「フルール・ド・リス」の版間の差分
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{{Otheruses|アヤメ(アイリス)の花を模した意匠|イギリスのロックバンド|ザ・フルール・ド・リス (イギリスのバンド)}} |
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{{脚注の不足|date=2021年12月}} |
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'''フルール・ド・リス'''( |
'''フルール・ド・リス'''({{lang-fr-short|''fleur-de-lis''}} もしくは {{lang|fr|''fleur-de-lys''}})は、[[アヤメ]](アイリス)の[[花]]を様式化した[[意匠]]を指す。特に[[紋章]]の場合は[[政治]]的、[[王権]]的、[[芸術]]的、[[表象]]的、[[象徴]]的な意味をも持つが、現代においても[[フランス]]に関わる政治的<!--一例にケベック-->・表象的・象徴的<!--フランス王室が用いた歴史からサン=ローランの意匠まで、象徴的にも表象的にもフランス的。-->意味合いが強い<ref>Michel Pastoureau, ''Heraldry: its origins and meaning'' translated by Francisca Garvie (Thames and Hudson 1997), ISBN 0-500-30074-7, p.98</ref>。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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''fleur-de-lis'' の[[直訳]]は「[[ユリ]]の[[花]]」であるが、ここに言う「ユリ」は一般的な「ユリ」([[ユリ科]][[ユリ属]])ではなく、[[アヤメ科]][[アヤメ属]]の[[キショウブ]] |
{{lang|fr|''fleur-de-lis''}} の[[直訳]]は「[[ユリ]]の[[花]]」であるが、ここに言う「ユリ」は一般的な「ユリ」([[ユリ科]][[ユリ属]])ではなく、[[ユリ目]]に属するとされた[[アヤメ科]][[アヤメ属]]の[[キショウブ]]({{snamei|Iris pseudacorus}})や[[ニオイイリス]]({{snamei|Iris florentina}})といった花を指すとされる。 |
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''fleur-de-lis'' は、[[フランス語]]では{{IPA-fr|flœʁ də lis|}}(フルールドゥリス)と発音するのが一般的だが、{{IPA-fr|flœʁ də li|}}(フルールドゥリ)と語尾を発音しないとする例も見られる<ref>[http://www.cnrtl.fr/definition/lis Trésor de la langue française]</ref>。[[英語]]では{{IPA-en|ˌfləː''r''dˈliː|}}(フラードゥ'''リー''')と発音する{{efn2|[[英語]]での複数形は、fleurが複数化され fleur'''s'''-de-lis となるが、発音は{{IPA-en|ˌfləː''r''d''ə''ˈliːz|}}(フラーダ'''リー'''ズ)となり、複数化されたfleursの部分の発音は変化せず、綴りが変わっていない語尾の発音が変化するので注意。}}。 |
{{lang|fr|''fleur-de-lis''}} は、[[フランス語]]では{{IPA-fr|flœʁ də lis|}}(フルールドゥリス)と発音するのが一般的だが、{{IPA-fr|flœʁ də li|}}(フルールドゥリ)と語尾を発音しないとする例も見られる<ref>[http://www.cnrtl.fr/definition/lis Trésor de la langue française]</ref>。[[英語]]では{{IPA-en|ˌfləː''r''dˈliː|}}(フラードゥ'''リー''')と発音する{{efn2|[[英語]]での複数形は、{{lang|en|fleur}}が複数化され {{lang|en|fleur'''s'''-de-lis}} となるが、発音は{{IPA-en|ˌfləː''r''d''ə''ˈliːz|}}(フラーダ'''リー'''ズ)となり、複数化されたfleursの部分の発音は変化せず、綴りが変わっていない語尾の発音が変化するので注意。}}。 |
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フルール・ド・リスはヨーロッパの紋章や[[旗]]に何世紀にもわたり数多く見られるが、歴史的には特に[[フランス君主一覧|フランス王家]]と関係が深く、また[[ブルボン家]]の一員である[[スペイン |
フルール・ド・リスはヨーロッパの紋章や[[旗]]に何世紀にもわたり数多く見られるが、歴史的には特に[[フランス君主一覧|フランス王家]]と関係が深く、また[[ブルボン家]]の一員である[[スペイン・ブルボン朝|スペイン王家]]や[[ルクセンブルク大公]]家も現在でも紋章に使用し続けている。フルール・ド・リスはフランスの[[切手]]などにも使用される継続的なフランスの象徴であるが、[[共和国]]としてのフランスはフルール・ド・リスを公式には特に採用しなかった。 |
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[[北アメリカ]]では、フルール・ド・リスは[[ルイジアナ州|ルイジアナ]]、[[ケベック州|ケベック]]、他の[[カナダ]]の州の[[フランス語圏]]など、かつて[[ヌーベルフランス]]([[フランス植民地帝国|フランス入植地]])であった地で使用されていることが多い。 |
[[北アメリカ]]では、フルール・ド・リスは[[ルイジアナ州|ルイジアナ]]、[[ケベック州|ケベック]]、他の[[カナダ]]の州の[[フランス語圏]]など、かつて[[ヌーベルフランス]]([[フランス植民地帝国|フランス入植地]])であった地で使用されていることが多い。 |
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[[第二次世界大戦]]での[[ナチス・ドイツ]][[武装親衛隊]]においては[[フランス人]]義勇兵で編成された[[第33SS武装擲弾兵師団]](通称「[[カール大帝|シャルルマーニュ]]」)が部隊章として用いた。 |
[[第二次世界大戦]]での[[ナチス・ドイツ]][[武装親衛隊]]においては[[フランス人]]義勇兵で編成された[[第33SS武装擲弾兵師団]](通称「[[カール大帝|シャルルマーニュ]]」)が部隊章として用いた。 |
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建築家やデザイナーはフルール・ド・リスを、単独あるいは背景模様に繰り返して、特にフランスにちなんだものの場合、鉄製品から製本までさまざまに使用することがある。宗教的には[[三位一体|聖三位一体]]の象徴であり、また特に[[受胎告知]]の場面では[[大天使]][[ガブリエル]]を象徴する図像となっている<ref>Hall, James (1974). ''Dictionary of Subjects & Symbols in Art''. Harper & Row. ISBN 0-06-433316-7. p.124.</ref>。このようにフルール・ド・リスは[[聖母マリア]]とも関連がある。 |
建築家やデザイナーはフルール・ド・リスを、単独あるいは背景模様に繰り返して、特にフランスにちなんだものの場合、鉄製品から製本までさまざまに使用することがある。宗教的には[[三位一体|聖三位一体]]の象徴であり、また特に[[受胎告知]]の場面では[[大天使]][[ガブリエル]]を象徴する図像となっている<ref name="Hall, James 1974 p.124">Hall, James (1974). ''Dictionary of Subjects & Symbols in Art''. Harper & Row. ISBN 0-06-433316-7. p.124.</ref>。このようにフルール・ド・リスは[[聖母マリア]]とも関連がある。 |
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== 起源 == |
== 起源 == |
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「Fleur-de-lis」とはフランス語で「[[アヤメ]]の花」を意味し、[[アヤメ属|アイリス]]の一種を様式化したものだと広く考えられている。フルール・ド・リスを思わせる装飾品は、文明のごく初期から[[工芸]]に現れている。 |
「{{lang|fr|Fleur-de-lis}}」とはフランス語で「[[アヤメ]]の花」を意味し、[[アヤメ属|アイリス]]の一種を様式化したものだと広く考えられている。フルール・ド・リスを思わせる装飾品は、文明のごく初期から[[工芸]]に現れている。 |
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装飾的あるいは象徴的に用いられる、様式化された花は通常フルール・ド・リスと呼ばれ、全ての時代と文明に共通して見られる。基本的な図式的主題であり、[[メソポタミア]]の[[円筒印章]]、[[エジプト]]の浅浮き彫り、[[ミケーネ文明]]の陶器、[[サーサーン朝]]の織物、[[ガリア]]の硬貨、[[奴隷王朝|マムルーク朝]]の硬貨、[[インドネシア]]の衣類、日本の紋章や[[ドゴン]]族の[[トーテム]]にも見られる。 |
装飾的あるいは象徴的に用いられる、様式化された花は通常フルール・ド・リスと呼ばれ、全ての時代と文明に共通して見られる。基本的な図式的主題であり、[[メソポタミア]]の[[円筒印章]]、[[エジプト]]の浅浮き彫り、[[ミケーネ文明]]の陶器、[[サーサーン朝]]の織物、[[ガリア]]の硬貨、[[奴隷王朝|マムルーク朝]]の硬貨、[[インドネシア]]の衣類、日本の紋章や[[ドゴン]]族の[[トーテム]]にも見られる。 |
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これについて議論した多くの著者は、フルール・ド・リスが図式的に[[ユリ]]ではないことに同意したが、その由来が[[アヤメ|アイリス]]か、[[エニシダ]]か、[[ハス]]か、[[エニシダ属|ハリエニシダ]]から来るのか、その形が三叉の[[矛]]か、[[矢#鏃(やじり)|矢じり]]か、[[ラブリュス|両刃斧]]か、あるいは[[ハト]]を表すのかといった点では合意に至らなかった。このことはたいした問題ではない、というのが我々の意見である。重要なのはフルール・ド・リスが、おそらく花を非常に様式化した図形であり、新旧の世界でほとんど全ての文明によって装飾や紋章として使われてきた点である<ref>Michel Pastoureau (2006) [http://www.heraldica.org/topics/fdl.htm''Traité d'Héraldique'', "Treatise on Heraldry", translated by François R. Velde]</ref>。 |
これについて議論した多くの著者は、フルール・ド・リスが図式的に[[ユリ]]ではないことに同意したが、その由来が[[アヤメ|アイリス]]か、[[エニシダ]]か、[[ハス]]か、[[エニシダ属|ハリエニシダ]]から来るのか、その形が三叉の[[矛]]か、[[矢#鏃(矢尻=やじり)|矢じり]]か、[[ラブリュス|両刃斧]]か、あるいは[[ハト]]を表すのかといった点では合意に至らなかった。このことはたいした問題ではない、というのが我々の意見である。重要なのはフルール・ド・リスが、おそらく花を非常に様式化した図形であり、新旧の世界でほとんど全ての文明によって装飾や紋章として使われてきた点である<ref>Michel Pastoureau (2006) [http://www.heraldica.org/topics/fdl.htm''Traité d'Héraldique'', "Treatise on Heraldry", translated by François R. Velde]</ref>。 |
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フルール・ド・リスは一貫して王家の象徴として使われてきたが、異文化によってその意味はさまざまに解釈されている。 |
フルール・ド・リスは一貫して王家の象徴として使われてきたが、異文化によってその意味はさまざまに解釈されている。 |
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近代のフルール・ド・リスに近い意匠が最初に見られたのは、[[ガリア]]のコインである<ref>Michel Pastoureau, ''Heraldry: its origins and meaning'' p.99</ref>。 |
近代のフルール・ド・リスに近い意匠が最初に見られたのは、[[ガリア]]のコインである<ref name="Michel Pastoureau p.99">Michel Pastoureau, ''Heraldry: its origins and meaning'' p.99</ref>。 |
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== 王権の象徴 == |
== 王権の象徴 == |
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=== クロヴィス1世 === |
=== クロヴィス1世 === |
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伝説によれば[[493年]]、[[メロヴィング朝]]の[[クロヴィス1世]]が[[キリスト教]]への改宗に際し、フランスの君主で最初にフルール・ド・リスを王家の[[紋章]]に採用して宗教的純血の象徴とした<ref>Lewis, Philippa & Darley, Gillian (1986) ''Dictionary of Ornament''</ref>。伝説は様々な形をとっており、その多くはクロヴィス王の改宗に関連したものであった。これらの伝説は、「フランス王の権威は[[皇帝]]や[[教皇]]の審議なしで直接神から授かったものであり、フランス王家は[[聖別]]されている」という主張を裏書するものとなった。 |
伝説によれば[[493年]]、[[メロヴィング朝]]の[[クローヴィス1世 (フランク王)|クローヴィス1世]]が[[キリスト教]]への改宗に際し、フランスの君主で最初にフルール・ド・リスを王家の[[紋章]]に採用して宗教的純血の象徴とした<ref>Lewis, Philippa & Darley, Gillian (1986) ''Dictionary of Ornament''</ref>。伝説は様々な形をとっており、その多くはクロヴィス王の改宗に関連したものであった。これらの伝説は、「フランス王の権威は[[皇帝]]や[[教皇]]の審議なしで直接神から授かったものであり、フランス王家は[[聖別]]されている」という主張を裏書するものとなった。 |
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伝説のいくつかは、クロヴィス王を聖別するために天からもたらされた[[聖油]]の壺について記述しており、王族の神秘性を強めている<ref>Ralph E. Giesey, ''Models of Rulership in French Royal Ceremonial'' in ''Rites of Power: Symbolism, Ritual, and Politics Since the Middle Ages'' ed. Wilentz (Princeton 1985) p43 |
伝説のいくつかは、クロヴィス王を聖別するために天からもたらされた[[聖油]]の壺について記述しており、王族の神秘性を強めている<ref>Ralph E. Giesey, ''Models of Rulership in French Royal Ceremonial'' in ''Rites of Power: Symbolism, Ritual, and Politics Since the Middle Ages'' ed. Wilentz (Princeton 1985) p43</ref>。これはおそらく、[[ハト]]が[[聖レミギウス]]のところに運んだものである。別の伝説によれば、クロヴィスの[[洗礼]]式に[[聖母マリア]]が現れ、祝福の[[贈り物]]としてユリを与えたという。聖母マリアは、しばしば花と関連付けられる |
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<ref>[https://books.google.co.jp/books?vid=ISBN0543958140&id=tybAuoY18EEC&printsec=&redir_esc=y&hl=ja A.C. Fox-Davies, ''A Complete Guide to Heraldry'' (London 1909)] p273</ref>。クロヴィスの妻、[[ブルグント族]]の[[クロティルダ (フランク王妃)|クロティルダ]](後の聖クロティルダ)は、通常これらの伝説の中で重要な役割を果たしている。夫がキリスト教信者になるのを促しただけではなく、彼女の存在は君主を支持する[[ブルグント王国]]の重要性を強調するのである<ref>[http://www.bl.uk/onlinegallery/themes/euromanuscripts/bedford.html British Library commentary on the legend presented in the Bedford Book of Hours.]</ref>。 |
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キリスト教とフランス王の[[王権神授説|王権神授]]に重きを置かない伝説によれば、クロヴィスはヴイエの戦いで勝利を収める直前に花をかぶとに置いたといい、そこからフルール・ド・リスを王家の象徴に選んだという<ref>[http://www.heraldica.org/topics/fdl.htm François R. Velde]</ref>。 |
キリスト教とフランス王の[[王権神授説|王権神授]]に重きを置かない伝説によれば、クロヴィスはヴイエの戦いで勝利を収める直前に花をかぶとに置いたといい、そこからフルール・ド・リスを王家の象徴に選んだという<ref>[http://www.heraldica.org/topics/fdl.htm François R. Velde]</ref>。 |
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この言い伝えは現在まで流布しており、たとえ17世紀に懐疑論が起こり、現代の学識が「フルール・ド・リスは紋章の図像となる以前は宗教的な意匠であった」と確認したとしても、それは変わらない<ref>Michel Pastoureau, ''Heraldry: its origins and meaning'' p.99-100</ref>。 |
この言い伝えは現在まで流布しており、たとえ17世紀に懐疑論が起こり、現代の学識が「フルール・ド・リスは紋章の図像となる以前は宗教的な意匠であった」と確認したとしても、それは変わらない<ref>Michel Pastoureau, ''Heraldry: its origins and meaning'' p.99-100</ref>。 |
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実際のユリの花とともにフルール・ド・リスは[[聖母マリア]]と関連付けられ、12世紀には[[ルイ6世 (フランス王)|ルイ6世]]や[[ルイ7世 (フランス王)|ルイ7世]]が[[笏]]などで紋章に使い始め、自らの[[主権]]と[[聖人]]の象徴とを結びつけようとした。ルイ7世は[[1179年]]、息子の[[フィリップ2世 (フランス王)|フィリップ2世]]の[[即位式]]の際、フルール・ド・リスの衣服の使用を命じているが<ref> |
実際のユリの花とともにフルール・ド・リスは[[聖母マリア]]と関連付けられ、12世紀には[[ルイ6世 (フランス王)|ルイ6世]]や[[ルイ7世 (フランス王)|ルイ7世]]が[[笏]]などで紋章に使い始め、自らの[[主権]]と[[聖人]]の象徴とを結びつけようとした。ルイ7世は[[1179年]]、息子の[[フィリップ2世 (フランス王)|フィリップ2世]]の[[即位式]]の際、フルール・ド・リスの衣服の使用を命じているが<ref>Fox-Davies, ''A Complete Guide to Heraldry'' p274</ref>、フルール・ド・リスの使用が初めて目に見える形で確認できるのは[[1211年]]のことになる。それは、のちの[[ルイ7世 (フランス王)|ルイ7世]]とその保護者を表す[[親展|封蝋]]で、「花」がちりばめられている |
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<ref>Michel Pastoureau, ''Heraldry: its origins and meaning'' p.100</ref>。 |
<ref name="Michel Pastoureau p.100">Michel Pastoureau, ''Heraldry: its origins and meaning'' p.100</ref>。 |
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14世紀後半まで、フランス王家の紋章はフランス語で「''D'azur semé de fleurs de lis d'or''」という、金色の小さなフルール・ド・リスを撒いた青い盾であったが、[[シャルル5世 (フランス王)|シャルル5世]]は1376年頃、フルール・ド・リスを全体に散らしたものからフルール・ド・リス3つのデザインに変更した。{{要出典範囲|date=2010年12月|これら2つの紋章はそれぞれ「France Ancient」(古フランス)「France Modern」(近代フランス)という[[符牒]]で呼ばれる}}。 |
14世紀後半まで、フランス王家の紋章はフランス語で「{{lang|fr|''D'azur semé de fleurs de lis d'or''}}」という、金色の小さなフルール・ド・リスを撒いた青い盾であったが、[[シャルル5世 (フランス王)|シャルル5世]]は1376年頃、フルール・ド・リスを全体に散らしたものからフルール・ド・リス3つのデザインに変更した。{{要出典範囲|date=2010年12月|これら2つの紋章はそれぞれ「{{lang|fr|France Ancient}}」(古フランス)「{{lang|fr|France Modern}}」(近代フランス)という[[符牒]]で呼ばれる}}。 |
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[[Image:Grand Royal Coat of Arms of France.svg|thumb|130px|right|ブルボン家の紋章]] |
[[Image:Grand Royal Coat of Arms of France.svg|thumb|130px|right|ブルボン家の紋章]] |
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[[ルイ9世 (フランス王)|ルイ9世]](聖王ルイ)の時代、3つの花びらは信頼、知恵、[[騎士道]]精神を意味し、フランスに授けられた神のしるしだと言われた<ref>''Chronicles'' of Guillaume de Nangis quoted in [ |
[[ルイ9世 (フランス王)|ルイ9世]](聖王ルイ)の時代、3つの花びらは信頼、知恵、[[騎士道]]精神を意味し、フランスに授けられた神のしるしだと言われた<ref>''Chronicles'' of Guillaume de Nangis quoted in [https://books.google.co.jp/books?vid=049MrH9r-Fb5jsl6kC&id=LvAJAAAAIAAJ&dq=&redir_esc=y&hl=ja ''Nouvelle collection des mémoires pour servir a l'histoire de France''] (1839)]</ref>。次の14世紀には[[三位一体|聖三位一体]]を象徴することがフランスで伝統になり、他へ広がっていった。 |
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[[1328年]]、[[イングランド王国|イングランド]]の[[エドワード3世 (イングランド王)|エドワード3世]]はフランス王位継承を主張し、[[1340年]]に「France Ancient」を[[イギリスの国章|国章]]に[[クォータリング]]した[https://web.archive.org/web/20071227091124/http://ww2.enjoy.ne.jp/~tteraoka/heraldry/heraldry1.htm#5m]。フランス王が「France Modern」を採用した後、[[1411年]]頃からイングランド王はそれを模倣した<ref>Fox-Davies</ref>。[[百年戦争]]によってイングランド王家はフランスにおける領土を失ったが、イングランド(のちには[[グレートブリテン王国]])の君主は、[[1811年]]に[[ジョージ3世 (イギリス王)|ジョージ3世]]がフランス王位に対する正式な要求をあきらめるまで、フランスの紋章をクォータリングし続けた。 |
[[1328年]]、[[イングランド王国|イングランド]]の[[エドワード3世 (イングランド王)|エドワード3世]]はフランス王位継承を主張し、[[1340年]]に「{{lang|fr|France Ancient}}」を[[イギリスの国章|国章]]に[[クォータリング]]した [https://web.archive.org/web/20071227091124/http://ww2.enjoy.ne.jp/~tteraoka/heraldry/heraldry1.htm#5m]。フランス王が「{{lang|fr|France Modern}}」を採用した後、[[1411年]]頃からイングランド王はそれを模倣した<ref>Fox-Davies</ref>。[[百年戦争]]によってイングランド王家はフランスにおける領土を失ったが、イングランド(のちには[[グレートブリテン王国]])の君主は、[[1811年]]に[[ジョージ3世 (イギリス王)|ジョージ3世]]がフランス王位に対する正式な要求をあきらめるまで、フランスの紋章をクォータリングし続けた。 |
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[[シャルル7世 (フランス王)|シャルル7世]]は1429年12月29日、[[ジャンヌ・ダルク]]の家族を貴族に叙し、代々引き継ぐことのできる象徴的呼称を与えた。1430年1月20日、フランスの[[紋章院]]は、家族の称号を貴族に登録している。 |
[[シャルル7世 (フランス王)|シャルル7世]]は1429年12月29日、[[ジャンヌ・ダルク]]の家族を貴族に叙し、代々引き継ぐことのできる象徴的呼称を与えた。1430年1月20日、フランスの[[紋章院]]は、家族の称号を貴族に登録している。 |
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下賜により彼らの姓は「du Lys」(ユリの)に変わった。 |
下賜により彼らの姓は「{{lang|fr|du Lys}}」(ユリの)に変わった。 |
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「France Modern」はフランス王旗であり続け、[[フランス革命]]までは白い背景の旗がフランスの国旗であった。革命時に今日の[[フランスの国旗]]に変更されたのである。フルール・ド・リスは[[1814年]]に再びフランスの旗に戻されたが、[[1830年]]の[[フランス7月革命|7月革命]]後、みたび変更された。[[フランス第二帝政]]終焉後の非常に奇妙な成り行きの中、旗は明らかに歴史の動きに影響した。[[アンリ・ダルトワ|シャンボール伯アンリ]]はフランス王即位を求められたが、トリコロール旗ではなくフルール・ド・リスの描かれた白い旗に戻すという条件にこだわった<ref>[ |
「{{lang|fr|France Modern}}」はフランス王旗であり続け、[[フランス革命]]までは白い背景の旗がフランスの国旗であった。革命時に今日の[[フランスの国旗]]に変更されたのである。フルール・ド・リスは[[1814年]]に再びフランスの旗に戻されたが、[[1830年]]の[[フランス7月革命|7月革命]]後、みたび変更された。[[フランス第二帝政]]終焉後の非常に奇妙な成り行きの中、旗は明らかに歴史の動きに影響した。[[アンリ・ダルトワ|シャンボール伯アンリ]]はフランス王即位を求められたが、トリコロール旗ではなくフルール・ド・リスの描かれた白い旗に戻すという条件にこだわった<ref>[https://books.google.co.jp/books?vid=ISBN0415066719&id=1VbZMbFw89YC&dq=&redir_esc=y&hl=ja Pierre Goubert, ''The Course of French History'', translator Maarten Ultee, (Routledge 1991) p.267]</ref>。彼の出した条件は拒絶され、結果フランスは[[フランス第三共和政|第三共和政]]を採ったのである。 |
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「France Modern」はまた古いフランス行政区で、[[イル・ド・フランス]]の紋章、たとえば地元憲兵の制服のバッジなどにも見られた。 |
「{{lang|fr|France Modern}}」はまた古いフランス行政区で、[[イル・ド・フランス]]の紋章、たとえば地元憲兵の制服のバッジなどにも見られた。 |
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[[フランス第五共和 |
[[フランス第五共和政]]の初代大統領だった[[シャルル・ドゴール]]はフルール・ド・リスを引き合いに以下のような言葉を残している。 |
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|「フランスはサーベルで築かれた国である。国民の連帯の象徴たるフルール・ド・リスは三つの刃を持つ槍を顕した図にほかならない」<br /> |
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({{lang|fr|La France fut faite à coups d'épée. La fleur de lys, symbole d'unité nationale, n'est que l'image d'un javelot à trois lances.in La France et son armée.}})}} |
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in La France et son armée.)。 |
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[[Image:Royal Arms of the Kingdom of Scotland.svg|thumb|right|90px|スコットランドの紋章]] |
[[Image:Royal Arms of the Kingdom of Scotland.svg|thumb|right|90px|スコットランドの紋章]] |
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⚫ | [[イングランド]]と[[スコットランド]]の[[クラウン・ジュエル]]において、フルール・ド・リスはかなり大きな位置を占める。前述のようにイングランド王家([[プランタジネット朝]]以降)はフランスの[[ヴァロワ朝]]とフランス王位を争い、イングランドと敵対していたスコットランドは「敵の敵」であるフランス王家の同盟国であった。イギリスの紋章では、フルール・ド・リスはさまざまに使用されており、紋章のシステム([[:en:cadency|cadency]])では6番目の息子の紋章を意味する。花のふち飾り([[トレッシャー|ダブル・トレッシャー・フローリー]]({{lang|en|double [[wiktionary:tressure|tressure]] [[wiktionary:flory|flory]]}})あるいは フローリー・カウンターフローリー({{lang|en|flory [[wiktionary:counterflory|counterflory]]}})は、[[ジェームズ1世 (スコットランド王)|ジェームズ1世]]以来、スコットランド王家の紋章の重要な装飾部である。 |
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[[Image:FlorenceCoA.svg|thumb|left|75px|フィレンツェのユリ]] |
[[Image:FlorenceCoA.svg|thumb|left|75px|フィレンツェのユリ]] |
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⚫ | [[フィレンツェ]]のフルール・ド・リスでは、[[花冠|花びら]]の間に常に[[雄蕊|おしべ]]が配置される。この紋章の図形は「フィレンツェのユリ」としてよく知られており、従来のデザインとは区別される。フィレンツェのフルール・ド・リスは都市の紋章として、今でも司教聖ゼノビウスの像に見られる<ref name="Hall, James 1974 p.124"/>。フィレンツェの通貨[[フローリン金貨]]にはこのフルール・ド・リスが刻まれており、[[ハンガリー]]の[[フォリント]]や他の[[フローリン]]硬貨のデザインや通貨名に影響を与えることになった。イタリアの他の地域では、フルール・ド・リスは[[教皇]]の王冠と紋章、[[パルマ公国]]の[[ファルネーゼ家]]、[[ヴェネツィア]]の総督などによって使用された。 |
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⚫ | [[イングランド]]と[[スコットランド]]の[[クラウン・ジュエル]]において、フルール・ド・リスはかなり大きな位置を占める。前述のようにイングランド王家([[プランタジネット朝]]以降)はフランスの[[ヴァロワ朝]]とフランス王位を争い、イングランドと敵対していたスコットランドは「敵の敵」であるフランス王家の同盟国であった。イギリスの紋章では、フルール・ド・リスはさまざまに使用されており、紋章のシステム([[:en:cadency|cadency]])では6番目の息子の紋章を意味する。花のふち飾り([[トレッシャー|ダブル・トレッシャー・フローリー]] |
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⚫ | [[フィレンツェ]]のフルール・ド・リスでは、[[花冠|花びら]]の間に常に[[雄蕊|おしべ]]が配置される。この紋章の図形は「フィレンツェのユリ」としてよく知られており、従来のデザインとは区別される。フィレンツェのフルール・ド・リスは都市の紋章として、今でも司教聖ゼノビウスの像に見られる<ref |
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フルール・ド・リスは[[ボスニア]]の[[コトロマニッチ家]]の象徴でもあった。コトロマニッチ家は中世[[ボスニア]]の支配者で[[ハンガリー・アンジュー朝|アンジュー家]]の後援を得ていた。ここでは花は[[ボスニア・ヘルツェゴビナ]]原産の[[:en:Lilium bosniacum|ボスニアユリ]]だと考えられている。フルール・ド・リスは1992年から1998年まで[[ボスニア・ヘルツェゴビナの国旗]]に使われた。現在では[[ボシュニャク人]]の民族的な象徴として使われている。 |
フルール・ド・リスは[[ボスニア]]の[[コトロマニッチ家]]の象徴でもあった。コトロマニッチ家は中世[[ボスニア]]の支配者で[[ハンガリー・アンジュー朝|アンジュー家]]の後援を得ていた。ここでは花は[[ボスニア・ヘルツェゴビナ]]原産の[[:en:Lilium bosniacum|ボスニアユリ]]だと考えられている。フルール・ド・リスは1992年から1998年まで[[ボスニア・ヘルツェゴビナの国旗]]に使われた。現在では[[ボシュニャク人]]の民族的な象徴として使われている。 |
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フルール・ド・リスを紋章に使用している国には他に、13世紀[[ネマニッチ家]]のステファン・ウロシュ1世、[[ハンガリー・アンジュー朝|アンジュー家]]のヘレネ・ダンジュー姫との結婚以降の[[セルビア王国 (中世)|セルビア王国]]、[[ブルボン家]]の承認を受けた[[スペイン]]がある。--> |
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フルール・ド・リスは紋章としてさらに広まった。フルール・ド・リスを象徴として使用している都市のうち、「lily」にちなんだ都市名を使用しているところもある。例として、フランスの[[リール (フランス)|リール]]、[[フィンランド]]の[[リリエンダール|リリェンダール]] |
フルール・ド・リスは紋章としてさらに広まった。フルール・ド・リスを象徴として使用している都市のうち、「{{lang|en|lily}}」にちなんだ都市名を使用しているところもある。例として、フランスの[[リール (フランス)|リール]]、[[フィンランド]]の[[リリエンダール|リリェンダール]]({{lang|fi|Liljendahl}})がある。ユリにちなんだ地名の都市の紋章にユリの図柄を使うことを、[[紋章学]]の用語では「[[:en:canting arms|カンティング]]」と呼んでいる。 |
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またその他、フルール・ド・リスは王朝の象徴として広く使われただけではなく、貴族に限らず例えば中世の銀行家[[フッガー家]]によっても使われた。 |
またその他、フルール・ド・リスは王朝の象徴として広く使われただけではなく、貴族に限らず例えば中世の銀行家[[フッガー家]]によっても使われた。 |
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[[Image:Flag of Quebec.svg|thumb|left|90px|ケベック]] |
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フルール・ド・リスは[[新世界]]に向かうヨーロッパ人、特にフランス人移民と共に[[大西洋]]を横断した。現在は[[ケベック州]]、[[ノバスコシア州]]、デトロイトほかの地で使われている。[[アケイディアナ]]地域と南[[ルイジアナ州|ルイジアナ]]の多くの都市、例えば[[ニューオーリンズ]]や[[バトンルージュ]]でも、フルール・ド・リスを使用している。同様に、フランス王ルイの名を由来とする地がいくつかある。例えば[[ケンタッキー州]]の[[ルイヴィル]]、[[ミズーリ州]]の[[セントルイス]]などでは、3弁の花びらが3つの川([[ミシシッピ |
フルール・ド・リスは[[新世界]]に向かうヨーロッパ人、特にフランス人移民と共に[[大西洋]]を横断した。現在は[[ケベック州]]、[[ノバスコシア州]]、デトロイトほかの地で使われている。[[アケイディアナ]]地域と南[[ルイジアナ州|ルイジアナ]]の多くの都市、例えば[[ニューオーリンズ]]や[[バトンルージュ]]でも、フルール・ド・リスを使用している。同様に、フランス王ルイの名を由来とする地がいくつかある。例えば[[ケンタッキー州]]の[[ルイビル (ケンタッキー州)|ルイヴィル]]、[[ミズーリ州]]の[[セントルイス]]などでは、3弁の花びらが3つの川([[ミシシッピ川]]、[[ミズーリ川]]、[[イリノイ川]])の収束をも意味している。 |
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== 宗教と芸術における象徴性 == |
== 宗教と芸術における象徴性 == |
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[[Image:Albarello fleur-de-lys Louvre UCAD4288.jpg|thumb|right|150px|14世紀にシリアで作られた[[wiktionary:albarello|アルバレロ]]のフルール・ド・リス]] |
[[Image:Albarello fleur-de-lys Louvre UCAD4288.jpg|thumb|right|150px|14世紀にシリアで作られた[[wiktionary:albarello|アルバレロ]]のフルール・ド・リス]] |
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中世、ユリの図像とフルール・ド・リスは、宗教芸術の分野では重なる部分が多い。歴史家のミシェル・パストローによれば、1300年頃までユリは[[イエス・キリスト]]を象徴していたが、次第に[[聖母マリア]]のシンボルへと変化して、マリアに言及した[[雅歌|ソロモンの雅歌]]「lilium inter spinas」(いばらのユリ)と関連付けられるようになった。 |
中世、ユリの図像とフルール・ド・リスは、宗教芸術の分野では重なる部分が多い。歴史家のミシェル・パストローによれば、1300年頃までユリは[[イエス・キリスト]]を象徴していたが、次第に[[聖母マリア]]のシンボルへと変化して、マリアに言及した[[雅歌|ソロモンの雅歌]]「{{lang|la|lilium inter spinas}}」(いばらのユリ)と関連付けられるようになった。 |
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他の聖句や宗教文学の中でユリが純潔と貞節を象徴するとされたことも、この花が[[図像学]]上、聖母マリアの[[アトリビュート]]として確立されるのを助けた。 |
他の聖句や宗教文学の中でユリが純潔と貞節を象徴するとされたことも、この花が[[図像学]]上、聖母マリアの[[アトリビュート]]として確立されるのを助けた。 |
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中世イングランドでは12世紀中頃から、貴婦人の[[印章]]にフルール・ド・リスと女性の像がしばしば見られるようになった。これは聖母マリアを暗示し、「女性の純潔と崇高」を表す<ref>Susan M. Johns, ''Noblewomen, Aristocracy and Power in the Twelfth-Century Anglo-Norman Realm'' (Manchester 2003) p130 |
中世イングランドでは12世紀中頃から、貴婦人の[[印章]]にフルール・ド・リスと女性の像がしばしば見られるようになった。これは聖母マリアを暗示し、「女性の純潔と崇高」を表す<ref>Susan M. Johns, ''Noblewomen, Aristocracy and Power in the Twelfth-Century Anglo-Norman Realm'' (Manchester 2003) p130</ref>。花を携えた聖母マリアの像が最初に現れたのは11世紀、彼女に捧げられた大聖堂が発行したコインの模様である。次いで1146年、[[ノートルダム大聖堂 (パリ)|ノートルダム大聖堂]]を皮切りに、大聖堂の司教座聖堂参事会の印章に現れている。通常の描写では、聖母マリアは右手に花を持っている。ノートルダム大聖堂の聖母像はユリを手にしており、大聖堂中央入り口の上、[[バラ窓]]の[[ステンドグラス]]中央にフルール・ド・リスの笏を持つ聖母が見られる。 |
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花は「シンプルな花型 |
花は「シンプルな花型({{lang|en|fleurons}})、あるいは園芸用のユリ、あるいはフルール・ド・リスの紋章」<ref name="Michel Pastoureau p.100"/>の場合もある。それらの花は聖母マリアの象徴として、しばしば[[受胎告知]]の絵に現れる。[[サンドロ・ボッティチェッリ|ボッティチェッリ]]や[[フィリッポ・リッピ]]などの絵が有名である。リッピはまた両方の花を違った関係(「森の聖母」({{lang|en|Madonna in the Forest}}))でも描いている。 |
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紋章の3枚の花びらの意匠は、[[三位一体]]<ref>[ |
紋章の3枚の花びらの意匠は、[[三位一体]]<ref>[https://books.google.com/books?vid=ISBN0766140091&id F.R.Webber, ''Church Symbolism 1938'' (Kessinger 2003) p.178]</ref>との広範囲にわたる関わりを反映している。この考え方は14世紀フランスまで遡り<ref name="Michel Pastoureau p.99"/>、信頼、知恵、騎士道精神を表すという初期の考え方に付加された。 |
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「光の花」の象徴は時折、「fleur-de-luce」の古語から来たと理解される。[[ラテン語]]の「[[ルクス|lux]] |
「光の花」の象徴は時折、「{{lang|fr|fleur-de-luce}}」の古語から来たと理解される。[[ラテン語]]の「{{lang|la|[[ルクス|lux]], luc-}}」は「光」を意味するためである。しかし[[オックスフォード英語辞典]]は、これが[[語源]]からではなく、綴りから生じたことを示唆している<ref>A "fanciful derivation", ''Oxford English Dictionary '' (1989)</ref>。 |
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== Architecture == |
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<!--The US Navy [[Blue Angels]] have named an elegant looping flight demonstration manoeuver after the flower as well, and there are even two surgical procedures called "after the fleur." |
<!--The US Navy [[Blue Angels]] have named an elegant looping flight demonstration manoeuver after the flower as well, and there are even two surgical procedures called "after the fleur." |
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=== スカウティングの象徴 === |
=== スカウティングの象徴 === |
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⚫ | [[ボーイスカウト]][[世界スカウト機構|活動組織]]のほとんどで、フルール・ド・リスはスカウト活動の主なテーマ、すなわち戸外と自然を表すロゴの重要な要素となっている<ref>Walton, Mike [http://www.mninter.net/~blkeagle/crest.htm The World Crest Badge...(and why do we *all* wear it?)] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20071010150721/http://www.mninter.net/~blkeagle/crest.htm |date=2007年10月10日 }}. 1999.</ref>。3枚の花びら(もしくは葉)は、スカウトの3つの誓い(神と王、あるいは神と国への忠誠、他への協力、スカウトの掟の遵守)を表す。同様に、トレフォイル([[:en:trefoil|trefoil]])の3枚の葉は、ガイドの3つの誓いを意味する。方位図([[羅針図]])では、[[フラヴィオ・ジョイア]](Flavio Gioja)以来の伝統により、北方向を表示する印としてもフルール・ド・リスがしばしば使用される。スカウティングの提唱者[[ロバート・ベーデン=パウエル] |
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[[Image:WikiProject Scouting fleur-de-lis dark.svg|thumb|right|200px|[[ロバート・ベーデン=パウエル|ベーデン=パウエル]]によるスカウティングのシンボル]] |
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⚫ | [[ボーイスカウト]][[世界スカウト機構|活動組織]]のほとんどで、フルール・ド・リスはスカウト活動の主なテーマ、すなわち戸外と自然を表すロゴの重要な要素となっている<ref>Walton, Mike [http://www.mninter.net/~blkeagle/crest.htm The World Crest Badge...(and why do we *all* wear it?)] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20071010150721/http://www.mninter.net/~blkeagle/crest.htm |date=2007年10月10日 }}. 1999.</ref>。3枚の花びら(もしくは葉)は、スカウトの3つの誓い(神と王、あるいは神と国への忠誠、他への協力、スカウトの掟の遵守)を表す。同様に、トレフォイル([[:en:trefoil|trefoil]])の3枚の葉は、ガイドの3つの誓いを意味する。方位図([[羅針図]])では、[[フラヴィオ・ジョイア]](Flavio Gioja)以来の伝統により、北方向を表示する印としてもフルール・ド・リスがしばしば使用される。スカウティングの提唱者[[ロバート・ベーデン=パウエル]]は、「フルール・ド・リスは左右に振れることなく常に正しい方向を指し示し、これに従えば必ず戻ってくることができる」としてシンボルに採用したという<ref>[http://www.pinetreeweb.com/bp-varsity10-1.htm explained]による説明より</ref>。 |
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== 文学 == |
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フルール・ド・リスは、現代の[[フィクション]]に歴史的、神秘的なテーマ性を付与している。例えば、ベストセラー小説「[[ダ・ヴィンチ・コード]]」や、[[シオン修道会]]について述べた他の作品などに顕著である。しかし、[[フランス文学]]ではつとに繰り返し現れているもので、著名なものに[[ヴィクトル・ユーゴー]]の「[[ノートルダム・ド・パリ]]」、[[アレクサンドル・デュマ・ペール|デュマ]]の「[[三銃士]]」などがあり、犯罪者にフルール・ド・リスの[[烙印]]を押すという古い習慣(フランス語で |
フルール・ド・リスは、現代の[[フィクション]]に歴史的、神秘的なテーマ性を付与している。例えば、ベストセラー小説「[[ダ・ヴィンチ・コード]]」や、[[シオン修道会]]について述べた他の作品などに顕著である。しかし、[[フランス文学]]ではつとに繰り返し現れているもので、著名なものに[[ヴィクトル・ユーゴー]]の「[[ノートルダム・ド・パリ]]」、[[アレクサンドル・デュマ・ペール|デュマ]]の「[[三銃士]]」などがあり、犯罪者にフルール・ド・リスの[[烙印]]を押すという古い習慣(フランス語で {{lang|fr|Fleurdeliser}})が出てくる。[[エリザベス朝]]の[[イギリス文学|イングランド文学]]では、アイリスの名として何世紀も使われ続けてきた<ref>OED</ref>が、時折ユリや他の花にも言及する。 |
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It also appeared in the novel [[A Confederacy of Dunces]] by [[John Kennedy Toole]] on a sign composed by the main character. |
It also appeared in the novel [[A Confederacy of Dunces]] by [[John Kennedy Toole]] on a sign composed by the main character. |
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<!--よく分からなくて訳せません--> |
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|{{lang|en|The lilly, Ladie of the flowring field,<br />The Flowre-deluce, her louely Paramoure}}<br /> |
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:百合、花咲くの野の貴婦人 |
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* フランスの[[ファッションデザイナー]]、[[イヴ・サン=ローラン]]がそのファッションデザインに用いていることで知られている。 |
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⚫ | * コンピュータゲーム「[[キングダム ハーツII]]」では、「Valor Form」の[[ソラ (キングダム ハーツ)|ソラ]]にフルール・ド・リスがつく。また「[[ヒットマン (ゲーム)|ヒットマン]]」では、シリーズ・シンボルはフルール・ド・リスの変型である。[[ウォーハンマー (ミニチュアゲーム)|ウォーハンマー]]シリーズの「ウォーハンマー 40,000」では「アデプタ・ソロリタス」に、「ウォーハンマー:ファンタジーバトル」では「ブレトニス王国」のシンボルに使われている。「[[セインツロウ]]」では、主人公の所属するストリートギャング「サード・ストリート・セインツ」のシンボルマークに、紫色のフルール・ド・リスが使われている。 |
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The album cover [[Audit in Progress]] by the the San Diego band [[Hot Snakes]] has a fleurs-de-lis as one of the images. |
The album cover [[Audit in Progress]] by the the San Diego band [[Hot Snakes]] has a fleurs-de-lis as one of the images. |
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* [[フィンランド]]の[[ヘヴィメタル]]バンド、[[ストラトヴァリウス]]はシンボルにフルール・ド・リスを用いている。 |
* [[フィンランド]]の[[ヘヴィメタル]]バンド、[[ストラトヴァリウス]]はシンボルにフルール・ド・リスを用いている。 |
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⚫ | * コンピュータゲーム「[[キングダム ハーツII]]」では、「Valor Form」の[[ソラ (キングダム ハーツ)|ソラ]]にフルール・ド・リスがつく。また「[[ヒットマン (ゲームシリーズ)|ヒットマン]]」では、シリーズ・シンボルはフルール・ド・リスの変型である。[[ウォーハンマー (ミニチュアゲーム)|ウォーハンマー]]シリーズの「ウォーハンマー 40,000」では「アデプタ・ソロリタス」に、「ウォーハンマー:ファンタジーバトル」では「ブレトニス王国」のシンボルに使われている。「[[セインツロウ]]」では、主人公の所属するストリートギャング「サード・ストリート・セインツ」のシンボルマークに、紫色のフルール・ド・リスが使われている。 |
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⚫ | * [[キリスト教主義学校]]である[[学校法人立教学院|立教学院]]では[[1932年]]から学内のキリスト教団体でフルール・ド・リスが使われ始め、[[2009年]]に[[校章]]に次ぐセカンダリー・シンボルとして位置づけられた<ref>{{Cite web|和書|url = https://www.rikkyogakuin.jp/about/symbol.html|title = シンボルマーク|work = [https://www.rikkyogakuin.jp/ 学校法人 立教学院ウェブサイト]|publisher = 学校法人立教学院|accessdate = 2022年12月8日}}</ref>。 |
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。[[File:東北学院 ユリの紋章.jpg |thumb|right|250px| ユリの紋章 東北学院]] |
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⚫ | * キリスト教主義学校である[[明治学院大学|明治学院]]、[[青山学院大学|青山学院]]、立教学院、[[横須賀学院]]、[[東北学院大学|東北学院]]は昭和初期から中期以降、学生団体等、主に体育会の紋章(マーク)として使用している<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.tohoku-gakuin.ac.jp/info/top/161224-3.html|title=東北学院大学体育会徽章の歴史について|publisher=[[東北学院大学]]|date=2016-12-24|accessdate=2019-09-05}}</ref>{{信頼性要検証|date=2023-03}}。 |
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[[File:青山學院 ユリの紋章.jpg |thumb|right|250px| ユリの紋章 青山学院]] |
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[[File:明治学院 ユリの紋章1.jpg |thumb|right|130px| ユリの紋章 明治学院]] |
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[[File:明治学院 ユリの紋章2.jpg |thumb|right|150px| ユリの紋章 明治学院]] |
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[[File:立教大学 ユリの紋章 昭和中期.jpg |120px|thumb|ユリの紋章 立教]] |
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[[File:立教 ユリの紋章 昭和後期.jpg |250px|thumb|ユリの紋章 立教]] |
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== 外部リンク == |
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2023年12月23日 (土) 14:26時点における最新版
フルール・ド・リス(仏: fleur-de-lis もしくは fleur-de-lys)は、アヤメ(アイリス)の花を様式化した意匠を指す。特に紋章の場合は政治的、王権的、芸術的、表象的、象徴的な意味をも持つが、現代においてもフランスに関わる政治的・表象的・象徴的意味合いが強い[1]。
概要[編集]
fleur-de-lis の直訳は「ユリの花」であるが、ここに言う「ユリ」は一般的な「ユリ」(ユリ科ユリ属)ではなく、ユリ目に属するとされたアヤメ科アヤメ属のキショウブ(Iris pseudacorus)やニオイイリス(Iris florentina)といった花を指すとされる。
fleur-de-lis は、フランス語では[flœʁ də lis](フルールドゥリス)と発音するのが一般的だが、[flœʁ də li](フルールドゥリ)と語尾を発音しないとする例も見られる[2]。英語では[ˌfləːrdˈliː](フラードゥリー)と発音する[注 1]。
フルール・ド・リスはヨーロッパの紋章や旗に何世紀にもわたり数多く見られるが、歴史的には特にフランス王家と関係が深く、またブルボン家の一員であるスペイン王家やルクセンブルク大公家も現在でも紋章に使用し続けている。フルール・ド・リスはフランスの切手などにも使用される継続的なフランスの象徴であるが、共和国としてのフランスはフルール・ド・リスを公式には特に採用しなかった。
北アメリカでは、フルール・ド・リスはルイジアナ、ケベック、他のカナダの州のフランス語圏など、かつてヌーベルフランス(フランス入植地)であった地で使用されていることが多い。
また、イタリア・フィレンツェや、スイス・チューリッヒ州シュリーレンの紋章にも使用されている。
フルール・ド・リスはまた軍隊の記章やさまざまな組織のロゴに見られ、20世紀には世界各国のボーイスカウト・ガールスカウトの組織に採用され、バッジになった。
第二次世界大戦でのナチス・ドイツ武装親衛隊においてはフランス人義勇兵で編成された第33SS武装擲弾兵師団(通称「シャルルマーニュ」)が部隊章として用いた。
建築家やデザイナーはフルール・ド・リスを、単独あるいは背景模様に繰り返して、特にフランスにちなんだものの場合、鉄製品から製本までさまざまに使用することがある。宗教的には聖三位一体の象徴であり、また特に受胎告知の場面では大天使ガブリエルを象徴する図像となっている[3]。このようにフルール・ド・リスは聖母マリアとも関連がある。
起源[編集]
「Fleur-de-lis」とはフランス語で「アヤメの花」を意味し、アイリスの一種を様式化したものだと広く考えられている。フルール・ド・リスを思わせる装飾品は、文明のごく初期から工芸に現れている。
装飾的あるいは象徴的に用いられる、様式化された花は通常フルール・ド・リスと呼ばれ、全ての時代と文明に共通して見られる。基本的な図式的主題であり、メソポタミアの円筒印章、エジプトの浅浮き彫り、ミケーネ文明の陶器、サーサーン朝の織物、ガリアの硬貨、マムルーク朝の硬貨、インドネシアの衣類、日本の紋章やドゴン族のトーテムにも見られる。
これについて議論した多くの著者は、フルール・ド・リスが図式的にユリではないことに同意したが、その由来がアイリスか、エニシダか、ハスか、ハリエニシダから来るのか、その形が三叉の矛か、矢じりか、両刃斧か、あるいはハトを表すのかといった点では合意に至らなかった。このことはたいした問題ではない、というのが我々の意見である。重要なのはフルール・ド・リスが、おそらく花を非常に様式化した図形であり、新旧の世界でほとんど全ての文明によって装飾や紋章として使われてきた点である[4]。
フルール・ド・リスは一貫して王家の象徴として使われてきたが、異文化によってその意味はさまざまに解釈されている。 近代のフルール・ド・リスに近い意匠が最初に見られたのは、ガリアのコインである[5]。
王権の象徴[編集]
クロヴィス1世[編集]
伝説によれば493年、メロヴィング朝のクローヴィス1世がキリスト教への改宗に際し、フランスの君主で最初にフルール・ド・リスを王家の紋章に採用して宗教的純血の象徴とした[6]。伝説は様々な形をとっており、その多くはクロヴィス王の改宗に関連したものであった。これらの伝説は、「フランス王の権威は皇帝や教皇の審議なしで直接神から授かったものであり、フランス王家は聖別されている」という主張を裏書するものとなった。
伝説のいくつかは、クロヴィス王を聖別するために天からもたらされた聖油の壺について記述しており、王族の神秘性を強めている[7]。これはおそらく、ハトが聖レミギウスのところに運んだものである。別の伝説によれば、クロヴィスの洗礼式に聖母マリアが現れ、祝福の贈り物としてユリを与えたという。聖母マリアは、しばしば花と関連付けられる [8]。クロヴィスの妻、ブルグント族のクロティルダ(後の聖クロティルダ)は、通常これらの伝説の中で重要な役割を果たしている。夫がキリスト教信者になるのを促しただけではなく、彼女の存在は君主を支持するブルグント王国の重要性を強調するのである[9]。
キリスト教とフランス王の王権神授に重きを置かない伝説によれば、クロヴィスはヴイエの戦いで勝利を収める直前に花をかぶとに置いたといい、そこからフルール・ド・リスを王家の象徴に選んだという[10]。
フランク時代からのフランス王権[編集]
このクロヴィスとの関係から、フルール・ド・リスはすべてのキリスト教徒のフランス王を象徴するようになったが、なかでも有名なのがシャルルマーニュ(カール大帝)である。14世紀のフランスの著述家の主張によれば、西フランク王国から発展したフランスの君主はその伝統を、クロヴィスが神から授けられた王家の紋章の贈り物にまで遡ることができるという。
この言い伝えは現在まで流布しており、たとえ17世紀に懐疑論が起こり、現代の学識が「フルール・ド・リスは紋章の図像となる以前は宗教的な意匠であった」と確認したとしても、それは変わらない[11]。
実際のユリの花とともにフルール・ド・リスは聖母マリアと関連付けられ、12世紀にはルイ6世やルイ7世が笏などで紋章に使い始め、自らの主権と聖人の象徴とを結びつけようとした。ルイ7世は1179年、息子のフィリップ2世の即位式の際、フルール・ド・リスの衣服の使用を命じているが[12]、フルール・ド・リスの使用が初めて目に見える形で確認できるのは1211年のことになる。それは、のちのルイ7世とその保護者を表す封蝋で、「花」がちりばめられている [13]。
14世紀後半まで、フランス王家の紋章はフランス語で「D'azur semé de fleurs de lis d'or」という、金色の小さなフルール・ド・リスを撒いた青い盾であったが、シャルル5世は1376年頃、フルール・ド・リスを全体に散らしたものからフルール・ド・リス3つのデザインに変更した。これら2つの紋章はそれぞれ「France Ancient」(古フランス)「France Modern」(近代フランス)という符牒で呼ばれる[要出典]。
ルイ9世(聖王ルイ)の時代、3つの花びらは信頼、知恵、騎士道精神を意味し、フランスに授けられた神のしるしだと言われた[14]。次の14世紀には聖三位一体を象徴することがフランスで伝統になり、他へ広がっていった。
1328年、イングランドのエドワード3世はフランス王位継承を主張し、1340年に「France Ancient」を国章にクォータリングした [1]。フランス王が「France Modern」を採用した後、1411年頃からイングランド王はそれを模倣した[15]。百年戦争によってイングランド王家はフランスにおける領土を失ったが、イングランド(のちにはグレートブリテン王国)の君主は、1811年にジョージ3世がフランス王位に対する正式な要求をあきらめるまで、フランスの紋章をクォータリングし続けた。
シャルル7世は1429年12月29日、ジャンヌ・ダルクの家族を貴族に叙し、代々引き継ぐことのできる象徴的呼称を与えた。1430年1月20日、フランスの紋章院は、家族の称号を貴族に登録している。 下賜により彼らの姓は「du Lys」(ユリの)に変わった。
「France Modern」はフランス王旗であり続け、フランス革命までは白い背景の旗がフランスの国旗であった。革命時に今日のフランスの国旗に変更されたのである。フルール・ド・リスは1814年に再びフランスの旗に戻されたが、1830年の7月革命後、みたび変更された。フランス第二帝政終焉後の非常に奇妙な成り行きの中、旗は明らかに歴史の動きに影響した。シャンボール伯アンリはフランス王即位を求められたが、トリコロール旗ではなくフルール・ド・リスの描かれた白い旗に戻すという条件にこだわった[16]。彼の出した条件は拒絶され、結果フランスは第三共和政を採ったのである。 「France Modern」はまた古いフランス行政区で、イル・ド・フランスの紋章、たとえば地元憲兵の制服のバッジなどにも見られた。
フランス第五共和政の初代大統領だったシャルル・ドゴールはフルール・ド・リスを引き合いに以下のような言葉を残している。
「フランスはサーベルで築かれた国である。国民の連帯の象徴たるフルール・ド・リスは三つの刃を持つ槍を顕した図にほかならない」
(La France fut faite à coups d'épée. La fleur de lys, symbole d'unité nationale, n'est que l'image d'un javelot à trois lances.in La France et son armée.)
他のヨーロッパの王朝と統治者[編集]
イングランドとスコットランドのクラウン・ジュエルにおいて、フルール・ド・リスはかなり大きな位置を占める。前述のようにイングランド王家(プランタジネット朝以降)はフランスのヴァロワ朝とフランス王位を争い、イングランドと敵対していたスコットランドは「敵の敵」であるフランス王家の同盟国であった。イギリスの紋章では、フルール・ド・リスはさまざまに使用されており、紋章のシステム(cadency)では6番目の息子の紋章を意味する。花のふち飾り(ダブル・トレッシャー・フローリー(double tressure flory)あるいは フローリー・カウンターフローリー(flory counterflory)は、ジェームズ1世以来、スコットランド王家の紋章の重要な装飾部である。
高貴なるフルール・ド・リス
ジェイムズ王以来かの楯を取り巻く
—サー・ウォルター・スコット、「最後の吟遊詩人の歌」[17]
フィレンツェのフルール・ド・リスでは、花びらの間に常におしべが配置される。この紋章の図形は「フィレンツェのユリ」としてよく知られており、従来のデザインとは区別される。フィレンツェのフルール・ド・リスは都市の紋章として、今でも司教聖ゼノビウスの像に見られる[3]。フィレンツェの通貨フローリン金貨にはこのフルール・ド・リスが刻まれており、ハンガリーのフォリントや他のフローリン硬貨のデザインや通貨名に影響を与えることになった。イタリアの他の地域では、フルール・ド・リスは教皇の王冠と紋章、パルマ公国のファルネーゼ家、ヴェネツィアの総督などによって使用された。
フルール・ド・リスはボスニアのコトロマニッチ家の象徴でもあった。コトロマニッチ家は中世ボスニアの支配者でアンジュー家の後援を得ていた。ここでは花はボスニア・ヘルツェゴビナ原産のボスニアユリだと考えられている。フルール・ド・リスは1992年から1998年までボスニア・ヘルツェゴビナの国旗に使われた。現在ではボシュニャク人の民族的な象徴として使われている。
フルール・ド・リスは紋章としてさらに広まった。フルール・ド・リスを象徴として使用している都市のうち、「lily」にちなんだ都市名を使用しているところもある。例として、フランスのリール、フィンランドのリリェンダール(Liljendahl)がある。ユリにちなんだ地名の都市の紋章にユリの図柄を使うことを、紋章学の用語では「カンティング」と呼んでいる。
またその他、フルール・ド・リスは王朝の象徴として広く使われただけではなく、貴族に限らず例えば中世の銀行家フッガー家によっても使われた。
北アメリカ[編集]
フルール・ド・リスは新世界に向かうヨーロッパ人、特にフランス人移民と共に大西洋を横断した。現在はケベック州、ノバスコシア州、デトロイトほかの地で使われている。アケイディアナ地域と南ルイジアナの多くの都市、例えばニューオーリンズやバトンルージュでも、フルール・ド・リスを使用している。同様に、フランス王ルイの名を由来とする地がいくつかある。例えばケンタッキー州のルイヴィル、ミズーリ州のセントルイスなどでは、3弁の花びらが3つの川(ミシシッピ川、ミズーリ川、イリノイ川)の収束をも意味している。
宗教と芸術における象徴性[編集]
中世、ユリの図像とフルール・ド・リスは、宗教芸術の分野では重なる部分が多い。歴史家のミシェル・パストローによれば、1300年頃までユリはイエス・キリストを象徴していたが、次第に聖母マリアのシンボルへと変化して、マリアに言及したソロモンの雅歌「lilium inter spinas」(いばらのユリ)と関連付けられるようになった。 他の聖句や宗教文学の中でユリが純潔と貞節を象徴するとされたことも、この花が図像学上、聖母マリアのアトリビュートとして確立されるのを助けた。
中世イングランドでは12世紀中頃から、貴婦人の印章にフルール・ド・リスと女性の像がしばしば見られるようになった。これは聖母マリアを暗示し、「女性の純潔と崇高」を表す[18]。花を携えた聖母マリアの像が最初に現れたのは11世紀、彼女に捧げられた大聖堂が発行したコインの模様である。次いで1146年、ノートルダム大聖堂を皮切りに、大聖堂の司教座聖堂参事会の印章に現れている。通常の描写では、聖母マリアは右手に花を持っている。ノートルダム大聖堂の聖母像はユリを手にしており、大聖堂中央入り口の上、バラ窓のステンドグラス中央にフルール・ド・リスの笏を持つ聖母が見られる。 花は「シンプルな花型(fleurons)、あるいは園芸用のユリ、あるいはフルール・ド・リスの紋章」[13]の場合もある。それらの花は聖母マリアの象徴として、しばしば受胎告知の絵に現れる。ボッティチェッリやフィリッポ・リッピなどの絵が有名である。リッピはまた両方の花を違った関係(「森の聖母」(Madonna in the Forest))でも描いている。
紋章の3枚の花びらの意匠は、三位一体[19]との広範囲にわたる関わりを反映している。この考え方は14世紀フランスまで遡り[5]、信頼、知恵、騎士道精神を表すという初期の考え方に付加された。
「光の花」の象徴は時折、「fleur-de-luce」の古語から来たと理解される。ラテン語の「lux, luc-」は「光」を意味するためである。しかしオックスフォード英語辞典は、これが語源からではなく、綴りから生じたことを示唆している[20]。
近代における様相[編集]
近代のフルール・ド・リスの使用には「日常生活における紋章の継続」を反映したものがある。意図的に使用するものもあるが、「何世紀も前の古い記章や象徴を今も使い続けること」に無自覚な場合もある[21]。
フルール・ド・リスは、イスラエル国防軍情報部や第一次世界大戦時のカナダ海外派遣軍のような軍記章で重要な役割を果たす。スポーツ・チームや学校、会社の紋章やロゴにも採択されることもある。フィレンツェのサッカーチームであるACFフィオレンティーナやアメリカンフットボールチームのニューオーリンズ・セインツやルイジアナ・ラファイエット大学のように、地域の旗を反映させた場合には特に多い。 フルール・ド・リスは、あまり伝統的ではない方法で使われることもある。ハリケーン・カトリーナの後、様々な年齢や背景を持つニューオーリンズの人々が嵐の「記念」として、「その文化的紋章のひとつ」を刺青した[22]。
スカウティングの象徴[編集]
ボーイスカウト活動組織のほとんどで、フルール・ド・リスはスカウト活動の主なテーマ、すなわち戸外と自然を表すロゴの重要な要素となっている[23]。3枚の花びら(もしくは葉)は、スカウトの3つの誓い(神と王、あるいは神と国への忠誠、他への協力、スカウトの掟の遵守)を表す。同様に、トレフォイル(trefoil)の3枚の葉は、ガイドの3つの誓いを意味する。方位図(羅針図)では、フラヴィオ・ジョイア(Flavio Gioja)以来の伝統により、北方向を表示する印としてもフルール・ド・リスがしばしば使用される。スカウティングの提唱者ロバート・ベーデン=パウエルは、「フルール・ド・リスは左右に振れることなく常に正しい方向を指し示し、これに従えば必ず戻ってくることができる」としてシンボルに採用したという[24]。
文学[編集]
フルール・ド・リスは、現代のフィクションに歴史的、神秘的なテーマ性を付与している。例えば、ベストセラー小説「ダ・ヴィンチ・コード」や、シオン修道会について述べた他の作品などに顕著である。しかし、フランス文学ではつとに繰り返し現れているもので、著名なものにヴィクトル・ユーゴーの「ノートルダム・ド・パリ」、デュマの「三銃士」などがあり、犯罪者にフルール・ド・リスの烙印を押すという古い習慣(フランス語で Fleurdeliser)が出てくる。エリザベス朝のイングランド文学では、アイリスの名として何世紀も使われ続けてきた[25]が、時折ユリや他の花にも言及する。
The lilly, Ladie of the flowring field,
The Flowre-deluce, her louely Paramoure
百合、花咲くの野の貴婦人
フルール・ド・リス、その美しき秘密の恋人。
その他[編集]
- フランスのファッションデザイナー、イヴ・サン=ローランがそのファッションデザインに用いていることで知られている。
- フィンランドのヘヴィメタルバンド、ストラトヴァリウスはシンボルにフルール・ド・リスを用いている。
- コンピュータゲーム「キングダム ハーツII」では、「Valor Form」のソラにフルール・ド・リスがつく。また「ヒットマン」では、シリーズ・シンボルはフルール・ド・リスの変型である。ウォーハンマーシリーズの「ウォーハンマー 40,000」では「アデプタ・ソロリタス」に、「ウォーハンマー:ファンタジーバトル」では「ブレトニス王国」のシンボルに使われている。「セインツロウ」では、主人公の所属するストリートギャング「サード・ストリート・セインツ」のシンボルマークに、紫色のフルール・ド・リスが使われている。
- 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟するツエーゲン金沢がシンボルマークにフルール・ド・リスを用いている。ただし、ツエーゲンの公式発表によれば、アヤメではなく県の花であるクロユリがモチーフとされている[27]。
- キリスト教主義学校である立教学院では1932年から学内のキリスト教団体でフルール・ド・リスが使われ始め、2009年に校章に次ぐセカンダリー・シンボルとして位置づけられた[28]。
- キリスト教主義学校である明治学院、青山学院、立教学院、横須賀学院、東北学院は昭和初期から中期以降、学生団体等、主に体育会の紋章(マーク)として使用している[29][信頼性要検証]。
ギャラリー[編集]
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モントリオール市の旗
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デトロイト市の旗
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プリンス・オブ・ウェールズのヘラルディック・バッジ
符号位置[編集]
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
---|---|---|---|---|
⚜ | U+269C |
- |
⚜ ⚜ |
FLEUR-DE-LIS |
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 英語での複数形は、fleurが複数化され fleurs-de-lis となるが、発音は[ˌfləːrdəˈliːz](フラーダリーズ)となり、複数化されたfleursの部分の発音は変化せず、綴りが変わっていない語尾の発音が変化するので注意。
出典[編集]
- ^ Michel Pastoureau, Heraldry: its origins and meaning translated by Francisca Garvie (Thames and Hudson 1997), ISBN 0-500-30074-7, p.98
- ^ Trésor de la langue française
- ^ a b Hall, James (1974). Dictionary of Subjects & Symbols in Art. Harper & Row. ISBN 0-06-433316-7. p.124.
- ^ Michel Pastoureau (2006) Traité d'Héraldique, "Treatise on Heraldry", translated by François R. Velde
- ^ a b Michel Pastoureau, Heraldry: its origins and meaning p.99
- ^ Lewis, Philippa & Darley, Gillian (1986) Dictionary of Ornament
- ^ Ralph E. Giesey, Models of Rulership in French Royal Ceremonial in Rites of Power: Symbolism, Ritual, and Politics Since the Middle Ages ed. Wilentz (Princeton 1985) p43
- ^ A.C. Fox-Davies, A Complete Guide to Heraldry (London 1909) p273
- ^ British Library commentary on the legend presented in the Bedford Book of Hours.
- ^ François R. Velde
- ^ Michel Pastoureau, Heraldry: its origins and meaning p.99-100
- ^ Fox-Davies, A Complete Guide to Heraldry p274
- ^ a b Michel Pastoureau, Heraldry: its origins and meaning p.100
- ^ Chronicles of Guillaume de Nangis quoted in Nouvelle collection des mémoires pour servir a l'histoire de France (1839)]
- ^ Fox-Davies
- ^ Pierre Goubert, The Course of French History, translator Maarten Ultee, (Routledge 1991) p.267
- ^ The treasured fleur-de-luce he claims
To wreathe his shield, since royal James
Sir Walter Scott (1833) The Lay of the Last Minstrel , The Complete Works of Sir Walter Scott, Volume 1 of 7, Canto Fourth, VIII, NY: Conner and Cooke - ^ Susan M. Johns, Noblewomen, Aristocracy and Power in the Twelfth-Century Anglo-Norman Realm (Manchester 2003) p130
- ^ F.R.Webber, Church Symbolism 1938 (Kessinger 2003) p.178
- ^ A "fanciful derivation", Oxford English Dictionary (1989)
- ^ Michel Pastoureau, Heraldry: its origins and meaning p.93-94
- ^ according to a researcher at Tulane University , Times-Picayune, July 16 2006 Archived 2009年6月25日, at the Wayback Machine.
- ^ Walton, Mike The World Crest Badge...(and why do we *all* wear it?) Archived 2007年10月10日, at the Wayback Machine.. 1999.
- ^ explainedによる説明より
- ^ OED
- ^ Edmund Spenser, Faerie Queene 2:vi
- ^ “ツエーゲン金沢オフィシャルサイト クラブ紹介”. 2013年4月19日閲覧。
- ^ “シンボルマーク”. 学校法人 立教学院ウェブサイト. 学校法人立教学院. 2022年12月8日閲覧。
- ^ “東北学院大学体育会徽章の歴史について”. 東北学院大学 (2016年12月24日). 2019年9月5日閲覧。
外部リンク[編集]
- Heraldica.org
- Baronage.co.uk
- Paintings of Mary, Gabriel, Annunciation and lilies
- Stained glass Madonna with fleur-de-lis at Notre Dame de Paris