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'''ヒトエグサ'''(一重草、学名:''Monostroma nitidum'')は[[アオサ藻綱]]ヒビミドロ目ヒトエグサ科ヒトエグサ属の[[海藻]]の一種である<ref>[http://www.sourui-koza.com/kisai_bunrui/moku_ryokuso.htm 吉田忠生・嶌田智・吉永一男・中嶋泰 (2005)『日本産海藻目録(2005年改訂版)』 藻類、53:179-228.]では[[緑藻綱]][[アオサ目]]に分類されている。</ref>。また、食用「あおさ」「[[アオノリ|あおのり]]」の殆どはヒトエグサであり、食品として活用されている海藻である<ref>[http://www.aosanori.jp/index.htm 志摩市あおさプロジェクト]2011年6月8日 閲覧</ref>
'''ヒトエグサ'''(一重草、学名:''Monostroma nitidum'')は[[アオサ藻綱]]ヒビミドロ目ヒトエグサ科ヒトエグサ属の[[海藻]]の一種<ref><!-- http://www.sourui-koza.com/kisai_bunrui/moku_ryokuso.htm -->吉田忠生・嶌田智・吉永一男・中嶋泰 (2005)『日本産海藻目録(2005年改訂版)』 藻類、53:179-228. では[[緑藻綱]][[アオサ目]]に分類されている。 {{リンク切れ|date=2018年5月}}</ref>。
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== 特徴 ==
== 特徴 ==
;分布
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日本では[[本州]]の[[太平洋]]沿岸から[[九州]]、[[南西諸島]]に、日本国外では[[朝鮮半島]]、中国南部に分布する。
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;生育環境
;生育環境
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== 利用 ==
== 利用 ==
[[File:Aosa-misoshiru.jpg|thumb|「[[アオサ]]の[[味噌汁]]」として提供されている'''ヒトエグサ'''の味噌汁([[はま寿司]])]]
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[[商品作物]]として、海苔の[[佃煮]]や[[ふりかけ]]の原料などに利用される。生の状態や乾燥食品として流通するものは、[[味噌汁]]や[[お吸い物]]など[[汁物]]の実としたり、[[卵焼き]]に混ぜたり、[[寿司]]ネタにしたり、海藻[[サラダ]]の具にしたりと、様々な家庭料理に活用される。[[沖縄県]]ではアーサと呼び、[[アーサ汁]]や[[天ぷら]]などの材料とされる。


== 生産 ==
== 生産 ==
[[日本]]における生産量が第1位の[[都道府県]]は[[三重県]]であり、全生産量の6〜7割<ref>外部リンク先の記述による。</ref>を占める。[[的矢湾]](伊雑ノ浦)・[[英虞湾]]・[[伊勢湾]]・[[五ヶ所湾]]などが主な産地である。特に全生産量の約3割<ref>志摩市あおさプロジェクト公式ウェブサイト中の記述による。</ref>を占める、的矢湾や英虞湾を擁する[[志摩市]]では「志摩市あおさプロジェクト」([[志摩半島]]ではヒトエグサを指して「あおさ」と呼ぶ)を立ち上げ、ヒトエグサをモチーフにした「あおサ〜」<ref>志摩市の広報紙である『広報しま』の表紙等に利用されている。</ref>という[[ゆるキャラ]]も登場している。
[[日本]]における生産量が第1位の[[都道府県]]は[[三重県]]であり、全生産量の6〜7割<ref>外部リンク先の記述による。</ref>を占める。[[的矢湾]](伊雑ノ浦)・[[英虞湾]]・[[伊勢湾]]・[[五ヶ所湾]]などが主な産地である。特に全生産量の約3割<ref>志摩市あおさプロジェクト公式ウェブサイト中の記述による。</ref>を占める、的矢湾や英虞湾を擁する[[志摩市]]では「志摩市あおさプロジェクト」([[志摩半島]]ではヒトエグサを指して「あおさ」と呼ぶ)を立ち上げ、ヒトエグサをモチーフにした「あおサ〜」<ref>志摩市の広報紙である『広報しま』の表紙等に利用されている。</ref>という[[ゆるキャラ]]も登場している。
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== 分類 ==
== 分類 ==
上述のようにヒトエグサは[[アオサ]]の仲間と混同さることがあるが、アオサとヒトエグサは分類学上[[目 (分類学)|目]]単位で分けられており、アオサの仲間は細胞の層が2層であり、ヒトエグサの手触りがぬるぬると滑っている点でアオサ類と区別ができる。また[[生活環]]も異なっており、ヒトエグサを含む[[ヒビミドロ目]]は[[配偶体]]と[[胞子体]]の大きさや形状が明瞭に異なるのに対し、アオサを含む[[アオサ目]]はそれらの違いがはっきりしない[[同形世代交代]]である<ref>中山剛・井上勲 『アオサ藻綱』 「藻類の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ3」 千原光雄編、裳華房、1999年、279, 282頁、ISBN 4-7853-5826-2。</ref>。
かつて[[アオサ]]に含めらていたが、のちに[[ヒビミドロ目]]に組み入れられた。アオサの仲間の多くは細胞の層が2層であり、ヒトエグサの手触りがぬるぬると滑っている点などで区別ができる。また[[生活環]]も異なっており、ヒトエグサを含むヒビミドロ目は[[配偶体]]と[[胞子体]]の大きさや形状が明瞭に異なるのに対し、アオサを含むアオサ目はそれらの違いがはっきりしない[[同形世代交代]]である<ref>中山剛・井上勲 『アオサ藻綱』 「藻類の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ3」 千原光雄編、裳華房、1999年、279, 282頁、ISBN 4-7853-5826-2。</ref>。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
*[http://soruipc2.bio.mie-u.ac.jp/sourui_photo/chloro/hitoegusa.html 三重大学藻類学研究室] - ヒトエグサの写真
*[http://soruipc2.bio.mie-u.ac.jp/sourui_photo/chloro/hitoegusa.html 三重大学藻類学研究室] - ヒトエグサの写真
*[http://www.satoumi-shima.jp/aosanori/index.htm 志摩市あおさプロジェクト]


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ヒトエグサ
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 植物界 Plantae もしくは

アーケプラスチダ Archaeplastida

亜界 : 緑色植物亜界 Viridiplantae
: 緑藻植物門 Chlorophyta
: アオサ藻綱 Ulvophyceae
: ヒビミドロ目 Ulotrichales
: ヒトエグサ科 Monostromataceae
: ヒトエグサ属 Monostroma
: ヒトエグサ M. nitidum
学名
Monostroma nitidum Wittrock
シノニム

ヒロハノヒトエグサ Monostroma latissimum[1]

和名
ヒトエグサ

ヒトエグサ(一重草、学名:Monostroma nitidum)はアオサ藻綱ヒビミドロ目ヒトエグサ科ヒトエグサ属の海藻の一種[2]

食用とされる「あおさ」「あおのり」の多くは本種であり、食品として広く活用されている海藻である[3]

特徴

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分布

日本では本州太平洋沿岸から九州南西諸島に、日本国外では朝鮮半島中国南部に分布する。

生育環境

冬季から初夏に潮間帯の岩上に生育する。

形態

長さ4-10cmの葉状の緑藻。植物体が1層の細胞からなり、このため一重草という和名がついている。ヒトエグサは同属よりも薄く柔らかく、形状はほぼ円形で、成長するに従って放射状に裂けたり、しわができる。

利用

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アオサ味噌汁」として提供されているヒトエグサの味噌汁(はま寿司

商品作物として、海苔の佃煮ふりかけの原料などに利用される。生の状態や乾燥食品として流通するものは、味噌汁お吸い物など汁物の実としたり、卵焼きに混ぜたり、寿司ネタにしたり、海藻サラダの具にしたりと、様々な家庭料理に活用される。沖縄県ではアーサと呼び、アーサ汁天ぷらなどの材料とされる。

生産

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日本における生産量が第1位の都道府県三重県であり、全生産量の6〜7割[4]を占める。的矢湾(伊雑ノ浦)・英虞湾伊勢湾五ヶ所湾などが主な産地である。特に全生産量の約3割[5]を占める、的矢湾や英虞湾を擁する志摩市では「志摩市あおさプロジェクト」(志摩半島ではヒトエグサを指して「あおさ」と呼ぶ)を立ち上げ、ヒトエグサをモチーフにした「あおサ〜」[6]というゆるキャラも登場している。 沖縄県ではアーサの名で養殖される[7]

分類

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かつてアオサ目に含められていたが、のちにヒビミドロ目に組み入れられた。アオサの仲間の多くは細胞の層が2層であり、ヒトエグサの手触りがぬるぬると滑っている点などで区別ができる。また生活環も異なっており、ヒトエグサを含むヒビミドロ目は配偶体胞子体の大きさや形状が明瞭に異なるのに対し、アオサを含むアオサ目はそれらの違いがはっきりしない同形世代交代である[8]

脚注

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  1. ^ 吉田忠生・嶌田智・吉永一男・中嶋泰 (2005)『日本産海藻目録(2005年改訂版)』 藻類、53:179-228. [リンク切れ]
  2. ^ 吉田忠生・嶌田智・吉永一男・中嶋泰 (2005)『日本産海藻目録(2005年改訂版)』 藻類、53:179-228. では緑藻綱アオサ目に分類されている。 [リンク切れ]
  3. ^ 志摩市あおさプロジェクト 2011年6月8日 閲覧 [リンク切れ]
  4. ^ 外部リンク先の記述による。
  5. ^ 志摩市あおさプロジェクト公式ウェブサイト中の記述による。
  6. ^ 志摩市の広報紙である『広報しま』の表紙等に利用されている。
  7. ^ 岩井憲司; ・上原匡人 (2018-03). “培養ヒトエグサからの人工採苗における高温期間の必要性について” (pdf). 沖縄県水産海洋技術センター事業報告書(Web) 78: 26-28. https://www.pref.okinawa.jp/fish/kenkyu/jigyohokoku-data/jihouh28/26-28.pdf. 
  8. ^ 中山剛・井上勲 『アオサ藻綱』 「藻類の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ3」 千原光雄編、裳華房、1999年、279, 282頁、ISBN 4-7853-5826-2

参考文献

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  • 中山剛・井上勲 『アオサ藻綱』 「藻類の多様性と系統 バイオディバーシティ・シリーズ3」 千原光雄編、裳華房、1999年、279-284頁、ISBN 4-7853-5826-2
  • 財団法人海中公園センター監修、宇井晋介・亀崎直樹著 『沖縄海中生物図鑑 第6巻 海藻・海浜植物』 新星図書出版、1988年、33頁。
  • 千原光雄著 『標準原色図鑑全集 第15巻 海藻・海浜植物』 保育社、1970年、3-4頁。

外部リンク

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