容(往々にして[[不祥事]]などデメリット)を事実だと認めさせること |
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#読者の為に書く |
#読者の為に書くこと |
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ただし、2については、書かれた相手がアウトローな組織([[暴力団]]、[[街宣右翼|右翼団体]]、[[日本の新左翼|左翼団体]]、[[カルト]]集団)の場合は、「自分たちにデメリットな報道内容を事実だと認めさせる |
ただし、2については、書かれた相手がアウトローな組織([[暴力団]]、[[街宣右翼|右翼団体]]、[[日本の新左翼|左翼団体]]、[[カルト]]集団)の場合は、「自分たちにデメリットな報道内容を事実だと認めさせること」が、[[行政機関|政府機関]]や一般組織や大政治家と比較して難しいことが多い。特に[[オウム真理教]]は、一連の[[オウム真理教事件]]のさなかに取材のため近づいた[[江川紹子|ジャーナリスト]]を[[ポア (オウム真理教)|殺害]]しようとした。{{main|江川紹子ホスゲン襲撃事件#概要|旧統一教会問題#旧統一教会側の反発}}{{see also|暴力団#構成員、準構成員、密接交際者であることのデメリット|ポア (オウム真理教)#オウム真理教におけるポア(ポワ)}} |
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また、[[報道における |
また、各種の[[報道におけるタブー]]の存在により、明らかになった新事実が日の目を見ない、もしくは握り潰されることもある。例えば[[ジャニーズ事務所]]創業者である[[ジャニー喜多川による性加害問題]]は、喜多川の生前は話題になることが少なく、死後4年以上経った2023年頃から問題視されることとなった。 |
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{{main|ジャニー喜多川による性加害問題}} |
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調査報道は取材による手間とコストがかかる手法でもある。またそうして取材で手間とコストをかけたが取材結果が既存の公開情報と同じで新事実が出てこなかった場合、取材による手間とコストに見合うスクープという利益が得られないことになる。 |
調査報道は取材による手間とコストがかかる手法でもある。またそうして取材で手間とコストをかけたが取材結果が既存の公開情報と同じで新事実が出てこなかった場合、取材による手間とコストに見合うスクープという利益が得られないことになる。 |
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{{quotation|ジャーナリズムとは(権力者が)報じられたくない事を報じることだ。それ以外のものは広報に過ぎない。|[[日本外国特派員協会]]主宰「報道の自由推進賞」受賞者発表文に常に冠される一文<ref>一説には[[ジョージ・オーウェル]]の言葉だとされている</ref>}} |
{{quotation|ジャーナリズムとは(権力者が)報じられたくない事を報じることだ。それ以外のものは広報に過ぎない。|[[日本外国特派員協会]]主宰「報道の自由推進賞」受賞者発表文に常に冠される一文<ref group="注釈">一説には[[ジョージ・オーウェル]]の言葉だとされている。</ref>}} |
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== 事例 == |
== 事例 == |
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* [[菅生事件]] - [[共同通信社]]・[[大分合同新聞社]]など各社の取材により[[公安警察]]の自作自演による[[冤罪|冤罪事件]]であることが判明。[[身分秘匿捜査|潜入捜査]]を行った警察官は事件後に庇護を受けていた事も明らかになった。 |
* [[菅生事件]] - [[共同通信社]]・[[大分合同新聞社]]など各社の取材により[[公安警察]]の自作自演による[[冤罪|冤罪事件]]であることが判明。[[身分秘匿捜査|潜入捜査]]を行った警察官は事件後に庇護を受けていた事も明らかになった。 |
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* [[田中金脈問題]] - [[文藝春秋|文藝春秋社]]OB[[立花隆]]が月刊『[[文藝春秋 (雑誌)|文藝春秋]]』に出稿。時の[[第2次田中角栄内閣 (第2次改造)|内閣]]を退陣に追い込んだ<ref name="NHK">[https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/domestic/093.html 「調査報道」の社会史] 小俣一平、2017年5月20日閲覧。</ref>。{{main|立花隆#田中角栄研究|田中金脈問題#概要}} |
* [[田中金脈問題]] - [[文藝春秋|文藝春秋社]]OB[[立花隆]]が月刊『[[文藝春秋 (雑誌)|文藝春秋]]』に出稿。時の[[第2次田中角栄内閣 (第2次改造)|内閣]]を退陣に追い込んだ<ref name="NHK">[https://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/domestic/093.html 「調査報道」の社会史] 小俣一平、2017年5月20日閲覧。</ref>。{{main|立花隆#田中角栄研究|田中金脈問題#概要}} |
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* [[生活保護問題]] - [[札幌テレビ放送|札幌テレビ]]ディレクター[[水島宏明]]が[[北海道]][[札幌市]][[白石区]]で起こったシングルマザー餓死事件に着目し、[[日本テレビ放送網|日テレ]]に提案して『[[NNNドキュメント]]』で放送。生活保護制度、特に「123号通知」と「[[水際作戦#官公庁における水際作戦|水際作戦]]」の存在に陽の目を当てた<ref>[[水島宏明]]「母さんが死んだ ―しあわせ幻想の時代に―」、ひとなる書房</ref>。その後、水島は日テレに移籍して『Nドキュ』チーフディレクター、[[解説委員]]に出世した。{{main|生活保護問題#事例}} |
* [[生活保護問題]] - [[札幌テレビ放送|札幌テレビ]]ディレクター[[水島宏明]]が[[北海道]][[札幌市]][[白石区]]で起こったシングルマザー餓死事件に着目し、[[日本テレビ放送網|日テレ]]に提案して『[[NNNドキュメント]]』で放送。生活保護制度、特に「123号通知」と「[[水際作戦#官公庁における水際作戦|水際作戦]]」の存在に陽の目を当てた<ref>[[水島宏明]]「母さんが死んだ ―しあわせ幻想の時代に―」、[[ひとなる書房]]</ref>。その後、水島は日テレに移籍して『Nドキュ』チーフディレクター、[[解説委員]]に出世した。{{main|生活保護問題#事例}} |
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* [[リクルート事件]] - [[朝日新聞社]]横浜・川崎両支局が第一報を報道したが、新聞協会賞受賞に至らなかった。 |
* [[リクルート事件]] - [[朝日新聞社]]横浜・川崎両支局が第一報を報道したが、新聞協会賞受賞に至らなかった。 |
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* [[日本放送協会|NHK]]会長[[島桂次]]の[[偽証]]問題 - 朝日新聞の第一報に[[東京スポーツ]]が追随したが、新聞協会賞受賞に至らなかった。 |
* [[日本放送協会|NHK]]会長[[島桂次]]の[[偽証]]問題 - 朝日新聞の第一報に[[東京スポーツ]]が追随したが、新聞協会賞受賞に至らなかった。 |
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* [[桶川ストーカー殺人事件]] - [[新潮社]]の[[写真週刊誌]]『[[FOCUS|フォーカス]]』が第一報を報じ、[[テレビ朝日|全国朝日放送]](現・テレビ朝日)が『[[ザ・スクープ]]』で追随した。{{main|桶川ストーカー殺人事件#FOCUSの犯人追跡報道}} |
* [[桶川ストーカー殺人事件]] - [[新潮社]]の[[写真週刊誌]]『[[FOCUS|フォーカス]]』が第一報を報じ、[[テレビ朝日|全国朝日放送]](現・テレビ朝日)が『[[ザ・スクープ]]』で追随した。{{main|桶川ストーカー殺人事件#FOCUSの犯人追跡報道}} |
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* [[北海道警裏金事件]] - [[北海道新聞]]が報じ、テレ朝『ザ・スクープSPECIAL』が追随。同時期に道警を取材していた作家[[佐々木譲]]の[[道警シリーズ]]を執筆する際のたたき台となる。 |
* [[北海道警裏金事件]] - [[北海道新聞]]が報じ、テレ朝『ザ・スクープSPECIAL』が追随。同時期に道警を取材していた作家[[佐々木譲]]の[[道警シリーズ]]を執筆する際のたたき台となる。 |
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* [[足利事件]] - FOCUS廃刊後に日テレに移籍した[[清水潔 (ジャーナリスト)|清水潔]]が、『[[ACTION 日本を動かすプロジェクト]]』で冤罪だと指摘。被告人は[[再審]]の結果[[無罪|無罪判決]]を獲得した |
* [[足利事件]] - FOCUS廃刊後に日テレに移籍した[[清水潔 (ジャーナリスト)|清水潔]]が、『[[ACTION 日本を動かすプロジェクト]]』で冤罪だと指摘。被告人は[[再審]]の結果[[無罪|無罪判決]]を獲得した。[[日本民間放送連盟賞|民放連賞]]最優秀賞受賞。{{main|足利事件#冤罪事件として|清水潔 (ジャーナリスト)#経歴}} |
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* [[オリンパス事件]] - ファクタ出版『[[FACTA|月刊FACTA]]』が第一報を報じ、[[日本経済新聞]]が追随。 |
* [[オリンパス事件]] - ファクタ出版『[[FACTA|月刊FACTA]]』が第一報を報じ、[[日本経済新聞]]が追随。 |
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* [[偽装請負|偽装請負問題]] - [[日本共産党]]『[[しんぶん赤旗]]』が第一報を報じ、朝日新聞が追随した。 |
* [[偽装請負|偽装請負問題]] - [[日本共産党]]『[[しんぶん赤旗]]』が第一報を報じ、朝日新聞が追随した。 |
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* [[精神医療]]を問う - 東洋経済新報社『東洋経済オンライン』で連載された<ref>[https://toyokeizai.net/category/ask-mental-health 精神医療を問う 東洋経済オンライン]</ref> |
* [[精神医療]]を問う - 東洋経済新報社『東洋経済オンライン』で連載された<ref>[https://toyokeizai.net/category/ask-mental-health 精神医療を問う 東洋経済オンライン]</ref> |
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* [[かんぽ生命保険]]の不正契約問題 - [[NHK総合テレビジョン|NHK G]]『[[クローズアップ現代|クローズアップ現代+]]』が第一報を報じたものの、かんぽの親会社[[日本郵政]]の圧力で続編を放送 |
* [[かんぽ生命保険]]の不正契約問題 - [[NHK総合テレビジョン|NHK G]]『[[クローズアップ現代|クローズアップ現代+]]』が第一報を報じたものの、かんぽの親会社[[日本郵政]]の圧力で続編を放送出来なくなったところへ[[西日本新聞]]『[[あなたの特命取材班]]』が追随。[[石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞|早稲田ジャーナリズム大賞]]受賞<ref>[https://www.nishinippon.co.jp/serialization/investigating_japanpost_scandal/ コーナーページ]</ref>。{{main|あなたの特命取材班#かんぽ生命保険をめぐる不正契約問題|かんぽ生命保険#不正契約問題}} |
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* [[富山市議会]][[政務活動費]]私的流用問題 - [[北日本新聞]]が第一報を報じ、[[チューリップテレビ]] |
* [[富山市議会]][[政務活動費]]私的流用問題 - [[北日本新聞]]が第一報を報じ、[[チューリップテレビ]]([[TBS系列]])が追随。定数38人のうち14人が辞職する異常事態となる。北日本新聞が新聞協会賞、チューリップテレビは[[菊池寛賞]]をそれぞれ受賞した。 |
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* [[お笑い芸人による闇営業問題]] - [[講談社]]『[[FRIDAY (雑誌)|FRIDAY]]』が第一報を報じ、[[スポーツ新聞]]各紙が追随。{{main|お笑い芸人による闇営業問題#問題の発覚:入江の解雇および芸能界引退と「フライデー」の報道|入江慎也#「闇営業」の仲介を行ったことによる契約解除}} |
* [[お笑い芸人による闇営業問題]] - [[講談社]]『[[FRIDAY (雑誌)|FRIDAY]]』が第一報を報じ、[[スポーツ新聞]]各紙が追随。{{main|お笑い芸人による闇営業問題#問題の発覚:入江の解雇および芸能界引退と「フライデー」の報道|入江慎也#「闇営業」の仲介を行ったことによる契約解除}} |
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* [[アサリ産地偽装問題]] - [[CBCテレビ]]が第一報を報じ、[[ジャパン・ニュース・ネットワーク|TBS系列]]の[[キー局]]TBSテレビでも『[[報道特集 (TBS) |報道特集]]』などに引用放送<ref>{{Cite web |url=https://www.tbs.co.jp/houtoku/archive/20220122_2.html |title=輸入アサリが国産に アサリ産地偽装の実態は |access-date=2024-02-08 |date=2022-01-22 |website=報道特集 |publisher=TBSテレビ}}</ref>。その結果、[[熊本県]]が同県産の[[アサリ]]出荷を一時停止する事態となった<ref>{{Cite web |title=熊本産アサリ、今後2カ月出荷停止 知事「産地偽装を根絶」 |url=https://www.nishinippon.co.jp/item/n/874301/ |website=西日本新聞 |access-date=2024-02-08 |date=2022-02-09 |author=石田剛、古川努}}</ref>。 |
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* [[湖東記念病院事件]] - [[中日新聞]][[中日新聞社|本社]]特別取材班が創出版『[[創 (雑誌)|月刊創]]』で連載<ref>{{Cite journal |和書|author=[[浅野健一]] |title=冤罪逮捕をメディアはどう報じたのか-再審・滋賀湖東記念病院事件の報道検証 |year=2020 |month=1 |publisher=[[創出版]] |journal=[[創 (雑誌)|創]] |volume=50 |issue=1 |page=98}}</ref><ref>{{Cite web |
* [[湖東記念病院事件]] - [[中日新聞]][[中日新聞社|本社]]特別取材班が創出版『[[創 (雑誌)|月刊創]]』で連載<ref>{{Cite journal |和書|author=[[浅野健一]] |title=冤罪逮捕をメディアはどう報じたのか-再審・滋賀湖東記念病院事件の報道検証 |year=2020 |month=1 |publisher=[[創出版]] |journal=[[創 (雑誌)|創]] |volume=50 |issue=1 |page=98}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.waseda.jp/top/news/67884 |title=2019年第19回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」授賞作品 |accessdate=2020-11-11 |date=2019-12-20 |work=石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞 |publisher=早稲田大学}}。</ref>。司法の実態を告発した。早稲田ジャーナリズム大賞草の根民主主義部門受賞。 |
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* [[キッズライン (企業)|キッズライン]]をめぐる一連の不祥事 - [[メディアジーン]]『[[ビジネスインサイダー|Business Insider日本版]]』が第一報を報じ、複数の媒体が追随<ref>[https://www.businessinsider.jp/post-215592 【調査報道】シッター逮捕のキッズライン、レビューに浮上する深刻な疑惑]</ref>。 |
* [[キッズライン (企業)|キッズライン]]をめぐる一連の不祥事 - [[メディアジーン]]『[[ビジネスインサイダー|Business Insider日本版]]』が第一報を報じ、複数の媒体が追随<ref>[https://www.businessinsider.jp/post-215592 【調査報道】シッター逮捕のキッズライン、レビューに浮上する深刻な疑惑]</ref>。 |
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* [[2020年東京オリンピック| |
* [[2020年東京オリンピック|東京オリンピック]]における[[食品ロス|食品ロス問題]] - TBSテレビ『[[news23]]』『報道特集』が明らかにした。 |
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* [[自由民主党 (日本)|自由民主党]]の[[政治資金パーティー収入の裏金問題]] - しんぶん赤旗が第一報を報じ、その後[[神戸学院大学]][[教授]][[上脇博之]]による[[告訴・告発|刑事告発]]を経て、読売新聞が追随<ref>{{Cite web |title=“増税メガネ”岸田総理に降りかかる「政治資金パーティー」過少申告問題 告発者は「裏金作りの温床になっている」 |url=https://www.dailyshincho.jp/article/2023/11080600/?all=1 |website=週刊新潮 |date=2023-11-08 |access-date=2024-02-08 |page=1}}</ref><ref>{{Cite web |title=政治資金パーティー、告発の裏金「氷山の一角」 調査した神院大・上脇教授 資料見て「法律違反確信」 |url=https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202312/0017138454.shtml |website=神戸新聞 |date=2023-12-17 |access-date=2024-02-08}}</ref>。[[自由民主党の派閥]]が一部を除き解散に追い込まれる事態になった<ref>{{Cite web |title=自民 森山派が解散を決定 党内6派閥のうち4つが解散へ |url=https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240125/k10014334041000.html |website=NHKニュース |date=2024-01-25 |access-date=2024-02-08 |author=日本放送協会}}</ref>。 |
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* [[ジャニー喜多川 |
* [[ジャニー喜多川による性加害問題]] - [[イギリス]]・[[BBCニュース]]が[[週刊文春]]の協力を得てドキュメンタリー番組を制作し、イギリスや日本を始めとする世界各国で放映・配信。週刊文春も追随報道を行った<ref>{{Cite web|和書|title=【独占インタビュー】英BBC「ジャニー喜多川氏告発番組」取材記者が語る「4年間の戦い」 |url=https://friday.kodansha.co.jp/article/301162 |website=FRIDAY |date=2023-03-18 |access-date=2023-09-07 |page=1}}</ref>。 |
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== インターネット上での調査報道を採用している媒体 == |
== インターネット上での調査報道を採用している媒体 == |
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2018年1月に[[西日本新聞社]]が開始した調査報道企画「[[あなたの特命取材班]]」の成功を機に新聞社を中心にあなたの特命取材班と同種の調査報道企画を採用している報道機関が増えている。 |
2018年1月に[[西日本新聞社]]が開始した調査報道企画「[[あなたの特命取材班]]」の成功を機に、新聞社を中心に「あなたの特命取材班」と同種の調査報道企画を採用している報道機関が増えている。いずれの報道機関も、読者からインターネット経由で情報提供を受けて、記者が取材を行い、ニュース化しているのが特徴である<ref>{{Cite web|和書|title=SNSでつながる、取材力でこたえる 西日本新聞の調査報道「あなたの特命取材班」の挑戦 |url=https://news.yahoo.co.jp/newshack/media_watch/anatoku_nnp.html |website=news HACK by Yahoo!ニュース |access-date=2022-04-29 |date=2018-04-13}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=あなたのニュースで社会が変わる 〜信頼のジャーナリズム〜 |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4389/ |website=NHK クローズアップ現代 |access-date=2022-04-29 |last=日本放送協会 |date=2020-02-25}}</ref>。 |
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* 2024年2月時点。 |
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: 表中「JOD」は「あなたの特命取材班」と提携しているメディア('''JODパートナーシップ'''参加媒体)。詳細は、公式サイトの[https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1064388/ 《JODの理念とパートナー一覧》]を参照。なお、[[東奥日報]]のように通常記事閲覧が有料の[[ウェブサイト]]においても、当該記事は基本的に閲覧制限が設定されていない。 |
: 表中「JOD」は「あなたの特命取材班」と提携しているメディア('''JODパートナーシップ'''参加媒体)。詳細は、公式サイトの[https://www.nishinippon.co.jp/item/n/1064388/ 《JODの理念とパートナー一覧》]を参照。なお、[[東奥日報]]のように通常記事閲覧が有料の[[ウェブサイト]]においても、当該記事は基本的に閲覧制限が設定されていない。 |
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: 「NHK」は各地の[[日本放送協会|NHK]]放送局(全ての局で調査報道を実施している訳ではない)。詳細と参加局の一覧は[[NHK NEWS WEB]]内の「[https://www.nhk.or.jp/article-blog/456448.html 声を聴かせて!あなたのお困りごとをNHKが調べます]」も参照。 |
: 「NHK」は各地の[[日本放送協会|NHK]]放送局(全ての局で調査報道を実施している訳ではない)。詳細と参加局の一覧は[[NHK NEWS WEB]]内の「[https://www.nhk.or.jp/article-blog/456448.html 声を聴かせて!あなたのお困りごとをNHKが調べます]」も参照。 |
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| [[ほっとニュース北海道]]他|| [[NHK札幌放送局]] || [https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n985d28ceb3c1 シラベルカ] || NHK |
| [[ほっとニュース北海道]]他|| [[NHK札幌放送局]] || [https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n985d28ceb3c1 シラベルカ] || NHK |
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| ほっとニュースぐるっと函館 || [[NHK函館放送局]] || [https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-ne059d729393c 道南の声、受信中!] || NHK |
| ほっとニュースぐるっと函館 || [[NHK函館放送局]] || [https://web.archive.org/web/20220708055927/https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-ne059d729393c 道南の声、受信中!] || NHK |
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| ほっとニュースとかち || [[NHK帯広放送局]] || [https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-nac92a4942fbc ナットク! とかちcH] || NHK |
| ほっとニュースとかち || [[NHK帯広放送局]] || [https://web.archive.org/web/20201101184510/https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-nac92a4942fbc ナットク! とかちcH] || NHK |
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|rowspan="2"| [[青森県]] || [[東奥日報]]<!-- 02 --> || 東奥日報社 || [https://www.toonippo.co.jp/subcategory/%E3%83%95%E3%82%AB%E3%83%9C%E3%83%AA あなたの声から「フカボリ」取材班] || JOD |
|rowspan="2"| [[青森県]] || [[東奥日報]]<!-- 02 --> || 東奥日報社 || [https://www.toonippo.co.jp/subcategory/%E3%83%95%E3%82%AB%E3%83%9C%E3%83%AA あなたの声から「フカボリ」取材班] || JOD |
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| [[てれまさむね]]他 || [[NHK仙台放送局]] || [https://forms.nhk.or.jp/q/7TZ15FHB?cid=tenpfhk-nol-local-5 みやぎ UP-DATE] || NHK |
| [[てれまさむね]]他 || [[NHK仙台放送局]] || [https://forms.nhk.or.jp/q/7TZ15FHB?cid=tenpfhk-nol-local-5 みやぎ UP-DATE] || NHK |
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|rowspan="2"| [[秋田県]] || [[秋田魁新報]]<!-- 05 --> ||秋田魁新報社 || [https://www.sakigake.jp/news/sakitoku/ こちらさきがけ特報班] || |
|rowspan="2"| [[秋田県]] || [[秋田魁新報]]<!-- 05 --> ||秋田魁新報社 || [https://www.sakigake.jp/news/sakitoku/ こちらさきがけ特報班] || JOD |
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| [[ニュースこまち]]他 || [[NHK秋田放送局]] || [https://post.nhk.or.jp/pxm1a2acic/kurashi_koe/image/registrations/input?cid=tenpfhk-nol-local-50 あなたの知りたい! こまち調査隊] || NHK |
| [[ニュースこまち]]他 || [[NHK秋田放送局]] || [https://post.nhk.or.jp/pxm1a2acic/kurashi_koe/image/registrations/input?cid=tenpfhk-nol-local-50 あなたの知りたい! こまち調査隊] || NHK |
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| [[とちぎ630]]他 || [[NHK宇都宮放送局]] || [https://post.nhk.or.jp/pxp7p383ra/shirabenja/image/registrations/input?cid=tenpfhk-nol-local-48 全力取材! シラベンジャー あなたの疑問調べます] || NHK |
| [[とちぎ630]]他 || [[NHK宇都宮放送局]] || [https://post.nhk.or.jp/pxp7p383ra/shirabenja/image/registrations/input?cid=tenpfhk-nol-local-48 全力取材! シラベンジャー あなたの疑問調べます] || NHK |
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| [[群馬県]] || [[上毛新聞]]<!-- 10 --> || 上毛新聞社 || [https://www.jomo-news.co.jp/subcategory/%E3%81%BF%E3%82%93%E3%81%AA%E3%81%AE%E7%96%91%E5%95%8F%20%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%8F%96%E6%9D%90%E7%8F%AD みんなの疑問 特別取材班] || |
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*[[日本新聞協会賞]] - 編集部門賞は調査報道の成果が授賞対象となることが多い |
*[[日本新聞協会賞]] - 編集部門賞は調査報道の成果が授賞対象となることが多い |
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*[[あなたの特命取材班]] |
*[[あなたの特命取材班]] |
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*潜入報道([[:en:Undercover journalism| |
*潜入報道([[:en:Undercover journalism|アンダーカバー・ジャーナリズム]]{{en icon}}) |
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2024年5月7日 (火) 07:05時点における最新版
報道 |
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ニュース / スタイル 倫理 / 客観性 価値 / 情報源 名誉毀損 編集の独立 ジャーナリズムスクール |
分野 |
ジャンル |
社会的影響 |
報道機関 |
役割 |
カテゴリ |
調査報道(ちょうさほうどう、英: investigative journalism)とは、報道のスタイルの1つである。あるテーマや事件に対して、取材する側が主体性と継続性を持って様々なソースから情報を積み上げていくことによって新事実を突き止めていこうとするタイプの報道である。なお、警察・検察や官庁、企業などによるリーク、広報、プレスリリースなどを中心とする報道は発表報道という。
概要
[編集]日本では、近代新聞の発行が始まった明治以降にこの概念が持ち込まれたが、大東亜戦争(太平洋戦争・第二次世界大戦)までは時の政府に対する調査報道は極めて難しく、財界や大物経済人のスキャンダル(不正行為・汚職)にほぼ限定されていた。これは、検閲制度により政府・与党・軍部に不利な発表は排除されていたことと、取材する側も明治憲法で天皇の神聖不可侵が定められたことにより、天皇を輔弼する内閣総理大臣や閣僚の私生活および裏事情に迫ることは任命権者たる天皇への不敬になる恐れがあるとして、憚られたことによる。
戦後(主権回復後)も官公庁などに記者クラブがあるため、大手マスコミすら発表報道偏重に陥りやすく、調査報道をしようとするフリージャーナリストが取材活動しづらいと指摘されている。
北海道新聞・高知新聞OBで東京都市大学教授の高田昌幸によれば、一介の個人にはできない、組織や権力者(警察、検察、官庁や大企業、大政治家)が絡む調査報道の目的は以下のことにあるという[1]。
ただし、2については、書かれた相手がアウトローな組織(暴力団、右翼団体、左翼団体、カルト集団)の場合は、「自分たちにデメリットな報道内容を事実だと認めさせること」が、政府機関や一般組織や大政治家と比較して難しいことが多い。特にオウム真理教は、一連のオウム真理教事件のさなかに取材のため近づいたジャーナリストを殺害しようとした。
また、各種の報道におけるタブーの存在により、明らかになった新事実が日の目を見ない、もしくは握り潰されることもある。例えばジャニーズ事務所創業者であるジャニー喜多川による性加害問題は、喜多川の生前は話題になることが少なく、死後4年以上経った2023年頃から問題視されることとなった。
調査報道は取材による手間とコストがかかる手法でもある。またそうして取材で手間とコストをかけたが取材結果が既存の公開情報と同じで新事実が出てこなかった場合、取材による手間とコストに見合うスクープという利益が得られないことになる。
事例
[編集]海外
[編集]- アイダ・ターベルによるen:The History of the Standard Oil Company
- ソンミ村虐殺事件 - フリージャーナリストシーモア・ハーシュがザ・ニューヨーカー紙に出稿。ピューリッツァー賞受賞。
- ウォーターゲート事件 - ワシントン・ポストの記者2人が調査報道を積み重ね、その結果第37代アメリカ大統領リチャード・ニクソンを辞任に追い込んだ。詳細は「ウォーターゲート事件#ワシントン・ポストと「ディープ・スロート」」および「ボブ・ウッドワード#プロフィール」を参照
- ボストン・グローブによるカトリック教会の性的虐待事件
- PRISMの存在の暴露 - 英国大手大衆紙ガーディアンとワシントン・ポスト両紙による合同取材。
日本
[編集]新聞社・テレビ局による調査報道は日本新聞協会賞・日本記者クラブ賞特別賞や国際ニュースではボーン・上田賞を受けることが多いためそちらも参照されたい。本項では、新聞協会賞の選考から漏れた、または選考対象にならない雑誌媒体による調査報道のうち、特に秀逸とされた案件を紹介する。
- 菅生事件 - 共同通信社・大分合同新聞社など各社の取材により公安警察の自作自演による冤罪事件であることが判明。潜入捜査を行った警察官は事件後に庇護を受けていた事も明らかになった。
- 田中金脈問題 - 文藝春秋社OB立花隆が月刊『文藝春秋』に出稿。時の内閣を退陣に追い込んだ[2]。詳細は「立花隆#田中角栄研究」および「田中金脈問題#概要」を参照
- 生活保護問題 - 札幌テレビディレクター水島宏明が北海道札幌市白石区で起こったシングルマザー餓死事件に着目し、日テレに提案して『NNNドキュメント』で放送。生活保護制度、特に「123号通知」と「水際作戦」の存在に陽の目を当てた[3]。その後、水島は日テレに移籍して『Nドキュ』チーフディレクター、解説委員に出世した。詳細は「生活保護問題#事例」を参照
- リクルート事件 - 朝日新聞社横浜・川崎両支局が第一報を報道したが、新聞協会賞受賞に至らなかった。
- NHK会長島桂次の偽証問題 - 朝日新聞の第一報に東京スポーツが追随したが、新聞協会賞受賞に至らなかった。
- 山一證券の損失補填疑惑 - 東洋経済新報社『週刊東洋経済』が第一報。その後、山一證券は自主廃業した。雑誌ジャーナリズム賞受賞。詳細は「山一證券#三木淳夫時代」および「野澤正平#山一最後の社長」を参照
- 則定衛の女性問題 - 雑誌『噂の眞相』が第一報を報じ、朝日新聞が追随。則定は法務大臣に指揮権発動を検討される手前まで行き、辞職に追い込まれた。詳細は「則定衛#疑惑報道」および「三井環事件#事件一覧」を参照
- 松本サリン事件 - TBSテレビ『スペースJ』で下村健一が冤罪だといち早く指摘。テレビ信州も別ルートで調査報道を蓄積し河野義行の冤罪確定に貢献した。詳細は「松本サリン事件#冤罪・報道被害」を参照
- 桶川ストーカー殺人事件 - 新潮社の写真週刊誌『フォーカス』が第一報を報じ、全国朝日放送(現・テレビ朝日)が『ザ・スクープ』で追随した。詳細は「桶川ストーカー殺人事件#FOCUSの犯人追跡報道」を参照
- 北海道警裏金事件 - 北海道新聞が報じ、テレ朝『ザ・スクープSPECIAL』が追随。同時期に道警を取材していた作家佐々木譲の道警シリーズを執筆する際のたたき台となる。
- 足利事件 - FOCUS廃刊後に日テレに移籍した清水潔が、『ACTION 日本を動かすプロジェクト』で冤罪だと指摘。被告人は再審の結果無罪判決を獲得した。民放連賞最優秀賞受賞。詳細は「足利事件#冤罪事件として」および「清水潔 (ジャーナリスト)#経歴」を参照
- オリンパス事件 - ファクタ出版『月刊FACTA』が第一報を報じ、日本経済新聞が追随。
- 偽装請負問題 - 日本共産党『しんぶん赤旗』が第一報を報じ、朝日新聞が追随した。
- 精神医療を問う - 東洋経済新報社『東洋経済オンライン』で連載された[4]
- かんぽ生命保険の不正契約問題 - NHK G『クローズアップ現代+』が第一報を報じたものの、かんぽの親会社日本郵政の圧力で続編を放送出来なくなったところへ西日本新聞『あなたの特命取材班』が追随。早稲田ジャーナリズム大賞受賞[5]。詳細は「あなたの特命取材班#かんぽ生命保険をめぐる不正契約問題」および「かんぽ生命保険#不正契約問題」を参照
- 富山市議会政務活動費私的流用問題 - 北日本新聞が第一報を報じ、チューリップテレビ(TBS系列)が追随。定数38人のうち14人が辞職する異常事態となる。北日本新聞が新聞協会賞、チューリップテレビは菊池寛賞をそれぞれ受賞した。
- お笑い芸人による闇営業問題 - 講談社『FRIDAY』が第一報を報じ、スポーツ新聞各紙が追随。
- アサリ産地偽装問題 - CBCテレビが第一報を報じ、TBS系列のキー局TBSテレビでも『報道特集』などに引用放送[6]。その結果、熊本県が同県産のアサリ出荷を一時停止する事態となった[7]。
- 湖東記念病院事件 - 中日新聞本社特別取材班が創出版『月刊創』で連載[8][9]。司法の実態を告発した。早稲田ジャーナリズム大賞草の根民主主義部門受賞。
- キッズラインをめぐる一連の不祥事 - メディアジーン『Business Insider日本版』が第一報を報じ、複数の媒体が追随[10]。
- 東京オリンピックにおける食品ロス問題 - TBSテレビ『news23』『報道特集』が明らかにした。
- 自由民主党の政治資金パーティー収入の裏金問題 - しんぶん赤旗が第一報を報じ、その後神戸学院大学教授上脇博之による刑事告発を経て、読売新聞が追随[11][12]。自由民主党の派閥が一部を除き解散に追い込まれる事態になった[13]。
- ジャニー喜多川による性加害問題 - イギリス・BBCニュースが週刊文春の協力を得てドキュメンタリー番組を制作し、イギリスや日本を始めとする世界各国で放映・配信。週刊文春も追随報道を行った[14]。
インターネット上での調査報道を採用している媒体
[編集]2018年1月に西日本新聞社が開始した調査報道企画「あなたの特命取材班」の成功を機に、新聞社を中心に「あなたの特命取材班」と同種の調査報道企画を採用している報道機関が増えている。いずれの報道機関も、読者からインターネット経由で情報提供を受けて、記者が取材を行い、ニュース化しているのが特徴である[15][16]。
- 2024年2月時点。
- 表中「JOD」は「あなたの特命取材班」と提携しているメディア(JODパートナーシップ参加媒体)。詳細は、公式サイトの《JODの理念とパートナー一覧》を参照。なお、東奥日報のように通常記事閲覧が有料のウェブサイトにおいても、当該記事は基本的に閲覧制限が設定されていない。
- 「NHK」は各地のNHK放送局(全ての局で調査報道を実施している訳ではない)。詳細と参加局の一覧はNHK NEWS WEB内の「声を聴かせて!あなたのお困りごとをNHKが調べます」も参照。
- 表中で「(東京新聞、NHK)」のようにカッコ書きで媒体名が記載され「連携」欄が「△」の場合、県域紙やローカル局でなく県内を頒布対象とするJOD参加のブロック紙、もしくはNHK首都圏局がカバーしていることを表す。「-」はその媒体で独自に調査報道を行っているが、JODには非参加。「採用媒体なし」で「×」の場合、県域紙やローカル局では調査報道を行っていない(全国紙のみフォロー)。
- 海外については、西日本新聞の自社支局があるアメリカ・タイ・韓国・中国において『あなたの海外特派員』というタイトルで同様の企画が行われており、その取材結果は西日本新聞のWebサイトやSNSを通じてフィードバックされる。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ 取材源の秘匿はジャーナリズムの大原則であるが、それに反しない形でテーブルに出すことになる。
- ^ 一説にはジョージ・オーウェルの言葉だとされている。
出典
[編集]- ^ 調査報道とは何か―日本ジャーナリスト会議の勉強会から 本人ブログ「ニュースの現場で考えること」
- ^ 「調査報道」の社会史 小俣一平、2017年5月20日閲覧。
- ^ 水島宏明「母さんが死んだ ―しあわせ幻想の時代に―」、ひとなる書房
- ^ 精神医療を問う 東洋経済オンライン
- ^ コーナーページ
- ^ “輸入アサリが国産に アサリ産地偽装の実態は”. 報道特集. TBSテレビ (2022年1月22日). 2024年2月8日閲覧。
- ^ 石田剛、古川努 (2022年2月9日). “熊本産アサリ、今後2カ月出荷停止 知事「産地偽装を根絶」”. 西日本新聞. 2024年2月8日閲覧。
- ^ 浅野健一「冤罪逮捕をメディアはどう報じたのか-再審・滋賀湖東記念病院事件の報道検証」『創』第50巻第1号、創出版、2020年1月、98頁。
- ^ “2019年第19回「石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞」授賞作品”. 石橋湛山記念 早稲田ジャーナリズム大賞. 早稲田大学 (2019年12月20日). 2020年11月11日閲覧。。
- ^ 【調査報道】シッター逮捕のキッズライン、レビューに浮上する深刻な疑惑
- ^ ““増税メガネ”岸田総理に降りかかる「政治資金パーティー」過少申告問題 告発者は「裏金作りの温床になっている」”. 週刊新潮. p. 1 (2023年11月8日). 2024年2月8日閲覧。
- ^ “政治資金パーティー、告発の裏金「氷山の一角」 調査した神院大・上脇教授 資料見て「法律違反確信」”. 神戸新聞 (2023年12月17日). 2024年2月8日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2024年1月25日). “自民 森山派が解散を決定 党内6派閥のうち4つが解散へ”. NHKニュース. 2024年2月8日閲覧。
- ^ “【独占インタビュー】英BBC「ジャニー喜多川氏告発番組」取材記者が語る「4年間の戦い」”. FRIDAY. p. 1 (2023年3月18日). 2023年9月7日閲覧。
- ^ “SNSでつながる、取材力でこたえる 西日本新聞の調査報道「あなたの特命取材班」の挑戦”. news HACK by Yahoo!ニュース (2018年4月13日). 2022年4月29日閲覧。
- ^ 日本放送協会 (2020年2月25日). “あなたのニュースで社会が変わる 〜信頼のジャーナリズム〜”. NHK クローズアップ現代. 2022年4月29日閲覧。
- ^ NHK放送センター(東京都渋谷区)、さいたま局、千葉局、横浜局の総称。
関連項目
[編集]- ジャーナリスト
- センター・フォー・パブリック・インテグリティ
- オープン・ソース・インテリジェンス
- 発表報道
- 国別にみた情報公開法
- 日本新聞協会賞 - 編集部門賞は調査報道の成果が授賞対象となることが多い
- あなたの特命取材班
- 潜入報道(アンダーカバー・ジャーナリズム )
- コタツ記事