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「ナッチャンRera」の版間の差分

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[[青函トンネル]]の開通以降、青函間の旅客輸送の多くは鉄道が担っているが、ナッチャンReraは鉄道と比して、青森-函館間において所要時間やエコノミークラスの運賃の安さの点で優位に立つことから、今後の巻き返しがなるか注目されていた。[[弘南バス]]の[[青森上野号]]や一時期の[[十和田観光電鉄]]の[[ブルースター号]]([[国際興業バス]]と[[共同運行]]していた時期)の[[高速バス|夜行バス]]との連携も積極的に進めていた。一方で、在来船の2倍以上となる運賃や、ファーストクラスでも横になれないなど在来船との差も残った。車両輸送の運賃格差は旅客輸送以上に影響が大きく、就航直後には減便された在来船で車両航送の満車が頻繁に発生した。
[[青函トンネル]]の開通以降、青函間の旅客輸送の多くは鉄道が担っているが、ナッチャンReraは鉄道と比して、青森-函館間において所要時間やエコノミークラスの運賃の安さの点で優位に立つことから、今後の巻き返しがなるか注目されていた。[[弘南バス]]の[[青森上野号]]や一時期の[[十和田観光電鉄]]の[[ブルースター号]]([[国際興業バス]]と[[共同運行]]していた時期)の[[高速バス|夜行バス]]との連携も積極的に進めていた。一方で、在来船の2倍以上となる運賃や、ファーストクラスでも横になれないなど在来船との差も残った。車両輸送の運賃格差は旅客輸送以上に影響が大きく、就航直後には減便された在来船で車両航送の満車が頻繁に発生した。


2008年11月末をもって運航会社の[[東日本フェリー]]は国内フェリー事業から撤退し、これにより多くの航路が運航を休止したが、当船は同社の撤退に先立つ同年11月1日をもって、僚船の[[ナッチャンWorld]]とともに定期運航を休止した<ref>[http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/116514.php 北海道新聞](2008年9月9日付、リンク切れ)</ref>。こののち、ナッチャンWorldが夏期限定ながらも青函航路に復活運航を果たしたのに対し当船にはそういった動きはなかったが、東日本フェリーを吸収合併した[[津軽海峡フェリー]]によって、2010年7月に係船地変更のため室蘭港へ回航された後、船内見学会やミニクルーズが実施されることとなった。<ref>[http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2010/07/06/20100706m_02.html 高速船“美人”ナッチャンRera、室蘭港に到着] - 室蘭民報(2010年7月6日付、同月16日閲覧)</ref>
2008年11月末をもって運航会社の[[東日本フェリー]]は国内フェリー事業から撤退し、これにより多くの航路が運航を休止したが、当船は同社の撤退に先立つ同年11月1日をもって、僚船の[[ナッチャンWorld]]とともに定期運航を休止した<ref>[http://www.hokkaido-np.co.jp/news/economic/116514.php 北海道新聞](2008年9月9日付、リンク切れ)</ref>。こののち、ナッチャンWorldが夏期限定ながらも青函航路に復活運航を果たしたのに対し当船にはそういった動きはなかったが、東日本フェリーを吸収合併した[[津軽海峡フェリー]]によって、2010年7月に係船地変更のため室蘭港へ回航された後、船内見学会やミニクルーズが実施されることとなった。その後、[[防衛省]]内で同船の購入計画が検討されている。理由として、離島奪還作戦の不可欠な高速輸送艦艇として転用運用が検討されている。
<ref>[http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2010/07/06/20100706m_02.html 高速船“美人”ナッチャンRera、室蘭港に到着] - 室蘭民報(2010年7月6日付、同月16日閲覧)</ref>


== 船体と装置類 ==
== 船体と装置類 ==

2011年2月21日 (月) 05:49時点における版


函館フェリーターミナルに停泊中のナッチャンRera
船歴
建造 2007年
造船所 Incat Tasmania Pte.Ltd.
現況 運航休止中(2008年11月~)
要目
船種 フェリー
船型 双胴型高速船アルミ軽合金製
総トン 10,712t
全長 112m
全幅 30.5m
機関 ディーゼルエンジン4基 9,000kW×4
推進器 ウォータージェット推進器4基
航続距離 -海里
速力 約36kt(満載時)
最大搭乗人員 1,746名
最大搭載車両 普通自動車350台 又は
普通自動車195台+トラック33台
船籍港 函館
信号符字 7JBY
ナッチャンReraの後部(青森港で撮影)

ナッチャンRera(ナッチャンれら)は、東日本フェリー青森港函館港の間(青函航路)でかつて運航していた高速フェリーである。 船名の「ナッチャンRera」は、船体塗装のイラストをデザインした京都市在住の小学生愛称「ナッチャン」と、アイヌ語という意味の「Rera」(レラ)を合わせたもの。

概要

2007年平成19年)9月1日に青函航路に就航し、青森港 - 函館港間をおよそ夏季1時間45分、冬季2時間15分、深夜便2時間30分(2007年10月現在休航中)で結び、カーフェリーとしては日本最速であった。建造はオーストラリアインキャット・タスマニア社(en:Incat)。ウォータージェット高速フェリーとしては世界最大級。建造費は約90億円。

1990年代に旧・東日本フェリーがジェットフォイルおよびウォータージェット小型フェリー(船名はいずれも「ゆにこん」)を青函航路で運航していたが、燃費がかさむことや波浪への弱さ、曳き波による漁業被害、およびトラックを積載できないことによる低収益性などの理由により運航が中止された経緯がある。新・東日本フェリーおよび親会社のリベラホールディングス(現・リベラ)では、インキャット社とともに風洞実験等を繰り返すなど過去の失敗を精査し、本船の安定した運航に一定の目処を得たとしていた。しかし、前述の曳き波による漁業被害については、解消されておらず、漁民らは速度を落とすよう求めていた。[1]

青函トンネルの開通以降、青函間の旅客輸送の多くは鉄道が担っているが、ナッチャンReraは鉄道と比して、青森-函館間において所要時間やエコノミークラスの運賃の安さの点で優位に立つことから、今後の巻き返しがなるか注目されていた。弘南バス青森上野号や一時期の十和田観光電鉄ブルースター号国際興業バス共同運行していた時期)の夜行バスとの連携も積極的に進めていた。一方で、在来船の2倍以上となる運賃や、ファーストクラスでも横になれないなど在来船との差も残った。車両輸送の運賃格差は旅客輸送以上に影響が大きく、就航直後には減便された在来船で車両航送の満車が頻繁に発生した。

2008年11月末をもって運航会社の東日本フェリーは国内フェリー事業から撤退し、これにより多くの航路が運航を休止したが、当船は同社の撤退に先立つ同年11月1日をもって、僚船のナッチャンWorldとともに定期運航を休止した[2]。こののち、ナッチャンWorldが夏期限定ながらも青函航路に復活運航を果たしたのに対し当船にはそういった動きはなかったが、東日本フェリーを吸収合併した津軽海峡フェリーによって、2010年7月に係船地変更のため室蘭港へ回航された後、船内見学会やミニクルーズが実施されることとなった。その後、防衛省内で同船の購入計画が検討されている。理由として、離島奪還作戦の不可欠な高速輸送艦艇として転用運用が検討されている。 [3]

船体と装置類

ウェーブ・ピアーサー

本船は双胴船の中でも比較的新しい船型である「ウェーブ・ピアーサー」形状をしており、水線下の2つの船体が非常に細く作られている。 船長112mの船体で最大積載は1500tであり、高速船としては非常に優秀といえる。 本船では船首側がわずかに1度低い船首トリムと呼ばれる状態での航行が最も抵抗が少なくなる。

下部船体は水密隔壁によって左右それぞれ10区画の水密区画に分けられており、万一の場合にも簡単には沈まないように出来ている。

エンジン

中速回転のディーゼル・エンジン(MAN B&W 20RK280)を左右の下部船体後部に合計4基備えている。片側2基のエンジンは下部船体の幅が狭いために前後に互い違いに据えられている。それぞれが12,245PS(メートル馬力、9,000kW)のV型20気筒ディーゼル・エンジンは毎分1,000回転を減速機によって470回転まで落として、ウォータージェットのポンプを駆動している。

燃費は旅客と貨物を満載した1450tの状態で36ノットで航行した時、軽油を8,625リットル/時間だけ消費して、リッターあたりでは8mとなる。

ウォータージェット

ウォータージェットを左右合わせて4個備えており、強力な水流の噴射によって高速航行を可能にしている。ウォータージェットでは水流の向きを左右に最大30度まで変えられるので、舵を必要とせずにすばやく船の向きを変えられる。また、ウォータージェットには後進バスケットと呼ぶ偏向板があり、後進時にはこれを噴射口へ押し上げることで水流の方向を前方下方へ変えることで推進力を180度逆の後進へと変えられる。また、後進バスケットを中間位置にすれば、エンジンを回したままで推力をかけない停止状態にもできる。

左右での水の噴射方向を逆にすることで、横方向への移動や、その場での回転がおこなえる。

41.5ノットで旋回したときの旋回円の直径は620mであり、41ノットでのクラッシュ・アスターン(Crash Astern)による停止では1分27秒後にまっすぐ721m先に停止できた。これらはいずれも、非常に優秀な成績といえる。

減揺装置

Tフォイル 波が穏やかで減揺が不要な時は、船体側へ折り込んでおける。
Tフォイル
波が穏やかで減揺が不要な時は、船体側へ折り込んでおける。

高速で航行する本船は波による揺れを押さえるために減揺装置として、船首下に「Tフォイル」(T-foil)、左右の船尾にはトリムタブを備える。

Tフォイル
Tフォイル(T-foil)は船首下から海水中へ垂直に伸びる支持部とその先端部の水中翼により、フィン・スタビライザーにも似たしくみで揺れを抑える。
トリムタブ
トリムタブは必要に応じて船尾の船底部分に板を突き出すことで揚力を発生して、船尾に上向きの力を作り出す装置である。これが左右の船尾に備えられている。

ブリッジ

ブリッジ、つまり船を操船する船橋は船の中央最上部にある。他の船と異なり、機械装置を操作するためにブリッジ内を歩き回るようには出来ておらず、航空機の操縦席にも少し似た「統合型ブリッジ」になっている。ブリッジの前3分の1ほどが横3人掛けのシートになっており、左から機関長/機関士席、船長席、航海士席となっている。船長席の後ろに、後ろ向きに操作する接岸用操船パネルがあり、接岸時の細かな操船の為のレバーとテレビカメラ映像パネルが備わっている。右肘掛けの端につまみのような小さな舵輪があり、文字通り手元で操作が可能になっている。

3人席のコックピットの後ろには、情報分析スペースとして海図や外部からの情報を入手・分析できるようになっている。ブリッジの後部3分の1は休憩のためのいくつかの座席が用意されていて、隅に階下への階段と後部デッキへのドアが付いている。

その他

緊急避難

ライフラフト
緊急時の避難先としての「ライフラフト」には、乗り移るための滑り台式スロープがラフトと同時に膨らむガス展張式のものが備わっている。

乗船・下船

本船の停泊時間はわずか45分であったため、200台あまりの車輌と800人程の乗客をこの短時間で下船させて、また乗船させなければならなかった。車輌の乗船時には、重い車が前後や左右に集中すると船が傾いてしまう(前後・左右トリム)ため、一等航海士などの船員が場所を指示して駐車させていた。特に下船や搭乗中に船が傾きすぎると、ランプウェイに角度が付きすぎて車輌の底を打つ危険があるので注意が必要であった。

脚注

  1. ^ ホタテ漁師:押し寄せる波と砂に「困った」 青森・陸奥湾 - 毎日jp(リンク切れ)
  2. ^ 北海道新聞(2008年9月9日付、リンク切れ)
  3. ^ 高速船“美人”ナッチャンRera、室蘭港に到着 - 室蘭民報(2010年7月6日付、同月16日閲覧)

出典

関連項目

外部リンク