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'''ティルヴィング'''<ref>テュルフィング、ティルフィング、テュルフングとも。 </ref>('''Tyrfing''')は北欧の[[古エッダ]]、[[サガ]]に登場する[[魔剣]]。一度鞘から抜かれると人の血を浴びるまで鞘に収まらなかった。


'''ティルヴィング'''<ref>{{Harvp|谷口訳|1973|loc=索引8頁}}では'''チュルヴィング'''、{{Harvp|菅原|1984|p=316|ps=(索引)}}では'''テュルヴィング'''、{{Harvp|グレンベック|山室訳|2009|p=19}}では'''テュルフィング'''。他、ティルフィング、テュルフングなどの表記もみられる。{{lang|non|Ty}}をテュ/ティ/チュ/チのいずれにカナ転写するか、また{{lang|non|fi}}をヴィ/フィのいずれにカナ転写するかで表記の揺らぎがみられる。</ref>({{Lang-non|'''Tyrfingr'''}}{{R|spelling}})は、[[北欧神話]]の[[古エッダ]]、[[サガ]]に登場する[[魔剣]]<!--持ち主を破滅に追いやる呪われし諸刃の剣 全ての持ち主が破滅したわけではありません-->{{Efn2|この性質から不用意に鞘から抜かれると、兄弟や仲間の誰かを斬らざるを得なくなるという状況も起こった。}}。名称は「[[西ゴート族]]の剣」を意味し、西ゴート族を指す[[ラテン語]] ''Tervingi'' (森に住む者たち)に由来する<ref>松下正雄、p.181。</ref>。
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ヴェルグはこの要求を飲み剣を鍛えた。しかし彼らは去り際に、この剣が悪しき望みを3度は叶えるが持ち主にも破滅をもたらすという呪いをかけたことを明かし岩の中へ逃げ込んだ。


ワーフたちはこの要求を飲み剣を鍛えた。しかし彼らは去り際に、この剣が悪しき望みを3度は叶えるが持ち主にも破滅をもたらす呪いをかけたことを明かし岩の中へ逃げ込んだ。
スウァフルラーメはティルヴィングを帯びて戦場におもむき勝利を得た。しかし[[アルングリム]]と戦ったに剣を奪われ、これで刺されて命を落とした。その後アルングリムの息子[[アンガンチュール]]に受け継がれ、その家系に伝えられたが持ち主や近親者がこの剣により死んだ。


スウァフルラーメはティルヴィングを帯びて戦場におもむき勝利た。しかし[[アルングリム]]と戦ったときに剣を奪われ、これで刺されて命を落とした。その後アルングリムの息子[[アンガンチュール]]に受け継がれたが持ち主や近親者がこの剣により死んだ。
== 関連項目 ==
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#ドヴェルグにティルヴィングを作らせるがアルングリムとの戦いで奪われ殺害される。
#スウァフルラーメを殺し、王女ユウフラを略奪する。
#王女インゲボルグへの求婚を巡って決闘、相討ちとなりティルヴィングと共に葬られる。
#父アンガンチュールの墓を暴きティルヴィングを手に入れる。
#人を殺して追放される際に母ヘルヴォルからティルヴィングを与えられる。後年オーディンの怒りを買い奴隷に殺害される。
#父ヘイズレクの復讐を果たしティルヴィングを取り戻す。

※イタリック体は女性。

== 脚注 ==
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
* {{Cite book |和書 |author=V.グレンベック |authorlink=:en:Vilhelm Grønbech |translator=[[山室静]] |title=北欧神話と伝説 |publisher=[[講談社]] |series=[[講談社学術文庫]] |date=2009 |isbn=978-4062919630 |ref={{SfnRef|グレンベック|山室訳|2009}} }}(初版は1971年、[[新潮社]]、ISBN 4105025015)
*V.グレンベック著『北欧神話と伝説』山室静 訳、講談社、2009年。
* 松下正雄著『スカンジナビヤ伝承文学の研究』創文社、1965年。
* {{Cite book |和書 |editor=G・ネッケル; H・クーン; A・ホルツマルク; J・ヘルガソン |translator=[[谷口幸男]] |title=エッダ 古代北欧歌謡集 |publisher=[[新潮社]] |date=1973-08-30 |isbn=978-4-10-313701-6 |ref={{SfnRef|谷口訳|1973}} }}
* {{Cite book |和書 |last=菅原 |first=邦城 |authorlink=菅原邦城 |year=1984 |title=北欧神話 |publisher=[[東京書籍]] |id={{全国書誌番号|85011498}} |ref={{SfnRef|菅原|1984}} }}


== 関連項目 ==
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* [[ヘルヴォルとヘイズレク王のサガ]]
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2023年8月14日 (月) 19:45時点における最新版

ティルヴィングを手に入れるスウァフルラーメ

ティルヴィング[1]古ノルド語: Tyrfingr[2])は、北欧神話古エッダサガに登場する魔剣[注 1]。名称は「西ゴート族の剣」を意味し、西ゴート族を指すラテン語 Tervingi (森に住む者たち)に由来する[3]

オーディンの血を引く王、スウァフルラーメドヴァリンドゥリンという二人のドヴェルグを捕らえ、命を救うのと引き換えに黄金の柄で錆びることなく鉄をも容易く切り、狙ったものは外さない剣を作るように命じた。

ドワーフたちはこの要求を飲み剣を鍛えた。しかし彼らは去り際に、この剣が悪しき望みを3度は叶えるが持ち主にも破滅をもたらす呪いをかけたことを明かし、岩の中へ逃げ込んだ。

スウァフルラーメはティルヴィングを帯びて戦場におもむき勝利した。しかしアルングリムと戦ったときに剣を奪われ、これで刺されて命を落とした。その後アルングリムの息子アンガンチュールに受け継がれたが持ち主や近親者がこの剣により死んだ。

持ち主の変遷[編集]

スウァフルラーメ1
 
 
アルングリム2
 
ユウフラ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アンガンチュール311子
 
 
ヘルヴォル4
 
ホーフンド
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アンガンチュールヘイズレク5
 
ヘルガ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
アンガンチュール6ヘルヴォル
  1. ドヴェルグにティルヴィングを作らせるがアルングリムとの戦いで奪われ殺害される。
  2. スウァフルラーメを殺し、王女ユウフラを略奪する。
  3. 王女インゲボルグへの求婚を巡って決闘、相討ちとなりティルヴィングと共に葬られる。
  4. 父アンガンチュールの墓を暴きティルヴィングを手に入れる。
  5. 人を殺して追放される際に母ヘルヴォルからティルヴィングを与えられる。後年オーディンの怒りを買い奴隷に殺害される。
  6. 父ヘイズレクの復讐を果たしティルヴィングを取り戻す。

※イタリック体は女性。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ この性質から不用意に鞘から抜かれると、兄弟や仲間の誰かを斬らざるを得なくなるという状況も起こった。

出典[編集]

  1. ^ 谷口訳 (1973), 索引8頁ではチュルヴィング菅原 (1984), p. 316(索引)ではテュルヴィンググレンベック & 山室訳 (2009), p. 19ではテュルフィング。他、ティルフィング、テュルフングなどの表記もみられる。Tyをテュ/ティ/チュ/チのいずれにカナ転写するか、またfiをヴィ/フィのいずれにカナ転写するかで表記の揺らぎがみられる。
  2. ^ tyrfingr sb. m., tyrfingur (ONP)”. Dictionary of Old Norse Prose英語版. コペンハーゲン大学. 2023年8月15日閲覧。; The Old Norse World :: tyrfingr (noun m.) ‘[sword]’”. Skaldic Poetry of the Scandinavian Middle Ages英語版. 2023年8月15日閲覧。
  3. ^ 松下正雄、p.181。

参考文献[編集]

  • V.グレンベック 著、山室静 訳『北欧神話と伝説』講談社講談社学術文庫〉、2009年。ISBN 978-4062919630 (初版は1971年、新潮社ISBN 4105025015
  • 松下正雄著『スカンジナビヤ伝承文学の研究』創文社、1965年。
  • G・ネッケル; H・クーン; A・ホルツマルク; J・ヘルガソン 編、谷口幸男 訳『エッダ 古代北欧歌謡集』新潮社、1973年8月30日。ISBN 978-4-10-313701-6 
  • 菅原, 邦城『北欧神話』東京書籍、1984年。全国書誌番号:85011498 

関連項目[編集]